2024/07/10 のログ
ファレーマン >   
「―― ふむ」
「そこで、わし相手にはすまなそうな顔をする当たり、人がいいのう」

エルピス、という名を強調されて頭の片隅に引っ掛かるものを感じるが

ぽん、とその頭にしわの多い手をのせて、軽くなでようとしながら

「わしは先生じゃからな、いさめる事こそあれ、悩める生徒の味方じゃよ?」
「恐らく、先ほど言っていたイーリスという子のためにやっている事なのじゃろうな」
「わしでも知っておる名じゃ、この辺りで知らぬもののほうが少なかろう」

彼女の配信については、彼もリスナーと、委員会からの連絡により閲覧を終えていた

「とはいえ―― 気負い過ぎは良くないの」
「誰かのためというなら焦るのも分かる」
「じゃが……暴力というのは言葉よりも時に雄弁に物語る、いや語りすぎるものじゃ」

「それを忘れては、今を乗り越えた先にそのツケが戻ってくる事もある――」
「過去は存外、しつこいものじゃからな」

周囲で遠巻きに見ている人々に目線を向ける
何人かはひそひそと小声で話し、また何人かはそっとその場を離れていく
喧騒はまだ残るものの、何時ものスラムへと戻りつつあるだろうか

「さて、先生としては生徒のお悩みを聞きたい所じゃが、そこんところどうかの?」
「わしとしてはスナック感覚で吐き出して貰ってもいいんじゃが、それがこっちの仕事じゃし」

軽く指を立てて振りながら

エルピス・シズメ >  
 暫くの間、彼から言葉が消える。
 聞き入ってるようにも見えるし、返す言葉が見つからず迷っているようにも見える。

(『必然性』。)
 
 過去はしつこく、何かを犯せばツケを払わされる。
 それに似たものを、つい最近間近で見せつけられたことがあるような気がする。

(向き合いたくは、ないけど……)
(……これだけは、言ってもいいはず。)

 沈黙の後、顔をあげて言葉を返す。

「僕のツケは、僕のものです。……モラトリアムがあるだけで十分です。
 乗り越えた先で来るなら『それが良い』です。なのでそれ以外のお悩み相談をしたいと思います。」

 表情が明るくなる。
 悩みを持っていることを知って貰えただけでも気分が軽くなり、
 その上で打ち明けないことを選択したのだろう。 

「ひとつは『最近治安が悪いし、夏休みで浮足立つ生徒が増えますよね。』
 『そんな"歓楽街"ではしゃがないように、講義がなくなった先生の巡回がほんのちょっぴりでも増えないかな』
 と言う悩みと、」
 
 歓楽街と言っているが、どう見ても落第街やスラムの事だろう。

 唐突に荷物を漁り、『麺処たな香』と銘打たれた紙が張り付けた包みを取り出す。
 中身は『麺処たな香』のチャーハン2つと唐揚げと辛唐揚、
 そして張り付いている紙は住所兼トッピング無料のクーポン券だ。

「運動後に食べるつもりだったんですけれど、
 思ったよりお腹がすかなくて食べきれなさそうなご飯を、
 食べてくれる心優しい先生がいないかなー、ってことです。」

ファレーマン >   
「成程」

一つ、抑揚に頷く

「シズメくん」
「人はだれしも、一人で立たなければならない時がある」
「誰しも、一人で向き合わねばならない時がある」
「じゃが、決してそれは一人であっても"独り"のものではない」
「努々忘れることなかれ」

彼の答えを追求する事はせず、ただ自身の言葉を返す
キャッチボールには程遠いが…………
その目は、何故かとても優しいものに見えるかもしれない

「ふむ、そうじゃな、未成年の非行はやはり夏休みが増えるからのぅ」
「『職員会議』のほうで取り上げてみるのもいいじゃろうな」

ふぉっふぉっ、と笑顔を見せた彼に向けて、老人も顎髭を大げさに撫でる

「しかしじゃな、楽しみというのは大事じゃ、若い期間は永遠ではない、そして友との時間も」
「羽目を外し過ぎない程度に、誰かと楽しむための予定も組んでみる事を進めるぞい、気晴らしにもなるしのぅ」

そこまでいって、クーポン券に目が行く

「おぉお!こりゃあいいもんじゃ、麺処たな香、実はまだ未経験なんじゃよわし」
「本当にいいのかね?先生返さんぞぅ、れびゅ―は上げるがの!」

はしゃぐようにクーポンを受け取り、ふぉっふぉっ、ふぉっふぉっ、と大げさに笑いながらしまい込むだろう

エルピス・シズメ >  
「……うん。わかりました。
 先生の言葉、まだうまく、咀嚼できないですけれど……」

 投げ返さずに受け止める。
 弾く事や、逸らすことはなかった。

 とは言え、彼にとっては重たい言葉らしい。
 それこそ、難しい課題を受けた生徒のような顔をしている。
 
 そんな彼が先生の優しい瞳に気付く余裕がなかったのは、しょうがないかもしれない。

「お願いします。挙げてくれて、あわよくば少し巡回が増えるだけでも、『一生徒の僕』としてはありがたいです。
 風紀委員さんや公安委員さんも生徒ですから、
 テスト明け直後の休みとなると休みたかったりで手が足りなくなるかもしれませんし……」

 素直にお礼を言い、クーポン券を持っていくファレーマン先生を認める。
 なんだかとてもうれしそうなので、クーポン以外はそっとしまう。

 何というか、初見レビューで食べてほしくなった。

「とても美味しかったので、是非とも食べてみてください。
 きっと浩平君も喜びます。」

ファレーマン >   
「それでよい、言葉を直ぐに飲みこむのは"つまり"の元じゃ」
「ただ喰らうだけでは栄養にはならん、消化し、自分の糧とするには」
「しっかり時間をかけて咀嚼し、自分の言葉とするものじゃよ」
「数学の公式や偉人の言葉だけをしって分かった気になるとテストで足元をすくわれるようにのぅ」

故に、その受け止め方が一番よいのだと老人は言う

「あぁ、勿論、生徒はわしにとっては皆可愛い子供のようなものじゃからな?」
「子ども扱いされるのは恥ずかしいかもしれんが、何、偶には世話を焼かせておくれ」
「『純粋な一生徒のお願い』なら、聞いてくれる人は他にもおるじゃろうしな」

暗に、あなたがイーリスと違って『普通の』生徒であるからこそできる事もあるかもしれない、という意味も含めながら

「ふぉ?……ふふ、ならばそうさせてもらうとするかの、わしのチャンネルで近日公開予定じゃから楽しみにの?」

あなたの初見に対する好意を察したのか老人もクーポンをしまい込む

「あぁそうそう、また悩みがあるなら何時でも連絡してきなさい」
「少しくらいは手助けができる事もあるじゃろうしな」

そういって教師としての名刺を渡す、其処には老人の連絡先の番号、メールアドレスに寮の部屋番号などが一通り記載されているだろう

エルピス・シズメ >  
「テスト……
 友達と遊ぶ予定を立てる前に、補講ですね。」

"足元を掬われる以前に、2日分程吹き飛ばした気がする。"
 過去のしつこさと、ツケからは逃れられない一端を見て、苦笑する。

「女の子扱いされるよりは……じゃなくて。
 ……純粋な一生徒の『僕』であるから、と言うこともあるんですね。」
 
 自分の生徒手帳-オモイカネ8を見て、少しだけ困った顔をする。
 ニュアンスは理解しているのだろうが、奇妙な反応だ。

 一生徒としての自身と、『ここに居るエルピス』としての自身で悩んでいるようにも見える。

「先生の反応、楽しみにしますね。
 ……あ、ありがとうございます。ちょっと待ってください。」

 オモイカネ8の一機能を使って連絡先を登録し、
 渡された名刺のアドレスにオモイカネ8のアドレスと自身のアドレスを先生に送信する。

 これで一通りの連絡先交換を終えた形だ。

「それじゃあ、僕はそろそろ行きます。
 ファレーマン先生、ありがとうございました。」

 ぺこりとお礼をし、両手斧を背負って帰り支度。
 何事もなければ挨拶を聞いてから立ち去りそうだ。
 
 

ファレーマン >   
「ふぉっふぉっ、ま、友達との勉強会というのも楽しいものじゃよ?」
「やれる時にやっておきなさい、後で後悔の無いようにの」

苦笑する彼に対して、老人もからからと笑う

「うむ、確かに受け取った」

連絡先の交換を終えながら目を細める
彼の反応と、先ほどの会話から何かを導け出せそうな気はしている
だが、今これ以上話を詰めるのは早すぎるだろう、と老人は判断した
彼が自分との会話で少しでも心の安堵を得たならばそれでよい、と

「あぁ、シズメくん、次は講義で会いたいものじゃな、それこそ、大事な"その子"も一緒にのう?」
「いやはや、青春はいいのぅ、わしもあと50年若ければ……」

最後に冗談のようにそう言い添えながら、老人も軽く手を振ってあなたを見送ろうとするだろうか

エルピス・シズメ > 「ど、どうだろう……。」

 "その子"への言及に色んな意味で戸惑いを見せた後、
 やや速足でこの場を立ち去った。
 

ご案内:「スラム」からエルピス・シズメさんが去りました。
ファレーマン >   
「さて―― 」
「はぁ、調べ物は苦手なほうなんじゃがなぁ」

"イーリス"、彼女が正規の生徒で無いのは明らかであり、恐らくは彼女を守って此処にいるであろうシズメ
共にまっとうに授業に出る、という機会は今のところ無いだろう

とはいえ、それを望まずにはいられないし、出来る事ならば協力したいと願うのが老人の在り方だった

「―― 頑張るのじゃぞ」

それだけ一つ呟くと、老人もまた自身の『仕事』のためにその場を後にするだろう

ご案内:「スラム」からファレーマンさんが去りました。