2024/07/19 のログ
ご案内:「スラム」にハインケルさんが現れました。
ハインケル >  
「~♪」

スラムには似つかわしくない、軽い足取りでスキップをするように路地を歩く少女がいる。

サイドに編み込んど明るい金髪の跳ね髪。
動きやすい軽快なファッションに身を包んだ少女は、大きな帽子が落ちないよう片手で抑えながら、スラムの中を歩く。

「このあたりもまた活気づいてきたね~♪」

鼻歌交じり、すれ違う住人にはこれまで見なかったような顔がちらりほらり。
元々人の入れ替わりは激しい町だけど、最近はそれに拍車がかかっている気がする。

ハインケル >  
色々事件も起こっているし、人的被害も出ているし。
しかしそれがこの街の正しい姿でもある。

「またあたし達のお仕事増えるかなあー?」

停滞はこの街には似つかわしくない。
流動的で、時に甚だしく、邪で、過激であれ。

立ち止まり、空を見上げる。
廃ビルに挟まれた狭い空。
その空には煌々と満月が輝いている。

「刺激も、欲しいモンね♡」

見上げながら、瑞々しい唇に添えられる人差し指。
赤い舌がぺろりと指先を舐り、黄金()を見上げる視線はどこか煽情的にも思える──。

ご案内:「スラム」に九耀 湧梧さんが現れました。
路地裏にて > スラムの治安は決してよろしくない。
喧嘩もあれば刃傷沙汰もある。
それもスラムの在り方と言ってしまえば、それまでだが。

人通りの少ない路地裏に通じる道の一つから、何かが争うような音が聞こえる。
普通であれば、喧嘩か何かと流してしまう所だろう。

聞こえて来る声が、叩きのめされる男たちの悲鳴ばかりでなければ、だが。

決して少人数の争いではないようだが、さて。

ハインケル >  
「お?」

月を眺めていた少女は耳に届いた悲鳴に気づく。
喧嘩は日常茶飯事、けれど様子が少し違う。
聞こえてくる音からそう感じた少女はにっと好奇心に笑みを浮かべ。

「ちぇーっく♪」

悲鳴の聞こえる路地へと、跳ぶようにして向かう。
…それは人間の運動能力を悠に超える跳躍。
廃ビルの打ちっぱなしの壁をまるで床のように蹴り、跳ね…。
あっという間に、その騒動のド真ん中へと降り立った。

そう、よりによってド真ん中へ。

状況 > 突然の乱入者。
当然、それが呼ぶのは「場の混乱」。

これがただの乱闘騒ぎであったなら、乱入した少女は多勢の中に自ら飛び込むようなものだろう。
それが無謀であるかどうかはこの際、置いておいて。

立ち入った光景は、少女にとってはある意味肩透かしだったかも知れない。

何故なら、殆どのならず者――6よりは多いが10には届かないだろう――は、その大半が
既に地面に転がって呻き声を上げていたのだから。

片膝を付き、身体の何処かしらを押さえていた者が2人程。
立っていたのは一人だけだった。

ならず者 > 恐らくはならず者のリーダー格らしいその男は、柄と鍔周りこそ金色で美しいが、刀身が暗い紫色に染まり、
瘴気のようなものを上げている十字架型の剣を構えながら泡を噴いている。

「てっ、て、手前――
テメェも、そいつの仲間か――!?」

泡を噴きながら、剣を構えていたならず者が――剣を習っている者からすれば、ド素人丸出しの
構えと太刀筋で、乱入者の少女目掛けて、凶刃を振るい、飛び掛かる――!

ハインケル >  
「──おぉ…。何なに、喧嘩じゃない?これ」

降り立った少女はその場の光景に紅い眼を丸くする。
倒れているのが数名。
二人、蹲っている。そして立っている一人は。

「って、うわ…大丈夫?なんかヤバいクスリやった?」

口元から泡を噴き零しながら襲いかかる男の一撃を慌てる様子もなく斜に躱し。
明らかに持っている得物が普通じゃない。獣の直感。
さてはこれが原因でどうにかなってるな、と。

「そいつって、だーれっ」

避けざま、太刀を振り下ろしたならず者の腕へと、横から真っ直ぐに振り上げる蹴り一閃。
武器を落とさせるため…にしては蹴り上げられた男の腕が圧し曲がり鈍い音を立てる。

「……ぁ」

力入れすぎたか?

ならず者 > 「あが……っ…。」

蹴りの一発。
その一発で、鈍い音を立てながら、明らかに様子のヤバイならず者の腕は、
曲がってはいけない方向に大きく曲がってしまった。

意識があれば苦痛でのたうち回る所だろうが、幸いというべきか、その一撃でならず者は失神してしまったらしい。
ぐるん、と白目を剥いて、どしゃりと地面に倒れ伏す。
同時に、へし折れた腕から、金属音を立てて十字架型の剣が転がり落ちた。

それを目にした、まだ意識の残っていた手下らしいならず者二人は、元々折れかかっていた精神が
完全にやられてしまったらしい。
声にならない悲鳴を上げながら、へっぴり腰でその場から逃げ出そうとするだろう。

そして――――

九耀 湧梧 > 「――おいおい、突然誰かと思ったら…。
随分やんちゃなお嬢ちゃんじゃないか。」

丁度、少女の背後。
距離にして6メートルほど離れた所から、声がかかる。

男の声。判別は難しいが、若者という程に若々しい声ではない。
恐らく20代後半を過ぎた者、といった所か。

ハインケル >  
「はぁ…いきなり襲いかかってくるんだもん。加減間違えちゃった…」

もう、と帽子を少し眼深く被り直し、倒れた男に視線を落とす。
そして、その場に取り落とされた剣を拾おうと手を伸ばした、矢先。

「うん?」

背後からかけられた声に手を止め、振り向く。

「…もしかしてキミがこの騒動の主役?」

声のした方角へそう声を投げかける。

姿を隠しているのか、それとも…。

九耀 湧梧 > 「そいつは少々心外だな。
元はと言えば、そいつらが危険な代物に手を出したのが悪い。」

言いながら、小さく地面を蹴るブーツの音。
ふらり、と少女の視界に声の主が姿を見せる。

現れたのは、黒いコートに赤いマフラーの男。
肩に担ぐような形で、一振りの日本刀を持っている。
和の鎧を思わせる装甲で固められた、刀を持つ右腕がかしゃりと音を立てる。

気が付かなかったのも、仕方のない事かも知れない。
殺気が駄々洩れだった、今は腕を折られて地面に転がっているならず者と違い、
この男は殺気らしい気をまるで出していない。

「助かったと言えば助かったが――流石にここまでやる気は無かったんだがな。
こりゃ治すのにどれだけかかるやら…。」

腕の折れた男を少し見下ろし、ちょっとだけ憐れむような視線を向ける。

――スラムを歩く者ならば、噂位は聞こえているかも知れない。
落第街から広がった、『剣を持つな』の噂。
今では刀剣狩り(ブレードイーター)なる仇名まで付いている、まだ新興の噂話の種。