2024/08/08 のログ
ご案内:「スラム」に九耀 湧梧さんが現れました。
九耀 湧梧 > とある日の夜の事。

今日も今日とて、魔剣目当てに襲い掛かって来たならず者を返り討ちにしては、ふらりとスラムを行く人影。

「……廃業したとはいえ、結構な襲撃を退けては来ている筈なんだがな…。
まさしく雨後の筍の如く、か。」

ため息ひとつ。
「刀剣狩り」の噂の根強さは75日そこらで終わりそうにはない。
今日は久しぶりにゆっくりと休みたい所だが、これで襲撃は終わりになるのだろうか。

なればいい、とぼんやり思いつつ、黒いコートに赤いマフラーの男は、ゆらりゆらりとスラムを行く。

ご案内:「スラム」に八ツ墓 千獄さんが現れました。
八ツ墓 千獄 >  
『相変わらずのご様子で御座いますね』

『ご創建そうで何より…と申して良いのか、わかりませんけれど』

その声はどこからともなく。
辺りの建物を反響するかのようにして、男へと届けられる。

聞き覚えがあるならばおそらく。
聞き違えをしないのならば確実に。

その声の主は、男の知る女だろう。

声こそ降らせど姿を見せない貞淑さもまた、紛うことなき───。

九耀 湧梧 > その声を耳にすると共に、脚がぴたりと止まる。
ふぅ、とやや大きめに息を吐き、

「――その様子じゃ、そちらさんも元気そうじゃあないか。」

小さく、口の端が持ち上がる。
随分と久しぶりに耳にする声だ。

「随分と探すのに時間がかかったせいで、あのチビがガセを掴ませたのかと疑い出してた所だった。
あの事件を起こしてくれなかったら、見切りをつけて適当な所で他所に向かおうかとした所だぜ。」

結果論ではある、が、情報提供者の言葉は正しかった。
ガセを掴ませた、という事に関しては取り消して置く事にする。

「さて、と…ま、色々と話す事はあるが、まず最初には…そうだな。

「刀剣狩り」の噂の方は気に入って貰えたかな?」

軽口を叩きながらも、ちり、と背筋に緊張と闘気が走る。
相手が相手だ、何処から何を仕掛けて来てもおかしくはない。

八ツ墓 千獄 >  
『──ええ、そうですね』

『不必要に拾わされた命。無駄に散らすも趣が御座いませんし───』

再び反響するように届けられる、女の声。
───しかし、それもここまで。

「いっそそうしていただければよかったのですけど…。
 (わたくし)を探すのに、随分と不器用で強引な手を使うものですね」

男の進行方向、建物から落ちる深い漆黒の影より、黒衣の女は姿を見せる。

「少々呆れてしまったところです。道理で最近獲物が少ないものだと」

吹き込む風に紫銀をなびかせる女は、その不吉な血色の瞳を、射抜く様に男へと向けていた。

九耀 湧梧 > 「逃げるのには慣れてる性質だろ。
暫く前に、あんたを追いかけてた男に遇ったぜ。
何やらかしたか知らないが、随分と熱烈な殺意を向けられているじゃあないか。」

無論、何も出来ずに斬られるような女ではないとは知っている。
だが、生かして置く理由がないとまで言い切った相手だ。
顔を合わせるのを避ける為にあまり姿を見せないようにする、というやり方は考えられる事。

「まあ、もし空振りでも、そうホイホイとあちらこちらを行き来出来る訳じゃない。
「仕事」も兼ねての魔剣蒐集だったんだがね。
どいつもこいつも――まるで剣を使えていない。振り回されるだけの奴らばかりだ。
なら、要らない怪我人が出る前に危ない玩具は取り上げるに限る。

――ま、もう半分はこうしてあんたを引き寄せる為の餌撒きだったがな
お陰様で、こうして久しぶりの御対面だ。」

血の色の瞳に向けられるのは、流れて固まったような赤黒い色の瞳。
真っ向切って、射抜くような視線がぶつかり合う。

するり、と、コートの裏地から現れ、その手に握られるのは一振りの刀。
以前に会った時のものとは別物――あの時の刀より、刃渡りは短い。
それでも、刃渡り三尺はあろうという代物だ。

八ツ墓 千獄 >  
「困ったものですね…。私は人間の殿方に興味はないのですが。
 あまりしつこい男は嫌われる…と、是非次に会ったら伝えて差し上げてくださいませ」

はぁ…、と。
小さく短い、溜息。

「貴方の仕事など知ったことでは御座いませんけど…。
 身を滅ぼす者など放っておけばよろしいでしょうに、刀剣が主を選ぶことなど珍しくもないこと…」

刀を握る男を視界に収め、血色の眼を薄く細める…。

「…意中の女性と出会ったからと、すぐに昂るようでは…フフ…。
 あの頃とはパートナーが変わったようですが、貴方自身は然程変わっておられないようですね…?」

腰に帯びた白鞘の一振りへ。
まるで愛おしい殿方の逸物を撫でる様に、艶めいた仕草でその手指を柄へと滑らせる。

九耀 湧梧 > 「次に遇った時に伝えて置く事にする。
ま、俺としてはあまり会いたくないがね。堅苦しいのは御免だ。」

ふ、と、こちらも小さくため息。
正直あの時はあれ以上長引いていたらどちらかが大怪我を負っていた。
出来れば伝言は人伝いにお願いして、直接顔を合わせるのは御免被りたい。

「ま、それはそうだ。
だが、"選ばれるべきでない"手合いに"選ばれてはいけない"剣が選ばれてしまったら?
――あんたのように愛でてるだけで充分満足するなら兎も角、とんでもない災害の元になったら、俺が困る。
そんな所に突っ込んで行くなんて性分じゃないんだがな。」

出来れば他の、もっと正義感溢れて実力もある前途有望な若者に押し付けたいお仕事だ。
そんな相手が中々居ないので、苦労しているという所もある。

「下手に気を抜いて切り身になるのは御免被るんでね。気を張っていないと、あんたと話すのは難しい。
相方が変わったのは――まあ、心境の変化っていう奴だ。
以前の相方も出番が少なくなっただけで、今でもご一緒してるぜ?」

ゆらり、と刀を構え直す。
右手は柄から離れてはいるが、それが油断ではない事は目の前の剣姫がよく分かる筈。

八ツ墓 千獄 >  
「"選ばれるべきではない"男に、"選ばれてはいけない"女が選ばれてしまったら?
 フフ…それはそれは、素敵なドラマが生まれそうな予感がしますけれど?」

まるで意趣返し。
持ち手と武器と男と女に置き換えただけの返答。
クスクスと笑みを浮かべる女の表情は、煽情的にすら思える程。

「──成程。気の多い殿方ですね。 それで……」

一呼吸。
返ってくる答えはある程度、予想をしながらも。

「もう幾つ跨いだか覚えてもいませんけれど。
 このような場所にまで私を追いかけて…何をお求めなので御座いますか?
 ええ、ええ…もう幾度もお聞きしましたけれど、そのしつこさに辟易しての改めての問いかけで御座います」

九耀 湧梧 > 「それはまた、ドラマチックな話だ。
血生臭くなけりゃ尚良い話だね。」

意趣返しには軽口で返し。
笑みには軽く肩を竦める。

「――今更、それを訊くかね。ま、訊かれるとは思ってたがさ。」

問い掛けに対しては、ある意味予想通りであろう返答。

「いい女を抱きたくなるのは男の性――変わっちゃいないぜ。
何より、あんたの心を手に入れてない。

勿論あんたが刀剣第一――というか、刀剣しか目に入っていない事は重々承知の上さ。」

八ツ墓 千獄 >  
「───……」

眼を伏せ、浅く呼気を零す。
なにか違う答えを期待していた、というわけでもないのだろう。

「申し上げました通り、改めてで御座います。
 いくつもの世界線を跨げば、ご病気も快気したかと思いまして。
 ……特に治ってはおられないようですが」

やれやれ、と華奢な肩を竦め。
改めるようにして、男へと向き直る。

「それで、(わたくし)の心を揺り動かす算段はつきましたか…?」

九耀 湧梧 > 「全く、人を病人か何かのように言ってくれる。
あんたを生かして置けないと熱上げてる公安の兄さんにも同じような事を言われたぜ。」

ふぅ、と大きなため息を吐きながら、軽く頭を振る。
心外だと言わんばかりの所作。

「さてね、揺り動かせるかどうかは正直言って、まるで未知数だ。
それでも、俺なりに色々と試行錯誤はしてきてな――――」

九耀 湧梧 > 「そうだな――――
絶対にあんたの手には収まらない刀、なんてものがあったら、どう思う?」

八ツ墓 千獄 >  
「……別にその殿方だけに限らず。
 大体の方はそう心配するかと存じますが」

心外そうに頭を振る男を見る血色の眼はやや冷たげである。
その公安の男も件の彼であるのは察している。
それについてはかの殿方の言い分が正しいのではなかろうか。

「無駄な試行錯誤だとは思いますけれどね…。
 幾度も問答はしたで御座いましょう? 人間の殿方には一寸の興味も湧きませんと───」

淡々と零す声。
されど、続いた男の言葉に、僅かに眉を顰める……。

「──絶対に、とは…また大仰な言葉ですね」

「…嗚呼、しかし絶対を否定しては、貴方の私への行為も肯定してしまいかねませんね。悩むところです……」

九耀 湧梧 > 「――どうやら、少しは興味が引けたと見える。」

ふ、と、軽く口元を持ち上げる。
気に入った刀があれば、何としてもモノにしたがる…あるいはそうせずにはいられない女。
それが「絶対に己の手元に渡らない刀」の存在をちらつかせられたら、例え僅かであろうと揺らがずにはおれない。
そう踏んでの一言。

勿論、そんなものがある筈がない……訳ではない
ただのハッタリであれば、すぐさま見抜かれた筈。
故に確たる自信を持っての発言だった。
それが、迂闊に抜く事が出来ない刀であるというだけで。

「念の為に断って置くが、こいつの事じゃあないぜ。
ま、お嬢様の好みの刀であるかどうかは保証しかねる――と言う所だが。」

言いながら、手にしている刀を小さく振って見せる。
これ自体はそんなとんでもない刀ではないのは確かな事。

「さて、俺から出せるヒントは今の所ここまでだ。
それ以上を知りたいなら――――」

分かってるだろ、と言いたげな視線を、軽く向ける。

八ツ墓 千獄 > […僅か女の気を引けた程度で悦ばないでいただきたいですね]

幾度目かの溜息。
しかし、興味を惹かれたこと…それ自体は事実。

(わたくし)の好みの殿方かどうかは握ってみれば理解ること。
 逆を言えば、触れてみるまではわからないとも言えますけれど」

それ以上。
そこで言葉を切った男の視線に、辟易とした表情を向ける。

「…安い交換条件ですね。
 もしかして、ただ暴れたりないだけでは御座いませんか?貴方」

そう言って、白鞘の柄へと滑らせていた手指に力を僅か、込める。

「四肢くらいは落としても不都合は御座いませんね?
 そのお喋りなお口があれば、要は足りることでしょう」

九耀 湧梧 > 「久しぶりに会ったんだから、腕前に衰えが
無いか位は知りたいモノさ。
刀集めにかまけてばかりだったら、四肢どころか指も持っていきさえさせられるか。」

白鞘に添えられた指に僅かに力が入るのを目にして、装甲に覆われた右腕がほんの小さく、かしゃりと鳴る。

「さて、それじゃ――――」

す、と顔から笑みが消え、真剣そのものの顔つきに。

しゃ、と、鞘走りの音が響き、


――――全く見当違いの方向へ、一太刀が放たれる。
黒衣の女には掠りもしない方向への一閃。

屍人の群れ > ――直後。
醜い悲鳴と共に天から降って来たのは、真っ青…を通り越して、土気色の顔をした男。

袈裟懸けに斬り裂かれたそれが、どしゃ、と地面に落下する。
小さく蠢いたそれは――ぐたりと倒れて動かなくなった。

それを合図に、周囲の建物から、ぞろぞろと土気色の顔色をした者が這い出て、あるいは飛び降りて来る。

――まるで殺気がない。生気もない。
結果、気付くのが遅れてしまった。

八ツ墓 千獄 >  
「ご心配は無用で御座います。
 此処に来てから得られたモノも御座います故──」

見当違いの方向へと放たれた剣閃。
それが斬り裂いたモノは…屍人の一人。

「……観戦客。と言うには少し熱気が足りませんね?」

天を仰ぐ様に、廃ビルのぐるりと眺める───。

「……任せても?
 あまり汚らしいモノで、(恋人)を汚したくないので」

どうぞ蹴散らしてくださいませ、と。
男の実力をよく知る女は、そんなつれない言葉を向けるのだ。

九耀 湧梧 > 「…例の紅い屍骸かと思ったが、違ったらしい。
アレに比べると、随分覇気と「殺す気」に欠けてる。」

苦虫を噛み潰したような顔で、そう吐き捨てる。
いずれにしろ、邪魔者には違いない。

「掃除しないと後が大変だろうさ。
――恐らく「アレ」が発生源だろうが、お持ち帰りするか?」

納刀した刀を構え、ぐるりと周囲を見渡しながら、一ヶ所を軽く顎で示す。

屍人の群れ > ――死人の群れの中に一人だけ。
やけに顔色の良い者が混じっている。

手には、黒光りする禍々しい剣が一振り。バスタードソードサイズのそれは、見た目にも
明らかに邪剣の類と分かる忌わしい光と剣気を放っている。

恐らくは、黒い剣に斬られて屍人となったのだろう。
その頭目が、剣を手にした男。
まだ生きているようだが、生憎と白目を剥いて泡を吐いている。
哀れな事だが、もう正気に戻る算段は立ちそうにない。