2024/08/30 のログ
ご案内:「スラム」に緋月さんが現れました。
緋月 >  
――かけまくも 畏き 黒き御神――
――畏み 畏みも 白す――

――諸々の 禍事・禍魂・禍人 有らんをば――
――祓え給へ 清め給へと 白す事を――

――聞こし食せと 畏み畏みも 白す――


――我 黒き御神の 使徒なれば――
 

緋月 >  
どさり、と、斃れる音。
袈裟懸けに斬られ、倒れるは、紅く染まった屍人。

刀を手に、それを見下ろすは、外套(マント)に書生服姿の少女。
その顔には、怨みも怒りも憎しみもなく、ただ穏やかに、倒れ伏す幾多の紅き屍人を見下ろしている。

その目に灯るは、蒼い炎。
静かに燃ゆる、冥府の灯が如き焔。

「――せめて、かの園では、安らかに。」

そう、斃れる屍に言葉をかける。


少女が振るった刃には、一遍の怒りも憎悪もない。
ただ、歪んだ死に支配された者への慈悲にして祝福、安らぎを祈る心があるのみ。

大きく息を吐き、周囲を見渡す。
もう、紅き屍人はいないだろうか。
いないのならば、良いのだが。
 

ご案内:「スラム」にノーフェイスさんが現れました。
ノーフェイス >  
足音。
そちらに向かってくる足音がある。

硬い靴底が、舗装もなにも追いついていないスラムの地面を削る。

宵闇の中で、その暗さに沿う静かな歩調。
場違いなほどに、迷いなく。

緋月 >  
「――――。」

足音。
恐らくは、生きている者、だと思う。

さて、困った。
人に見られて、素顔の噂が回るのは今の所避けたい。
これはあくまでも自分一人の行動。
風紀委員や公安委員のお世話になる訳にはいかないのだ。

息を整え、軽く集中を行う。
瞬間、劫、と瞳の蒼い炎が大きく広がり――
 

ご案内:「スラム」から緋月さんが去りました。
ご案内:「スラム」に黒面の剣士さんが現れました。
黒面の剣士 >  
「――――。」

其処に立っているのは、狼を象った黒い仮面を被った、一人の剣士。
その瞳には、蒼い炎が燃えている。

(……知り合いに遭遇したら、不運を嘆くとしましょうか。)

今の服では、直ぐにばれないとも限らない。
「この活動」の間は、せめて別の服を用意するべきだろうか、と、真剣に悩む。
 

ノーフェイス >  
闇のなかに映えよう蒼焔は果たして視えるのか。
死出を知らぬ神なき街に生きる者にも。
信心なき人間にも。

雲が動く。月は細い。灯りは幽か。
なれ、垂れ落ちる光にてなお十分というように、
闇より出でた姿は確かで、その様をあらわにして立ち止まった。

一手の間合いには僅か遠い距離にて。
流血の紅の下、雪の膚と黄金の双眸が、黒狼を見据えた。

黒面の剣士 >  
「…………。」

……大変に困った。良く知っている顔だ。

蒼い炎は、瞳を覆い隠した儘、血の色の髪の麗人を見据える。
例え死出を知らぬ者とて、信心無き者とて。
一度形として現れた以上、それは「在るモノ」として見える。

(――さて、と。どう言い逃れしましょうかね…。)

刀を一振り。僅かに音を立てながら、納刀する。
――黒き仮面は、死人の観測の力を持つ。必然、それは見た者が死したる者か否かを継承者へと教える。
まさか目の前のひとが屍人の類だとは思わないが。

(……本当に、難儀な事です…。)
 

ノーフェイス >  
顔を動かし、視線が滑る。頭髪が流れた。
転がって、散らばっていた、それらを見る。
下手人が誰かなど瞭然のこと。
事情を斟酌できぬほど、裏に通じていないわけでもない。

黒狼の沈黙と思推の間に。
静かな表情に浮かぶ憂げな色が、次第をたしかめていた。

「……用は済んだのか」

何にも阻まれぬ、通る声が、響いた。
それだけで、晩夏の夜の湿った熱を、秋霜へ押しやるような冷たさで。
瞳は未だ、死の静寂を眺めたまま、黒い狼(アヌビス)を視ない。

黒面の剣士 >  
「――――。」

ひどく冷える声。
阻まれぬ声に、黒い仮面がくぐもった声を上げる。

「…死に切れず、生き物でもない、歪んだ死は去りました。
もう、彼等の死を歪め、弄ぶ事は――誰にも、出来ない。」

最も、それも氷山の一角に過ぎないのかも知れない。
現れたのは全て「雑兵」。
それを作り出す者や――この場に居ない者が広げる歪められた命は、まだ多いのだろう。

それでも、ただ広がるに任せるよりはずっと良い。
歪んだ死の手にかかり、更に歪んだ死が生まれる。その車輪をただ眺めているよりは、ずっと。

(――自己満足、と言われても仕方がないかも知れませんが。)

だが、正しき死への祈りは忘れていない。
忘れてはいけない。
 

ノーフェイス >  
宣言を受ければ、あらためて顔を向けた。
表情は――静謐だ。見せたことのないほど。
余裕の笑みでも、雨中のすがるような不安でもない。
燃える一対の眼は、ただ静かに、使徒の声を受けている。

彼女が何をしているかの、それは概説でもあったのだろう。
あのハレの夜にほのめかされた言葉の切れ端から、
この状況で、理屈がつかないほど、愚鈍な頭はしていなかった。

「……………」

黒服の――シャツを乱して着崩してはいるが、珍しくフォーマルの――装いの、
腕を組み、首をかしげた。
軽い決断(もの)では、ないのだろうから。

「……それがキミの、新しい人生(いきかた)なの?」

天使の声に、僅かな熱が宿る。
感情ともいっていい。
どこかくすぐるような優しさと、柔らかさと。
探るような密やかさと、鋭さで。

彼我の距離を、測った。
その奥の瞳に、理想は未だ在るのかと。面の奥を、見据えようと。

黒面の剣士 >  
「――――。」

やはり、バレるか。
聞こえない程度にため息。

(――あなたは仮面でしょう。
顔を隠すだけでなく、声とか恰好を誤魔化すような芸当とか、出来ないんですか?)

その思念には、尊大な態度で無茶を咎める意思。
我は監視者なり、偽りを羽織る者に非ず。

返る思念に、また小さくため息。
肝心なところに気の回ってくれない相棒との言い合いは差し置いて、静かに立つ麗人に
燃える蒼炎に隠れた双眸を向ける。

「笑止。」

その一言で、問いを斬って捨てる。
己の生き方は、変わってはいない。
ただ、新たな条項が加わっただけ。

「――何かを得たなら、それに対する代価が必要でしょう。
あるいは責任、と言えば良いか。

私にとっては、「これ」がそれだった、というだけ。」

探す人に辿り着き――如何なる結末を迎えるにしろ、この力はその為に己が求めたもの。
力を得たならば、それに然るべき責任を果たさねばならない。
黒き神の使徒としての責務。それが、「これ」であるという事。

「――己が求める一刀には、未だ届かず。
友と思ったひとさえ、どう相対すれば良いかさえ、未だ暗中。

ならば、目につく所に足を進めていくしかあるまい。
今までも、そしてこれからも。」

一足飛びに理想に届くなどという都合のいい奇跡は存在しない。
あったとて、かつてのあの日のように代償を支払うもの。
ならば、目の届くところに足を置いて進めていくしかないのだ。
 

ノーフェイス >  
「……………」

なれば、聖哲の査問のようでもある。
問う側も、なれば応える側も。
信ずるものも違い、道が交わるわけでもなく。
ただそれでも近いと感じた相手への、距離を測り――、測って。
まばたき、ひとつ。

「…………そっか」

表情が、緩んだ。
どうやら、まだ。
自分は、このひとにとって――価値あるものであれるらしい。

「まっすぐに伝えてくれて助かるよ。
 自分で負った責任なら、挟む口もない。
 ……安全なとこまで送ってくれないか、剣士さん(ピュリフィケーター)
 か弱いボクには、このあたりは危なすぎるから」

とん、とん――。
自分の顔――仮面。肩――服。喉――声。
特に、服がよくないな、というジェスチャーだった。
意地悪に笑いながら、踵を返して。

「それに、ボクがいちゃ静かに眠れやしないだろ」

話すことはあるけれど、留まっていては悪い。
気分も、彼らにも。
用は済んだのなら。

黒面の剣士 >  
「――この街の境目位でしたら。
たとえ夜とて、この姿は表を歩くには流石に目立ちすぎる。」

その言葉と共に、歩き始める麗人の後を、少し離れて共に行く。
さながらその姿は夜を往く狼か。
足音もなく、ただ静かに、気配だけが後ろに在るかの如き。

「既に――彼等は旅立ちました。
苦痛もない、歪む事もない……安らぎの園、最期に迎えてくれる友の元へ。

残されたのはただの亡骸です。
土に還るか、塵に還るか。
いずれにしろ、それは自然の理の事。

――流石に腐りはしないとは思いますが。」

たぶん、恐らく。
腐って残ってしまうようなら、流石に後々の対処を考えねばなるまいて。

ともあれ、麗人と共に黒面の剣士はこの場を去っていく。

――表の街と裏の街の境に至れば、
まるで風のように、黒面の剣士は姿を消しているだろう。

青白い炎の名残だけを残して。