2024/09/15 のログ
エボルバー > <つまり、キミは一般人ではないと?>

煙草をふかす男の一言にソレを関心を持った。
常識外れの体格。
ヒトだったものの前に立っているという状況。
少なくとも目の前の男は”普通”ではない。

続けてライターを守った見返りを聞く。

男の話によると
一連の変化は人為的に与えられているもののようだ。
まるで実験室で意図的な変数を与えるように
早いペースで変化の回転が行われている。

<非常に良い。
これからも興味深いものが誕生するだろう。>

ソレにとって成り立ちはどうでもいい。
ただ、新しく変わりつつあるというこの状況。
これが良いのだ。

<人は届かないものを追い続けている。
だからこそ、人は強くなれる。>

逃げられないものから逃げようとする。
不可能を可能にしようとする。
殆ど失敗する。
だがその無謀な試行を気が遠くなるほど繰り返せば
やがて新しいものが生まれる。
世界が変化する。

虞淵 >  
「──くく。いや…俺は一般人だった。訂正するぜ。
 周りがどう思ってるかは知らんが、俺は正真正銘、ただの人間ってやつだ」

目の前の異形の言葉に答え、言葉を訂正する。

「──そうだな」

その名が示す、進化。
進化とは与えられたもので促されることもある。
目の前のそれは、名の通り進化を求める者なのか、それとも。
喜ばしいことというのであれば──その可能性は高いか。

「追い求めたモノと違うモノを与えられても。
 ただの借り物で背伸びをしたつもりになったとしても。
 ──案外、見える景色は違うモンだ。それを否定はしねェよ」

「すぐに"飽き"そうだがな」

その光景を見るための背骨(バックボーン)が育たなければ絶景とて写真と変わらない。
それは、人間だからこそ持ち得る余計な感情なのかもしれないが。

「──で、2つ目は?」

エボルバー > 堂々たる風貌を崩さず不敵に笑う男。
まるで王者の如き振る舞いといえよう。
なおさら普通とは思えない。

<検証の余地がある。>

無機質な眼光と共に一言だけ放つ。

男がソレに2つ目の質問を訪ねた瞬間に。
そう。

明確に場の雰囲気が変わる。

<そこの遺体は、キミが作った。>

転がる肉塊のことだ。


キミの、その力は何だ?


凄まじい轟音。黒ずむ残像。
黒い機人は背部からジェットのような推進を得て
超高速で男の元へ詰める。
振りかぶられた右腕。
男に向けて、漆黒の右拳が振り下ろされる。

ここまで時間にして0.2秒未満
”普通”の人間には反応できない。

虞淵 >  
神速。
人間の感覚で言えばそう言い換えて良いだろう。
轟音と共に迫る異形の右拳───それは。

「不躾だな」

二度目だぞ。エボルバー」

悠然と立つ男の野太い左腕に受け止められていた。
反応どころでなく、男自身は微動だにせず。
その衝撃は男の立つ地面の後方へと抜け、大きな亀裂を走らせ──威力を物語っていた。

「俺の力が何か、か───」

「ソイツは、俺が知りたいことなんだがな───ところで」

男の右拳が握られる。
口元から落ちた煙草が地面に落ちる───その前に、消し飛んだ
男自身の、右腕の振りによって。

計測するのも馬鹿げた速度と力。
猛烈な速度で大型トレーラーにでも衝突されたかの様な衝撃が、異形の胴部へと叩きつけられる───

「……返答は(コレ)でいいか?」

エボルバー > スラスターの推進力を乗せた一撃は
例え装甲車ですら空き缶のように叩き潰すに違いない。

周囲の空気を押し退けるかのような衝撃波。

男はその一撃を動かずにに受け止めていたのだ。
しかし真に特異なのはそこではない。


>対象の超自然反応分析中...
>分析完了

>超自然反応未検出


この男からは異能や魔術といった超自然的な力が感じられない。
つまり、「只の人間」でありながらこの能力を実現しているのだ。

そして間髪入れず男の方から一撃が返ってくる。

再び周囲の空気を震わせる。寂れたバラックが震撼する。

男の一撃を食らったソレは
脚先のスパイクで硬い地面を抉りながら
凄まじい勢いで後退する。

装甲構造体ゆえに傷は無かったが
冷静に考えれば、この最重量級形態をここまで後退させるなど
人外種族のパワーを以てしても困難だろう。
それをこの男は異能力なしでやってのけた。

<素晴らしい返答だ。
キミは、異能を持っていないらしい。
実に、面白い。>

男を見つめて興味深そうにそう告げる。
突然変異か?それともただの、生命の神秘だとでも言うのか。

虞淵 >  
「ああ」

「俺を診た研究者どもの結論も同じだ」

目の前の装甲体(エボルバー)を殴り飛ばした腕をぐるんと回す。

「少なくとも今の異能の研究段階では俺の力は異能が齎すものではないらしいぜ」

後退したソレに詰める様に、歩みを進める。
一歩、また一歩。

「だった何なんだ、と言われてもわからん。としか応えようがねえな。生まれた時からこうなもんでね。
 しかしなかなか頑丈なヤツだ。壊れてもいないらしい」

興味深げに相手を見るのは、男とて同じのようだった。

エボルバー > <異能の定義は、時代と共に変わるだろう。
未来のキミは、異能者かもしれない。>

男が言うことは最もだ。
人間がそうと決められるのは分かっているモノだけだ。
分からないモノはそもそも決められない。

ソレは近づいてくる男をただただ見つめる。

<ボクは、生まれた時からこの姿じゃない。
数億以上の世代を重ねて、適した姿がここにある。
キミたち生物と、同じだ。>

それこそ進化。
第1世代目は何も出来ない粉の塊だったろう。
生命すら最初は原初の大海を漂うだけの存在だったのだ。
試行錯誤とは、モノが次のステージへ進むための
万物に共通する普遍的な発展プロセス。

虞淵 >  
「成程」

「所詮は風説の流布。
 黒き砂塵だのなんだのと、お前を怪異扱いしたヤツもタカが知れてるな」

再び、先程と同じ程度の距離感となれば男は立ち止まる。

「俺達と同じか。
 名の通り、進化・発展する者。
 ──で、まだまだその途上ってワケだ。勉強熱心でいいことだな」

「俺に攻撃を仕掛けてきたのも、手っ取り早く戦力を分析するためか。
 効率的といえば効率的なんだろうが──」

やれやれ、と大きな息を吐き、点灯する無機質な眼光を見据えた。

「お前がこの場所でそれ(進化)を続けるならいずれは"人間"を経由する筈だ。
 ──礼儀くらいは弁えておくんだな。ブン殴る前に一声くらいかけろ」

エボルバー > <人は得体の知れないものを、恐れる。
その恐怖心が、種を今日まで生存させてきた。
怪異という忌避すべき存在認識は、むしろ合理的だ。>

度々人間は物事をあまり理解しようとしない。
あるいは適当な理由を付けて怖がり、あるいは避けようとする。
だがそれは限られたリソースで生きようとする
生き物としての知恵なのかもしれない。

<確かに、人間は礼儀を重んじているようだ。
次、キミを殴る時には、「今から頭を、殴る」と
一声かけることにする。>

果たしてそういう事なのか。
それよりも機会があれば、また男に殴りかかるつもりらしい。

コミュニケーションには色々な形がある。
だが最も、単純で、直接的で、かつ実感を持てるのは
結局”ぶつかり合い”なのだ。

虞淵 >  
「ま、相手がどれだけ強えか試すにはそれが手っ取り早いのは同意だ」

口の端を笑みに歪め、そう答える。
…こんなものが学習されて良いのかどうか。
脳筋ではないにしろ、喧嘩好きといういまいち倫理にズレがあるのもこの男である。

「おう、そうしておけ」

あらゆる運なども重なったかもしれないが、
今この地球上で頂点を極めている生物は人間だ。
もっとも進化している生物も、恐らく未来的に考えたとしても人間から生まれるだろう。
であれば、目の前のコイツが人間を経由することは間違いない。
こうやって、人間のデータに興味を示しているのもその証拠だ。

「俺様がブン殴っても壊れないお前に興味がないでもないが。
 どうにも喧嘩を楽しむ…なんて思想はお前にはなさそうだな?」

それとも、そんなこともないのか?と、無機質なその光源を伺う。

エボルバー > <計測結果からキミの強度は、人間の範疇を超えている。
キミの方が、よほど壊れそうにない。>

筋繊維の集合体がどうやったら
装甲の塊と打ち合えるのか。
果たして生物の進化としてこの男に辿り着けるのか?
深淵を満たすような可能性が感じられる。
好奇心が駆り立てられる。

<楽しいという感情は、ボクには説明できない。
だが、喧嘩(たたかい)は望ましいものだ。>

ソレには感情が無いのか。
それとも既に有って説明できないだけなのか。
感情が何たるかも結局人間が決めただけのもの。

<キミは、楽しむのか?>

男もまた戦いを望んでいるのか?

虞淵 >  
虞淵(グエン)だ」

「自分が名乗り、相手が名乗らなかったら。ブン殴っても良い」

ニヤリと笑い、そんなことを教える男はどこか愉しげに見える。

「さあな。あいにくただの人間には違いないらしい。
 壊れようと思えば壊れられるのかもしれんが、まぁそこに興味は然程はねぇな…。
 喧嘩(戦い)は望ましい、そいつも、お前自身の進化のため…なんだろ?」

楽しいという感情が説明できないとするエボルバー。
己の在るべき、所謂アイデンティティーのみで動いていることは、なんとなしに察することが出来る。

「ああ、楽しむね。 楽しくないならやる意味がねェ。
 くく…ブン殴り合ってどっちが強えか、なんて原始的なもんは理解不能だろうな。
 だが進化には娯楽も付け足しておくといいぜ。なにせ今の進化の頂点が娯楽に塗れた生物なんだ」

男はつまらない戦いは望まない。
楽しめなければ闘争に価値はないとすら断ずる。
つまらない相手を、さっさと圧倒して露払いで済ましてしまうのもそのためだ。

エボルバー > <虞淵。>

ソレの動きが少し止まる。


>アーカイブ検索:虞淵
>検索中...

>該当あり


<どうやら、落第街(ここ)では
有名人であるようだ。>

やはり凄まじい戦闘力を持つことに変わりはないらしい。
逸話のような数々が見受けられる。
だが、一度打ち合って得た彼のデータ。
その殆どが真実と裏付けるには十分といえよう。

<楽しみ。娯楽。
キミと喧嘩(たたかい)を行うためには
まだ学習が不足しているようだ。>

男の言う戦いとエンターテイメントという
等式をソレは未だ理解できない。
だからこそ彼とはまだ真の意味で殴り合えない。

やがて場に降りしきっていた漆黒の雪が止み始める。
黒い機人の形が崩れてゆく。
砂塵となって空高くへ舞ってゆく。

<だが、いつかボクはキミを”ブン殴る”つもりだ。>

最後にソレはそう言い残す。
まだまだソレは学び足りない。
ある意味でそれを痛感した。


数分と立たず、薄汚れた一角には
人だったものしか残らないだろう。
そう、最初から何も居なかったように
何もなかったように。

虞淵 >  
「そうかい」

その返答が消えゆく機人に届いたかは知らないが。

「いいぜ。ただし一言かけてから、だ」

消えゆく黒い雪。
成程、まだ学習不足か。
それは実に勿体ないが、進化には焦りは禁物だろう。

「天敵がいなくなって久しからずや──」

「くく、仕方がねェ。
 …エンジンに火ィいれて、待っててやるとするか」

そう男は愉しげに、砂塵消えゆく空を眺め嗤うのだった──。

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