2024/10/16 のログ
エボルバー > >次世代アーキテクチャ構築中...


二つの拳がぶつかり合おうとする最中、
変化があったのは女。
彼の左腕をロックオンした女の右腕そのもの。
正確には肘から先がとてつもない勢いで瞬時に黒ずむ。
女の拳は脈動する黒ずみに覆われ歪な塊を形成する。

それはまるで、無慈悲な力と打ち合うためと言わんばかりの
漆黒のハンマー。

「”まとも”という言葉には普通という意味を含むらしい。
君こそ、”まとも”とは言い難い。」

再び、男の拳と競り合う形になるだろう。
ただ今度は均衡状態にはならないかもしれない。

男は気づくだろうか?
この短い戦闘の最中で、女から伝えられるパワーがどんどん
正確に、強力になっていることに。

F.U.R.Y > 「そりゃ――――」

ガツンッ―――――!!!

拳同士がぶつかり合えば、先ほどとはまるで違った感触。
さっき殴ったときの柔肌とも違う、漆黒のハンマーに、一瞬競り負ける


「ッ――!」

力が、強くなっている。
ならばと負けじと、拳の力強く籠めるが……バキっ、と岩のような左腕にヒビが入り。

競り負ける。押し飛ばされる。


瓦礫の中にものすごい轟音を立てながら、男が突き飛ばされ…
しかして、すぐさま土煙の中から、立ち上がって戻ってきて。

「かもなァ」

ヒビの入ったこぶしぐるりと回して。
力を籠めれば、溶岩のようなものが溢れて腕の傷を埋め、さらに肘辺りまで鎧を拡大させる。

「テメェもオレもまともじゃねェ。
 が……”マトモじゃなさ”ならオレも負けちゃあいねェぜェ」

力を、合わせられているのか。
それとも成長してるのか。

どちらでもいい。
大事なのは今、”ナメられている”という事実だ。


怒りに火をつけろ。
力を、強めろ。

「もう一発こいよ。

 今度はさっきと同じとはいかねぇぜ……ッ」

怒りの拳が、呼応するように赤みを増す。

エボルバー > >目標追跡中...

>目標補足


ハンマーアーキテクチャによって吹き飛ばした男を
虚ろな女の瞳が捉え続ける。
こんなものでは彼は終わらない。
それだけの存在感は計算せずとも分かる。


>超自然反応増大
>ピーク反応上昇中...


隆起する異能反応。
彼の作り出す異能構造体が体を覆いつくす。
肉体強化と共に応急処置まで行える十二分な強力なものだ。
それだけに留まらず、より広く男の体を覆う異能。
まるで強化アーマーの如く。

だがもしかすると彼の本質はそこにはない可能性がある。
女の力と同じように男の異能反応も肥大化しつつあるのだ。
実に良い。興味深い。

「もう一回攻撃する。君の力を、見せてほしい。」

歪むような金属音。
女がフードをなびかせ再び駆ける。
しかし、今度は男の直前で地面を蹴ればそのまま
異様なジャンプ力で跳び上がる。
空中に妖しく灯る翡翠の瞳が線を描く。

落下の勢いと共に男へハンマーを再び振り下ろす。

F.U.R.Y > 「こんなもんで…」


ぐっ…っと拳を握りしめ。拳の内側に熱がこもるのを感じる。
まるでバーナーに熱されたように、周囲に熱の揺らぎを起こして。

構える。
何が見せてほしい、だ。
嘗めやがって。

結局はこっちの力量試してる訳だ。


「オレを測れると……思ってんじゃねぇぞ……ッ!!!」

ピキッ、
ピキ、ビキ、ビキ……

罅を埋めた拳に、今度は逆に熱によって亀裂が入る。
ハンマーに合わせるように、自分も飛び込む。

瞬間。





「ラァース…オブ…」

振り下ろされるハンマーに、あふれ出る熱と衝撃を、ぶつける。



「ドゥ…ッォオオオオオオ!!」

それは、”怒り”によって開く力の奔流。
怒れる獣に唯一与えられた…”怒れば怒る”ほどに強まる、底知れぬ熱。

その鉄槌で、受け止められるか。

エボルバー > >熱エネルギー異常値検出


女の薄暗い緑色の機械的な視界に
内側から爆発するような彼のエネルギーが眩く映り込む。
亀裂と共に繰り出される紅蓮の衝撃が
ハンマーごと女を焼き潰さんと襲い掛かる。

1秒という時間さえこの刹那には長すぎる。

女のハンマーとぶつかる彼の力そのもの。
そのエネルギーは適応した筈のアーキテクチャの
許容量を凌いでいた。
ハンマーと化していた女の右腕はその熱を前に
赤化し砕け散るような勢いで破壊される。
右腕のみならずそのパワーは女そのものを引き裂きながら
宙へと舞わせた。

「これが、君の異能。これがキミの力...>

女の声にノイズのような交じり始める。
周囲の構造物が焦げ付いてゆくと同時に
飛ばされた女はその力で焼かれ圧縮され。
右腕は飛ばされたのみならず、
女の身体そのものが黒い粉を激しく散らしながら破裂するように欠損する。
目を覆いたくなるような惨状と共に
もはや死体と呼ぶにふさわしい女だったソレの身体が
地面に叩きつけられた。

F.U.R.Y > 「……満足したか、アァ?」

通常の数倍。何トンになるかもわからない衝撃をはなった代償はこちらも少なくなく。

腕にはおびただしい罅が走り、自壊寸前といった様相だ。

だが。

”まだやるのなら”

既に相手はぼろ雑巾のようになっているにもかかわらず、君の方に歩み寄って。
壊れる寸前の腕を見せつける。

拳は、未だ強く握りしめられたまま。

「やるなら”続ける”ぜ」

やせ我慢ではない。
この男は、本当に”やるなら続ける”のだろう。
それは、この腕がたとえ木っ端みじんに砕けようとも変わらない。

女が求めるなら。
応えるだけだ。この、獣は。

エボルバー > >アポトーシスコード実行...


辛うじて残っていた女だった部分が一気に黒ずんでいけば
粉状へ分解されていく。
荒れた地面に漆黒の砂漠が脈動しながら広がっていく。
それは意思を持った微生物のごとく動き、辺りへ散りだす。

<キミは、とても強い。とても興味深い。>

それは、空気を伝わったものではない。
まるで、赤髪の男の頭の中で響き渡るようなそんなもの。
その声も男の声と女の声が重なったような
ノイズ交じりの機械音声と言ったもの。

広がる黒い砂。そう、これこそソレの本質。

<だが、キミの限界を知るためには、
あの形態では、性能が不足している。
別の、形態が必要。>

奇妙な声は言葉を連ね続ける。

<しかし、検証のタイミングは、今じゃない。
互いに、万全の状態で行わなければ、有意義な結果は得られない。>

黒い砂が散り始める。
荒れた路面が漆黒の砂漠から顔を覗かせる。
とても素晴らしい。望ましい。
単体目標相手にここまでキャトムを消費させられたのは久しぶりなことだ。
めったに得られない貴重な経験。

F.U.R.Y > 「そうかよ」

何の事かさっぱりだが。
また来るということだけはわかる。

「”次”はもっと強ェぜ。オレァよ」

限界を測るつもりなら、いいとも。
何度だって図らせて、測り兼ねさせてやろう。

少なくとも、いい暇つぶしにはなる。

少なくとも、この女は。
殴って泣くタマじゃなさそうだ。

「またきな、女」

瓦礫にまみれたスラムで。
男はいつだって待ってやるとも。

エボルバー > <それは、とても...>

月光に照らされた黒砂が
怪しく映える。
不気味に蠢く群体が捌けてゆく。

<楽しみだ。>

やがてスラムの一角からは
地面を覆う黒い砂も、空間を包みこんでいた黒い雪も
跡形もなく姿を消していく事だろう。

場に残ったのは虫に喰われたような
不自然に侵食されたバラックやドラム缶といった人工物。

黒い砂塵の怪は見捨てられた落第街の何処かで
強者の出現を楽しみにしている。

F.U.R.Y > 「そォかよ」

結局何物かなどはわからなかったな。
まぁ、探るなんてのは男の得意とすることではない。そういうのは”他のもの”がすることだろう。


男は、ただ、この見放された地で。
ただ、怒れるだけだ。



ご案内:「スラム」からエボルバーさんが去りました。
ご案内:「スラム」からF.U.R.Yさんが去りました。