2024/11/30 のログ
伊都波 凛霞 >  
常識外の力に極め技を外され、咄嗟の追撃も掠るに留まる

「やるじゃねェか…じゃないでしょ!? 無理に外そうとするからそんな──きゃあっ!?」

不意に突き飛ばされ、小雨に濡れた地面を転がる
それ自体に大きなダメージがあるわけでもない、即座に立ち上がり、体勢を整えて──

「…簡単にブッ潰されてあげるわけにはいかないから」

お互いに距離が離れた
天敵──そう感じているのはもしかしたらお互いかもしれない

技量ではなくいわゆる野生の勘であるとか、直感でやり合うタイプ
それというのも、何も考えずに当て勘で放たれるような攻撃は、如何に少女の高次予測であろうと全く読みきれない
腕が壊れても無理矢理に引き剥がすなんて行為自体も、正直想像の範疇になかった

ふぅ…と呼吸を整える
こうなったら、少女も少女で負けん気が強い
ガラン、と音を立てて旋棍が地面に落ち───構える
(はす)に立ち──人体の急所を遠ざける武の構え
ゆるりと下げられた両手が、生半可な打撃などを打ち込めば手痛いカウンターが待っている──そんな匂いを野生の嗅覚は嗅ぎ取れるか

F.U.R.Y > 「いいやブッ潰す。
 テメェみたいに強ェ奴がつぶれたとなりゃ……風紀のクソ共も無駄に下手打つためにのこのこやってきもしねェだろォからなァ…!」

男にとって、風紀と対立するのはそれが一番の理由でもあった。
この地は、無法の地だ。
無法で生きている場所だ。それに好きに法を持ち込まれる事を、この男は良しとしなかった。
たとえそれが正しい事であろうとも、この地に正しきで生きられぬものがいるのだ。

無論それの中に、道理から外れたものがいようとも。

それを根本から変えれぬのに我が物顔でやってくる風紀委員という輩を、この男は許しはしなかった。

「テメェらが来るなら何度でも潰してやらァ……」

左腕を地面につけ、獣のような姿勢で、構える。
頭でごちゃごちゃ考えて一撃を与えられる相手ではない。
ならば、考えずにぶつけてやるのが一番の”手”だ。

この拳は、そういうために存在している。

そして…膝で左腕の肘にあるスイッチを押すように叩き。

腕を広げ、一目散に…”飛び出す”
体全体をつかった、原始的な突進。
点を殴るなどという考えは捨てる。体のどこかが当たればいい。そう言うかのように放たれる”質量攻撃”だ。

…無論。
ただ突っ込むだけの攻撃ではない。
赤熱化した左腕には、突進だけではない”何か”があると明らかに感じさせる威圧感があるだろう。

伊都波 凛霞 >  
「どうしてそんな───」

そこまで風紀委員を、そんな想いは眼前で膨らむ敵意に押し潰される
感じるのは…ただただ怒り、膨れ上がる、憤怒

今更、来たくて踏み入ったわけじゃないと言ったところで止まるわけがない

「……?」

男は奇妙な姿勢をとる
人のとる構えでない、そこから来る攻撃は…

「(見てから、対応するしかない)」

予測できないなら、己の反射神経に頼るのみ

そして──眼前の男が急拡大…じゃない…とんでもない速度での突進
まさか殴るでも蹴るでもないそんな───

見てから反応──出来るのはせめて

「っ…把ぁっっ!!」

避けきれない、返すのも難しい、気を合わせる余裕もない
その場で出来る最速の──相打ち
顔面に向けて放ったのは、鉄肘
当て身をあわせても手が無事に済むとは思えない
それなりに頑丈かつ固い肘で、原始の突進を迎撃する──が

質量の差は明らか、一撃を見舞おうと跳ね飛ばされ、背後の打ちっぱなしの建物へとしたたかにその背を打ちつける──

F.U.R.Y > 肘鉄をモロに顔面で受けながら、しかして勢いよくはじき出された体は負傷など関係なく女の身体を吹き飛ばす。

当然、突撃した男もまた、建物へと勢いよく叩き付けられながら――――

「ラァス…」

鼻骨を潰され鼻血を吹き出しながら、それをぺろりと嘗め、”決め手”たる一撃の掛け声を唱え始める。

それは、理外の憤怒、その左腕の力を全開にした……”自壊覚悟の一撃”

「オブ……」

視界を赤い血が染めながら。
赤熱化した左腕を、振りかぶらんとし――――


「…やめだ」

そこで拳は、止まる。


伊都波 凛霞 >  
「(痛っ、た…ぁ…)」

苦痛に少女の表情が歪む
背後に遮蔽物があるのは判っていた、故に多少なり痛みへの覚悟は出来ていたけど
それ以上に突進の威力を殺しきれず身体が悲鳴をあげている

しかも、追撃が来る
相当の一撃が相手にも入っている筈なのに、体力や耐久力…フィジカルの差は歴然
それでも、こちらにも風紀委員…そして武術を修める者としての矜持がある──

振り上げられた、その異形の拳を迎え撃つためにその姿勢を整え───

「……?」

その拳が、止まる
あれほど荒ぶっていた、男の憤怒…怒りが、その己を静止させた声からは感じられずきょとんと目を丸くして…

F.U.R.Y > 周りを見渡せば、雨の中でも聞こえる風紀委員の捜索の音。
其方を探しているのだろうことがすぐに伝わるそれに先んじて気が付いたのか、男はそのまま女の前から飛びのく。

…もう一つ、男が戦うのをやめた理由。
実際のところ、男にとってはこちらの方が重大で。

「テメェとやりあっても怒りが沸かねェ。

 ”殺意”がねェ」

怒り狂ったようにふるまってはいたが。
ボルテージが上がることもないほど、女のそれからは”手心”が感じられた。

無論本気でない訳ではない。
ただ、”こちらを仕留める”というような気配がなかったものだから。

そんな相手に、怒りをぶつけるのは筋が通らないと判断しただけ。

「俺が相手する風紀のクソ共じゃねェな。
 真っ当にいい子ちゃんやってやがるガキだ。」



伊都波 凛霞 >  
飛び退き距離をとる男へと向けられる、少し怪訝な目
そして、はぁ………というとても長く深い溜息が漏れていた

「あの…そういうの、戦う前に理解るじゃないですか…話せば……。
 まぁ…裏を返せば、それくらい私達(風紀委員)が嫌いなのかもしれないけど……痛っ…」

ずき、と痛む背中に表情を歪める
…正直"武術家"としてはこの先にも興味があった。でも、今の自分は正義の証(腕章)をつけている
そうであるなら…己の欲求は二の次だ

「いい子ちゃん…」

その言い方にはちょっと感じるところはあれど、
ひとまずこの場が収まるならそれで良しと無駄な反論はせず…

「私は此処に逃げ込んだ違反生徒を追っかけてきただけなんだから…、
 ……顔とか腕とか、大丈夫?」

結構本気でやっちゃったから、大丈夫じゃないかもしれないけど…
そんな気遣いの声をかけつつ、自分も背だけでなく彼の顔面に叩き込んだ肘がかなり痛む

遠巻きに聞こえる風紀委員の気配に、ちょうど近くまで弾き飛ばされていたオモイカネを拾って──

「──連絡途絶えててごめんなさい。こちらは一応無事なので、件の違反生徒の残りの捜索を…」

そう通達し、風紀委員がこのエリアに踏み込まないよう釘をさしてから、彼へと視線を向ける

風紀委員に此処に入って来てほしくないんでしょ?と言いたげに

F.U.R.Y > 「かすり傷だろォが」

全然かすり傷ではないが、獣からすればそうかもしれない。
この程度の傷、今まででもいくらでも負ってきたという証。

「話なんざテメェらが聞く訳ねェ。
 ここにいる奴らはテメェらにとっちゃ”いないも同然のゴミ共”だからな」

それが男にとっての風紀委員の認識だった。
実際に、そういう扱いを受けた経験があるのだろう。そうでなければ、このような態度にはなるはずもなし。

とはいえ。
そう話す以上、話せる相手と判断されたのかもしれないが。

「そもそもこっちは藪突かれてんだ。
 禄でもねェ奴引き連れてきやがって。

 これに懲りたら他人の縄張りに面倒事持ち込むんじゃねェな」

こちらが悪い、などと微塵も言わず。
そんな風に投げ捨てるような言葉。





風紀委員が別の地域を捜索すれば。
丁度男が現れた瓦礫のあたりから、件の違法生徒が見つかったかもしれない。

伊都波 凛霞 >  
「それでかすり傷って……」

さすがに呆れ顔
…にしても、ちゃんとお話できるんじゃない、と少しだけ意外な結果

彼の言い分には風紀委員としては反論したいところもあったけれど、
そうじゃないと言い切れるほど、彼の言うような風紀委員がいないわけじゃない
何より、この場で諭したところでそう簡単に彼が考え方を変えるような、そんな浅い話ではないと感じてしまっていた

「碌でもないやつ…あ……」

件の違反生徒のことか、と

「確かに此処まで追い込んじゃったのは私達だけど…。
 わざとじゃないんだから勘弁してよね?」

ともあれ長居しすぎるのも彼は良い気はしないだろうと、そうれじゃあと話を切って
…怪我のことは少し心配だけど、かすり傷だと彼が言うならばこれ以上ツッコむのもきっと野暮

「ちゃんと怪我だけ治療してね、腕は折れてはないと思うから!」

そう言い切るように言葉をぶつけて、返答を待つ前にトンファーを拾って小走りで駆けてゆくのだった

その後、このエリアを訪れる風紀委員は──減りはしないだろう
彼の言うような考えの風紀委員も数多く存在する…ただし
そうでない者が、この場所に彼への悪意を持って近づくことは…少しは減っただろうか──

F.U.R.Y > 「ふん」

ここじゃ日常茶飯事だ。荒事も怪我も。
この男はそれに少しだけ耐性が付きすぎているものだが…それを話したところで心配はされるだろう。

それは男としても望むものではない。

「こんなもんツバつけときゃ治らァ。
 二度と来るんじゃねェぞ、テメェ相手はやりづれェ」

誉め言葉と捕らえていいものかわからないが。
やりあいたくないという意味では、少なくとも一定の評価はされたのだろうか。

そう言って、そのままさっさと男も寝床へ戻る。
治療は、きっとしないことだろう。


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