2024/07/03 のログ
伊都波 悠薇 >  
「……ーー」

久々に。自分の胸の内を口にした気がする。

よかったと、友人にしてほしいと言ってくれる目の前の人は、あぁ、確かに。

『頼もしい』

「あはは、えと、その」

誤魔化すように笑う。しまった。
思いの外、自分は参っていたのだと今さら自覚した。
そして。

「天秤を知った、上で。なにもできない、私でよければ」

あえて、そう口にした。

応えた『先輩』への敬意から、何もない、なんていえない。両足があるじゃん、そういってたじゃんと突っ込まれてしまいそうだ。

「お姉ーーこほん。姉さんには内緒で、お願いいたします」

黒條 紬 >  
「何かができるとか、できないとか。
 それって、友達になる上で重要なことだとは、私、思いませんよ

それだけ最後に告げた後。
彼女の言葉を全て聞けば。


――
―――

少女の表情は すっかり元に戻っていた。
語調も、元の通り。そこには重さはなく、
すっかり、いつも通りの彼女の調子に戻っている。


「いやぁ、かく言う私も、ダメな時はダメダメですからねぇ~、いやほんと……
 ダメオブダメ……しょげてる時は、悠ちゃんに泣きつくかもしれませんし~」

うんうん、と自らの顎に手をやり。
血が滲む唇に少し顔を近づけると――

そのままポケットからハンカチを取り出し、差し出した。

「それで血、拭いてください?
 可愛いお顔がそんな風になっているのは悲しいですからねっ」

ふふん、と。
ちょっとだけドヤ顔の紬。

伊都波 悠薇 >  
「だ、ダメさ……」

そこで張り合いに出されると困ってしまう。
でもあえていってくれているなら、こちらを気遣って、だろうか。

「血?」

どうやら気付いていなかったようで、ハンカチを受け取り、唇を拭いた。

「黒條さんって、タラシですよね」

素で。
さらりとそんな言葉がでた。

黒條 紬 >  
「……それ、私の巧みな人間関係構築じゅち……こほん。
 人間関係構築術が褒められてる感じですか?」

ふっ、と。
笑って親指と人差し指の間で顎を挟むポーズ。
しかし、噛んだので辞めた。諦めた。

「ま……こんな私でよければって感じですよ。
 友だちになりたいのも……関わった以上、支えたいのも本心なので
 ご安心を」

冗談っぽくそう口にすれば。

「それじゃ、今度こそ、ゆっくりしてくださいねっ。
 元気になったら、ご飯でもモリモリ食べに行きましょうねっ」

黒條 紬 >  
 
「それでは……お邪魔しましたっ
 色々ごめんねっ」

振り返って見せた顔は、それまでに見せていない笑み。
どこか悪戯っぽく、目を細めて見せた彼女は。

静かに、病室を去っていったのだった。

伊都波 悠薇 >  
「分かりました」

本心と言われれば、く、と少し首を傾げ、さらりと前髪が流れた。

覗く、左目、泣き黒子。
今日初めて、真っ直ぐアナタを見つめた。

「私、『錘く』しちゃいますから。永く、お友達で、いてくださいね」

そうして。
別れ際、蟻の情報を伝えて、見送ったのだった。

ご案内:「医療施設群 委員会用病棟」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「医療施設群 委員会用病棟」から黒條 紬さんが去りました。
ご案内:「医療施設群 一般病棟」に伊都波 悠薇さんが現れました。
ご案内:「医療施設群 一般病棟」にミア・コレットさんが現れました。
伊都波 悠薇 >  
感染リスクなし。

そう判断されて委員会病棟から一般へ。

移動が完了して、一息。
ロビーでひとり、座っていた。

ーーはずかしっ

先日、大叫びしてしまったことを思いだし、顔を手で覆う。

手には、なんとなく、持ちたくなった馬の携帯ストラップ。

「おいおい、はるっち。あんな告白したんだからもっとどうどうとしてろよ」

「で、できないよぉ」

ひとりで、携帯ストラップに話をかける姿は姉からしてみれば、懐かしいかもしれないが。
他の人からしてみれば奇行で。

でも。自分にとっては、落ち着く、やりとりで。

無理に、振り切ったことにしなくてもいいんだなとおもいつつ。

「にしても、あの蟻のやつ、強すぎたなぁ、落第街のやつみんなあーなんかな?」

「ど、どうだろう」

ついでに。
そんな風に整理しようと思っていた、昼過ぎ。

ミア・コレット >  
私はミア・コレット。
戦った怪異がどうやら感染性の何かだったらしく検査入院が長引いている学生。
そして、記憶喪失で知らなかったけどこの体は傷の治りが早いらしい。

もうすっかり元気になった体と自由にならない身柄。
今日も今日とて消灯まで病院内を探検だ。

その時、携帯ストラップを手にロビーで一人何かを話している。
そんな人を見かけた。

長い三つ編み。そして、内気そうに前髪に隠れた深く輝く瞳。

「お隣いいですか?」

席の隣を指して。

「大切なものと二人っきりの時間がいいなら遠慮しますけど」

そう言って微笑んだ。

伊都波 悠薇 >  
「ぽぇ?」

声が聞こえた。
ぎぎぎ、とロボットのように顔を動かすとそこには少女がいた。
綺麗な金髪。目を引く、人形のような風貌ーーとかではなく。

「み、みてました?」

ささっと、携帯ストラップを隠した。
みられた! 恥ずかしい。

「い、いえいえ。全然大丈夫です。どうぞ、おとなりと言わず上でも! はい」

ーー上?

ミア・コレット >  
「上……?」

上は難しいなぁ。
そんなこと考えながらクスクス笑って。

「見てました、でも言いふらす趣味はありませんよー」
「その携帯ストラップ、大切なんですか?」

隣に座って。

「ちょっと入院が長引いてて退屈で。話し相手になっていただけませんか?」

伊都波 悠薇 >  
「う、上です」

ささっと、前髪を整えて視線を隠したあと。膝上を控えめにぽんぽん、たたいた。

「あ、いや、そういうわけでもないといいますか。あの、整理しようと、使っていたといいますか…………ぼ、ぼっち、であることがおおいので…………」

たはは、と苦笑。

「わ、私でよければ。げ、元気そうにみえますけど、退院だめ、なんですね?」

ミア・コレット >  
膝上!?
難易度高ぇー。

「難易度高ぇー」

思わず思ったことが口をついてしまった。
反省、反省。

「ぼっちなんだ、私も大体ぼっち」
「最近は二人友達ができたけどね」

隣で前髪の行方を気にして。

「うん、落第街で赤い蟻人のゾンビと戦って」
「倒せたけど、検査入院。ほら、感染するらしいから」

守秘義務とかあるんだっけ。まぁいいや。

「名前、まだ言ってなかったね……私はミア。異邦人のミア・コレット」

伊都波 悠薇 >  
「い、いってみただけです……」

自分もそう思うと、こくこく頷いた。

「そ、そんな明るいのに?」

ぼっちと聞くと、目をぱちくり。
そんなことあるのだろうかと。

「わ」

話を聞くとそんなところまで一緒だ。

「私も、です。闘ったわけではなく、逃げただけ、ですけど」

異邦人、と、見つめて。

「綺麗ですね」

思ったことを隠す必要もないから、そのまま。

「いとわはるか、です。よろしくお願いいたします」

ミア・コレット >  
「明るくても友達がいない人もいるってことだぁね」
「具体的に言うと最初の一年くらい人の陰口主体のつまんない女子グループとつるんでた」

日本語は学べたけど、自分にとっては黒歴史に等しい時間だ。
ああ、時が戻ったら。そんな益体のない言葉を考えるのも虚しい。

「あ、そうなんだ。あれ強いからね……命があってよかったよ」
「私も次に会って勝てるかは微妙なラインだし?」

綺麗ですねと言われると髪をしゃらーんと靡かせて。

「それほどでも……あるけど?」
「キレイな髪と目をしていると自負してますけど?」

ふっふーんと自慢気に言う。はっきり言って自信はある。

「ハルカね、よろしく」

病院着のまま足を伸ばして。

伊都波 悠薇 >  
「おぉ……」

陽キャの悩み、ということだろうか。
人付き合いするなら人を選ぶもの大事。
でも彼女ならすぐに友達が出来そうな気がする。

こういう、明るくて、元気で、綺麗な女性は人が集まる。姉という例がいるから間違いない。

「はい。素敵だと思います。手入れとか大変そうです」

靡かせる髪に目を細めて。

「たまたま、かもしれません…………え゛、勝ったんですか。スゴい」

ミア・コレット >  
「おぉ…って言うけどね」
「ハルカも綺麗なんだから、友達くらいすぐ作れそうだけど?」
「男も女も、キレイなもの好きっしょ」

にひひっと笑って伸ばした足を畳むように戻した。

「オリーブオイル入りのシャンプーとか、輸入モノのリンスとか使ってる」

両手で人差し指を作ってズビシィッとセイラに向けて。

「辛勝。私も入院コースなんだから、誇れた勝ち方じゃないって」
「そもそもこの街の正義が……風紀委員が来たら私なんかお役御免なんだ」

「私がしようとしたのは時間稼ぎだけだよ」

伊都波 悠薇 >  
「あはは。そんな、私はそうでもないですよ」

自己評価が低めなのはいつものこと。
友人作りがなかなか、うまく行かないのもいつものこと。

「高そうです……」

自分では買わなさそうなものがでてきた。
努力を、していて素直に尊敬の眼差し。

「……すみません」

風紀委員、といわれると、謝罪しかできなかった。

ミア・コレット >  
「ほーらほら、前向く。背筋ピシッ! 視線真っ直ぐね」
「そのまま10秒キープ、ポジティブな気持ちにならない?」

あははっと冗談っぽく言って笑って。
なんだか年下と話している気分になる。
とはいっても、ハルカの年齢知らないんだけど。

「綺麗は諦めた瞬間終わるの、ハルカもキレイなうちにキープキープ」

そして相手から謝罪の言葉が出ると。
少し脳の動きが早まった。

要するに、彼女は風紀委員なわけで。
要するに、赤いゾンビの一体から逃げたわけで。
要するに───そのことで負い目を感じている、のかな。

「ハルカ、真っ直ぐ走れる?」
「ここでするわけじゃないけど」

そんな話を切り出した。

伊都波 悠薇 >  
「ぅぁ、え?」

突然、号令。
従って、ぴんっと真っ直ぐ座り、キープ。

「ど、どう、でしょう。ポジティブには、なってない、かも?」

首を傾げつつ。続く言葉に、脳内でも?を浮かべた。

「は、走る? ど、どこにですか?」

ミア・コレット >  
「そう? 私は戦う時はこうしてるなー」
「真っ直ぐ相手を見るの」

ふふ、と笑って。

「真っ直ぐ走れるなら、敵から逃げて仲間を呼ぶ」
「声が出せるなら携帯デバイスで仲間を呼ぶ」
「いっそ信号弾みたいな装備があるなら仲間を呼ぶ」

「それって勤めを果たしてることにならないのかなぁ」

大きく伸びをすると肩の骨がパキ、と鳴った。

「一人でも山を登れるのは強さかも知れないけど」
「誰かと手を繋いで山を登るのは弱さじゃないよ?」

ハルカの目を見ながら言ってみる。
苦しいフォローかも知れないけど。
どうしてだろう、言葉を尽くしてみたくなった。

伊都波 悠薇 >  
「闘えるのは、才能ですから」

だから。

「コレットさんのそれは、その姿勢はスゴいと、そう思います。美しいと思います」

隣の少女は、見た目より大きいのだろうなと思った。

「どうでしょう」

果たしているかと言われると。

「心配を、家族にさせてるから。できてなくもない、って感じかもです」

姉とも、ちゃんと、話さないといけないなと、思いながら。

「手を繋ぐの、恥ずかしくて出来ないよりなので。隣で走る、くらいはしないとですよね」

くすり、笑う。
さりと前髪が流れて左目が覗く。
優しく優しく、少女に笑みを向けた。

「次は、頑張りますね」

ミア・コレット >  
「闘えるのは才能かも知れない」
「けど戦うのはね……自分の意志だよ」

「現実とか、弱さとか、苦しさとかとね…戦う時は特に」

家族の話を聞くと嬉しくなる。
そうだ、彼女には陽だまりがある。
風紀委員だからって戦うことで消耗して良いわけがない。

「本当? 怪我したこと、ちゃんと家族と話した?」
「家族がいるうちが花だよーこういうの」

穏やかなライトの下なのに。
彼女は透明な青空のような笑みを浮かべるんだな。

「うん、風紀委員みんなで力を合わせて、ゾンビなんて倒しちゃおう」
「あんまり詳しくないけど……機界魔人テンタクロウだって逮捕できたんだし」

「風紀委員という枠組みに全く意味がないなんて考えてる人、いないよ」

伊都波 悠薇 >  
「意志だけで、なんとかなるといいんですけど」

気持ちはある程度ある、つもりだ。
でもそれだけじゃ、意味がないのを目の前で知ってるから。

「コレットさんはどちらも持ってるということですね」

微笑みながら、ぐっと両手で拳を作り、賞賛。

「怒られただけですね。まだ、話しはしてないです。言ってないこともいろいろ」

姉とは、あの天秤で、全てだと思っていた。
でも、実は、まだ、話さないといけないことがあるのかもしれない。

「そうですね。倒せたら良いですね……あ、コレットさんは、だめですよ。怪我したら大変です」

ミア・コレット >  
「難しいよね……力だけでもダメ、意思だけでもダメ」
「人間、どれくらい強くなれば守りながら生きられるんだろう」

再び髪をさらーっと流して。
フフン、と胸を張った。

「そのために戦っているつもり」

自慢気に言ってみる。
これくらい言ってみないと、伝わるものも伝わらないかも。
そう勝手に思ってやってみた。

「心配してくれるなら嬉しいよ。腰を据えて話さないとね!」
「それはまぁ……もう懲り懲り、あのレベルの敵はそう何度も戦えないし?」

伊都波 悠薇 >  
「どのくらい…………一応、指針になる人物は知っていますが」

でもいくら、その人でも。ひとりでは、だめだということも理解しているから難しい。

「コレットさんは、どう戦うんです? 見たところ、近接っぽくは見えないですが」

興味が湧いて、訊いてみることに。

ミア・コレット >  
「そっか、じゃあその人は本当に強いんだねぇ……」
「そうだ、今度はその人を守ってみるのはどう?」

「きっと手強い相手にも勝てるよー、間違いなし!」

戦い方を聞かれれば、うーんと悩んで。

「銃も刀剣も使い方は覚えたけど……」
「メインは異能かな、自己投影実体化β型類似異能」

「心のヴィジョンを実体化して戦うの」

伊都波 悠薇 >  
「強いですよ。まぁ、姉、なんですけど」

苦笑。だからこそ。

「はい。守りたいです」

そう思う。

「異能。投影……?」

イメージがしにくく、補填された説明に頷いて。

「なるほど。想像を現実に反映するんですね」

ミア・コレット >  
「お姉ちゃんかぁ……じゃあ、その背中を守れる人になりたいね」

微笑んでその姿をイメージする。
誰だって強くなっていいはずで。
眼の前のハルカだって、それは適用されるんだ。

「うん、覚悟を決めてエトランゼーって叫ぶと心のイメージでモンスターや偉人が出てね?」
「それを使って敵と戦う感じ」

伊都波 悠薇 >  
「はい」

なりたい。
その言葉に嘘はない。どうにか、そう、なりたいと思うから、ちょっとだけ、もう少しだけ。甘えることを許してほしいと思うのだ。

「ということは、理論上、コレットさん、最強、ということでは?」

目をキラキラさせる。尊敬の眼差し。

ミア・コレット >  
「限界はあるのかわからないけど」
「最強だったら敵の爆破攻撃二回も受けてないよねーって」

たはーとだらしなく笑って見せて。

「本当、強かったなー紅き蟻人」
「でも……同じ光景を見たらまた戦っちゃうかも」

「怪異に傷つけられる人や街なんて、見たくないから」

携帯デバイス『ホルスゼフォン6SE』を取り出して。

「そうだ、連絡先交換しよ? ストラップがあるってことは本体もあるよね?」

伊都波 悠薇 >  
「想像力の問題でしょうか」

ふぅむ、と考える。他人の異能がどういうものなのかを考えるのは『楽しい』。

「本当に。あれは、悪、とかではなく。『敵』という感じでしたから。私も、立ち向かうかも、しれません」

振り替えるとそう思う。
あれを、悪とは認めてはいけない。
認めたくない。
だから、少しだけ声が強かった。

「え、あ、はい。持ってますけど、いいんですか?」

ミア・コレット >  
「あるいは……心の強さ」

心の強さの鍛錬には限界がない。
だからこそ、容易に壁に当たる部分でもある。

「そうだね、精神構造が異質な敵……」

その声音の強さは、確かに彼女の中に正義を感じた。
だから、この街は大丈夫。そう、安心することができた───

「もちろん、ここまで話し込んだら友達っしょ」

そう言って連絡先を交換し。

MES:よろしくね、ハルカ。名前、そんな漢字なんだー!

と送ってから立ち上がり。
小さく手を振ってから。

「私はもう少し病院を見てみる、またねハルカ」

そう言ってからまた広い病院内を歩きだしていった。

伊都波 悠薇 >  
「心の強さ」

彼女には、それも必要なのかと異能の奥深さを知る。

そして、メッセを見ると、柔らかく笑みが零れた。

「はい。また、次は学校で。お大事に、コレットさん」

そして、手を振り見送ったのだった。

ご案内:「医療施設群 一般病棟」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「医療施設群 一般病棟」からミア・コレットさんが去りました。