2024/09/05 のログ
橘壱 >  
"本当に自分がしなくてはいけないのか"。
そう言われると、ほんの少し苦い顔。

「"必ず"……って言われると違うかな。
 僕は風紀委員の中で、特に生身じゃちょっと鍛えた一般人だ。
 軍隊とかガチガチのその手の職の人間には劣る。
 自分で言うのも何だし、飽くまで操縦士(パイロット)として優秀なだけ。
 僕以上に優秀な人間はごまんといるし、必要かと言われるとそうじゃない。」

単純な力量だけで言っても、人材としてもそうだ。
此処は島一つとは言え時代の最先端。
様々な人材と比べれば非異能者の少年一人などちっぽけな存在だ。
単純な戦いだけの話になれば、人材としては微妙。
機械(マシン)の力と企業のバックがあってこそと言えよう。
それでも、だ。そこから退くという選択肢は……。

「……心配かけてるのは悪いけど、僕はやめない
 夢のためってのもあるけど、僕自身のやりがいって言うのかな。」

「そう言えばイヴには話してないよな、僕が常世学園(ココ)に来た理由。」

それもそうか、はじめの方は必要以上に対話しなかったから。
落ち込んでいる様子の子狐に肩を竦めてはむに、とほっぺを突いた。

「人をジジイみたいに言うなよ、僕はまだ17だぞ?
 数日程度の検査入院だよ。すぐ戻るって。」

イヴ >  
危なくても。
命が危険かもしれなくても。
やめない
はっきりそう言うルームメイト。

「夢にちゃんとレールを引けてるならボクはイイと思う。
 でもそうじゃないなら、ヤメたほうがいいとも思う。
 意思が強いのと、意地になるのは違うってママが言ってた」

もむもむ。プリンを頬張りながら子狐が言う言葉は妙に大人びている。
ただの受け売りなのかも知れないし、そういった部分は異種族という点もあるのかもしれない。

(ココ)に来た理由?」

食べ終わったプリンの容器を手元に、首かしげ子狐。
ジジイみたいに言うな、という言葉にはだってなんかそんな雰囲気だったし…という無言の訴え。

橘壱 >  
ゴミ箱はそこ、と指さしておく。
これ自体が自動でゴミの日に収集センターに移動してくれる優れもの。

「僕はね、AssaultFrame(アサルトフレーム)の宣伝目的で此処に来たんだ。
 企業に目をつけられて、此の時代の最先端である常世学園に入学してね。
 企業をより良い印象を持ってもらったり、文字通りの広告塔さ。」

元ゲームチャンプの天才操縦士(パイロット)
更に非異能者と来れば宣伝目的としては十二分。
橘壱という少年が企業にプラスに働くために此処にいる。
初めはそれを利用してやるつもりで此処に来た。
AF(コイツ)が動かせればいいという気持ちで来ていた。

「……初めはね、それを利用するつもりで好き勝手やるつもりだったけど
 今はそういうんじゃないというか、何と言うか……、……。」

少し間をおいて、頬を掻いた。
気恥ずかしさがある。

「僕の、Fluegele(フリューゲル)の活躍を見て誰かの活気になれたらいいな、とは思う。
 もちろん、AF(コイツ)を動かすこと自体が楽しいのはあるんだけどさ。
 ……ある人にそう言われたらね、今更辞める理由もないな、と。」

自分ためだけの理由は、気づけば誰かのための理由にもなった。
たった一言、些細な友人の一言による気付きだ。
だから、と少年は柔く、照れくさそうにはにかんだ。

「だから、辞める理由はない。まぁ、意地はあるかもしれない。
 男だからね。そういうの抜きにしても、僕なりに今はそうしたいだけ。」

「まぁ、その、なんだろ。万一の事があったら、ごめんなんだけどさ。」

イヴ >  
とても美味しいを提供してくれた容器を少し名残惜しげにくずかごへ。

それから、橘壱の離す言葉を狐の少年はにこにことしながら聞いていた。
なぜ常世の島へとやってきたのか。
なぜAFに自分が乗っているのか。

それから、次第に考えが変わっていったこと。
新たに生まれた思いや、抱いた気持ちのこと。

「──うん」

全部を聞き終えて、子狐は大きく頷いて。

「まだまだ子どものボクが言っても、かもしれないけど。
 壱お兄ちゃんは前までよりも今のほうが好きだな~♪」

自分に一杯かまってくれるようになったし、一杯お話をしてくれるようにもなった。

「だったらボクにとっては、良い変化だったってことだよね?
 そういうことなら、心配なのは心配だけど…ちゃんと応援できるよ!」

ぱっと明るい笑みを浮かべて尻尾を嬉しげにぱたぱたさせて。

橘壱 >  
大きく頷いて笑う小狐には、嬉しい事だったらしい。
変なふうに受け取られなくて十二分だ。
言っといて何だが照れくさくなってきた。
ちょっと俯き気味に自身の後頭部を掻いた。

「……よしてくれ。確かに当時の僕はまぁ……余りいいとは言えなかったな。」

周りを蹴落とし、一番に固執し戦いを欲する。
今でも一番を目指し、戦いには自ら赴いている。
醜い嫉妬心を丸出しにした自分。軽い黒歴史だ。
ちょっと苦い表情をしつつも顔を上げ、目線を合わせる。

「あのなぁ、別に好いてくれるのは勝手だけど
 あんまりシラフで言うようなことじゃないよな……。」

その顔面でわかってていってるのか。
布団の中に入るといい、この小狐本当にやってる
まったく、と思いながらも小さく頷いた。

「僕だって死にたいわけじゃないし、やりたいことは多いんだ。
 応援してくれるファンが目の前にいるんだし、ね。」

「……そう言えばそういうイヴはなんで常世学園(ココ)に?」

自分ばかりの話をしててもしょうがない。
こういう機会だ。ルームメイトの話も聞きたい。
思えば、彼のことを深く知っているわけではない。
この際だ、とおずおずと訪ねてみた。

イヴ >  
「ふふ。前の壱お兄ちゃんもちょっとツンツンしてて可愛かったけど」

にこにこ。
屈託のない笑顔で言うにはなんだかな言葉。

「どうして?好きなものは好きだよ♪
 お酒はまだ、ママに飲むの許してもらってないし」

悪気も打算もない無邪気。
なんだか居辛い雰囲気を出しているルームメイトがむしろ不思議。
そんな雰囲気。

「そういえばあんまりボクのことって話したことなかったかも…。
 ボク、ずっと家族と一緒に過ごしてて、外の世界を知らなかったんだよ。
 学校っていうのにお姉ちゃん達が通ってお話だけは聞いてたから、羨ましくなっちゃって」

それでお許しをもらって島へとやってきた、その旨を離す。

「楽しそうなところだなあ、って思ったから。
 ママからもちょっとだけ離れて生活して。不安だったけどルームメイトの皆が優しくて良かったなーって思う!」

つまりは、お勉強のため。
外の世界や常識、人間の世界の倫理。
往々にしてルームメイトも思っていただろう、独特な倫理観を持っているこの子狐。
要は、そういったものをまだまだ学習中…ということなのだった。

「だから、これからも宜しくね?
 いきなりいなくなっちゃイヤだよー?♡」

橘壱 >  
「……お前は僕をどんな目で見ているんだよ……。」

どういう感情で返せばいいんだ、可愛いって。
流石の少年もうへぇ、と口元への字。
そんな顔で言う辺りがこう、良くない。実に。

「…………。」

それを含めて、彼の無邪気さなんだろう。
この小狐はそういうところがある。
子どもの無邪気さ。いい意味でも悪い意味でもモノを知らない。
そして、独自の感性を持っている。それに助けられる事もある。
同時に、困惑することも。そんな彼の身の上話。

「外の世界……っていうと、もしかして異邦人?
 まぁ見た目狐の獣人だし不思議じゃないけどさ。
 要するに、学校体験してみたくて、勉強のため、か。思ったより真っ当だな。」

意外性はない、というより本来の目的である。
学園、ないし学校という学び舎はそういうものだ。
結構ワケアリが多い中では、逆に珍しいのかも知れない。

「その、ママとかお姉さんっていうのもどんな人?
 家族ってことはやっぱり同じように狐な感じ?
 ていうか、イヴって獣人……とは、ちょっと違うのか?」

ただの獣人の類よりはもっとこう、純粋というか。
何だか雰囲気は違う気もする。
うーん、とみながらじーっと可愛い顔を凝視。

「約束……までは出来ないけど、努力はするよ。」

戦う以上、付きまとうものだ。
だから、出来ない約束はしない。
せめて、そうならない努力を重ねるだけだ。

イヴ >  
「優しいけど不器用なルームメイトのお兄ちゃん」

「だったのは過去の話で今は優しくて一杯構ってくれるお兄ちゃんかな♪」

うへーな顔もなんのその。
毒気抜かれる笑顔を向けての素直な言葉。

「うーん?異邦人になるのかな…。
 仙人とかって知ってる?ママは"しんかく"っていうのを得た狐さんで、
 ボクのお姉ちゃん達もみんなボクと同じで狐の耳と尻尾があるよ」

神狐。伝承や伝説の中の存在であり、神格を得た妖仙。同じ世界にあっても、住む場所の違う存在。
それでも怪異が当たり前に存在するこの島では遠い存在というわけでもなく。
異世界よりも極めて近い、そんな不可思議な隣人といえよう。

「努力は実らせないと意味がないんだよー、だからちゃんと約束して約束!」

簡単に言ってくれる、と思うかも知れないが。
そういった制約は時に最後に振り絞る力として残るものに変わることもある。
無論、無邪気な子狐のことそこまで思慮深くはないだろうけれど。

橘壱 >  
「別に優しいわけじゃないよ。
 僕がされたことを人にしてるだけさ。」

或いは、此れが本来の少年の姿だ。
けど、それを認めようとはしない。
そこまで自分をいい人間だとは思っていないからだ。
他人にされた優しさを分け与えられる善性は持っていると言うのに。
シラフで歯が浮くような顔には流石に顔をしかめた。
何だか口説かれてる気分になってきたよ。

「……神格?そんなに高貴な感じなのか、キミは……。
 ってことは、お母さんは何かもっと神様的な?
 まぁ、今時先祖や両親とかが神ってのも珍しくはないか……。」

昨今、というよりこの世界ではそういう存在も当たり前になってきた。
神秘や幻想はいつしか隣人のような存在になり
技術はそれに肉薄するような世界だ。
少年の反応としては、若者としては真っ当である。
それにしても、思ったよりも神聖的な出生で驚きだ。
目をパチクリと瞬きしながら興味津々だ。

「まぁ、前の家族の話もそうだし、愛される理由がなんとなくわかったよ。
 イヴがいい子になるくらいだし、キミの家族もきっと……えっ……。」

まさか食い下がってくるとは思わなかった。
面を食らった顔をしながらちょっと言葉に詰まる。

「……因みに約束しなかったり、破った場合は???」

イヴ >  
それが出来るのも、優しいっていうことなんだけどなあ。
そうは思った子狐。
でも認めそうもない、そういうところはなんだかかわいい。
あえて口にはせずに、にこにこ、笑顔のまま言葉を聴く。

「高貴…こうき?
 うーん、ボクにはふつーの優しいママだからあんまりわかんない。
 でもボクが此処に来れたのもママの力で、だから…きっと凄いんだよね」

自分の母狐が凄い、
ということなので、ちょっと自慢げ。
こういった自制、だからこそ境界はあやふやになり、
より来やすくなった…などはあるのだろうけれど。

「約束しなかったり、やぶったり……」

言葉を反芻すう子狐。
さては、というか普通に考えてなかったのが見え見えである。

「壱お兄ちゃんは約束してくれるし、破らないから考える必要ないね♪」

にっこり。

橘壱 >  
「凄いんだな、イヴのお母さん。
 なんであれ、イブに会えたことには感謝しないとな。
 ……何時か、キミのご家族に挨拶出来たらいいんだけど。」

世話になってる例くらい身内にしたいという律儀さ。
しかし、そこまでしてもらえる家族は、やはり何処か羨ましささえ感じる。
いや、やめておこう。こんな感情は覚えておく必要はない。
軽く首を振れば、どうしようかなと困り顔。
約束を破らないと来たか。笑顔が眩しい。
純粋さも此処まで来ると困りものだ。
どうしたものか、と思考を巡らせているとふと思いつく。
せっかくだ、人を困らせるなら仕返しと行こう。
ふ、と笑みを浮かべればそうだな、と頷いた。

「そこまで言うなら約束するよ。
 努力に関しては、その通りだと思うし……ただ……。」

そ、と手を伸ばした。
柔からな頬を撫で、くいっと小狐の顎を上げる。
ずぃ、と顔を近づけて不敵な表情だ。

「──────入院って暇なんだ。"何時もみたい"に寝てく?」

囁く。
その吐息が掛かるように、言ってやる。

イヴ >  
「ふふー、凄くて優しくて素敵なママだよー♡」

お世話になってるお兄ちゃんが挨拶にきたら、
きっと満面の笑みで歓迎してくれるに違いない。
美味しいお茶を出して、お菓子でおもてなしして。

「?」

小さく首を振る様子に不思議そうな顔。
狐は家族愛がとても強い。
子狐の持つ常識では、目の前の彼を取り巻く家庭事情は、とても想像もできないもの。
色々を話してくれた彼から、そんな現実があることもいずれははっきりと教えられることになるのか、それとも──。

───。

伸ばされる手、まだ子どもの細くて小さな顎が掬い上げられる。

「んぅ?」

丸くなる紅い瞳。
そして、顔が近づけば──。

「──。病院で、なんて、ボクはじめてだけど…」

「い、壱お兄ちゃんがどうしても…って言うなら、ボクはイイよ…♡」

細められた紅い瞳に揺れる妙に妖しげな雰囲気。
朱が差し蒸気した頬。

踏み越えてはイケナイ一線が、超スピードでやってきた。

橘壱 >  
「───────……。」

「ふんっ!」

ごちん、軽く、かるぅく額で小突いてやった。
何を"その気"になっているのやら。
生憎(※彼は性的対象ではあるの)だが、そうそう超えるつもりもない、
そもそもそういう事をするほど爛れてもいない。
というか、家族の話ししといていきなり手を出すの実際やばい奴だ。
これじゃあ、挨拶しに行くの意味が変わってしまうじゃないか。

「何想像してるんだエロ狐。
 本当にしたいならその気にさせてみろ。」

それこそしてやったりといった顔だ。
生憎と急ブレーキの踏み方のが得意だった。
因みにこんな事を言っているかコイツは童貞である。あしからず。

「でもまぁ、暇なのは事実だからね。
 何時もみたいに布団に入って来てくれる分にはいいけどね。」

実際まだ傷は治りかけ。
色々言ったがこういうのは起きてるだけでもまぁまぁ疲れるものだ。
は、と力なく吐息を吐き出せばそのままベットに体を預けた。
やはりまだ、腹が痛む。早く完治してほしいものだ。
腹を抑えながら、なるべく表情には出さないように。
余計な心配をかけるほうが、自分としては嫌だから。

イヴ >  
「いたーーーーーー!!?」

喚いてから、病院だということを思い出してお口を手で塞ぐ子狐。軽く涙目である。

「むー…壱お兄ちゃんがそういう感じのことしてきたくせに~…いくじなし(?)」

むすー、さすがにちょっとだけ口を尖らせて。

「むん。元気なのはよくわかったから今日はしない~!
 でも寂しいから、早く退院してきてよね!」

立ち上がり、ものすごく丁寧に椅子を折りたたんで壁に立てかける。マメである。

「ちゃんと寝てしっかり直さないとダメだよ。またね!」

妙に看破したような、そんな言葉を残して。
面接時間もギリギリだったかもしれない。元気に手を振って。
部屋からの去り際、ちらっと扉の隙間から顔を覗かせて、ひらひら、手を振って、子狐は病室を後にした。

橘壱 >  
「は???意気地なしじゃなくてちゃんと出来るが???」

元ゲームチャンプ、煽りに弱い。
だが腐っても怪我人。
身を乗り出そうとしたが傷がいたんだので起き上がらなかった。
クソ、傷がなければちょっとわからせてやったのに。
はぁー、と溜息を吐けば額に腕を置いた。

「わかってるよ、イヴ。
 それじゃあ、また今度な。」

視線だけちらりと送って、溜息一つ。

「……いや、そうだな……。」

色々貰った。いや、貰ってばかりだ。
この島に来てから、色んな人に貰っている。
今までの自分に与えられなかったものを与えられている。
せめて、その恩義には報いなければいけない。
ゆっくりと瞳を閉じれば、意識は静かに落ちていった。

ご案内:「医療施設群 委員会用病棟」からイヴさんが去りました。
ご案内:「医療施設群 委員会用病棟」から橘壱さんが去りました。