2024/09/19 のログ
ご案内:「医療施設群 医療研究施設」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 >
落第街で斃れた後、当たり前だけど病院へと連れて行かれて。
今、いる場所は此処…医療研究施設。
というのも、いわゆる怪我とか外傷が問題じゃなかったため。
「はぁ……」
また皆に迷惑かけちゃった。
そんな深い溜息。
メディカルチェックの結果が出るまでは少し暇で…色々なことを考えてしまう。
考えないほうがいいことまで、色々と。
■伊都波 凛霞 >
自分の周りにいる皆は優しいから、気にしないでいいよと言って笑ってくれるし、心配もしてくれるけど…。
それを嬉しいと思う反面……孤独に逃げ続けてる彼女を思い、胸が苦しくなる。
ドクターが言うには異能での脳の酷使が原因で倒れたとのこと。
十中八九そうだろうな、とは思ってたけど。要するにスーパーでアルティメットな知恵熱ってこと。
当然、言い渡されたのは。
『今後少なくとも一ヶ月は異能の使用を控えて脳を休ませるように』
うーん、ダイレクトに仕事に支障が出るお達し。
■伊都波 凛霞 >
一般の人間よりも遥かに優れた記憶領域と処理能力、そして伝達速度。
それらがサイコメトリーという異能を実用可能にしている…らしい。
酷使しすぎれば負荷がかかって、熱暴走……最終的には、壊れる。コンピュータと同じ理屈。
壊れる一歩手前だったと考えると、ゾッとする。
──とはいえ感情的になるとぱっと身体が先に動いちゃうのは悪癖で、
意識して直そうと、努めて冷静であろうとはしているんだけど、ここのところはボロボロだ。
距離が近い、どころか親友の話なのだから、努めて冷静にと思っていたけど。
唐突に鉢合わせてしまったものだから、冷静も何もなかった。
異能の使用を控えるように、という言葉にはハイと返答したものの……必要があったら使っちゃうんだろうなあ、とも。
■伊都波 凛霞 >
『結果がでましたので、どうぞ』
「あっ、はい……」
呼ばれ、立ち上がる。
医療スタッフの声色や表情に特に慌てた様子も深刻な様子もなかったし、
念の為と精密家検査を受けさせられたけど心配はなさそうだ。
一ヶ月かぁ。……長すぎる。
まだ少しずきりと痛む頭でそんなことを考えながら、施設の一部屋へと。
ご案内:「医療施設群 医療研究施設」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「医療施設群 中庭」に追影切人さんが現れました。
■追影切人 > 委員会病棟にある”特別”個室から密かに抜け出し、現在男は病院の中庭の一角に居た。
「……なぁにが特別個室だっての。…隔離部屋一歩手前じゃねぇかクソが。」
風紀の一員ではあるが、同時に最高位の監視対象である男への措置なのだろう。
――同時に、風紀の同僚を無差別に”斬り殺そうとした”疑いも掛かっているので、懲罰房も兼ねているのか。
実際、何度か風紀の同僚達に事情聴取をされたりもしたが、結果だけ言うなら『弟切夏輝には逃亡された』――それが全てだ。
「……チっ。」
無意識に舌打ちを零す。イラついている…と、いうより行き場のない”何か”が渦巻いている不快感。
感情的に見えて割とドライで淡々としている男が、こういう態度を取るのは意外と珍しい。
ご案内:「医療施設群 中庭」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 >
「一ヶ月……」
はぁ…と溜息を吐きながら中庭を散歩する少女が一人。
先日落第街で異能を酷使した影響で、向こう一ヶ月は異能の使用を禁じられた。
ついでに、右脚の銃創の具合も観てもらい…今は薬の処方の待ち時間である。
それは、たまたま。
はた、と…よく知る顔をばったり出会う。
本来なら"今は"会わないほうが良い二人…だったかもしれないが。
こういう偶然は、まま起こってしまうもの。
「──あ…」
思わず、そんな間の抜けた声でじっと彼の顔を見てしまった───。
■追影切人 > 病院を抜け出したとはいえ、男の容態は無傷の左腕を除き残りの四肢全てに怪我を負っている。
特に右腕と右足が重傷で、包帯やギプスや三角巾など、体の右半分がかなり不自由な状態だ。
そんな状態の男が、中庭の一角にあるベンチで黄昏てるのかぼやいているのか、よく分からない光景。
「―――あン?」
視線を感じたのか、隻眼が胡乱げにそちらに顔を向ける。
…一瞬、ほんの一瞬だがピタリ、と男の動きが完全に静止した。よりによって”今”か。
偶然というものは何時でも誰にでも有り得るが、このタイミングは流石にどうかと思う。
「……よぅ…。」
若干、何とも言えない間を置いてから無傷の左手を軽く挙げて微妙にぎこちない挨拶を。
正直、コイツやレイチェル辺りとはあまり今は顔を合わせたくなかったが…。
■伊都波 凛霞 >
──件の抹殺指令が下ってから向こう、意識的に連絡は断っていた。
監視役の自分を通さず彼に命令が下ること自体は珍しくない。
…でも、まったく何も知らされなかったのは今回が初めて。
それだけ、自分と抹殺対象の関係性は知られているし、関わらせないほうが良いと判断されてる。
知ったら、彼の仕事の障害になる可能性は…自分でも高かっただろうと思うから、そこには納得する。
それだけに…顔を合わせてしまったのが気不味い。
「こんにちわ」
にこり、笑顔で挨拶。
手元にドーナツの差し入れもなしに二人が会うのは珍しい…というか初めてかも。
笑顔を浮かべてみたものの…彼の姿を見れば、すぐに眉は下がり瞳は細められてしまう。
………ひどい怪我。
「…身体の調子、どう? …なんて、聞くまでもなさそう」
勿論委員会に共有されている報告書には目を通しているし、一応の第三者的な顛末も把握している。
抹殺指令の遂行には失敗…逃がした上に、重傷を負わされる結果。
本来なら、監視役は何をしているんだと責任を追求される立場…でも、それも今回は特別だ。
意図的に報されなかったために…その責任を問われることはなかった。
「……ひどいよね」
「私達とあの子のコト知ってて、追影くんにそんな命令下したのかな」
──彼への命令権を持つ人間の素性や性格までを詳しく識るわけじゃない。
……でも、全く知らないとは思えなかったから。…つい、苦笑を浮かべながらそんな言葉がでてしまった。
■追影切人 > 今回はある意味で特例だ。この男は監視対象という事で、”上”から特殊な命令系統が下る事が多い。
――だが、今回は何時もの命令する者ではなく代理が絡んできた。
…それだけ、【弟切夏輝】という逃亡者を抹殺したいのだろう。逮捕は生温いとばかりに。
だからこそ、この男の監督役でもある彼女には男の動きは一切知らされてはいないだろう。
――結果、彼女は生き延びた――そして男も生き延びた。
だが、それが良い結果とは限らない。
「…どうもこうも見ての通りだっての。…あのアマ、手負いの癖に相変わらず無駄に動きが良かったからな。」
そもそも、射撃主体の相手とは正直相性はよろしくないのもあるが。
怪我については、このくらい”珍しくは無い”ので特に気にもしていない。
…あぁ、いや。体が不自由なのはやっぱり面倒臭いが。病室を抜け出すのも一苦労だ。
「…オマエやレイチェルは兎も角、俺とあの馬鹿はどちらかといえば犬猿の仲って感じだがな…。」
ふと、アイツと対峙した時と同じく2年前のオフィスでの何気ない会話を思い出した。
…そして、逃亡される直前の会話も。…無意識に眉間に皺が寄る。…くだらねぇ。
「――どのみち、俺に拒否権はねぇし斬れと言われたら斬るまでだ。」
手駒であり都合の良い、使い捨ての飼い狗。今回は命令系統が何時もと違ったとはいえそこは変わらない。
――故に、今回始末し損ねた彼の末路は自ずと決まってくる。彼女に責は無い。
(遅かれ早かれ”処分”されるとは思っちゃいたがな…。)
勿論、まだ正式に処分されると通達された訳でもないが。
少なくとも、今回の”代理”野郎はどうも俺もアイツも殺したいらしい。
■伊都波 凛霞 >
ぴ、ぴ、ぴ…と、指差す。
彼の…怪我をした"箇所"
彼女…弟切夏輝は自分と鉢合わせた時も…脚にしか狙いをつけなかった。
一方で…逃げるため人質にした見ず知らずの風紀委員には…胴体を狙い即死しない程度の致命傷を負わせた…。
「……本来、夏輝なら即死を狙える。彼女の銃の腕はレイチェルさん仕込みだもの、容易い筈」
「"犬猿の仲"…なんていうけど」
彼女が、彼を特別に見ていることは明らか。
「それはやっぱり、"特別な仲"なんだよ」
満面の笑み…とは癒えないけれど、笑顔を作って彼に向ける。
彼にもきっと思うところがあった…自分の中ではそう、大きくなくとも。
「でも…私の知ってる"凶刃"の腕前なら、彼女を逃すことなんてなかったとも思う」
「───…お互い、二の足を踏んだんでしょ?」
それは本人達にとっても意外だったのか、やっぱり、だったのかは…判らないけど。
…立場的に、彼はそれを認めるわけにはいかないのだろうけど。
「…今回、私やレイチェルさん、刑事課の皆で少し上に掛け合ったんだ。
返答は…保留だったけど…その間に君に命令が降りた……」
「どうも、そういうのが気に入らないヒトがいるみたい」
彼の命令についても、そうだろう。
そう言葉にすると、視線を中庭の地面へと落とす…。
夏の終わり、影はまだまだ真黒く、胸中に感じている闇を映している様にも感じた…。
「処分の話とか…まだ来てないよね?」
それから向け直すのは、真っ直ぐな眼。
監視役としてそこには絶対に意見する…そんな強い光を鈍色の瞳に宿している。
■追影切人 > 実際、致命傷となる心臓や頭部などの急所はほぼ狙われてはいない。
あくまで、こちらの動きを”止める”ような立ち回り…即死を狙わずそうする”理由”。
「――だろうな。…手負いの癖に”知ってる顔”だからどっかで手加減してたんだろ…舐めやがって。」
本気で不快そうに呟く。更に、凛霞に犬猿の仲も、それはそれで特別だと指摘されてまた不満げ。
笑顔を浮かべている凛霞をじろっと隻眼で睨むが…直ぐに目を閉じて溜息を吐いた。
「アホらしい、なぁにが特別だよ…んな面倒臭ぇ仲なんて絶対に御免―――…。」
だが、続く彼女の言葉にピタリ、と口が止まる。
図星だったのか、それとも虎の尾だったのか。能面のような無表情で彼女を見る。
お互いに二の足を踏んだ?……最後の一撃のやり取りを思い返す。
確実にアイツを斬殺する為に繰り出した唯一の技。刃の冴えも何もかも問題無い…筈だった。
けれど、何故か”急所を外れた”…斬り殺し損ねてしまった。完全に無意識の領分で。
「――だから面倒臭ぇんだよ…。」
感情とか感傷とかってのは、それで刃が無意識にでも鈍るとか恥で屈辱だ。
ややあって、軽く息を吐いて能面じみた表情から何時ものぶっきらぼうな彼の調子に戻る。
「――”今はまだ”来てねぇな。…ハッ、お前ら刑事課を差し置いて俺みたいな駒に始末させようとしてんだ。
…どうせ、まだクソな事を考えてんだろうよ、”上”のどっかの馬鹿は。」
”上”の連中。――法を正義と絶対視する一部の過激な連中の”誰か”が。
真っすぐな彼女の瞳を隻眼で静かに見返す。…その瞳に映る感情は無い。
――男にとって、今死のうが後に死のうが何も変わらないのだ。
諦観とか達観を通り越して、男は己の生き死ににそもそも頓着していない。
■伊都波 凛霞 >
「───……」
彼、は。
まさに"刃"、触れれば傷つける。"ただ斬る"…それだけの存在。
自分が監視役になった時に、そう聞いた。
監視役としてどう付き合おうか…。
そう考えた当時の私は…『彼を普通の生徒と変わらない"人間"』として接した。
面倒くせえ仲なんてゴメンだ、と。
そう吐き捨てる彼の中には、決して唯の刃ではない"何か"が在る。
……それが元から在ったものなのか、彼に生まれたモノなのかは…私には理解らない。
「そうだね、"凶刃"…としては失格、"上"の人にとっては失望だったのかもしれない…」
「でも」
「私は、追影くんが夏輝を"斬れなかった"ことは…嬉しかったよ?」
彼にとっても不本意であったのは、わかってる。
なぜそうなったのか理解できていないのも、それが余計に面倒だと吐き捨てているのも。
それでも、報告を聞いて、報告書を読んで…良かったと、胸を撫で下ろした。
……だからこそ、彼への処遇は正直、不安が募る。
「私はキミの監視担当…、今回の件の事後のキミの様子や今回の失敗の要因なんかも報告する義務がある。
でも今回指令を下した人は……私が何を書いたところで無視しそうな感じもするなぁ……」
ふぅ、と言い切ってからやるせないように溜息を吐いて…。
「私は夏輝は勿論、追影くんにもいなくなって欲しくない…。
もちろん、私の勝手な希望で自分勝手な言い分ではあるけど…、
でも、死んだらもうドーナツ差し入れする相手がいなくなっちゃう」
──そんな言い方をしつつも、本質は──情がある。それに尽きる。
「追影くんは私が急にいなくなっても平気だったりするの?寂しいとか、ない?」
…どんな答えを望んでいるのか、唐突にそんなことを、表情を伺うようにして聞いてくるのだった。
■追影切人 > 誰にどんな想いや感情を抱こうが、最後は必ず斬る事に全て帰結する。
それが、生まれ落ちた瞬間から今までずっと続いている絶えず消えない彼の業だ。
――確かに男は生物的には人間で、喜怒哀楽はあるし、昔と比べて人間味も増えてきた。
――だけど、それはそれとして男は本質的には『刃』なのだ。錆びても刃毀れしても。
だから――最後は斬る。誰であろうと何であろうと。敵だろうが味方だろうが中立だろうが無関係だろうが。
…芽生えた何かも、今はまだ彼の本質を妨げるものにはならない。相変わらず男は男のままだ。
「――あぁ、そうだな…オマエならそう言うと思ったよ。」
嬉しかった、良かった、あぁ…簡単に予想も想像も出来たとも。俺みたいなのでも。
…全く。何の因果でコイツみたいな”真っ当”な奴が俺みたいな奴の監督役を引き受けたのか。
未だに理解に苦しむし、理解したいとも思わない。
――あぁ、だけど。まぁ、”思う所”はある…少しだけ。
「――ハッ、ドーナツはまぁちょいと惜しいが…俺にどうこう言う権利も何もねーよ。」
それが監視対象――それが数人しか認定されていない第一級。破綻者共の集まりだ。
「――あぁ?…”人でなし”がいちいち誰かの心配なんかするかよ馬鹿らしい。」
問答無用、呆れたように斬り捨てるような言葉。表情もウンザリしたものだ。
―――だけど。
「――ただ、何処に消えようが必ず探し出してぶった斬ってやるけどな。」
なんて、付け足した言葉の意味は男も分かっていないだろうけど。
つまり、彼女が消えても必ず探し出すという意志の捻くれた発露だろう。
■伊都波 凛霞 >
"お前ならそう言うと思った"
そんな返しに妙にニコニコとした笑顔を浮かべはじめる少女。
……どうやら自分のことをちゃんと理解られてるのが相当に嬉しいらしい。
「ドーナツは惜しいんだ‥…」
ちょっと微笑ましい、そんてこと言っちゃって。
権利がどうこう、なんて言葉には…気持ちはあるかもしれないということの裏返しにも聞こえる…。
認めないか、理解っていないかのどちらかだろうから、今は言わないけれど──。
「む…馬鹿らしいなんてそんな──」
全然馬鹿らしくないと思うけど…と思いつつ言葉にしようとした、矢先。
続いた言葉に思わず眼を丸くしてしまう。
「ええ…必ず探し出されて、斬られちゃうの…?」
苦笑。
なんだろうこの感じ。
こんなこと言う人だったんだ、と少しびっくり。
…それとも、こんなことを言うようになったのか……。
…相手からすれば、ぶった斬る宣言をしているのに妙に嬉しそうな表情を浮かべているように見えてしまう!
■追影切人 > 「…おい、テメェ何をニコニコしてやがる凛霞。」
そして、男はそういう機微とか感情のあれこれがサッパリな訳で。
気味悪い…なんて事は思わないが、何だコイツ?という感じで彼女を眺めており。
「――ああ、まぁ惜しくても最後は斬るけどな。」
結局そこに全て行き着いてしまう。彼女のお陰で好物となったものも当然”斬る”。
己の好悪より斬る事が優先されるのは、全てに置いて”斬る”事が彼の中で絶対的な基準だから。
「――あぁ?まずオマエが勝手に消えるタマじゃねぇから不覚を取ったって事だろ?
つまり失敗して他の連中に心配とか迷惑を掛けちまった訳だな?
…なら、探し出して仕置きにぶった斬っても文句言われる筋合いねぇだろ。」
――凄い無茶苦茶な意見が出た!が、男は本気でそう思っているらしい。顔がマジというか真顔である。
そもそも、彼女が簡単に斬られるタマでもないし彼女を斬り殺してしまっては色々駄目なのだが。
本当に、斬る事が優先されすぎて色々とおかしくなっているが、思う所はちゃんとあるのは確かだ。
■伊都波 凛霞 >
「え?ちゃんと私のこと理解ってくれてるんだなーって思うと、嬉しいもん」
聞かれれば平然とそう答えてしまうわけで。
なんだかんだで付き合いも長くなってきたからこそ、なのか。
言葉に機微なんてなくっても、それだけで十分うれしいのか、少女はニコニコと笑みを崩さない。
そう、そしてその付き合いの中で理解ってきたこともある。
彼にとって"斬る"とは全ての行動に追随するもの。
己の在り様を表す記号のようなものなのだ。
すべての行動は最終的に"斬る"に通ずる。
でもその過程には、人と同じものがあったりもする。
…彼をしっかりと理解する上では、重要なコト。
つまり今しがた出た無茶苦茶な意見も。
私が勝手に消えるようなやつじゃないと理解してる。
何かに不覚をとった、なんらかの事故だと判断する。
他の連中に心配や迷惑がかかることになるから探し出す。
そして仕置に斬る。
一番最後の結果に来る部分を除けば…ただの人の行動に他ならない。
「ふふ、そっか。探してくれるんだ」
だから、最後の斬る…というのは置いといて、その課程をありがたく思うのだ。
「私はキミの監視役を辞めるつもりもないし、
当然キミを簡単に処分なんてさせるつもりもないよ。
怪我をしっかりなおして、また風紀のお仕事に戻ってもらわないとね!」
自分も怪我はしているが、彼よりはよっぽど軽症。
ぱっちりウィンクをして胸を張って見せる。
"私の"監視対象をそう簡単に処分なんてさせるもんか。
■追影切人 > 「――止めろ、何かぞっとしてきた…。」
別に理解した訳でも何でもない、それなりに長い付き合いだから何となくなだけだ。
彼女のニコニコ顔と言葉に、ぞっとしてきた、なんて返せる奴は下手したらこの男くらいではなかろうか?
かなり酷い言い草ではあるが、彼女を理解している事が理解出来ないからそうもなる。
――そう、何処まで行っても”斬る”事はこの男からは切り離せない。
生きていても死んでしまっても、彼の中でそれは不変であり絶対たるもの。
――だけど、斬るまでの”過程”――そこに生じる意識的にしろ、無意識的にしろ抱くモノは確かにある。
…当然だ。破綻者だろうと血塗られていようと人間なのだから。無感情なんて事は無い。
――ただ、感情を認めたくないだけだ。それで刃の切れ味が鈍るのが嫌だから。
「――つーか、別に俺が探し回らないでも他の連中が勝手に必死こいて探すだろ。
オマエは俺みたいな”人でなし”と違って後輩共からは割と慕われてそうだし、先輩連中とか同級からも信頼されてんだろ。」
少なくとも、彼女の事をあからさまに悪く言う風紀の同僚に遭遇した事が無い。
…俺?俺はしょっちゅう陰口叩かれてる身だから何とも思わない。
「……警邏の仕事なんざ別に退屈だしやりてぇ訳じゃねぇんだがな……。」
と、ウンザリしたように返すが、意外と仕事は最低限ダラダラとであるがこなしている。
真面目なのか不真面目なのか、いまいちよく分からないが完全に放棄はしていない。
「…しかも俺の監視役辞めるつもりねぇのかよ…オマエ本当に物好きというか何というか……あぁ。」
改めて分かった。この女はこういう奴で…だから、周りが慕うし頼るんだろう。
何とも言えない表情を浮かべた後、無傷の左手でくしゃりと髪を掻いてから。
「――ま、そういう所がオマエらしいよな…。」
なんて、男は指摘されたらやっぱり否定するんだろうけど。
それでも、まるで伊都波凛霞という個人を彼なりに理解しているような端的な言葉を述べた。