2025/03/28 のログ
ご案内:「某医療研究施設 〇ロ号処置室」にネームレスさんが現れました。
ご案内:「某医療研究施設 〇ロ号処置室」に緋月さんが現れました。
ネームレス >  
手術台の上にひとりの女性が眠っている。
一見したその印象以上のものを、それ以上注視しないほうがいい。

よく見れば、その肉体は型だ。
人型(ヒトガタ)の、透明な、宇宙服のようにずんぐりとした四肢。
そこにはまた透明な液体が満たされている。

生身といえるものは、その中心に浮かぶ、臓器機械移植用の(ケース)におさめられた心臓と、
同じくしてその首を匣に保管され、断面を機械の円盤で封された頭部のみ。
それしか残っていない人間を、かろうじて人間の形の体裁を整えているような、そんな異常事態だった。
場所が場所だけに、この状況はむしろまだ希望があるほうなのかもしれない。
モニタリングされた脳波も心拍も、正常だった。
眠れる女性は生きている(死んでいない)のだ。こんな状態になっても、生かされていた。

「貴重な経験だ。人形(ゴーレム)を造るみたいなモンかな」

そこに在る帯同者ふたりは、外見があてにならぬ時代ではあるが医者としては年若い。
手術台を挟み、向き合うかたちは、見舞客という風情でもない。

「――さて緋月。再三の確認になるけれど。
 お勉強はもう十分?骨組みは、キミに任せようと思うんだケド」

つくりもののように整った顔は、夜の獣のように大きく見開いた瞳と挑戦的な笑みで、向かいにいる少女に問うた。

緋月 >  
「――実際、役に立つかは分かりませんけど、」

書生服姿に、襷をかけて作業感がばっちりのライトグレーの髪の少女。
今回は作業などの関係ゆえ、お洒落などないいつもの服装だ。
ぐ、と両手を握り、開き、また握る。

「頂いた資料を参考に、木彫りで練習のような事は繰り返しました。
幸い、時間の余裕があったので、充分形に出来る――と思います。」

ひと月以上前の事。
血の髪の人から預かった各種資料等々を見て、何を任せるつもりだったのかは凡そ理解が出来た。
その為に、空いている時間は木彫りで人の「骨組み」造りに没頭していた少女である。
最初に出来上がったものは聊か荒いというか、歪みが目立ったが、
其処から反省点を導き出して練習を兎に角繰り返し、今では時間さえかければ
首から下は骨格模型のような代物を作れるだけの腕と自信はついていた。

「まあ、まさか本当に木で作れ…なんて言わないでしょうけど。
それでも、「勉強」が無駄にはならないとは思ってます。」

ネームレス >  
「……服の刺繍もだケド、キミはわりとそこらへん才覚(センス)見せるよな」

不安な色を見せずに出来栄えを物語る彼女に、
ある程度の予測と信頼はあったとはいえ、あらためて感嘆を見せる。
創造性、という意味では詩作への通暁を否定する素振りは目立つものの、
ありものの再現や明確なモチーフの削り出しは得意であるらしい。

「きっと眼がイイんだろう。集中力(コンセントレーション)の質も上等。
 そのあたりは信じてお任せするよ。ボクひとりだと荷が重いし……」

視線は、すいと女性の寝顔に。盗み見ても嬉しくない状況だ。
自分と同様――あるいは自分以上に恩義があるらしい相手。
出来ること、報いられること、ひとりで背負い込んで事を成したらきっと不貞腐れよう。
不信ゆえと思われるのも、心外ではある。

「キミも、業腹ながらコレに認められているらしいしな。
 分担するのが合理的だ。今日はよろしく頼むよ、助手(ワトスン)くん。
 いっぱい役に立ってもらうから」

やおら寸胴の胸にあたる部分に手をかざすと、
型取りされた透明な素材を貫通して、満たされた液体に何かが落ちる。
とぷん、と重みで沈み込み、浮力でぷかりと心臓の近くに浮かび上がるもの――
球形に象られた星空。星の鍵――神山舟。

緋月 >  
「剣の道と集中は、ある意味切っても切れない繋がりがありますからね。」

軽い冗談(ジョーク)など口にしつつ、緊張を和らげる。
気を抜く事は出来ないが、必要以上に固くなっては繊細さが失われる。
何事も、均衡(バランス)が大事なもの。精神の持ち方も例外はなく。

「成程、「それ」を材料にするという事ですか。
であれば、削り出しに時間を取られる事もありませんね。
……後は、私の手先一つ、ですか。」

ワトソンとはいったい、と思いつつも、それは後回しにして置く。
彼の星の鍵は、確かに己も扱える。
しかも変幻自在。感触としては――粘土の方が近いだろうか。
それでも、木材相手に鑿と小刀で格闘していた経験が無駄になるとは思わない。

(――あなたにも頑張って貰いますね、朔。細やかな歪みの修正や測定、頼みます。)
《…言われるまでもない。問題が出たら我が注意を出す。集中して、手を動かすがいい、盟友よ。》

内なる友に声をかければ、準備は万全。
ふう、と大きく息を吐き、血のような瞳が鋭さを増す。
まさに戦場に立つような心構えだ。

ネームレス >  
「質感だけではなく材質もある程度なら変えられる。
 極めれば酸化還元反応(ほのお)放電現象(かみなり)にも――肉体の代替としてはうってつけだ。
 この時代においても、再生医療は高額で、なにより難易度が高い。
 お互い、肉体(カラダ)は大事にしないとな……?」

生体生成の魔術は得意なほうではないのだ。
そう肩を竦めて笑うなら、取り出したバンダナで前髪を上げる。
額を晒して結びつければ妨げるものはなにもない。

「……剣の道」

いざや、と指示を出す前に。
不意に彼女の言葉を反復した。

「まえから気になっていたコトがあるんだよな」

緋月 >  
「扱えるようになるまでが大変でしたが…よく考えれば、とんでもない特性ですよね、これ。
その分、形を固める為の想像が大事だし大変でしょうけど。」

相方…今回に限っていえば主治医、と言う方がうってつけだろうか。
そちらに倣い、自身も取り出した布で髪を纏め上げる。
事前に用意しておくよう、言われていたものだ。
最もこちらはバンダナではなく、三角巾であったが。

「気になる事、ですか?」

いざ作業開始――と思いきや、主治医から不意に出て来る言葉。
思わず目が丸くなる。

ネームレス >  
創造性(クリエイティブ)が試されるモノだ。
 手放すのが惜しいところはあるケド……持ってるとあとあと面倒になりそうだし。
 いろいろ落ち着いたら、少しずつ先生(ポーラ)の肉体も、別の部品に置き換えていくんじゃないかな」

星骸流出によって立派な事件になってしまった一連の騒動。
決して褒められた手段でなく作られたこの道具の核は、野に放って置くわけにはいかない。

「それに、ボクにはもう必要はないものだ」

役目を終え、試練を超えた。であれば、杖はもう要らない。
一度乗り越えたことを再現できぬようでは、それは成長とは呼ばない。
この存在はそうして、美しく咲こうとする。

「キミたちは……キミは、(アタマ)で考えて事を成しているのかなと」

剣を扱う。剣を振るう。剣で戦う――剣で斬る。
人間の動作は神経を通る信号であり、雷鳴の速度で肉体が駆動する。
それは脳――()から()でるものなのか、と。

これ見よがし、白く長い指が空中を撫でる。

「まずは、ここ…」

中指で襟を引っ張るようにして、人差し指が艶めかしく、己の首筋を撫でて見せる。

「首の骨……頚椎(けいつい)から胸椎(きょうつい)、そして腰椎(ようつい)へ。
 先生の骨の数は、覚えているよね。一個ずつ、縮尺を確かに造っていこう。
 自分を支え、全身に信号を送る脊髄(もの)が入る大事な部分だ。
 骨と骨をつなぐ椎間板は、ボクがつくるから」

脊髄反射、なんて言葉がある。
剣が脳より先に動いているなら、きっとそこからだ。
とても大事な器官。その器官すら、ポーラ・スーは取り上げられてしまっている。

緋月 >  
「……そうですね。惜しいと言えば惜しいですが、私の手にも正直余りそうな代物です。
手放すと決めたなら、一番後の役に立つ形で、ですか。」

とても他言出来ないやり方で創られた代物。
しかし、創られたもの自体に罪があるかと言われれば、それは難しい。
手放すと決めたなら、ただ手放すよりは、手放しても惜しくないと思える形で使ってしまうのは、成程、悪くない。

「――――また、こんな時に答えるのがむつかしい質問をしてきますね、あなたは。」

訊ねられた事を一言で返すのは…正直、難しい。
覚えた事は頭に入っているが、そこからいちいち引き出さねば振るえない技は、果たして修めたと言えるのか。

兎も角。今はその答えは先送りにして置く事にした。
指示が出たなら、手を動かす番だ。

「背骨、ですね。……中々、重大です。」

背骨を傷めて――結果、神経に負傷を負い、身体の一部が不随となったという話は、割と聞く。
最初から最後まで楽などない作業と覚悟はあったが、初手にして最も重大な作業に、
しかし書生服姿の少女は躊躇わず手を動かし、神山舟を取り出して形を創っていく。

《少しズレがある。其処の、そう――其処を――》
(……こう、ですか。)

独立した思考を持つ友人が居るのが、この時は有難い。
己の主観のみに留まらず、もうひとつの視点からの声がある。

普段は刃を振るう手は、今はひどく繊細な作業に。
星の鍵を、己が手の中で形を変え、整え、新たな形とする様は、粘土細工というよりは飴細工のそれに近い。
助かる点があるとすれば、高温の飴の形を整えるような苦痛が伴わない事と、
冷えれば固まってしまうという「制限時間」がない事であった。

ネームレス >  
液体のなかに沈められた神山舟が、数を変え、姿を変える。
生命が育まれていくように、役割(かたち)を与えられていく。
硬質な組織体は、そうして輪を備えた連続性を持つ姿を得ると、
星空の色を、光沢のない象牙色へと塗りかわった。

ひとつそうして削り出されるたびに、
クッションとなる椎間板も同様の素材から創り出される。
集中しているがゆえに、時間は遅く感じるか、それとも速く感じるか。

ひとたび無言の時がくると、みずからの片割れと意を交わす彼女に対し――
こちらは唇を閉じたまま無言だ。じっとりと滲む汗が、次第に顎を伝い、胸へぽたりと落ちた。

同時に行っている、脊髄の生成――
脳から続く、人間の中枢を担う器官を編むことがこちらの役割。
かたちを削り出す彼女に、なかみをつくりだす己にと、
ふたつの視点でもって、擬似的で、かつ極めて本物と相似した人骨と髄が液体のなかに生まれる。

「………………、はぁっ……医療従事者のミナサマにはアタマが下がるな、ホント」

ひとりで行えば、どれほどの時間になったろう。単純な倍では効くまい。
そうして創り上げられた、首から伸びる30に迫る数の骨が連なった、一本の中核がつくりおわるころ、
思い出したかのように息を吐いた。

「動かしてみて」

首から一本の管がつながった、食べ終えた魚みたいな状態になってしまってはいるけれど。
それでもさっきに比べれば、いくらか人間に近づいた有り様。
背骨は、(ふし)だ。椎間板と骨の相互配置、そして脊髄がうまくいっているか。
同じく神山舟の所有者である彼女に、生まれた脊髄を動かしてみてくれと、
汗をにじませながらも、まだ疲れが浮かんでいない顔で頼んだ。

緋月 >  
頸椎、完了。
胸椎、完了。
腰椎、作業中。あと半数――。

ひとつの脊椎を作るだけで、随分と時間がかかるような気がする。
実際は然程の時間も経っていないのだろうが、集中力が極度に高まった状態の少女には
体感時間が普段のそれより、そして実際の時間の流れより、大きく、遅く感じられる。

(…………。)

主治医を務める麗人と同じく、少女の額にもじわりと汗の玉が浮かび、頬を伝って顎から落ちる。
形が定まった星空の色は、学園で見た事のある骨格標本のような色と質感へ。

(――――これは、奇跡だ。)

そんな事を、僅かな休みの合間に少しだけ考えてしまう。
小さな骨がいくつも連なる「それ」が、人の身体を動かす為の重大な役割を果たす器官。
それが働くからこそ、人の身体は「当たり前」のように動き、歩き、運動が出来る。
掌で掴めてしまいそうな大きさの、骨の柱の集合体が、だ。

緻密に作られたそれは、「生き物が動く当たり前」を実現する要と言える。
そんな身体を持って生まれ、自由に動かせる事が、当然で――同時に「奇跡」だと。
預かった学習書から、嫌と言う程学んでいたが、実物を目にすると、更にその気持ちは大きい。

(――感謝を、忘れられませんね。)

身体は大切に。
当たり前のその言葉が、実はとても重い意味を持つと、今更ながらに思い知る。

そうして、声をかけられれば、1つ大きく息を吐き、

「――分かりました。」

人の背骨の形となった神山舟へ、「動く」ようにイメージを伝える。
普段、己が身体を動かすように。走り、剣を振るう――とまでは行かずとも、日常的な行動を。

――果たして、作られた脊椎は反応を見せる。
まるで、人が動くかのように、確かな――理想と言える反応と動きを。

ネームレス >  
「ボクらの体内(なか)にもあるんだぜ、コレ」

奇しくも、似たようなことを考えていたかもしれない。
屈曲し、どこか蛇を思わせる稼働を見ながら、
少し猫背になっていた腰を伸ばし、反らしてみる。
体のなかにある数十の節の背骨の駆動。幸いなことに健康だ。理想的なほど。

「……代替となる手段も。
 いまこの世界には、いくらでもあるケド」

欠けて生まれた部分はあろう。
それでも互い、肉体、四肢五体は十全だった。

「……スゴいよな」

人間は。
汗ばんだ手のひらに視線を落とし、五指を開閉する。
それだけで、どれほどの機能が同時に働いているものか。
少しだけ現在から遠くを視る黄金瞳が、なにを視ているかといえば、
この肉体を授けてくれた、遠い、もはや触れることも叶わぬ……家族の記憶(こと)

「ねえ、緋月」

声をかけたのはひとまずの休憩だとばかり。
立ち上がると、飲料水を供するサーバーのほうへと向かう。滅菌室ではなかった。
最も肝要な場所は作り終えた。しかし、四肢も決しておろそかにしていいものではない。
作業領域でいえば、まだまだ大半の面積が残っている。

緋月 >  
「……代替の手段があっても、生まれた時から、人は「これ」を自分の身体に持っている。」

問題なく動く脊椎の様子を見届け、大きく息を吐く。
考えた事は、正に今、血の髪の人が口に出した事だった。

「――すごい、ですよね。
何を言っても、今は、何だか…陳腐な言葉になりそうで。
それしか、言葉にならないです。」

今まで、自身が形を創り、友が細かい修正指示を出して、完成した、要となる器官。
それを成し遂げられたのも、他でもない、自身の身体の中に在る同じものなのだと考えると、不思議な気持ちだ。
人の身体は、それそのものが…ある種、奇跡にも思えて来る。

動いて、息をして、思考する。
その為に必要なものが、身体の中に全て詰まっているという事は。

「――えっ、ああ、はい。」

声をかけられれば、今までの集中の反動か、少し反応が遅れてしまう。
同時に、結構な疲労が――肉体的には兎も角、精神的にかなり来ている事が理解できる。

書生服姿の少女も、少し遅れて飲料水サーバーの方へ。
水を紙コップにそこそこ満たすと、軽く口を付け、口の中で温くするようにして少しずつ飲んでいく。
冷えた水を一気に口にすると、体調を崩しかねない事を知っている飲み方だった。

ネームレス >  
「………」

唇を濡らす。お腹を冷やすわけにもいかないので、こちらもちびちびと。
一気に干したい気持ちもある程度には渇いていた。
視線は横目に、疲弊の様子を視た。

「少し寝る? 仮眠室もあるってさ。
 ぶっ通しで最後までやろうとは考えてない。
 最高のパフォーマンスのためには休息も必要不可欠。
 ……ボクもちょっとシャワー浴びたくなってるし」

気遣う。必要以上のそれではない。最大の成果のために必要なこと。
汗ばんだ肌に張り付く髪。バンダナが吸ってくれているものもあるが。
想像以上の集中を要した。正直、手術着でも良かったかもしれない。

「人間がこうして生まれるまで。
 このかたちに成長するまで。
 ……進化するまで、すごく長い時間がかかってる。
 ひといきにやろうっていうのは、大変なコトなんだろうな」

大仕事だ。時間はかかるものだろう。

「あー、うん。それでさ。
 キミは今後(これから)どうするかって話。先生の目が覚めたら……ああ、
 臓器とか肉は、ちがうひとが別の技術でやるって話だから、
 桜が咲く頃になると思うんだケド……先生の目が覚めてさ。
 道具を使ったり、歩けるようになったあと、キミはこの件にどう関りたいかってコト」

護衛の仕事は全うし、少なくとも眼の前で行われた凶行、
それになにもできなかった――これを知っているのは朔との秘密ではあるが、
あれほど怒り狂っていた悔恨を取り戻せたなら、降りて日常に戻るという選択も当然あるだろう。
どうしたいか、を問う。常々のように。

緋月 >  
「そこまで用意が済んでいるんですか…。」

仮眠室まであるというのは、正直有難い。
このまま作業続行も充分考えていたので、休みを入れながら作業が出来るのはとても助かる。
思い切り集中していたせいか、頭がぼんやり熱を持ったように感じる。
最も、蓮華座開花を使った時に比べればずっと軽い症状だが。

「そうですね…集中も途切れてしまいましたし、眠れるなら寝たい気持ちです。
頭がぼうっとし過ぎてしまいそうなので、食事は…控えめがいいかも知れないですけど。」

一度眠る事を考えれば、軽い食事でも充分眠気が回りそうな疲労ではあるが。
今更だが、随分と汗を掻いた感じもある。
下着や肌着が、思い切り肌にくっついている感触。

「――確かに。人ひとりの身体を…今まで生きてきた時間を、創ろうって言うんです。
一気に作るのは…それは、無理がありますよね…。」

口の中の水を飲み干すと、はぁ、と大きく一息。
中々長丁場になりそうだ、という見立てと、続いてかけられた質問。
少し、考えてから口を開く。

「……そう、ですね。
この件が上手く進んで、先生の目が覚めて。
動けるようになったのなら――きっと、それで「おしまい」にする事も、出来なくは…ないんでしょうね。」

依頼の方は無事に…自分の髪と目の色が変わった位で…済ませ、今回の施術が万事完璧に終われば、
以前の怒りと悔恨は…埋め合わせる、とまではいかずとも、傷としては小さくはなるだろう。
そこで、「おしまい」にしても…文句は、言われない、かも知れない。

「――――――――前に、此処に先生の心臓を運んで来た時、」

唐突に、以前の話に戻る。
それはもう、昨年も末の事。

「子供みたいに、お願いしますしか言えなかった私に、「任せなさい」って言ってくれた「先生」がいたんですよね。」

関りとしては、本当に、それだけ。
だが、あの人のお陰で、今こうして、この作業が出来る状況には持って来られた。

「焔城先生――でしたっけ。
あれきり、会う機会もないですけど。

――もし、あの人がこの一連の件に関わるか、巻き込まれてるなら――あの時の恩をお返ししたい。」

後は、と言葉を継ぎ、

「…強いて挙げれば、前とあまり変わらないです。
「K」のお陰で迷惑させられた…なんて軽いレベルじゃないですね。
その分の「返済」位、してやりたい…そんな、子供みたいな理由です。」

本当に、子供っぽい、エゴ丸出しの…故に、真っ直ぐな理由。