2026/02/18 のログ
ご案内:「医療施設群 委員会用病棟」に牛丸 瑞璃さんが現れました。
牛丸 瑞璃 >  
清潔な白に囲まれた病室。
頭側を少しばかり上げた――所謂半座位の形になったベッドの上。
ガーゼに包帯にリブバンドに、と。
身体の至るところを修理中の壊れた人形は、壁の方をじっと見ていた。

壁に映し出されているのは、大昔に流行したホラー映画だ。
鉈を持った大男が、湖の側で女を追いかけ回している。

「しかし、流石に……こっぴどくやられたなぁ……」

常世学園の保健委員は優秀であるし、医療技術は国内でも有数のものだ。
故に、そう入院が長引くことはないと分かっているのだが。

「いざ動けないとなると、なぁ……」

クレープ1つのために頑張ったにしては、高くつき過ぎている。

ベッドの傍ら――小さな机の上には、友人達が置いて行ってくれたチョコレートがあるものの、
とても食べる気分にはなれなかった。

ご案内:「医療施設群 委員会用病棟」に麝香 廬山さんが現れました。
牛丸 瑞璃 >  
「あれからどうなってるかなぁ。
 カタストロアとか、風紀委員会とか……」

鉈をめちゃくちゃに振り回す男。
女が懸命にそれを避けている。
無駄に引き伸ばされたシーンで、もう2分くらい格闘している。
カメラアングルもイマイチだ。

机に置いたオモイカネに手を伸ばそうとし――

「お゛っ……!? お、おお……。
 いやぁ、こればっかりは経験しても慣れないね……」

――激痛に小さく悲鳴をあげながら、険しい顔でSNSアプリを開く。

『なんか商店街、最近やばくね?
 カタストロアと女の子がやり合ってたぞ』

『女の方、あれ「ばろっこ。」だろ。最近動画投稿ばっかになったけど、
 昔よく配信見てたなー。最近アスクレなんとかのチラシにも出てたし、
 なんか活動方針変えたんかな?』

『夜も、飲んでたらすげぇ音がしたからさ。
 見てみたら、吸血鬼みたいなねーちゃんと、男が戦ってんの。
 もう凄かったぜ』

商店街。吸血鬼。
すすす、とスワイプしていく先で気になるワードを見つけた瑞璃は、
少しだけ手を止めた。

「マジか。あたし達の他にも最近商店街でやり合ってた奴らが居たんだ。
 
 いやぁ、風紀委員会も大変だぁ……。
 しかし……ホラーとしては古典的だけど、
 吸血鬼……やっぱり好きなんだよなぁ」

そんなことを言いつつ、オモイカネのスワイプを再開していると――

麝香 廬山 >  
「────これって後でさぁ、窓から殺人鬼が突き落とされる奴だっけ?」

不意に聞こえた躊躇ないネタバレ。
扉を開けた音さえしなかったのに、男はいつの間にか其処にいた。
ベットの片割れで同じ端末を横目で見やる見た目は好青年。
同じ等級の監視対象の"嫌な男"だ。

「SNSも荒れてるねぇ。まぁ、あんだけ目に付けば当然かぁ。
 あ、お見舞いに来たよ。瑞璃ちゃん♪ いやぁ、派手にやったねぇ。折れた?」

さも当然のように、同居人のように廬山は振る舞う。
元医療関係者である以上、状態は火を見るより明らかだ。
しかし、お見舞いに来たというのは本当らしい。
ぷらぷらと見せつけるように、手には紙袋をぶら下げていた。

「今ならそこのチョコレート、あーんしてあげれるけど?」

牛丸 瑞璃 >  
「そうそう、よく知ってるねぇ。
 『キラーレイクの殺人鬼 1976年版』のオチは殺人鬼が突き落とされて終わり。
 またもファイナル・ガールの勝利ってわけだね。
 まぁ、そもそも1960年代辺りからこういう展開の映画が乱造されてねぇ」

ファイナル・ガール。
ホラー映画において、殺人鬼と対峙し、最後まで生き残る女性のことだ。
意識してか、無意識のものか。
青年が放った言葉は、寧ろ少女のホラーオタク心を刺激したらしい。

「……ま、そういう話はいっか。

 で、廬山クン?」

顔だけ青年の方を向けて、じとっとした目線を送る。

「キミ、元々医療関係者じゃなかったかな?
 リブバンドがあって、こうしてベッドに寝てるってことは、
 肋を持ってかれたってことだよ。
 ま、キミの場合は分かって言ってるんだろうけど」

肩を竦めるにも状態が悪く、壊れた人形は困ったようにため息だけ吐いた。
それくらいしかできないわけだ。

「ん~……NG!
 現場を見られて、『男との関係疑惑ー』とかで
 あたしのファンを傷つけたくないし、
 そもそも今、あんまり何か食べる気分じゃないからね」

麝香 廬山 >  
「そうかな?ボクはこういう話好きだけどなぁ。
 過程は大事だけど、"恐怖に打ち勝つ"と言うのは人間らしいと思うよ。
 未知を解明し、手に取り、御して切り拓く。医学にも似通ったものがあるし。」

「……まぁ、その時代の映画が退屈だって言うのは同意かな?」

乱造された粗品。
娯楽作品として見れば味気ない所か退屈だ。
当たり前のようにパイプ椅子に膝をつき、おどけたように肩を竦める。

「いやぁ~、長らく"現場"から離れていたからさ。
 それに、キミって意外と熱血漢……熱血乙女?何だね。
 四奈川 瑠夏ちゃん……だっけ?可愛いからファンも友人も多いんだねぇ。」

事の顛末は報告書で知っている。
実際に現場を見たわけじゃないが、救い手(アスクレピオス)として、
或いは人として怪物に立ち向かった。立派な所業だ。
偉い偉い、とわざとらしく送る拍手はからかっているようにも見える。

「切ちゃんといい、皆意外と立派なものだと思ってさ。
 どうやら、サボリ気味なのはボクだけみたいだ。
 いやぁ~、ボクも本当は人の役に立ちたいんだけどなぁ~。」

当たり前のように紙袋を棚に置き、頬杖をついて彼女を見やる。

「それで、どうだった?ファイナル・ガール。
 あの怪物と戦って生き残った気分は?」

牛丸 瑞璃 >  
「あたしは、怪物の方に肩入れしちゃうタイプだからね」

パイプ椅子に膝をつく様子。特に気にする様子はない。
そういうタイプの男だということを、瑞璃は理解しているつもりだった。
 
「熱血? それは違うなぁ、あたしはただ……借りを返しただけ。

 あとは……そうだねぇ。
 あたしみたいなのが社会に溶け込むには、
 それなりのヒトらしく振る舞わなきゃいけない時もあるの。
 だから、ファンも友人も大事にしてる。それだけかなぁ」

みなまで言うつもりはないらしい。手首の方を出して、黒い手枷を見せる。
見た目にはただのアクセサリーだが、監視対象が見れば分かるだろう。
それは異能制御装置にして、彼女の思考レベルを制限する装置だ。
それはかつて日常の裏で、
天才的な知能を活かし凶悪犯罪を繰り返していた彼女を、
可能な限り凡人の域に近づけるものだ。

勿論全てを抑えられている訳ではなく、
短期的な未来予測など、その能力の残滓は残っているのだが。

「ん~。難しい質問をするね、キミは。
 そうだなぁ、まぁ……やっぱり『悪くない』……かなぁ?
 友達にも怪物にも、まぁ借りは返したと思ってるしね。
 それに、意外とファイナルガールの視点も悪くなかったかも」