常世島北部には研究区として様々な研究所が密集している。
ここで行われる研究は多岐にわたり、名目としては異能・魔術・異世界などが現れたこの世界のために、それらを研究して世界との融和させることとしている。
その他の学問についても研究されており、この区域は他にも類を見ないアカデミックな場所となっている。
学園公立の研究所から私立の研究所まで様々であり、研究系の部活も研究施設などを利用することができる。研究者は教員・生徒など問わない。
とある公立の研究所では異能開発や人体実験めいたものも行われているとの噂もあり、謎の多い場所である。
※フリー設定ルームです。利用したい研究施設など思いつきましたら、部屋の設定を変えてご自由にどうぞ。このルーム説明文をそのまま貼り付けても構いません。
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Time:01:24:12 更新
ご案内:「魔術学会 新入会員向け第六説明会」からネームレスさんが去りました。
■ネームレス >
春。終わりと始まりの季節。
魔術学会の門は開かれている。
きっとそれぞれの、求めるかたちで。
■ネームレス >
「存分に、思うがままに、なにも抑えずして。
キミたちが如何にして自己を実現し、証明してみせてね。
隅っこからめっちゃ楽しみにしてるよ」
ここは公の実験場。世界の終端にして最先端。
「成し遂げたいことがある? ほしいものがある? 超えたい壁がある?
――なんだっていい」
焚きつけようという意図を隠そうともしない。
加速するもの、揺るがぬもの、地を踏みしめるもの。
各々の人生のために、この学会は、学園があるのならば。
「そのギラギラしてるのを大切にね。
……それじゃ解散」
赤い唇は三日月を描いて、
「キミたちの魔道に、試練の多からんことを」
そう結んだ。
■ネームレス >
「なにを問うまでもないしな」
薄っすら笑って、そう呟く。
デート一回分のバイト代で引き受けた雑事だったが、良いものをもらえた。
「……覚悟の決まりきってる顔ばっか」
誇る者はいない。
笑う者もいない。
自明。
■ネームレス >
この特異な教室のひとつに集った者たちは、漏れなくそうなのだろう。
アラステール・クロウ教授の薫陶を受けに、盗みに、奪いに集った者たち。
彼女が敷いた試練は、先ずこの説明会を見つけ出し、到達するコト。
その道程にて起こり得る諸々を乗り越えてきた者たち。
(んははは、やっば……)
学会に属するものとして、時折協会支部にも踏み入りながら奇人変人揃いであることは理解していたが、
いざやと学会員の卵たちにふれてみれば、それらとは違った熱量を感じていた。
おそらく、自分が音楽に、その道に傾けている情熱と近似したものだ。
だが、彼らのような存在こそが正解だ――などというわけではない。
こういう奴らもいる。そして、こういう奴らは否定されない。
あるいはすべてを受け入れて魔術学会は――この世界という枝は、すくすくと伸びていく。
変わりゆく世界が、止まることがないからこそ。
「……ボクは面接官でもなければ講師でもない。
ただの合否と連絡事項を伝えるためのメッセンジャーだ。
なにかを授けられるほどには先達でもないから、そろそろ失礼するよ。
出てきたのが教授じゃなくてガッカリしたろうケド、
ボクも拍手と歓声で迎えられなかったコトにガッカリしたからおあいこ、ってコトで……」
……大事なのは。
■ネームレス >
「――まァそれもそっか。
キミとか、キミに……隠してるケドキミも、ボロボロだね。
ここに来るまで何があったのやら。区内にも保健委員会の支部はあるから、診てもらいなよ。
あ、ソコはちゃーんと案内板にも載ってるから安心して?
女のコはボクが個別に診てあげなくもないから、後で連絡先を交換しよっか?」
――研究機関。
それは、与えられたカリキュラムをこなす場ではない。
何を学び、何を研いで、何を磨くか。
自ら定め、選び、突き詰める――道だ。
そして魔術学会そのものは開かれていたとて、
そこにある無数の研究室や教室は、そのすべてが開かれているわけではない。
無論、開かれている場所とそうでない場所とで、優劣や序列はない。
――それぞれの求めているものが、そこにあるかどうかの違いだ。
このように開かれていない教室を探し当て、みずからの師を、道を求める必要に迫られる者がいる。
――明確な目標を以て、魔術学会の門を叩く者。
神の御物でなく、秘するでなく、浪漫でなく、現実に根ざし始め、社会という機構に融和しつつある魔術に、
憧れではないなにかを求める、餓えた獣たち。
■ネームレス >
光が爆ぜる。
音が爆ぜる。
ぱぁん、という破裂音とともに、光の帯が、粒が、七色の色彩で講堂を舞い踊る。
登壇者の頭上に横断幕のように描かれるのは『Congratulations!』の文字が輝いていた。
光学魔術と音響魔術の並列発動――
秀でた魔術師は呼吸のように魔術を編み、指を動かすように精緻に操る。
「入ゼミ試験、第一関門合格おめでとうッ!
第六説明会場の存在を察知し、所在を発見し、無事にたどり着くことができた。
その探究心に野心、教授の教室ではそういうのを欲してるって話だからな。
追って連絡がいくはずだ。まあ素直な形じゃないだろうから気を抜くなよ――
ってオイ撃つなよ!その魔術もその銃も!柄から手を離してってば!イキリ勃ちすぎだろ……」
機械による制御なしで、派手な祝福を瞬間的に構築・発動して演出した魔術師に、
しかし反撃や牽制の術式や装備を向ける者が多く存在した。
コミックのように大げさな所作で腕をばたつかせ、それは暴挙を詫びるでもなく制している。
■ネームレス >
「……」
登壇者は、高い位置から声を投げられる――ということに若干、その顔を険しくしたものの、
続いて肩を竦め一息、ふにゃりと顔を脱力させた。
「北極大陸で異常な魔力磁場を発するオーロラが観測された話はみんな聴いたろ?
魔術日報の緊急生配信、この島の時間で朝方に、だ。
それを見てそりゃもう大慌てで、さっきの便で島を発ったよ。帰って来るのは再来週かな」
さらりと語られる放言に、流石にどよめきが講堂にあらわれはじめる。
「教授は、ゆくゆくは南極の調査に乗り出したいらしいケド――
さしものお歴々とて、まだそれが赦される段階じゃあないみたいだね。
ボクにとっちゃあそこへの興味は、まだペンギンがいるのかどうかくらいだケド……
まあそんなこんなで、ボクが代理として急遽登壇してるってワケ」
少年は静かに形式的な礼を述べて、憮然とした顔で肩を落とした。
「……フフ」
悲喜交交のなかで、その存在は白い両手を胸前で合わせた。
静謐。
「ともあれ、だ」
そのまま両の掌を天井に向けるように配し、
薄暗がりを真昼のように照らす、光が陣を綾なした――魔術式。
■ネームレス >
その時までは。
赤い唇から、気安い調子で囁かれた挨拶――音の波。
大声を張り上げたわけでもないのに、マイクを通さない声はしかし、数十人を収容する小講堂を呑み込んだ。
声音の美しさ、その鳴り。前へ声を届けるための、洗練され、その身に染み付いた技でもって成した業。
場を支配し、侵蝕する――魔術師のアプローチとしては、ごくありふれた、しかし基にして奥である極意。
しかしそれは、講堂の当惑や緊張――泰然としている者やつまらなさそうに構えている者もいる――を見て取ると、
不敵な笑みから眉を跳ね上げ、道化のようにわかりやすい笑顔をつくって、感嘆の声をあげる。
「よくココを見つけられたね。
説明なんて一切してないって教授から聞いてる。誰もこないことも想定してたよ」
二〇××年四月十八日新入会者向け第六説明会。
そんなものは、公には存在していない。
「どうやって見つけたのカナ~……?
あ、あ!言わなくてイイからね。
いくら魔術学会が開かれているとはいえ――
自分の秘奥は伏せとくのが、現代においても魔術師の流儀だからな」
演台の上に乗っていたカンニングペーパーを見えるように顔の高さまでつまみあげて、
内容を吟味しながら、やがて飽きたようにそれを裏返して手元に放ると、
『……アラステール教授は?』
そのとき、一番うしろの席に座っていた少年が、乱れた髪を直しながら問いかけた。
芸能活動の片手間に、島外に進出するために修士号を求めて、
ちいさな研究に勤しんでいるような奴の公演を拝聴しにきたわけではない。
不服、というよりは不可解をもって、腕を組み組み問いかけている。
■ネームレス >
「やあ」
■ネームレス >
大変容後、『魔術』は世界に公開され、その実在を完全に証明された。させられた。
情報は集積され、流派は系統立てられ、極意は編纂された。
そこに吸収され遺失した、現代の礎となった――あるいは変革の波に飲まれた失伝流派の使い手ながら、
実力は若くして『到達者』の位階にも達すると囁かれる――
(この学園、そして当代においては外見の年齢など何の指標にもならないが)。
燃ゆる太陽か炎のような、黄金の双眸を爛々と輝かせ、それはゆっくり学徒を見渡した。
右から左へ。
しかしだ。
そんな派手な看板を背負ったものが、不意に眼の前にあらわれても、
気後れする者は、少なくともこの会場にはいないようだった。
■ネームレス >
登壇したのは、過剰なまでの綺羅びやかさを備えた存在であった。
不気味なほど整った貌、衆人環視のなかでも一縷のゆらぎも見せぬ心胆。
むしろ視よと言わんばかりに颯爽とした佇まいは、さながら舞台上の演者である。
それもその筈、米国の大手レーベルよりデビューしたばかりの歌手であるからだ。
だが、この魔術学会――世界最大規模の研究機関において。
新入会員向け第六説明会場においては如何かといえば。
ここに集った者たちはしかし、多少の動揺を浮かべたとて、異を唱え騒ぎ立てる者はいない。
この存在が芸能人としてではなく、魔術師の威をもってそこに在ることも何ら神秘ではない。
名無し。
かつては顔見知りを自称し、落第街に跳梁跋扈して世界に音楽を発信し続けた絢爛の怪人。
昨年の暮れ、とある鉄道委員に逮捕され――保護観察処分をくだされて間もなく、
発表した挑戦的な魔術論文は会誌にも掲載され、最小規模ながら研究室も持つ一廉の魔術師でもある。
ご案内:「魔術学会 新入会員向け第六説明会」にネームレスさんが現れました。
ご案内:「第六異能研究所」から落花彩晴さんが去りました。
■落花彩晴 > 「…っし!…美味しいモノでも食べに行きましょうか!」
パァンッ!と、徐に両手で自分の頬を叩いて気分を無理矢理持ち直す。
空元気に近いかもしれないが、このまま沈んでても何にもならないのだし。
勢いよく立ち上がれば…ハッ!?とする。幸い周囲にあまり人気が無かったから助かった。
乙女としてはちょっとはしたなかったかもしれない…と、反省しつつ研究所をそそくさと後にしよう。