常世島北部には研究区として様々な研究所が密集している。
ここで行われる研究は多岐にわたり、名目としては異能・魔術・異世界などが現れたこの世界のために、それらを研究して世界との融和させることとしている。
その他の学問についても研究されており、この区域は他にも類を見ないアカデミックな場所となっている。
学園公立の研究所から私立の研究所まで様々であり、研究系の部活も研究施設などを利用することができる。研究者は教員・生徒など問わない。
とある公立の研究所では異能開発や人体実験めいたものも行われているとの噂もあり、謎の多い場所である。
※フリー設定ルームです。利用したい研究施設など思いつきましたら、部屋の設定を変えてご自由にどうぞ。このルーム説明文をそのまま貼り付けても構いません。
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Time:08:03:55 更新
ご案内:「研究施設群 とあるラボ」から焔城鳴火さんが去りました。
ご案内:「研究施設群 とあるラボ」から『研究員』さんが去りました。
■『研究員』 >
「ですが、それを望むのが人というものでしょう
そうあれないからこそ、あるように、あって欲しいと望む
そういった渇望をこそ、人が尊ぶべき一つだと私は思いますよ」
去っていくあなたの背中に向けて。
「それでもそれが気に食わないなら―― 言い換えておきましょう
あなたが、最後の最後まであの子を不幸にしないように『足掻く』事を願います」
あなたはきっと振り返らずに去るのだろう。
一人になった部屋で、男はまた画面へと向き直る。
眼鏡の奥底に見える瞳は、何処か笑っているように見えた。
■焔城鳴火 >
「はん――結局、私もあんたも。
あの子のひたむきさに参ってるわけだ。
大口を叩いたんだから、きっちりやって見せなさいよ。
負けてられない大人としてね」
そう言いながら、くっく、と肩を震わせた。
この研究者なら、少女を取り巻く『不幸』と戦うのをやめないだろう。
いつか全てを知って、少女自身が諦めない限りは。
「――悔い無く、ね」
肩を竦めて、自嘲する。
「私も、不運と不幸に関しちゃ、あの子に負けてないのよね。
だから何をしても絶対に後悔するし、死ぬ瞬間まで未練を引きずる。
――だからこそ、あの子のためになる事が少しでもあるなら、ほんの僅かな手がかりだって残したい。
なんて、格好つけたいだけだけど」
自嘲しながら、鳴火は立ち上がる。
麦茶を一気に飲んで、コップを置いた。
「それじゃ、今日のところはお開きにしましょ。
二度目があるかは――あまり期待しないで」
そう言い残して、鳴火は部屋を後にするだろう。
■『研究員』 >
「ええ、瑠音さんを見ているとね
――どんな経緯があったにしろ、あの子自身が前向きに頑張っているんです
大人が負けている訳にはいかないでしょう?例えそれが何に由来しているとしても。
焔城先生にとっても、それは変わらないのではないですか?」
肩を竦める姿に対し、男は何処か愉快そうに。
「ええ、何故そうなっているのか、そうしなければならないのか
少なくとも完全な無作為ではない、ならばそれを暴いていけば
見えるものはきっとあるはずです、私も引き続き調査を続けましょう
――研究者として、中々に興味深い事例とも思っているのは事実ですからね?」
とはいえ、あなたの評価もあながち間違ってはいないのだろう。
「それにしても… 本当にあの子の事を気にかけているのですね
あなたの事情に踏み入るつもりはありませんが… もし、それをするのなら
どうか、悔いの無いように」
■焔城鳴火 >
「異能による『現象』と、『不幸』、『消費』。
――あー、だめだ、不愉快な事しか思い浮かばない」
やめやめ、ともろ手を挙げて首を振った。
「こうして私たちが検討会をしている事すら、『不幸』に繋がりかねない。
ばかばかしくてやってらんないわ」
そう言いつつも、男が白旗を上げるつもりがないとわかれば肩を竦めた。
「出来るのは、この『推測』の確度を上げる事か。
これだけ複雑に『法則』がある以上、明確なルールが存在するはず。
それが分かれば、手の打ちようはある。
研究者にしては人が良すぎるけど、諦めの悪さは十分ね」
そう言って、鳴火は苦笑を浮かべた。
「幸いにも、有意義なデータを提供できる環境もできてる。
――瑠音に、私の余命が半月を切ってる事を話すわ。
その時、瑠音に何が起きるか――その計測は、それなりに意味のあるデータになるんじゃない?
自惚れだけど、少なくとも『不幸』の前払いには数えられるでしょ」
それは恐らく、鳴火の自惚れでなければ、過剰な『前払い』になるだろう。
その時、少女の異能がどういった法則で機能するのか、観測できる可能性は高い。
――少女を意図的に悲しませる事になるのは、胸が痛むが。
■『研究員』 >
「… 一つ、考えられる事はあります」
指を立てる。
「瑠音さんの『素質』を測った時の事を覚えているでしょうか?
あの時に測った全ての数値は、このラボの実験区画で測れるようになっています
橘壱さんとの異能の実験の際、最後の変化が起きた際――
『その全て』の計器が反応―― もっと言えば
魔力を始めとしたあらゆるエネルギーが、計測可能な最小単位ギリギリの量『消費』された
それをあの実験の結果は示していました、勿論言うまでもありませんが… 瑠音さんが消費したものです
私はこの『消費』こそが、瑠音さんが時折異能使用後に『疲れる』と言っていたものだと考えています
不幸とはまた別に支払われたと思しき消費… 之が、この異能にとって何を意味するのか」
今私が考えているのはそれです、と伝えつつ。
あなたの『最大の懸念』については目を細め。
「―― 使用し続けている事自体が『返済』である可能性もあります
であれば、使用しない期間が続けば… と、どう選んでも裏目に出る可能性はある、いえ
はっきりいいましょうか 『私たちが選んだ結果』が裏目となる可能性すら私は考えています
それほどまでに、あの異能の持つ強制力は異質だ、未だに変化が観測すら出来ていないのですから」
とはいえ、それを言い出したら何もできませんが、と敢えて口元を笑わせる。
少なくとも、何も手を撃たないつもりはない、と示すように。
■焔城鳴火 >
「そのリスクも最もなんだけど」
それ以上に、少女が『異能を使い続けた場合』が恐ろしい。
ある程度の法則は判明したとしても。
少女が異能を使う度に、『結果』と『代償』が、必ず釣り合っているとは限らないのだ。
もし、『利子』や『未払い』が存在したら。
そしてそれが清算されず『積み重なった』としたら――。
その時、どれだけの不幸が少女にもたらされるのか。
「まあ、まだ検討を重ねる段階でもある、か。
本人が『不幸』を自覚していない、この異能の『ルール』を知らない。
そこだけは、まさに『不幸中の幸い』ね」
は、と。
鼻で笑う。
どれだけこの世界は、理不尽を与えれば気が済むのだろう。
「――それについては、胸糞悪い仮設がある、でしょ」
新しいシガチョコを咥えて、自分の手を眺める。
この手は、一体どれだけの物を取りこぼせば、赦されるのだろう。
「『積極的に異能を活用する事』こそが、瑠音の不幸、生きて産まれた『前払い』の結果である。
瑠音の意思と思っていたモノが、ただの『代償』に過ぎない可能性。
今の黒羽瑠音という少女の人間性そのものが、『不幸になるために異能によって構築された』可能性よ」
もっとも排除したい――けれど、捨て去るには大きすぎる可能性だ。
■『研究員』 >
「少なくとも、普段の瑠音さんに自身が不幸であるという意識はありません
寧ろ、自身の境遇を恵まれていると感じ、幸福を喜び、他者を敬える――
本当に、”いい子”だ、それはあなたも良く知っているでしょう」
吐き捨てるように言い放つあなたを見ながら、冷えた珈琲を啜る。
泥のように黒い液体と共に、眼鏡の奥底から何処か探るような視線が見えた。
「勿論、そのご心配は最もです、ただ――
この異能の使用を禁じるのは、恐らくは悪手でしょう
不幸にするのは分かる、では『何故』か?その理由が分からない
もしかしたら理由などないかもしれませんが、少なくとも
彼女自身にこの事実を伝えるのは、余りにリスクが高い
ストレスによって異能が変質するというのはそれこそ珍しい話ではない」
「別の言い方をすれば暴走とでもいいましょうか、彼女の異能が『そう』なった場合
一番被害を被るのはそれこそ、彼女自身でしょうから」
「ただ―― 一度彼女に聞いてみるべきかもしれません
あの子が自身の異能について、どう考えているのか どうも私には…
あぁまで自身の異能を『活用』しようとしている理由が、測りかねているのです」
■焔城鳴火 >
「――クソったれな話だわ」
男は『産まれる事が不幸』と言ったが。
それは慮った言い方だろう。
母親を救う代償に、黒羽瑠音は――
「不幸になるために産まれてきた」
男の言う通り、それこそ主観的な指針でしかないのだろうが。
間違いなくあの少女は、母親を救うために『前払い』を済ませている。
その不幸がどこまで及ぶかは――少女をこれから『不幸にする』人間が語れることではない。
「その仮定――仮説が正しいとした場合。
医者として、黒羽瑠音の異能を『治療』するのを提案するわ。
この先、あの子の異能は――あの子が生きている限り、不幸をもたらし続ける。
これはもう、立派な『異能疾患』よ」
異能は病である――そう論じた論文を思い出す。
異能は才能ではなく、疾患だ。
必要に応じて、適切な治療を行わなくてはならない。
あの少女にとってこの異能は、治療すべき疾患と言って過言じゃないだろう。
■『研究員』 >
「患者は何度も、お腹の子供に語り掛けていたそうです、母親としては当然かもしれませんが
死産だと告げられた後も、何度も… 『産んであげられなくてごめんなさい』と」
掠れた声を聞きながら、淡々と続ける。
「最初、之が異能と関係があると思えなかったのは… 『代償』が確認できなかったからです
予後は良好、瑠音さんも未熟児となる、疾患を抱える事も無く無事に生まれる事が出来た
ですが―― こう考えるとどうでしょうか?」
「生まれた時点で既に代償は払い終えていたと」
そして結論を告げる
「瑠音さんは『この能力を持って生まれずにそのまま死ねる筈だったが、生まれるという不幸を代償に母親の心を救った』
之が、この最初の『発動』に置ける代償と結果、私はそう考えています」
「この『生まれる事そのものが不幸』という事が何を、そして何処までを見越したものなのか、それは分かりません
ましてや、不幸というものはそれこそ主観的なものですから」
だが、その口調には何処か確信めいたものが宿っていた。
少なくともこの『事象』に置いての考えには、かなりの自信を持っている事が伺えるだろう。
■焔城鳴火 >
「――、は」
かすれた笑い声が短く漏れた。
「はは――笑える」
その表情は、まったく笑っていない。
「もう15年前か――父さんに着いていった勉強会で、重大な誤診の一例として検討がされた症例。
あの頃は気にも留めなかったけど」
まさか、というほかにない。
勉強会では患者の名前は伏せられていたが、こんな誤診の記録が幾つも存在するわけがない。
「――謎かけはいいわ。
結論から話して。
瑠音は――」
そこからは言葉にならなかった。
ただ、ガリ、と。
シガレットチョコの砕ける音が、静かな部屋に響く。
■『研究員』 >
妊娠9か月時点で胎内で死亡したと思われる胎児が、奇跡的に息を吹き返したという内容だ
恐らくは診断ミスと記載され、診断により受けた母親のストレスから状態の悪化が懸念されたが予後は良好
来月には予定通り出産の予定、と記されている
患者の名字は―― 黒羽
「私は―― これが、瑠音さんが最初に異能を『使用』したタイミングだと考えています
焔城先生… もしそうだとしたら、瑠音さんはこの時、何を『代償』にしたと思いますか?」
■『研究員』 >
「… 」
また一度、息を吐く、大分気が進まない内容を話す事になった、という表情だ
「―― あなたからの連絡を聞いて、一度瑠音さんに関する情報を全て洗い直しました
焔城先生、あなたは、瑠音さんから自身の異能が『何時』発現したか、聞いたことはありますか?
瑠音さん自身は『物心ついたころには』と言っていましたが… 」
「実際は、もっと早かったのだと私は予測しています
それを踏まえて此方を見てください」
彼女に渡すのは一枚のカルテ▽
■焔城鳴火 >
「いい、どうせニュースになるのは避けられないだろうし。
瑠音に黙っていなくなる、って選択が出来なくなっただけだから」
ポケットから箱を出して、シガチョコを咥える。
「――その特例ってのは?」
荷物が増えるのはいつもの事だ。
それで少女の異能研究に役立つなら、是も非もない。