2025/01/17 のログ
■ネームレス >
「無限の星核そのものを斬らずに、うまいこと摘出するってなると。
まず真っ先に浮かんだのが、キミの――」
ぞわ、と僅かに、背筋が震えた。眉根が寄って表情が険しくなる。
あのとき、たしかに体を袈裟に落とした――"斬られた"感覚。
斬るべきものを選ぶ、という斬撃の条理を破壊する異能は、『回収』という点で非常に適任に思えた。
「だからキミに――……頼ろう、と思った」
そうして、眼を伏せて。つぶやく。
「頼ろうと思った」
繰り返した。
「…………悔しいけど頼ろうと思った。
キミがいい、ってだけじゃなくて、ボクにできないことができるから。
どうするか考えて、真っ先にキミが浮かんだ……不覚にも。だから。
あとは―――」
ふす、と鼻を鳴らした。
「黙ってひとりでいったら、次は命がないなって」
無事に戻ってこれたとて、ビンタじゃ済まない可能性が高い。
護衛に雇ったのも、キミがいいと言ったのも、自分だ。
それでも巻き込む必然性に、頼る、という選択が入ったことが、悔しい。子供じみた意識だ。
「でも、絶対じゃない。
キミがなんらかの理由で、行きたいと思うなら……仕事を頼むよ」
それでも、自分が、相手が、やらなくたって。誰かが解決するかもしれない話だ。
そのうえで――やりたいから、やる。悲壮な覚悟も、使命感もなく、エゴイズムの話。
額と額をくっつけて、どう?と問いかける。
■緋月 >
――返って来たのは、随分と深刻そうな雰囲気の表情と言葉。
ふぅ、と小さく息を吐き…今度は自分の手が、血の色の髪を少しばかり丁寧に撫でる番だった。
「――――私は、」
少し、穏やかな声。
「頼ろうとされて、嬉しいです。
あなたは…一人で、何でも出来てしまいそうな人ですから。
あの、廃神社での戦いだって。」
あの時の自分が、「最大の禁じ手」に頼らずに扱える、あの時の最大限と言える攻撃。
それを、真正面から迎え撃って、ほぼ破ってしまったのだ。
――だから、
「きっと…さっき話してた、言葉と似たようなものです。
私がまるで覚束ない言葉をあなたが流暢に喋れるように。
あなたには不向きな事が…多分、私には可能な事だった。」
そうして、最後の言葉。行きたいと思うなら。其処への回答。
「――無限。不死。堅牢……。
不謹慎かも、知れませんが――楽しみだと、感じてしまいます。
そんな代物を――「斬る」事が出来るかも知れない、機会が来たと。」
ぞわり、と、背が粟立つ。
同時に、身体から剣気が…僅かだが、抑え切れないように、立ち上る。
平穏な学生生活を送っている少女は、しかし――「刃」として錆びてはいなかった。
「不可能」を、「困難」を、「斬る」事が可能だと。
そう、誰に称えられずとも、確かめたくて、仕方がない、と言わんばかりに。
「……一人で行ってたら今度はグーで殴ってた所ですよ。」
しっかり釘を刺し直して置く事も忘れない。
多分やらかしたら本当に顔を…今度はグーで来る事だろう。
■ネームレス >
「…………、そうだけど」
世界はひとりで回っているものではないことはわかっている。
演奏も舞台も、いまこの学校にいるのも、島外へ羽撃く道筋も。
多くのものの助けを得て、貸借と協力の契約のうえに成り立っている。
ぞわ、と体のなかで、なにかが蠢く。
「……それでも、悔しいものは悔しいの!」
ちょっと声が荒くなった。拗ねた。
自分がなりたいものは、きっとそうだ。彼女が語ったような、完璧な存在。
誰にも頼らないとかじゃなくて……助けられない存在。
それでも、彼女がいった、うれしい、という言葉の真意もわかって。
自分が欠けていることも、それを埋められる相手が、いま眼の前にいることも。
言い返せない事実だったから、余所行きではない言葉が漏れてしまった。
「ッ、」
そんな稚気は。
振り払われてしまう。彼女の内側に在る、熱に。
剣気というかたちでそれが解き放たれた気がした。
ある意味では欲望か。得難い機会なのだ。極化した属性――斬れるや否や。
風を斬ろうとしたという、狂える血筋の裔がここにいる。
「……すごくいい貌してる」
思わず口づけたくなるほど、魅力的にみえる。
予想外の答えだった。自分を理由にするかと思った。
そうでなかったから――――すごく、いい、と思った。
「壊せない。
……って言われたんだよな。特に『浮生』の星核は」
正確には、壊しても元に戻るらしい。
それは――神の定めた摂理、なのであれば。
「なんでかな。クラインもだケド。エデンも……いや、なにもかも。
ぜんぶめちゃくちゃにしてやりたいって気持ちが、暴れだしそうなんだ。
ボクたちのこれからの道行きを思えば――絶好の試練といえるだろうさ」
斬れるか/壊せるか。
自分に成長を、新たな段階をもたらす試練。
「…………神性を圧縮し、その属性を極化させたものが星核。
だが言うことによれば……いや、理論上は、人間も星核になり得る。
研ぎ澄まし、純化させた人間の力は、神の権能と別はない、というコト」
思考実験のような話だが。星核を斬るには、そうだ。
『無限』や『浮生』と驕るなら――同様に、驕ってやろう。
「……じゃあ、一緒にいこ」
理想に至るため、己を成長させるために。
それを契約とした。報酬については、後でいい。
ぼすっ、とそのまま体を預けた。抑えきれぬほどの剣気を、このまま感じたかった。
■ネームレス >
とはいえ、グーで、なんて言われると。
「――――……大ホールでの公演が控えてるんですー。
なにかあったら損害賠償だからな。
……こっちも、気をつけるケド」
憮然と言ってから、息を吐いてそっぽを向いた。
調教の成果は、確かにあるらしかった。
あの一瞬見せられた泣き顔が、なにより大きかったのだ。
■緋月 >
「理論上「壊せない」…という事ですか。
――不謹慎ですが、」
最早「かも知れない」などと繕う事もしなくなった。
不謹慎極まりない発言と、行為かも知れない。だが、それ故に。
「折角の星核が勿体ない気も、ちょっとはしますけど。
「壊せない」かどうか、全力で試してみたくはなってしまいます…ね。」
本当に「壊せない」のか。
心の底から、「それ」を試して見たくて、うずうずしてくる。止められない。
それが「神」の権能ならば、尚の事。
「――「神を斬る」。最大の、課題の一つです。
何しろ、何処にいるかも分からないのですから。
「星核」という形とはいえ――神を名乗るなら、一太刀、己の全霊を…試してみたい。」
剣気が、強まる。
彼のモノは、真、神の力なのか、あるいは異なるものなのか。
それに、己の刃は届くのか。斬れるのか。
嗚呼――――――
「斬りたくて、たまらない――!」
その言葉と共に、大きく息を吐き出し……一時、その剣気を収める。
無暗に刃を曝し、錆び付かせないように。
「――ええ、一緒に行きましょうか。」
子供のように、小さく笑う。
――此処に、「約」は成った。
■緋月 >
そうして、憮然としてそっぽを向くひとの様子を見ると、思わず苦笑い。
「約束したんですから、今回はしませんよ。安心して下さい。」
そう宥めつつも、ふと思いついた事。
「……目立つようにする、なら変装とかは必要ないか。
となると、前に買って貰ったお面の出番はないですね。
服だけは…ちょっと、これの替えはないので、汚れると困るし…別を着ていく事になるかな…。」
明後日の方向へと思考と悩みを始めた。暢気なものである。
――この位に図太い方が良いのかも知れないが。
■ネームレス >
「……お、良い心構えだぜ、ソレ。
大舞台には見合った衣装でキメなきゃな~!」
武人には、すこしずれた感性かもしれないが。
あのとき気合の入った白黒の装いは、それはそれで。
黒い外套に物思いはしたけれど、嬉しくもあったのだ。
浴衣もそう。着飾るということは、大いに意味がある。
「キミの感性の赴くまま仕立てるとイイよ。
ファッションは自己表現と対話だ。
諸経費はボクから落としましょう。雇用主兼、プロデューサーとして。
つぎのデートは決まったな。ついでにいろいろ買ってあげよーか、お洋服?」
伴おうと言うのだもの、似合いを装うためなら、金は雇用主が負担しよう。
命がけの作戦になることを、軽く見積もっているわけではない。
きっと人生を懸けて物事に挑むというのは、そういうことなのかもしれない。
ご案内:「魔術学会 名無しの研究室」からネームレスさんが去りました。
■緋月 >
「うーむ…そう言われると途端に悩みますね…。
服は、その…慣れてるものを着るのが当たり前、みたいな所がありましたから。
――いや、「戦装束」と考えればいい、か。
うん、少し思いつくものは、いくらか見えて来ました。」
モノは言いよう。
そう言葉を置き換えれば、自然とイメージはいくつか湧いて来る。
今は眠ったままの「先生」のような服……いや、やめよう。
別に当て擦りや嫌味をやりたい訳ではないし、文句の類は直接会って言うのが一番。
そんな事を考えつつ、話し合いをして――またいくつかの約束が交わされるのだろう。
全ては、「不可能」の真実を問い質す……あるいは「可能にする」為に。
ご案内:「魔術学会 名無しの研究室」から緋月さんが去りました。