2024/06/13 のログ
ご案内:「訓練施設」に桜 緋彩さんが現れました。
■桜 緋彩 > 訓練施設の一室で反復横跳びをしている。
刀を手に持ち、右に左に前に後ろに、縦横無尽にフィールドを駆ける。
その足捌きは軽く、十二分に機敏な動きに見えるだろう。
「――んん」
しかし自身の顔は不満げだ。
確かに、生身の人間としては機敏。
けれどそれでは不十分。
人外蠢くこの街では、なんのアドバンテージにもならない。
「せめて最初の一歩でもう少し動ければいいのですが」
ダンダン、と裸足で床を踏み鳴らしながら。
ご案内:「訓練施設」に武知 一実さんが現れました。
■武知 一実 >
「ッたくよ、アイツら……しつこいんだ……」
今日は珍しく校内で喧嘩を売られ、いつものように買ったところまでは良かった。
良くなかったのは校内での喧嘩が初めてだった事。
想像の3倍くらい早く風紀委員が駆け付けて来たので、流石に昨日の今日でお説教はヤバいよなと迷わず逃げたのが数10分前。
しつこく追って来る風紀委員をようやくまけたと思えば、訓練施設に居た。
「ちょっと休憩して、帰るか……ほとぼりが冷めるまで待ちてえし」
ついでだから何か飲もう、そう思って自販機へ向かうオレの耳に激しく床を踏む音が聞こえる。
何かの儀式でもしてんのか、と音のする部屋へと向かい、ひょいと中を覗いてみれば。
「げぇ……」
風紀委員居んじゃん……何度か本庁にしょっ引かれた時に見掛けた顔じゃん……
しかも何かすげえ勢いで跳ね回ってる。 なにこれ、こわい。
■桜 緋彩 >
「ん?」
視線を感じる。
そちらを見れば、どこかで見た様な顔。
「あぁ、たしか……一実どの、でしたか?」
よくケンカでしょっ引かれている少年。
一応全て相手から吹っ掛けられたケンカではあるので、大抵毎回お説教を受けている子だ。
「今日もケンカですか?」
彼の額に滲む汗。
相当走ったように思えるから、きっとまた風紀かケンカ相手かに追い回されていたのだろう、と。
刀を鞘に納め、彼の方に歩み寄る。
■武知 一実 >
「げっ、名前割れてる……」
向こうもオレに気付き、少し思い出す様な表情の後にオレの名を口にした。
ほぼ面識のない女子にも名前が知られてるというのは場合によっちゃ光栄なんだけど、風紀委員に身バレしてるのは正直いただけない。
こっちは向こうの名前も知らないってのに。
「はぁ、まぁ……確かに一年の武知一実っすけど……
今日も、って……まあ、そうなんスけど……!」
しかも喧嘩の事まで割れてる。
まだたかだか6回程度の連行でそんなに名が広がってしまうものか。 風紀の連帯感には恐れ入る。
さっきも3人一組くらいで代わる代わる追っかけて来たもんな……。
「オレなんも悪い事してないんで、しょっ引いてくならちゃんと理由つけてしょっ引いてくださいよ」
校内で喧嘩しただけで十分? それは、そうかもしれんけど。ここ校内じゃねーし。
そんな言い訳を考えつつ、オレは歩み寄って来た風紀委員を見据える。飛び回る気迫の所為か只者じゃなさそうに見えたけど、こうして近づいて見ると案外ちっさい……
■桜 緋彩 >
「しょっ引きませんよ。
悪いこと、してないんでしょう?」
こてんと首を傾げる。
例え悪いことをしていたとしても、そもそも今は非番だし、捕まえる理由が無い。
「そんなことよりちょっと運動していきませんか?
結構動けるんでしょう?」
腰に差した刀を鞘ごと抜いて部屋の脇に置く。
じんわり汗をかいてはいるが、激しく跳びまわっていた割に息は上がっていない。
ベンチに置いたタオルで軽く顔を拭き、彼の方を向いて。
「武器は使われます?
それとも素手の方がお得意ですか?」
■武知 一実 >
「え……ああ、はあ、まあ。」
喧嘩自体は悪い事じゃない、そういう事だろうか。 うんうん、そうに違いねえ。
何だ、風紀委員ってのは喧嘩両成敗とか言って問答無用で取り押さえてくるような連中かと思えば、話の分かる人も居んじゃん……
「へぃ? 運動って……まあ確かにここって運動とか異能使うための場所だけど……」
唐突な申し出に、真意を図りかねるオレ。
そんなオレを置いといて、胴着姿の風紀委員は刀を置いてタオルで汗を拭き始めた。
……え、何なの? 確かに多少は動ける方だと思うけど……
「ぶ、武器? それとも素手……って、まさか運動ってそういう?
つまるところ喧嘩したいってわけ? 風紀委員なのにそういうのもアリなん?
そういう事なら、ルール無用が一番得意だけど」
もしかして話は分かるけどどっちかと言うとアウトロー寄りの人?
まあ、さっきの喧嘩は横槍で有耶無耶になったし、戦れるっちゃ戦れるけど。
■桜 緋彩 >
「じゃあ何も問題ないです」
確かに彼は風紀の中で問題児と認識されているかもしれない。
けれど悪いことをしていないと言う人を無理矢理捕まえるほど正義でもない。
「喧嘩ではないですよ。
運動、鍛錬、まぁその類のことです。
――申し遅れましたね。
桜華刻閃流当主、三年、桜緋彩と申します」
姿勢良く礼。
敢えて風紀とは名乗らないことで、風紀は関係ない、と伝わる様に。
「何か必要ならばそちらにありますので。
――では、いつでもどうぞ」
そちら、と示す方には木刀や棒など、武器が色々しまわれている箱。
自分は木刀を腰に差し、部屋の中央へ。
両腕はだらんと下げたまま、ボクシングのようなステップを踏む。
木刀はまだ抜かない。
■武知 一実 >
「まあお互いに恨みも何も無いんだから喧嘩じゃない、てのが一般的なんでしょーけども」
しょっちゅう喧嘩するほど体力と腕に覚えがあるなら一戦やりましょう、ってか。
知り合って間も無い相手に掛ける言葉と態度じゃねえ。
けれどまあ、理屈としちゃ至って単純(シンプル)でまあそういうのは嫌いじゃねえし。
何より、吹っ掛けられといて断る理由を探すのもまどろっこしい。
「三年生、先輩だったのか……
まあいいや、ンじゃあ――その喧嘩買わせて貰いましょ」
ぴしりと礼儀正しく一礼する先輩は既にやる気十分。
これでいや無理ですとか、男が廃るってもんだしなあ……。
何の得も無いんだけど、と思いつつもピリッと刺す様な空気を感じてついついオレの気分も高揚してくる。
「先輩だからって忖度しないんでー
じゃ、遠慮……なくッ!」
学生服を脱ぎ捨て、軽く拳を握ると一足飛びに跳んで間合いを詰める。
忖度はしないと言ったけれど、顔面狙いは後が怖いので右脇腹狙いで左フックを打つ!
■桜 緋彩 >
踏み込みと同時に振るわれる左の拳。
いい踏み込みだ、と感心。
「甘いっ!」
その拳に合わせて拳の軌道の内側に踏み込む。
彼の両脚の間に自身の右前足を潜り込ませ、
「ふんッ!」
ズドン、と踏み込みの音が響く。
同時に自身の肩で彼の胸の中心を思い切り押す。
体当たり――と言うよりは、身体全体で思い切り突き飛ばすような一撃。
■武知 一実 > 間合いを詰めて拳を振るうオレに、更に肉薄するように踏み込んで来る先輩。えげつない踏み込みの音が聞こえた気がするけど、マジか。
相手が突っ込んで来る勢いに合わせた、カウンターめいた突進。 まともに喰らえば吹っ飛ばされるし、何より位置的に呼吸が危うくなる。
咄嗟に打ち込もうとしていた拳を開き、胴着を掴んで引いて突き飛ばしの勢いを殺すと同時にオレは後方へと跳ぶ。
多少なりと体勢も崩せれば追撃の心配も減るだろうけれど、そう簡単にはいかなそうだ……
「無策で突っ込んだのが下策だった……ッ!」
反省反省、けどそれは今この瞬間だけ。
自分の動きを振り返っていられるほどの隙を与えてやれるような相手じゃない。 そしてこっちから突っ込むのも得策じゃない。
――さて、どうしたもんか……。 普段の喧嘩なら、猪みたいに掛かって来る奴らばかりだから、どうするか、なんて考えなくても済むんだが。
■桜 緋彩 >
「お、やりますね」
攻撃を途中で止め、しかも自分から飛んで衝撃を逃がした。
なるほど、ケンカ自慢の素人というわけでもなさそうだ。
因みに体勢は微塵も崩れない。
「――終わりですか?」
こちらはそこから動かない。
彼の方も攻めあぐねているのか、次の一手を考えているようだ。
とりあえず木刀は要らないと判断、抜いて遠くに放っておく。
「来ないのならこちらから行きますよ」
タンタン、と二度三度真上に跳ね、踏み込む。
狙いを散らすように、一歩一歩微妙に左右へ踏み込みをずらしながら。
最後の一歩はこちらから見て大きく右斜め前に踏み込み、彼から見れば左から角度の付いたジャブを放つ。
ジークンドーでストレートリードと言われるジャブ。
■武知 一実 >
「どんな体幹してんだ……」
微動だにしていない先輩を見て、思わず乾いた笑いが零れてしまう。
オレより頭二つ分以上も背が低いのに、オレの倍くらい体重あるんじゃねえのって疑ってしまうほどだ。
「ええ、今度は先輩からどーぞ。」
余裕ぶってはみるものの、今の応酬だけで先輩の力量がある程度は察せてしまう。
少なくとも、日頃喧嘩売ってくるような馬鹿とは一線を画すどころの騒ぎじゃない。
一瞬の気の緩みがそのまま敗北――そう思えば、今相対しているのが獣のようにも見えてくる。
「――チッ!」
攻めに転じた先輩が数回のその場での跳躍を経て、嫌らしくも左右に振れながら接近する。
先の応酬前なら跳躍と共に揺れるモノに見惚れることもあろうが、今やそんな事に気を向ける余裕などある筈もねえ。
ジャブを左手の甲で弾いて打点をずらし、右足で強く踏み込んでの右の掌底打ち。 一発貰う代わりに一発食らわせる、ただの喧嘩スタイルなのが申し訳ねえが。
■桜 緋彩 >
右手で放ったジャブは左手で払われた。
ほぼ同時に踏み込んで放たれる右の掌底。
それをこちらは、右足を引いて左の掌底で打ち落とす。
「胸を打つ!」
言葉と同時、引き絞った右手の掌を、彼の胸のど真ん中に突き出した。
後ろに引いた右足をつっかえにして、足先から腕の先まで一本の棒にする。
受けるか喰らうかすれば、予想の三倍ぐらいの衝撃が彼を襲うだろう。
まるで一度に同じところを三回殴られたような。
■武知 一実 >
「ッ! 言わねえほうが良いんじゃねえの、そういうの!」
強がりで言ってみたが、多分この先輩は狙いを告げることでオレに往なすか避けるかしろと促してるのだろう。
確かにこの距離での掌底、しかも先輩のように力の流れが分かってる者が打つものであれば痛いどころじゃない。
突き出された掌を、咄嗟に腕を交差させて受け、その衝撃に乗って後退しようとして
「……ッぐ!? 分かっちゃいたけど痛ェってモンじゃねえなあ!」
想像以上の衝撃に、思った以上に後退を強いられて。
……ああ、まずい。
これは、久方振りに……
――楽しいな
そんな呟きが脳裏に過ぎり、胸の鼓動が高まる。
視界の端で紫電の爆ぜる音が聞こえ、ざわ、と肌が粟立つのを感じる。
「――こんな楽しい喧嘩は学園来て初めてだ。」
バチバチと身体のあちらこちらから火花放電しているのを感じるが、オレは笑みを浮かべずにいられなかった。
これだけの強さの先輩なら、まあ電気ショックくらい耐えらえるだろうし? 無理かね?
「どっちでもいいや、今度はこっちの――番ッ!」
拳を一度固く握ってから解いて、再び距離を詰めて右の貫手で鳩尾を狙う。
電力で腰から右の指先までの筋肉と関節をちょっとブーストさせた鋭い槍の様な貫手だ。
■桜 緋彩 >
「これも耐えますか!」
並の相手ならそのまま吹っ飛んで終わりになっていてもおかしくない。
しかしこの少年は耐えた。
思わず獣のような笑みが漏れる。
「それは良かった。
私も一実どののような強者と立ち合えて嬉しい限りです!」
右足を前に、左腕を下げて右手を掲げる。
天地上下の構え、などとも呼ばれるもの。
そのまま彼を迎え討とうと、
「――っ!」
先ほどよりも速い。
それでもまだ反応できない速度ではない。
下に下ろした左腕で貫手を下から外に払い、同時に腰を低く落とす。
更に掲げた右腕を折り曲げながら、その肘を身体ごと突き出す。
カウンター気味の裡門頂肘。
貫手が少し脇腹を掠ったが、問題はない。
■武知 一実 >
――躱されたッ!
オレの脳がそう判断するよりも早く、先輩は迎撃を放っている。
さながら犀の角のような肘が面前に迫り、考えるよりも先に体が動く。上体を大きく反らし、すんでのところで肘を躱す。否、躱し切れずに鼻先が嫌な音を立てた。
「ハハッ、可愛い顔しておっかねえなァ先輩よ!」
が、そんな事は気にしてる余地など無い。弾かれた貫手の勢いそのまま先輩の背後に回る様に体を右に回し、胴着の腰に腕を回して裏投げを狙う。
どれだけ体幹が強くとも、持ち上げられない重量なわけが無いだろうと信じて――!
「ぅおおおおラァッ!!」
■桜 緋彩 >
「――っく!」
組み付かれては分が悪い。
なんせこちらの方が体重が軽いのだ。
「させる、かッ!」
脚を絡めて腰を落とし、投げられまいと抵抗。
拳を握り、彼の腹へ二発三発と打ち付けて。
とは言え体重差はいかんともしがたい。
それに怯まなければ、四発目を打ち付ける前に投げられてしまうだろう。
■武知 一実 >
「喧嘩は―――根性ォッ!!」
先輩の抵抗が腹に重くのしかかる。
が、喧嘩なんてのは殴って殴られが日常だ。
さっきまでの様なカウンターや助走をつけられた一撃と比べればこの程度の抵抗は、まだ痛いで済む程度!
「ッせぇぇぇぇい!!」
ただ、抵抗のお陰か最後まで投げるだけの力が入りきらず、止むを得ず持ち上げ、共に倒れるバックドロップへと変更。
ついでに言えば、自身が受け身を取る事もオレは忘れてしまっていた。
まあ、路上の喧嘩じゃないから、頭打っても昏倒はしないだろ――
■桜 緋彩 >
「う、わッ……!」
高速で下に流れる視界――いや、自分が上に引っこ抜かれているのだ。
変な体勢で引き抜かれ、受け身を――と咄嗟に思った瞬間、
ゴッ!!
と後頭部で鈍い音が響いた。
視界がブツッと途切れる。
ぐにゃり、と彼の上で四肢からぐんにゃりと力が抜ける
完全に気を失ったわけではないので、呻いたり僅かにもがいたりはしているが。
■武知 一実 >
先輩の後頭部で ゴッ!! と鈍い音が響いたのとほぼ同時。
オレの後頭部でも同じような音が響いていた。
途中で逃げられてなるものか、という事だけに意識が向いて受け身を取る事を忘れた結果だ。当然痛い。
「~~~~~ッッッ!!」
仰向けに倒れたまま、ぐわんぐわんと揺れる視界に声も出せない。
殴られてた腹も痛ぇし、肘が掠めた鼻も痛ぇ。電気ブーストさせた右腕もジンジンしてる。
満身創痍だ。バックドロップ以外まともに一発も入れられんかったし……。
「先輩、とりま引き分けって事で……先輩? せんぱーい?
ってオイ、まさかアンタも受け身取り損ねたのかよ!」
抱える腕は解いたけれど、動く気配がない。生きてるのは感じるが、意識トんでたらどうしよう……。
風紀委員気絶させたと知れたら、お説教じゃ済まねえなきっと。
「おい、おーい……参ったな、頭イってんなら変に動かすことも出来ねえ」
とりあえず安静だ、とオレはぐんにゃりした先輩を乗せたまま部屋の天井を見つめる。
――――何やってんだろ、オレ。
■桜 緋彩 >
「ぁ……ぅ……」
視界がぐわんぐわんする。
とりあえず意識はあるのだが、目を開けていても何も見えない。
と言うか目が開いているのかすらわからない。
「ごぇ、――ぃ、……どく、――ら……」
とりあえず彼の上からずるずると身体を退かす。
――いや、退かそうとする。
自分ではそのつもりなのだが、全然身体が動かない。
■武知 一実 >
「お、生きてら。 いや、生きてんのは知ってたけど」
ぐんにゃりしてた先輩が言葉になってない言葉を発しながら、微かにもがく様に身動きを見せた。
ひとまず意識はあるようで一安心。 いや、安心して良いのかこれ。
「いーから、とりあえず無理に動こうとすんなし。
意識はっきりするまで、大人しくしとれって」
微かな鳴き声と、予想されるこの先輩の性格から俺の上から退こうとしてくれてるのだろう事は察しが付く。
けれども変に転げ落ちられて脳が更に揺らされては面倒だし、半ば強制的に腕で押さえつける様にして先輩の動きを封じようと試みる。
「目ェちゃんと見える様になったら、指先から徐々に動かしてって。
そんで舌も回る様になったら、それから退いてくれりゃ良いんで。 別に重くもねーし」
とは言えこの状況、誰かに見られたくはねーなと思う。
通報待ったなしじゃん。 今この状態でまた風紀と追いかけっこすんのやだよオレ。確実に吐く。
■桜 緋彩 >
「――み――せん……」
謝罪を口に――出来ていないが――して、しばし彼の上で休む。
次第に視界が戻ってきて、身体も動くようになってきて。
「――もう、大丈夫です。
ご迷惑を、おかけし――」
そこで彼の上と言うか腕の中にいることに気付く。
暫く硬直し、
「――あぁぁあ!!!」
叫びながら彼の腕を跳ねのけ、ずざざざざ、と壁際まで這って逃げる。
顔を真っ赤にして彼の方をガン見しながらぜーはーぜーはーと肩で息をしている。