2024/06/14 のログ
武知 一実 >  
「謝ることねーよ、無理やり投げようとしたのはオレだし」

けどオレも謝らない。どちらが悪いわけではない、喧嘩の末のちょっとした事故だ。
オレもすぐに動きたくは無いほどには頭が痛いので、お互いに回復するまでその場で転がっていよう。

そして今更だけど、何だか良い匂いがする。
やっぱりちっこいし、さっきはあんなおっかねえ顔して打ち合ってたけど、この先輩もちゃんと女子なんだな……。

……余計に今の状況、誰かに見られたらまずくね?


「……お、まともに喋れるまでになった?
 いいって事よ、別に何の迷惑も――?」

どうやら無事に回復したっぽい先輩の声がした。 したけど途中で途絶えた。
視線だけそちらへと投げれば、不自然に空気が固まった気配がし、

何だか暴漢に襲われたような悲鳴を上げて逃げられた。
……え? いや、逆じゃねえ?ジャンキーに襲われたの、オレじゃねえ?

「……ま、そんだけ元気なら後遺症とかも心配要らねえか。」

良かった、とゆっくりと身を起こすオレだった。 何かすげー見られてる気がする。

桜 緋彩 >  
「あ、いや、その、すみません、慣れていない、もので……」

心臓バックバクである。
すぅーはぁーと何度か深呼吸。
男の子に抱きしめられるなんて、不可抗力とは言えびっくりしてしまった。

「一実どの、その、お怪我とかは、ございませんか……?」

おっかなびっくり警戒している猫の様に四つ足で近付き、恐る恐る尋ねてみる。
思えばしこたま殴りつけた様な気がする。

武知 一実 >  
「投げられんのが? なら受け身取れなくてもしゃーないか。
 戦ってみた感じ、先輩は徒手空拳が専門って訳じゃねーんだろ?」

技の一つ一つが型も綺麗で威力も十二分だったが、どうも体の重心が寄り気味、だった気がする。
途中オレの異能が発動して、感覚が鋭敏になった故に感じ取れた程度の普通なら感付けない違和感レベルだけど。

……何か話噛み合ってない気がすっけど、まあいいか。

「怪我? まあ、まともに喰らったもんはないし、普段喧嘩してるだけあって体は頑丈だから
 先輩こそ頭以外で痛いとこ、無え?」

胡坐をかいて座り直したところで、何だか小動物めいた動きで先輩が近付いて来た。 
喧嘩吹っ掛けといて怪我の心配なんてちゃんちゃら可笑しいが、まあ大丈夫と言えば大丈夫。 鼻の骨が折れてるくらいか。戻しとこ。

しかし、喧嘩してる最中は考える余裕なかったけど、改めて見るとスタイルすっげーなこの先輩……

桜 緋彩 >  
「あ、いえ、そうではなく、て。
 ――その、男の子に、抱かれるのが、です……」

また顔が真っ赤になる。
ちょこんと正座して肩を縮め、俯く。
湯気が出ているような顔の赤さ。

「私は、大丈夫、です。
 ――あぁ、鼻が、最初の当身ですね。
 つい熱くなってしまい、大変申し訳ないことを……」

自分からケンカを吹っかけておいて怪我までさせてしまった。
良くない良くない。
反省してしょぼしょぼしてしまう。

武知 一実 >  
「抱く……?
 え?ああ、アレで? そんな気にすんなよ、あんなのノーカンだって。 医療行為の延長みたいなもん」

意識が朦朧としてて動くに動けなかったんだから言ってもしゃーなし。
って、オレが言うことじゃないっか……。
しかしまあ、そんなつもりが無かったとはいえ、こうまで恥じらわれるとこっちまで恥ずかしくなる。

「なら良かった、後で風紀に呼び出されるとかマジ勘弁。
 申し訳ない? オレも忖度なしで打ちに行ったし、先輩もそうだろ?
 ……ならその末に怪我しようが、勲章にこそなっても過割れる謂れはねーの」

先輩の小動物っぽさが増した。 何だこの可愛い猛獣。
思わずしょぼくれてる先輩の頭に手を乗せて撫でようとしてしまう。

桜 緋彩 >  
「……そうですか……」

ノーカン、と言われてちょっと不満そう。
初めてだったのに、それはナシ、と言われるとそれはそれでなんか悔しい。

「いえそんな、組手をしたぐらいで風紀に呼び出しなど。
 むしろそういう意味では怪我をさせた私の方に非があります。
 ――ですが、そう言っていただけると、ありがたいで――」

頭を撫でられ言葉が止まる。
頭の上に何か乗っている感触。
顔を上げれば、彼の手が伸びていて。
不思議そうに自分の頭に手をやれば、彼の手が触れて、

「――――ピャッ!」

正座したまま跳ねた。

武知 一実 >  
「なんでちょっと不満げ……?」

心中気遣ったら納得いかないって反応が返って来た。解せぬ。
まあ先輩なりに思うところあったのだろう、それを察せれるほどオレは人生経験に富んでない。

「それでも風紀委員の一人に怪我させたってなれば、事情聴取の一つくらいあるでしょ。 そういう連中だから、オレは詳しいんだ。
 男子たるもの生傷の一つくらい常に付けとくもんだしなー。
 だからそう責任感じなくて……も……?」

なでなでよしよし、とあやす様に撫でてみたら先輩の言葉が止まった。
えぇ……さっきあんだけ打ち合ったってのに、単純接触は駄目なん?
が、正座したまま跳ねられればさすがに看過出来るはずもなく。

「ッだから、さっきも逃げた時もだけど急に動くなっての!」

頭打ってんだぞ、と若干ムキになりながら先輩の体を再度押さえてみる。 どうやってって? ハグで。

桜 緋彩 >  
「べつに……」

むすっとしたまま目を逸らす。
別に大したことじゃないもん。

「職務中の風紀委員相手ならともかく、鍛錬中での事故ならばそんなことはしませんよ」

風紀委員をなんだと思っているんだ。
そりゃ何度も捕まって恨みがあるのはわかるけれど、それはケンカをする方が悪いと思う。

「ピ――」

しかしハグされれば今度こそ動きが止まる。
そのまましばらくフリーズしたのち、

「ひゃああぁあぁぁああぁあ!?!?!?」

腰の捻りと上半身のバネだけで放つゼロ距離リバーブローをブチかます。
モーションは一回なのに、彼の右脇腹には十六回もの衝撃が連続して炸裂しただろう。

武知 一実 >  
「……よく分からねえ人だなあ」

やっぱり女子ってよく分からない。 遠くから見てるだけの方がいい。
けどまあ、それだとあんな楽しい喧嘩出来んかったわけで……ううむ。

「本当に? まあ、アンタがそう言うならそうなんだろうけどさ……」

喧嘩してみた感じ、かなりの強者って感じだったから、そんな先輩に怪我させるなんて!って風紀委員が追って来ない? 大丈夫?

「ぴ?」

お、動きが停まった。やっぱりこれが一番効果的か。
まあさっき帳消し扱いにしたのが不満だった様なので、これで改めて……って、うわ、うるs

「いてててててててててててててててェ!?」

突如俺の脇腹に16打撃が入った。いやヒットは間違いなく一発だったけど、内臓を揺する衝撃が16あった。 まだそんな大技を隠し持ってたのか。
とはいえ突然の衝撃に思わずぎゅっと腕に力が籠る。 そしてその後腕に力が入らなくなって先輩を解放する。

「あ、暴れんなって……言ってんの……」

ぜえはあ、オレだってまだ偏頭痛残ってんのに、何すんだホント……

桜 緋彩 >  
「なんなんですか!!
 さっきから、こう、その――はしたない!!」

耳まで真っ赤になって距離を取る。
右手で指差してぶんぶんぶんと振って大声で叫ぶ。

「そんな、おんなのこに、いきなり、抱き付いたらだめです!!」

だめです。
十六連打くらうからだめです。

武知 一実 >  
「アンタが……大人しくしてねえからでしょ……」

未だに衝撃に身悶えながら、叫ぶ先輩へとオレは反論する。
そんなつもり更々無いのに、はしたないと言われるのは酷く心外だ。心外過ぎて一周回ってまあそういうもんかと納得してしまうくらい心外だ。

「そんな事言われたって、女子を抱き締めたの何て今のを数に入れて良いんなら初めてだっての。
 ……まあ痛い思いするって分かったから、もうしないつもりでいる」

さすがに至近距離で脇腹に十六連打は辛かった。 それでなくとも腹筋は他ならぬ先輩の手で痛められてるってのに。

桜 緋彩 >  
「だ、だって、急に、びっくりしたんだもん!」

半分涙目になりながらぴぃぴぃと鳴く。

「う、ぐ――それは、ごめん、なさい……。
 でも、びっくりしたから……」

つい嵐剣を使ってまで十六連リバーブローをブチかましたのは申し訳ないと思っている。
流石に大人しくなり、しょんぼり。

武知 一実 >  
「先輩に必要なのは組手じゃなくて精神修養なのでは……?」

涙目になられても困る。むしろオレが涙目になりたい。
この先輩、戦闘力をつける前に異性への抵抗力をつけるべきでは?

「もう、びっくりしたから以外の理由が出て来ないのは十分分かったんで
 オレの方こそ急に抱き着いてすいませんでした。はいお互い謝ったね、これで手打ち。 良い?」

何も良くは無い気がするが、あんまり先輩にしょんぼりされ続けられる方が困る。
また頭を撫でたくなるし、さっきまでえげつない殴り合いをしてた相手と同一だって脳が認証を拒む気もする。

桜 緋彩 >  
「う゛ッ゛」

どすっ。
胸の真ん中の弱いところにクリティカルヒットした音がする。

「は、はい。
 お手数、おかけしました」

すーはーと何度か深呼吸。
よし落ち着いた。

「――あの。
 何故、ケンカを繰り返すのですか?」

ちょっと前から気になってたことを聞いてみる。

武知 一実 >  
「あ゛っ……なんかごめん。 もし頑張ってる最中ってんなら、オレで良ければ、協力するけど」

意図せずクリットさせた気がする。いや、そんなつもりは……まさか自覚があったなんて……。

「ん?
 なぜってそりゃあ、売られたから買ってるだけで。
 別に自分から吹っ掛けてるわけじゃない、って風紀でも散々言ったと思うけど」

そういう記録とか残ってないんだろうか。まあ残すほどでもないと思うけど。
大抵は絡まれてる奴が居るところに出くわして、間に入ってそのまま絡んでた奴らと喧嘩になるパターンが多いな、と自己分析をしてみる。

桜 緋彩 >  
別に頑張っているわけではない。
いざ戦闘となったらスイッチは切り替えられるし。
普段の不意打ちに弱いだけだ。

「それはまぁ、知ってはいますが。
 ですが、わざわざケンカせずとも、逃げるなり我々風紀に通報するなり、色々やり方はあるでしょう?」

まぁ、さっきの彼の様子から、性分なのだろうな、とは思う。
思うけども、ケンカして怪我を負わせたりすれば傷害だし、そもそもケンカ自体が良い事ではない。
その辺はどう思っているのだろう、と。

武知 一実 >  
「………」

オレは少しの間言葉を出しあぐねた。
先輩の言う事はもっともだ。 わざわざ喧嘩を買う必要は無い事は分かってる。
オレ自身が気が長くないからってのもある、けどそれ以上に何かがあるんだ、オレの中で。

それを、先輩(この人)に理解できる言葉に出来るのか……?

「……風紀に通報したって、通報してその瞬間に来るわけじゃねえ。その間に逃げたりする馬鹿も居んだろ?
 そういう奴らはたとえ風紀にノされたとこで、『風紀が来るから悪いことはしちゃいけねえ』って思うだけだ。
 風紀が来るから、じゃねえ。 やっちゃいけねえことはやっちゃいけねえことだ。それを思い知らせるには、風紀以外の誰かも馬鹿どもをぶん殴ってやんなきゃいけねえじゃねえか。」

ぽつぽつと語ってはみるが、自分の中でもしっくり来ねえ。
それになんか風紀委員の所為にしてるみたいで気に食わねえ。
違う、もっと単純に、そうオレみたいな――

「世の中にゃ言葉で自分の事を表現出来ねえ馬鹿が一杯居ンだよ。
 弱いやつに絡まないと自分を保てねえような馬鹿が、思ってるよりいっぱい居るんだ。
 そう言う奴らはもう殴り合いでしか話が出来ねえから、誰かが聞いてやらねえと。取り押さえて、建物の中で問い質すんじゃなくて、さ。
 ……そういうことが出来ンのが、その時その場にたまたまオレしか居ねえってだけ。」

うん、こっちの方がしっくりくる。
別にオレじゃなくても良い、でも俺しか居ない。 だからやってる。
我ながら単純明快過ぎる気もするけど、オレがそう思ってるだけで先輩に伝わるかどうか……

桜 緋彩 >  
「ふむ、なるほど」

つまり彼は彼なりにこの街の治安を考えて行動していた、と言うことだ。
風紀では止まらない何か、と言うのも、まぁ気持ちはわからなくはない。

「一応言っておきますと、取り押さえて建物の中で問い質すと言うのは、彼らを責めるためにやっているわけではありません。
 事件の背後にもっと大きな事件が隠れていないかとか、罪を正しく裁くために正確な情報を得るためと言う側面があります。
 そこはご理解いただきたい」

別に好き好んでやっているわけではない。
中にはそういうタイプもいるかもしれないが、基本的に捕らえたものを虐めるためにやっているわけではないのだ、と。

「それを踏まえた上で、やはり称賛は出来ません。
 一実どのの言う通り、殴り合うことでしかコミュニケーションが取れないと言うのも、わかります。
 わかりますが、そこで一般人の一実どのが殴り返して終わらせてしまうと、先ほど言ったような正確な情報が得られない可能性があります。
 一実どのが怪我をして、後遺症が残る可能性だってあります」

言いたいことはわかる、納得も理解もする。
ただ、それでは結局暴力が広がるだけだ。
それは絶対に違う。

「風紀に恨みがあるのはわかります。
 信用が無いのも仕方ないと思います。
 それでも、もう少し我々を信じていただけないでしょうか?」

武知 一実 >  
「今言ったっしょ、自分の事もまともに言葉に出来ないやつも居るって。
 そういう奴にはもっと原始的(シンプル)な方法じゃないとそもそも情報すら出て来ねーよって事。
 別に風紀がやってる事が悪いとは言わねえし、必要なもんだってのは分かってる」

ただコミュニケーションが言語になったとたん不全に陥る者が居るってだけだ、表現は古臭いが拳でしか語れない馬鹿が。
オレだってそのクチだから分かるし、そいつらには殴り合いが最も効果的ってだけ。

「別に称賛される気もねーさ。
 オレはただ、喧嘩して話してるだけなんだ。 別に他の奴らが道端でお喋りしてんのと変わんねえ。
 馬鹿な事した奴に『何でそんな事してんだ馬鹿』って聞いてるだけ。 そういう相手を選んで喧嘩してるよ、一応。」

何にもならない喧嘩ほどやってつまんないモンは無い。
腕っ節比べなら、それこそこの人のように組手なり何なりすれば良い。
オレはただ、それしかコミュニケーション手段を持ってないやつとコミュニケーション取ってるだけ、だ。 ムカつくときもあるけど。

「繰り返しになるけど、ムカつく時はあっても風紀に恨みはねえよ、アンタの事は好きだしな。
 信用は……その時々によるけどよ、まあオレから言わせて貰えば……
 他を信じてないのは、どっちかというと風紀委員の方に感じるぜ?」

現に今だって、オレのこと何も信用してないじゃないか、と肩を竦めるしかない。

桜 緋彩 >  
「ううむ」

彼が言いたいことはわかる。
わかるが、それでは社会が成り立たないと言うのも事実。

「そうは言っても、やはり現代社会は言葉でのコミュニケーションが基本です。
 言葉でそれが出来ないからとそうしてしまえば、それはそれで言葉でしかコミュニケーションを取れない人に迷惑が掛かる場合もありますし……」

腕を組んでうーんと悩む。

「それと、一実どのに関してはやはり風紀の方から信用してくれと言うのは難しいと思いますよ。
 理由はどうあれ、規則に違反しているのは事実ですし」

相手から売られたにせよ、どっちにしろケンカをしていると言うのは事実だ。
それは規則違反であり、違反をしている人を信用しろ、と言うのはなかなか難しいだろう。

武知 一実 >  
「――先輩はさ、言葉が通じない相手ばかりいる場所で、言葉が通じる相手が一人居たら誰に話しかけに行く?
 それと同じだ、話が出来る奴が居ればそっちに行く。一度話が出来る奴が居ると解れば、わざわざ話の通じないやつに話しかけに行く奴はそう居ねえだろ。
 そういう受け皿も社会には不要でも、人が生きてくにゃ必要だろ?」

別に他に適役が居るなら代わってくれたって構わない。
必要としてる奴が居るから、必要なことをしてるだけだと言いたいんだけど、それでも駄目なんだろうか。

「別にオレ個人はどうでも良いんだよ! 結局喧嘩すんのが楽しい時があるってのも否定しねえし。
 ただ、自分が決めたわけでもねえ規約に沿いたくても根っこから相容れらんねえ奴が居ることを分かってくれってだけだ。」

別に風紀に信用されたからと言って得するわけでもねえし、それはそれで良いんだけど。
相手を信じる姿勢も見せずに信じて欲しいと言うのは虫が良過ぎるだろ、って話だ。

桜 緋彩 >  
「ええ、それはわかります。
 どうしても社会に馴染めない人はおりますし、そういう人たちでも生きていかなければならない、と言うことも」

勿論わかる。
社会のルールなんて人が勝手に決めたことだし、自分のルールと衝突することもあるだろう。
自分だってたまにはそう言う時がある。
とてもよくわかる。

「ですが。
 この世界で暮らしている人のほとんどは、合わないルールと折り合いをつけて何とか暮らしています。
 苦労の差はあれど、どこの誰が決めたものかわからないルールをどうにか守って暮らしているのです。
 だから信じて貰えるのです。
 ルールは守らない、相手のことは信じない、その癖相手には信じろと言う。
 それは流石に難しいですよ」

じ、とまっすぐに彼の眼を見て。

武知 一実 > 「ちょっと落ち着いて思い出してくれ。 先に信じてくれって言ったのはアンタの方だぜ。
 それに対して自分を信じてくれないやつをどうして信じられるんだ、って返しただけだぜ。
 その結論が、それは流石に難しい、なら話はそれまでになっちまうよ先輩。」

御高説はご尤もだが、それが出来たら最初からあぶれ者なんて出ていない。
やっぱり馬鹿(オレ)が言葉なんて使うもんじゃなかったなあ、と頭を掻くしかなかった。

「まあ、難しいってんならしょうがねえさ。
 風紀はこれまで通りルールに従う事が出来る奴らを守ってやってくれりゃあ良い。
 オレはオレより弱い奴の味方なんでね、まあルールに沿えない馬鹿たちを何とかしてくさ。その結果オレがしょっ引かれようが怪我しようが、オレの責任だろ?
 まあ安心しな、武力蜂起しようとか馬鹿なことはさすがに考えもしねえさ」

こちらをまっすぐに見る目に対し、オレは微かに笑い返すことしか出来なかった。

桜 緋彩 >  
「ええ、ですから信用できないのはルールを破るからです、と言いました。
 それでもこちらから先に信用してほしい、と言うことであれば、それは難しい、と言う話です。
 協力は出来ると思うのですけどねぇ」

全て自分で解決しようとしないでほしい、と言うことだ。
風紀だって一枚岩ではない。
ルール完全主義のものもいれば、拳で語るタイプのものもいる。
ある程度の連携は出来るのではないか、と思うのだが。

「まぁ待ってください。
 確かに一実どのの勝手ではありますが、その都度風紀委員に負担がかかりますし、怪我をすれば病院の負担も増えます。
 それよりも、まぁケンカをした後で構わないのですが、もしそう言う体力を持て余している人たちを私に紹介していただきたいのですよ」

風紀委員桜緋彩ではなく、桜華刻閃流の桜緋彩に。

「実はここで道場の真似事をしておりまして。
 私は風紀の仕事もあるのでいたりいなかったりしますが、ほぼ毎日誰かしらは鍛錬しております。
 もし振るう拳を持て余しているような方であれば、その振るう先がありますよ、と」

武知 一実 >  
「まあ馬鹿な奴らでも愚鈍なわけじゃねえしな。
 利害が一致すりゃ一時的な協力くらいは出来るだろうさ。
 その辺りは風紀委員(アンタら)がさじ加減間違えなきゃ良いんじゃねえか?」

結局のところ大半はこの島で生活をしなければならない人間だ。
一時的な協力であれば日頃相反してたとしても、決して不可能ではないとは思うが。

「可愛い顔してさらりと辛辣な事言うよな。 風紀も病院もそれが仕事でやってんだろ、負担って言うなよ。……まあ良いけど。
 喧嘩した後で良いんかい……まあ、大抵喧嘩した後でも無駄に元気だからなそういう馬鹿は。 はいよ、考えとくよ
 風紀委員じゃなくて先輩個人の頼みってんなら、吝かでも無いしな。
 ……けどまあ、」

とは言えそう素直に言う事を聞く連中でないのは火を見るよりも明らか。
そんな奴らの手綱を果たして先輩が取れるのか、ちょっと試してみたくもあり。
オレはぐい、と先輩の顔に顔を寄せ。

「もちろんタダでとはいかねえな?
 緋彩が時々オレの相手してくれるってんなら、呑んでやってもいいぜ?」

これで狼狽えるようなら、少し保留だ。 ある程度声掛ける相手を見繕う必要も出てくるし。

桜 緋彩 >  
「まぁ、こちら側にも過激なものと言いますか、無駄に敵対心が強いものもおりますから。
 そういう人には一応私から今聞いたような話はしておきますが……
 でも出来るだけケンカは控えてくださいね?」

理想で言えばやはり誰もケンカしないのが一番だ。
怪我の治療にお金もかかるのだし。

「仕事だからと言って負担が多くてもいいわけではないのですよ。
 そういう方々はケンカの先に言っても話にならないものでしょう?」

自分だってそう言う人の生態?は知っている。
まずはぶん殴ってから、と言うのはまぁ多いだろう。

「はっはっは!
 勿論構いませんとも!
 ただし、まぁ流石にルールは決めましょう。
 後頭部への打撃、これは後頭部を強打させる目的での投げも含めましょうか。
 それと目や喉、金的はナシ。
 いかがですか?」

に、と笑って。

武知 一実 >  
「へぇい、出来るだけな。
 売られたら買うぞ、そこは譲れねえ」

オレにだってプライドはある。他人から見て取るに足らない様なもんでもな。

「そこはお給金貰ってんだから仕事してくれよ……見合わないってことは無いだろ、特に風紀。
 ふぅん、分かってんじゃねえの。ま、その方がオレも楽だしな」

言葉より先に手を出すのが挨拶みたいな連中もいることだし。
理解を得られているのは有難いもんだねえ。まあ、それを良しとは思われてないのも事実だけど。

「むぅ……期待した反応と違ぇ
 けどまぁ、先輩のそういうとこが好きだぜ。
 ルールはそれで良いだろ、文句なし。
 どうせなら今度は得物を持って戦るかぁ……先輩はそっちが本職だろ?」

思ってた反応と違うけれど、まあ望んでた反応ではあるので良し。
ルールの提示に頷いて、外のほとぼりも冷めたかと立ち上がるオレだった。 そろそろ帰ろ。

桜 緋彩 >  
「はい、出来るだけで構いません。
 ただ風紀の来なさそうなところでお願いしますよ、裏路地とか」

お互いが望んでの殴り合いであれば、まぁ良くはないが、一般人に迷惑が掛からないならまだマシだろう。
その気持ちがわからないわけではないし。

「勿論仕事はしますよ。
 ですが、これでも結構風紀の手が足りていないのですよ。
 最近は特に厄介な事件が増えておりますし……」

そうでなくても怪我をしたりするし、非番が潰れたりもする。
何事もないのが一番なのだ。

「?
 ――あぁはい、私は剣士ですので、そちらの方が得意ですね」

期待した反応はなんだったのだろう。
首を傾げるも、次は武器を持ってと聞いて嬉しそうな顔。
なんだかんだ結構好戦的なのであった。

「帰りますか?
 送りますよ、風紀委員に鉢合わせしたら面倒でしょう。
 片付けしますので少々お待ちを」

こちらも立ち上がり、木刀やらなんやらを片付ける。
刀を二振り持って、まだ彼が待っていてくれたならば、共に施設を後にしよう。
自分がいれば、途中で風紀委員と鉢合わせしても時間を取られることはないだろう――

ご案内:「訓練施設」から桜 緋彩さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から武知 一実さんが去りました。