2024/06/27 のログ
ご案内:「訓練施設」に霜月 雫さんが現れました。
■霜月 雫 > 「んん~~っと」
大きく伸びをしながら訓練施設に顔を出す。
そして、その場でストレッチを開始。
30分ほど念入りにストレッチをしたのち、施設の装置をぽちぽちと操作する。
「えっと……こ、このパネルを、とんっとすればいいんだよね?合ってるよね……?」
たっぷり40分以上悪戦苦闘してから、なんとかかんとか設定を完了し、指定エリアの中心に立って、愛刀の大太刀『凍月』を抜刀。
平正眼に構える。
■霜月 雫 > 「さて、と」
そして、静かに構えたまま待機……していると。
装置から、ランダムなタイミング、ランダムな場所から、高速のゴム弾が発射される。
それらを。
「ふっ!やっ!とぉっ!!」
反射的に切り捨てていく。
過つことなく、本来小回りに優れない大太刀を軽々と操り、一つ一つ的確に両断していく。
さながら、舞うかの如く。
■霜月 雫 > それは、客観的に見ても「見事」と言うに足る技量だろう。
しかし、一通りを終えて周囲をゴム弾の残骸だらけにした後、大きくため息を吐く。
「……多分、こうじゃないんだよね」
そして漏れるのは、手ごたえの無さへの嘆き。
一端刀を鞘に納めながら、うーんと考え込む。
「無念無想剣……多分、こう言う訓練じゃあダメだよね」
無念無想剣。
霜月流の奥義にして剣境。
かつて一刀流開祖伊東一刀斎が鶴岡八幡宮へ参籠していた折に開眼したとされる奥義『夢想剣』。
それと酷似するとも、それを発展させたとも言われる、瞬間反射で敵を斬る無想の奥義。
それを手にしたい、と思い普段とは違う訓練をしてみるも……。
「やってることが間違ってる気がする……」
ランダムに向かってくるゴム弾を斬撃する。
反射の鍛錬になるかと思いやってみたが、あくまで「ものが飛来する際の反射神経」の鍛錬にしかなっていない、そんな気がするのだ。
■霜月 雫 > 「うーん……」
そもそも、伝承に曰くところの『夢想剣』は、参籠で疲れているところに突然敵に襲われ、それに対し頭で考えるのではなく反射で斬撃し、斬った後で襲われたこと、そして相手を斬ったことに気付いた……と言うモノだ。
そして無念無想剣はそれを発展させ、物事の起こり、神道無念流における『未発の象』に近い概念を感じ取り、それに対し反射で先んじて斬ることで制する、と言う技法……と父から聞いている。
「そもそも、機械相手に『気を読む』も何もないしなあ」
気と言うのは、オーラとかそういうオカルティックなものではない。
人間が動作を発する際に起こす些細な予備動作。
息を止める、腰をわずかに落とす、視線を動かす、意を決してわずかに力むなどなど……それらの微細な動きのことを指す。
機械にもそういった物が無いわけではないが、それはあくまで固定化されたものであり、どちらかと言えばパターンに近いものだ。
「対人訓練……でもうーん……」
となれば、やはり人を相手にしないと意味がない……のだが、これまた簡単ではない。
単純に、『気』『未発の象』を『隠す』と言う技量を持っている人間が限られるのだ。
これらの動作は人間なら誰しも多かれ少なかれ発してしまうもの。だが、これを読まれると不利になる故に、武術の達人になればなるほど隠すのが上手くなる。
その域に達している知り合いは、とりあえず二人いるが……二人とも風紀委員。常から忙しそうなのである。
■霜月 雫 > 「いっそ私も風紀でもやる?いや、それは流石に違うか……」
この学園において、風紀委員は警察に近い役割を果たしている。
それに鍛錬目的に近い形で参加するのは、流石に不誠実が過ぎるだろう。
そもそも、夢想剣のことを考えれば、言ってしまえば『さあ訓練するぞ』と身構えている時点でズレている気がする。
あくまで偶発的な状況下でも、即座に対応できる常在戦場の極み。それが本質だと思うから。
だが、この学園は、全体の治安がいいとは言い切れないが、普通に過ごしている分にはそう酷い事にはならない。
伊東一刀斎のように『お参りに行ってたら襲われる』みたいなことは、まずないのだ。
「だからって、スラムに行く、ってのもなぁ……」
自分を餌に襲わせて、それを迎撃することで稽古とする。
間違っていないとは思うのだが、それは倫理観が許さない。
そもそも、二級生徒などと呼ばれているが、れっきとした生徒、生きている人達だ。
それを『稽古のために勝手に使って痛めつける』と言う前提を、霜月雫の倫理観は許容できなかった。
「じゃあ……どうしよ」
とはいえ、結果手詰まりになってしまうのだが。
■霜月 雫 > 「今度、凛霞や緋彩にでも頼んでみるかなあ……」
『未発の象』を隠せるレベルにある心当たり二人のことを思い浮かべる。
とはいえ風紀二人、忙しいところに手を取らせるのは本意ではない。
「こればかりは、難しいなあ……仕方ないけどさ」
実家にいたころは稽古相手には事欠かなかったが、それがいかに贅沢な話だったかと言うのを痛感する。
周りを同じ道を志す人たちに囲まれ、日常的に切磋琢磨出来る環境。
そのありがたみに今更ながら感謝しつつ、今そうではないことを受け入れる。
でも、その上で。
「気楽に稽古出来る相手がいればな~……」
そんな贅沢をこぼしながら、ふうっと息を吐く。
■霜月 雫 > 「今日は帰るかな。さて、掃除掃除っと」
そう呟いて、周囲に散らかっているゴム弾の残骸をせかせかと掃除し始める。
そして、綺麗に掃除を終えてから、訓練施設を後にした。
ご案内:「訓練施設」から霜月 雫さんが去りました。