2024/07/05 のログ
緋月 > 「いや、そこでさらりと「贈る」と言い切れる方も大概では、と。
まあ、お言葉通り、先の話ですからね。」

ちょっと苦笑。
何と言うか、そういう事をさらりと言えてしまうのは色男の素質…いや女性に見えるから色女? ややこしい。

そんな事を言っている時に、

そう、完全に、思いもかけない方向から、

緋月 > 「――――どうして

どうして
その名前を――――」

緋月 > 次の言葉で、はっとした顔。
この話の流れは――ああ、そう言う事だったのか。

「あ、ああ…愛称みたいなものですね!
いや、さっきのは忘れて下さい! こっちの、つまらない事情ですから!!」

思わず構えを解いて、ぶんぶんと手を振っている。
動揺気味に誤魔化そうとしているようだ。上手く行っているかは別として。

「――ああ、はい、その――いい呼び方だと、思いますよ?
それじゃ、えっと――あかねさん、でいいんでしょうか?」

ちょっと混乱が残りながらも、そう訊ねてみる。

ノーフェイス >  
「……………」

目を瞬かせる。

なにか。
指が、思わぬ場所にふれたような感触。
なにに触れたのか、そんなことは、わかり得るはずもない。
すべてを見通す眼などなくば。そんなに頭もよくないのだ。

けれども。
――――ああ、

「…………うん」

穏やかな、微笑みは。
冗談の色を脱ぎ落として、静かに。

緋月(キミ)がいいなら」

きっと、特別な音なのだ。
彼女にとって――ならば。ならばこそ(・・・・・)
そっと這い寄る。紅いまぼろし。手にもった凶器がふれぬよう。
彼女の肩に、顔を埋めるようにして。

「……もっと」

熱を。

「ちかくで、呼んでほしい」

あかねさん(・・)では、イヤだと。
彼女が紡ぐ、ふるえ(・・・)を求めた。

「…………だめ?」

緋月 > 「――――っ、」

顔が近い。声が近い。
だめだ、頬が熱くなる。心の臓が騒いで止まらない。

「………」

近くで、呼んで欲しいと囁く声。
ちょっと、脚が震えてしまう。いけない、力を入れ直さなくては、膝から崩れて落ちそうだ。
手の中の木刀を、手が痛くなる程にきつく握り締めて、何とか思考が蕩けるのを回避する。

ごくり、と唾を飲み込む音。
聞かれなかっただろうか、と心配しつつ、

「――――――あ、」


『あかね』、と、
恥ずかしさと緊張で震える声で、何とか絞り出すように答える。

ノーフェイス >  
震えるのなら、腰を抱いて。
その身でもって支えよう。
体温が高い。熱と欲動の塊。

聞こえたか、って?
――分厚い壁越しに、素振りの音が聴こえる耳だ。

心拍も。
嚥下も。

眼を閉じたまま、受け止める。
耳に――骨に。
空気の震えは、鼓膜を打ち、総身をふるわせる。

だから、(うた)が好きだ。

「……………」

肩にうずもれた顔を離す。
ほんの間近に、覗き込む。
遊びのない、表情が。

「ありがとう」

熱く潤んだ瞳が、深紅の瞳を、覗き込む――もっと、奥に……

ノーフェイス >   
「…………これ以上はやめとこっか」

訓練どころじゃなくなっちゃってる。
そう言外に告げながら、にこりといつもが戻ってくる。

いつもではない姿を、そっと胸に、新たな棘としのばせて、躰を離した。
あるイミでは、そういう(・・・・)雰囲気を――意図的にかき乱す。
くるりと振り返り、顔は見せない。どんな顔をしてるのかも。

「シャワー浴びてきなよ。
 そしたら、どっかでご飯食べよ?」

ことり。
所定の位置に、棒を戻した。後ろ姿。

緋月 > ごく短い、感謝の言葉。
其処に再び心臓が大きく跳ね上がった所で、

「――ふぁっ!?」

終了の提案。一気に正気に返った。
――直後に顔だけが一気に赤くなる。

「…そ、そうですね、今日は、もうこのへんで…。」

恥ずかしい。すごく恥ずかしい。
ちょっと簡単に収まりそうにない赤面のまま、小さく震える笑顔でそう返す。まるで誤魔化せていない。

「あ、はい…! では、ちょっと失礼しますね…!」

自分も借りていた木刀を戻すと、小走りにシャワー室へと走っていく。
シャワーは偉大だ。お湯だけでなく冷たい水も出る。
お陰で熱くなった顔をしっかり冷やす余裕が出来た。

シャワーを浴びて戻ってくれば、何とかいつも通りの雰囲気だ。
荷物――といっても大したものは持って来ていなかったが、纏め終えると提案に乗って食事へと出る。

その道中、連絡先の交換の名前登録でまたちょっと顔を赤くすることになった。

ちなみにご飯は大盛りの牛丼をセレクトした少女であった。
お米とお肉は体力を戻すのに欠かせない。

ノーフェイス >  
穏やかな日々に、ひとたび戻った少女の傍らで。
肩肘張らない時間をすごして、その日を終える。

緋月(キミ)が冷たいシャワーを浴びていたとき。
どんな(かお)をしていたか――――

―――いましばらくは、謎で居よう。
識りたいなどと、願ったキミが悪いんだ。

ご案内:「訓練施設」からノーフェイスさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から緋月さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
訓練場、畳張りの間。
たまに人気時間を見つけて、こうやって瞑想することが増えた。

自宅の道場で慣れ親しんだ道着袴に着替え、正座し精神統一。
ここのところ、精神が揺らぐような出来事が多かった。

いくら大切な妹のことといえ、あまりにも未熟…。
精神鍛錬が足りない。

武術の道を歩むも伊都波凛霞のもつ姿の一つ。

凛とした佇まいで瞑想する姿は、それを目視する生徒に思わず溜息を漏らさせる。
普段の快活で明るいイメージが落ち着き、実に絵になる姿である。

伊都波 凛霞 >  
「―――ふぅ…っ」

十数分の瞑想の後。
深く深く息を吐き…目を開く。

絹擦れの音もすら点てずに立ち上がれば、正面には剣術で使用する打ち込み用の木人。

─前にやった時は、色々迷いや戸惑いもあった時期。
"遠当て"にもそれが現れ、ダミーを大きく跳ね飛ばしてしまった。

伊都波 凛霞 >  
しかし今日は違う。
迷いはなし。蟠りも振り切った。
季節柄長く続く雨模様とは裏腹に、心は澄みきり、晴れ渡っている。

重心は真下。
下肢と腰を切る動きも最小限。
(はす)に構え、前に突き出した掌が──瞬間、ブレる。

動作は、それのみ。

───、一瞬遅れて、カタカタとダミーターゲットが小さく震えた。
吹き飛びもしないし、倒れもしない。

伊都波 凛霞 >  
古流武術・伊都波"鼓威し(つつみおどし)"

音もなく成し遂げるには相応の才気、そして修練が必要となる。

「…よし。調子もいい」

小さく零し、微笑む。

幾人かいるギャラリーは首を傾げる。
いまいち、何をしたのかがわかっていなかったから。

そしてしばらくして漸く気づく。

カタカタ…カタカタ…カタカタ──

ダミーターゲットが、数分経つにも関わらずずっと小さく震えていることに。

伊都波 凛霞 >  
それはただの遠当てに非ず。
相手が生身であろうが、堅牢な甲冑を着込んでいようが。
その内部に衝撃を反響させ続ける技。
直接触れることすらなく―――――(絶命すらさせ得る)

古流武術にいくらも存在する、危険な技…本来は人目も憚らず見せる技でもない。
凛霞程習熟した腕があって初めて"よくわからないもの"として認識させることが出来る。

「…気を引き締めて、技も磨いておかないと。
 次に何が出るかなんて、わからないもんね…」

この半月程の出来事、事件…現在進行系のものも含め、言葉にすると共に心に刻む。

ご案内:「訓練施設」に霜月 雫さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
古来戦場で生まれた組討ちから発展した術技なのだから、物騒な技が多いのは仕方なし。
もちろん近代武道となんら変わらない技もあるし、道場で近所の子に教えているのはそれである。

しかし今回の一連の騒動でよくわかった。
異能、そして異能に並ぶような力。
それは科学力であったり魔術であったり。
何人も風紀委員が失敗し、敗走した。

(使う技)を選んでいては、遅れを取る。

それがよく理解った。

霜月 雫 > 「流石、キレてるね」

ギャラリーの中から、ぱちぱちと拍手の音。
そして、いつも通り長大な竹刀袋を背負った姿で、前に出てくる。

「にしても、気合入ってるね?何かあった?」

暗に『そんな物騒な技を稽古なんてしてどうしたんだ』と問う。
彼女の技、流儀についても知識があるが故に。

伊都波 凛霞 >  
「あれ、雫だ」

ギャラリーの中あら歩み出る見慣れた姿。そして聞き慣れた声。

武術や剣術をやっている知り合いは比較的多いけど、彼女は別格。
それなりに昔から知っているけど、そのストイックさは見習うべき部分も多々ある武人だ。

「何もなかったらやらないよ~」

苦笑する。
わかってるくせに、と。

「それで、わざわざ出てきてくれた…ってことは、鍛錬に付き合ってくれるってこと?」

遠巻きに見る生徒達は、道着袴姿の完璧超人と居並んだ美少女剣士の登場にざわつきはじめていた。

霜月 雫 > 「うん、私も『無念無想剣』へのとっかかりを掴みたいなって思ってたとこだったしね。
それにほら、お悩み相談くらいはね?友達だしさ」

軽口のように言いながら、竹刀袋から二振りの刀……大太刀『凍月』と、太刀『瑠璃月』を取り出す。
そして、少し考えて、凍月を抜き放ち、瑠璃月を腰に佩いた。

「必要があるかは分かんないけど、巫術で刃引きはしてるから問題なしだよ。
――そっちはOK?」

それだけ。
まだ構えてもいない。
だが、明確に雰囲気が変わる。温厚から静謐に。気さくな女子高生から、一門を背負う未来を期待された剣士に。

伊都波 凛霞 >  
「悩みは丁度晴れたとこ。必要なのは実戦勘を取り戻すことかな…。
 だから雫が付き合ってくれるなら、とっても助かっちゃう」

対武器、これ以上の相手は探しても難しい、大歓迎だ。
にっこり笑みを浮かべて、そう言葉を返す。

彼女としても断る理由はないのか、刀をその身に佩びて。

「刃引きなしでいいよ。緊張感ないと直感も鈍るし」

それじゃあ、と畳の上を少し移動して、間合いを開く。

「──宜しくお願いします」

小さく一礼。
先に動くのはどちらか──

霜月 雫 > 「ん、じゃあより適任かな。
にしても強気だね?本気でいくよ?」

無論、それは大前提なのだが。
加減なんてして戦える相手ではないことも、重々承知しているのだから。

「うん、よろしくお願いします」

そう言って、半身平正眼……霜月流『漣の構え』に取る。
そこからの待ち。先手を譲る形……に見えて、仕掛けている。
大太刀の広い間合い、そしてやや刀身は寝かせながらも切先は正確に凛霞の正中線を捉えている。
間合いを活かし、切先の駆け引きで敵を制し、封じ込める。
よく知るであろう、霜月雫の基本にして常勝の戦型だ。

伊都波 凛霞 >  
「──私が徒手でも、間合いは"開けすぎじゃない"よ」

見慣れた構え、その切っ先を向けられた少女から出た言葉はそんなもの。
互いに剣を構えていたらむしろやりづらいんだろうな…そう心から思う。

ノーモーションの遠当て。
それに浸透剄を乗せた──

間合千畳鼓威し(つつみおどし)

今しがた見せたばかりの、本意気。

まっすぐに構えているだけに、それをどう避けるのか。
それともあえて切り込むのか、(幼馴染)の選択に僅か、心躍らせる。

霜月 雫 > 「だろうね。この間合いで慢心できるほど、自信にあふれてはいないよ」

言いながら、飛来する勁を感覚で捉える。
そして……それを『避けない』。
では斬り込むのか、そうもしない。
正確に、俊敏に、その勁を切先で『受け』……

「でも、凄い技だけど、分かっていればちょっと特殊な飛び道具とあんまり変わらないよね」

そのまま、刀を振り上げる動作の中で、勁の威力を『流し』た。
強烈な打ち込みで切先を退かそうとされた際に用いる、威力を流しながら振り被ることで即座に攻撃に移る技法。

霜月流大太刀術『朧月』

そのまま流れるように踏み込み、右袈裟に斬り下ろす。
――そして、凛霞(幼馴染)なら知っているであろう。
この右袈裟は、必殺を期するものでありながら、あくまで初手。
降り下ろしてからの高速の返し技は、霜月流の得手とするところであり……シズクも、例に漏れずその技法に熟達していることに。

伊都波 凛霞 >  
「(―――流石!)」

避けたら避けた先。
切り込むなら呼吸を合わせ懐へ飛び込む算段だった。
高次予測を初手で躱す思い切りの良さ。
そしてそれを成功させる、裏打ちされた技巧。
流石の一言。

「でも───」

その次の行動は、戴けない。
確かに初手への対応は見事。
けれどそこで攻めに転じるには、早かった。
なぜなら鼓威しはノーモーションの遠当て。
つまり放った後、先に動けるのは此方なのだから。

初手を対応してもその切っ先が返り、隙を生じぬ技と為る。
故に、先の先を取れている今だからこそ、その"起こり"を捉えることが出来る。
踏み込みに先んじての入り身、刀を降り下ろさんとするその二の腕に己が手をつがえ───

「疾ッッ!!」

裂帛の気合と共に放つのは、その慣性を十分に利用させてもらっての一投!
ベクトルは、刀と同じく、真下へ。
畳だし、受け身を失敗しても大事には至らないだろう。…たぶん!

霜月 雫 > 「(入られるか!)」

迂闊。それは事実だ。
ノーモーション故、打ち終わりの隙が無い。
つまり、捌いたが故に相手が崩れていることを前提としている『朧月』の想定している状況とはズレが生じている。
だが。
それでも、無駄なく振り下ろす剣の速度は、間合いの広さも手伝って、簡単に内を取れるものではない。
寧ろ、安易に入って来れば、その剣速に呑まれ斬り伏せられるのみだ。
それを、恐れることなく踏み込み、腕を取る勇気と技量は、流石と感嘆させられる。
そして――残念ながら、この投げは防げない。
防げない、ので。

「かはっ…!」

咄嗟に受け身に切り替える。
強烈に叩きつけられた衝撃を右手に流しながら、そちらにゴロゴロと転がる。
そう、受け身の流れに乗って高速で転がり距離を取った

「くうっ…ううん、大太刀だと結構不利かな?」

そのまま立ち上がり、改めて漣の構えに取りながらぼやく。
少なくとも、単発の技ではどうにも、相手取るのは厳しそうだ。
どうしたものか……と考えながら、呼吸を整え、回復を図る。
要するに、時間稼ぎである。

伊都波 凛霞 >  
「───ふぅっ。同時だったら間に合わなかったかな」

実際そこそこ際どい攻防ではあった。
観衆の面々で今の細かいやりとりが理解できた人間は余りいないだろう。
雫が刀を構え、力を籠めた瞬間には凛霞が入り身をスタートさせていた。
同時に動き、早いのが凛霞だった…程度にしか、思ってはいまい。
実際には先の先をとった故に、スピーディーに切り込めた故の腕取りである。

転がり距離を取る雫を確認しながら立ち上がり、道着の襟元を直す。

「私が剣士だったら違ったかな?
 対武器は慣れちゃってるし、雫のクセもなんとなくわかってるのもあるかもだけど。
 ──仕掛けてこないの?」

仕切り直しの間合い。
今度は凛霞は、仕掛けない。
斜に構えたまま、雫の動きを待つように…射抜く様な視線を向ける。

霜月 雫 > 「霜月流の手の内大体バレてるもんねぇ…伊都波の技もある程度知ってるつもりではあるけど」

とはいえ、お互い見せていない技法があるだろう。シズクにはある。凛霞にだって、あってしかるべきだ。
武人とは、例え親友であっても教えない秘伝をいくつか隠し持っていて当然なのだから。

「普通、体術はこの間合いと速度で封殺できるんだけど、流石にそう甘くはないよね。
っと、言ってくれるね?」

オーソドックスな霜月流の動きでは、どうしても読まれてしまう。
味付けを変えなくてはならない。そして、それを可能にする手札を、シズクは持っている。
す、すす、と先ほどまでの静止とは異なり、摺り足で前後左右に細かく動き始める。
間合いの攪乱と同時に、間合いを測る。間を外しながら、間を突く。
そして、瞬間。

「ふっ!」

予備動作無し、緩やかで流麗な動きの中から突然に放たれる、左片手突き。
半身になっているが故にわずかに引かれている左手から放つことで溜めを省略し、距離と威力は腰の切りで補う。シンプルにして見極めづらい神速の突き。

――桜庭神刀流、奧伝位『橘花』