2024/07/06 のログ
■伊都波 凛霞 >
「あと、うちのと違ってそっちのは基礎の剣術があるからね。
知ってれば知ってるほど対処はしやすい…。
っていうか、そうじゃないと困っちゃうけどね?」
当然、こちらは一度ミスれば終わりに等しいのだから。
だから余計に研ぎ澄まされるし、集中力もより高まる。
対武器の心得として重要なことでもある。
「雫の本気の速度には及ばないよ。
事前対応できたからやれただけ。───お喋りはここまでかな?」
左右に細かく動きを散らしはじめる。
逐一変わる間合、単純な読みを許さないそれから発せられるのは───。
「(──霜月の技じゃない)」
警戒の度合いを引き上げる。
対象の動きを三次元的に捉え、高精度で次の動作を予測する。
仕掛ける以上はどこかで僅かな起こりが発生する…彼女の剣速を考えれば、見てから反応するのはほぼ不可能
「っ!!」
そして放たれたのは瞬速の突き。
位置、距離、不規則には思える動きでも最終的には攻撃を仕掛けるポイントに必ず移動する。
それらの選択肢を羅列し、視た瞬間に正解を導き出し、躱す。
「(あ……っっぶない!)」
さん…ッ、と、真っ直ぐに伸びた刀身は数瞬先まで自身の額があった場所を通過する。
長い髪をポニーテールにまとめていたリボンがはらりと落ち、膝裏ほどまである長髪が解かれ流れる──。
「それ!!」
瞬間、返すは震脚。
僅かな震動を彼女の足元に伝え、与えるはほんのコンマ数秒の硬直。
「刃引きの意味!!」
同時、突きにて伸ばされた手へと己の腕を蛇の如く絡め──。
「ないでしょお!?」
重心を一気に前に移動、そして真下から、真上へ。
"絡み骨破"
耐えようとするなかれ、肘が破壊される。
己の関節に危機感を感じるなら、自ら飛ばざるを得ないやつ!
所謂、武器を手放ささせるための技であるが、さて。
■霜月 雫 > 「(まずっ……!)」
桜庭神刀流『橘花』は、突いた後腰の切りで即座に引くことで突きの隙を消す技でもあるが……如何せん、速い。
何より、震脚による振動で、瞬間的にだが崩された。
絡められた以上、万全ならともかく、崩された状態で外しに行くのは悪手。
思惑通りであるのは業腹だが、これは素直に、流れに乗って飛ぶ。
――が。
空中、投げを受けながら、腰の太刀に手を伸ばす。
「刃引き、要らないんでしょ?」
投げられる。凍月は、手放す。
だが、投げ技や絡め技は『仕掛けている最中は死に体になる』技だ。
流れに逆らわず、寧ろ乗りながら。
技の流れに異物を挟み込むように、瑠璃月を抜き放ち、斬撃を仕掛ける。
■伊都波 凛霞 >
「───!!」
凍月を手放した!?
技をかけられてもギリギリまで手放さずにいると思ったのに、宛が外れた。
でも、その宛てが外れたおかげで。
空中から放たれた斬撃一閃。
彼女の手から手放された大太刀、凍月の柄の先にて、疎け止めて見せた。
この特異な大太刀を手にしても扱うことは難しい。
けれどその刃長を利用して、その内へと緊急避難することは可能。
咄嗟の機転ではあったが、硬質な音の衝突と共に難を逃れたことを知る。
「ストップ!おわり!
刃引きはしないでいいって言ったけど、雫こっちが当たったら死ぬのわかってる!?」
いやもう、最初の一打をいなしただけでその後の彼女の行動、当てることに特化しすぎなんだもの。
「死合やってるんじゃないんだから、こういうのはもうちょっといろいろな技を振ってさあ……妹さんの相手しすぎてて麻痺してない?」
もう着地してるだろう相手に、疲労感たっぷりにそう言葉を手向けていた。
■霜月 雫 > 「凛霞なら、何とかすると思って」
すたっと着地したシズクは、先ほどまでの静謐な雰囲気を霧散させ、あはは、と誤魔化すように笑いながら、刀を鞘に納める。
本気でまずい時はしれっと刃引きする気ではいたのだが、少しヒートアップしてしまったのは否めない。
「とはいえ……うん、御免。ちょっと本気になっちゃった」
悠長に段階を踏んだ仕掛けをしていては呑まれる、と言う考えがあってこそではあるが、流石に本気度が高すぎた。と言うか殺意が高すぎた。いや、殺意そのものはシズクには一切ないのだが。
「凍月を手放させられたなんてのは、ほんっとうに久しぶりだよ。何年か前に父様と本気稽古した時以来かな?
流石だね。なんだかんだ受け切られちゃったしさ」
言いつつ、すたすたと凛霞の傍に近づいて行って。
「――ほら、殺し技って危ないでしょ?」
凍月を回収しながら、そう囁く。
殺し技を再確認していた凛霞に、警告するように。
■伊都波 凛霞 >
「流石に間一髪を何度もは続けられないって」
苦笑を返す。
あはは、じゃないってば。
攻防としては実に三度。
もちろんフェイントや見切りを含めればもう少し複雑にはなるけれど。
「まぁ…緊張感はあったかな」
ありがと、と。
お礼を言いつつ畳の上に落ちたリボンを拾い、髪を結い直す。
「それ。凍月を手放すなんて昔の雫だったら考えられなかったから、焦っちゃって。
もう一振りが増えた恩恵、もあるのかな?」
そう言って、彼女の手にするもう一刀…瑠璃月に目線を向ける。
殺し技は危険なもの、改めて口にする彼女に、僅かその眼を細めて。
「それは重々承知。
やっぱりあのへんの技はスイッチ入らないと、人に向けては使えないや」
本日凛霞が放った技は対応するだろう前提で放った初手以外は投と極のみ。
度合いの問題でもあるが、命を奪うには遠い技だ。
■霜月 雫 > 「間一髪でも躱せるのが凄いんだってば」
凍月を鞘に収めつつ、今度は純粋に屈託のない笑みを浮かべる。
純粋な賞賛。なんだかちょっとズレているのはご愛敬。ご愛敬か?
「元々、体術相手の時なんかは特に、刀を手放すって言うのは流儀に含まれた動きではあるからね。
でも、うん……昔だったら固執してたと思う。やっぱり、もう一振りあるってのは気持ち的に大きいのかも」
言いつつ、瑠璃月を少し持ち上げて見せる。
凍月とはまた別の、玲瓏な雰囲気を放っている太刀。
扱いづらくはあるが、今のシズクにとっては大事な一振りだ。
「まあ、死なずとも下手すれば腕折れてたけどね?」
くすっと冗談めかして笑いながら、すぐに目を細めて。
「――そのスイッチ、出来ればあまり入れないで欲しいな。
それを想定する状況があるんなら、出来れば相談して欲しい。
友達だもん、力になりたいよ」
今度は、純粋で、真剣な……真っすぐな目を向けて言う。
■伊都波 凛霞 >
躱さなかったら決まっちゃうんだけどなあ、なんて思いつつ。
「雫くらいの達人相手に二本取り零させるのは流石に骨が折れるよ。
そんなことしてる間に一撃くらいはどうしてももらいそう」
そうなれば勝負は決まる。
武器を持っているほうが絶対的に有利、ということ自体は変わらないのだ。
それが習熟された達人であれば尚の事。
「そこは雫ならちゃんと対応するって信頼もあったけど…お互い様か」
そういって笑みを返して。
「風紀委員だからね咄嗟に必要になることもある。
もちろん望んで手を汚したいわけでもないけど───」
真直な視線に気づく。
ああ、本気で心配させちゃってるんだ、と。
「大丈夫大丈夫。私だよ?
本来なら白刃戦なんてする前に済ませすのが本懐なんだから。
──それはそれとして、気持ちは嬉しいよ。ありがと、雫」
迷ったらちゃんと相談するね、と付け加えて。
「と、良い時間…今日はお夕飯作らなきゃだからもう帰るね」
付き合ってくれてありがとう。と、別れの言葉もそこに添えて。
呼び止められなければ、呆けた様に二人の仕合を見ていたギャラリーを割るようにして、その場を後にした。
■霜月 雫 > 「あはは、逆に二本取りこぼしちゃったら恥だしね」
一撃くらいは入れなきゃ、と笑う。
いくら達人相手だとしても、相手は素手、こちらは剣。
剣道三倍段、と言われるくらい、素手と剣は剣が有利なのだ。
それで二本も愛刀を取り落としていたら、流石にまずい。
「うん。凛霞がそっちでも強い、ってのは知ってる。
きっと、私には出来ないようなやり方で、上手くやるんだろうなって。
――うん、いつでも聞くよ」
信頼はしている。
しかし、心配もしている。
中々難しい気持ちなのだ。
「あ、ほんとだ。もうこんな時間……私も夕飯準備しないと。
じゃあ、またね。今度はどっかにご飯食べにいこ」
なんて、普通の女子高生のようなことを言いながら、自身もその場を後にするのだった。
ご案内:「訓練施設」から霜月 雫さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から伊都波 凛霞さんが去りました。