2024/07/07 のログ
ご案内:「訓練施設」に黒羽 瑠音さんが現れました。
ご案内:「訓練施設」に緋月さんが現れました。
黒羽 瑠音 >   
「よーし」

学校指定の運動着に着替える私、今日は肩からしっかり冷えたスポーツドリンクと、レモンの蜂蜜漬けがはいったバッグを装備している

そして使い捨てのプラカップ!これが今日の私が訓練施設にいる理由である

「すいませーん、ちょっとだけ異能の研究に付き合っていただけますかー?お礼も用意してまーす!」

訓練が一段落ついた人たちに声をかけ、『目的』を説明してプラカップの飲み物を手渡す
反応は渋い顔をしたり、喜んだり……様々だ、半々って所だろうか?
ともかく、『目的』に協力してくれた人にお礼にちゃんとしたスポドリとはちみつ漬けを提供しながら歩いて回るのだ

「さて、次は……」

きょろきょろと訓練施設内を歩き回りながら見回す私、次に目に入った人は――

緋月 > そんな所に、訓練施設内に姿を見せる一つの人影。
この暑い中でも、外套(マント)に書生服姿の少女である。
片手にはいつもの通り刀袋。

「それにしても暑くなってきましたね。」

ふぅ、と息を吐くと、鍛錬の準備。
例によって最初は桐の木刀を使って――と思ったが、

「……このままでは流石に鍛錬後が心配ですね。」

ちょっと思い返し、外套を脱いできちんと畳む。
適当な場所に畳んだ外套を置くと、上の着物を軽く脱ぎ、書生シャツだけのスタイルに。

「よし、これなら少しは涼しい筈!」

ちょっと気合いを入れて、軽く刃筋を確かめるための素振りから開始する。
何分格好が格好である。割と人目を引きそう。

黒羽 瑠音 >   
「…… ?」

「…… 」
「か、かっこいい……!」

思わずぽつりとつぶやく、こんな暑い中あんな格好で訓練なんて、何か暑さを遮断する力でもあるのかな?

「あの人はどんな訓練を…… って普通に脱ぐんかーい!!」
「はっ」

観察していたら普通に脱ぎました、いや、まぁある意味ちょっと安心したけど思わず口にでちゃったじゃん!
失礼な事を口走ったかもしれない……というか聞こえる距離だったよねこれ

それでも木刀を持って素振りをする姿は凛とした佇まい……といえばいいんだろうか?
一度気にしてしまったら逃げられないこの気持ち、それに剣術にだって少しは興味、というか思い出すものはある

「道場、結局まだいってないなぁ」
「えーと、こんにちはー……?」

ぽつりと零しながら、素振りをする美人さんに近づいて話しかけてみるのです

緋月 > 「ふっ! ――はっ!」

運動着姿の少女の突っ込みも気にせず、一心に木刀を振るう姿がひとつ。
警戒も大事だが、細かな事で心が揺らいでは刃もまた揺らぐもの。
ひゅん、ひゅん、と木刀が空気を切る音が一定のリズムで心地よく響く。

「……よし、いい具合に戻ってきている感じですね。
それじゃ次は――――」

少し重い木刀に持ち変えて素振りのし直し、と思った所で、挨拶の声。
割と近くからだ。
はて、と振り向くと、運動服を着た、少し癖のある茶髪の少女の姿。
年の頃は、自分より幾分か下だろうか。

「あ、はい、こんにちは…?
――えと、私に声をかけられた、んですよね?」

間違いだったら恥ずかしいので、念の為確認。

黒羽 瑠音 >   
「おぉ…ぉおぉ」

木刀を振るう姿、私のツッコミもどこ吹く風の集中力
さっきまで訓練していた人たちも皆凄かったけど、この人の雰囲気もまた何というか
今まで自分の知らなかった世界の人かもしれない、なんて思うような凄みを感じる、気がする

ひゅんひゅんと鳴く風の音がちょっと心地いい、近くだと実は結構涼しかったりするんじゃないだろうか
……と思っていた所で反応が返ってきました

「あ、はい、えーと」

返ってきたんですが、私は此処で気づきます、明らかに訓練始まったばかりじゃん、私の目的タイミングとずれてるじゃん!
つまるところ、これは……

「一年の黒羽瑠音です、よろしくお願いします」
「その……かっこよかったので声かけちゃいました、邪魔じゃなかったら近くで見ていてもいいですか?」

そう、つまりこういう事になるのである、ミーハー(死語)かな?
でも赤い瞳に凛々しい顔立ち、ポニーテールもあの服に似合ってて
漫画の世界からやってきたみたいに整っててうっかりすると見惚れてしまいそうだ

緋月 > 「あ、これはご丁寧にどうも。」

挨拶されればこちらも礼儀正しく一礼。
学生さんであったか。いや学園の施設ですから、学生さんが使ってるのは当たり前だが。

「えと、一年の、瑠音さん、ですね。
緋月と申します。暫く前に生徒登録はされたのですが、諸事情あってまだ学年は決まっておりませんで。
こちらこそ、よろしくお願いします。」

自分とは違うが、訓練の最中だったのだろうか、と考えつつ、見学のお申し出にはちょっと首を捻る。

「ううん…他の方が見ていて面白いか、自信はないのですが…それでもよろしければ、どうぞご遠慮なく。
あ、もし当たったら危ないので、少し距離は取って下さいね。」

そう答えを返し、一度失礼して木刀を取り換えに。
先程の物よりやや重い木刀を持ってくると、改めて中段の構え。

「――よし。そちらは、大丈夫ですか~?」

巻き込むと大変なので、茶髪の女生徒に軽く声をかける。

黒羽 瑠音 >   
うーん一礼も私よりずっとピシッ、としてる、やっぱりそういう家の人なんだろうか

「緋月さんですね、えへへ、いきなり声かけてごめんなさい、びっくりしましたよね?」
「いやいや、そんな事無いですよ、面白いかどうか……は重要かもしれないですけど」
「私が見てびびっと来ただけですから!」

何ていいながら言われた通り少し距離を取りながら観察
剣道……いや剣術かな?には明るくないけれど、新しい木刀はさっきより重そうに見える

「成程、さっきまでのは慣らし、って奴かぁ」
「あ、だいじょうぶでーす!」

何となくわかった風な事を言いつつも、軽く手を振って大丈夫アピールをするのです

緋月 > 「うーん、慣らしというか、刃筋が乱れていないかとか、無駄な力が
入っていないかとか、そういった所の確認です」

構えた木刀を軽く動かし、重心などを確認する。悪くない。

「さっきの木刀はとても軽い素材ですからね。
よくある打ち合いには向いてないですが、力の無い人が素振りを始めたりするのにもちょうどいいんです。」

そう答えながら、中段に構えた木刀を振り上げ、一息に振り下ろす。
ぶん、と先程よりもやや重めの風切り音。
だが音に反して、速度の方は先程と殆ど変わらない。

「それで、刃筋の乱れを直しながら、少しずつ、重い木刀に変えて、腕の力を、つけていく、んです!
真剣は、重いですから、ね――!」

ぶん、ぶん、ぶん。
先程までと全く変わらぬペースで素振りが進む。
振り下ろす時の音の違いが分からなければ、木刀を変えたとは気づきづらいだろう。

黒羽 瑠音 >   
「成程……成程!」
「基本的な確認は大事ですもんね、泳ぐ前に準備体操しないと足攣っちゃいますし」

何となくわかった、気がする、多分

「練習用って事なんですね、へぇ……」
「昔剣道部の人に竹刀を持たせてもらった時はありますけど、あれだって結構しっかりしてるし重かったなぁ」

振り下ろすぶんっ、という音に目をぱちくり
明らかに音が変わってる……目は口ほどにものをいうというけれど、これはその耳バージョンだ

「凄い、音"しか"変わってない……本当に」

プロの人が見れば微細な違いが分かるのかもしれないけれど
素人の私が見る分には超高難易度間違い探しみたいなものだ、素直に凄い凄い!とワクワクしてしまう

そんなこんなで暫くじーっと、緋月さんが素振りをする姿を熱心に見守ってしまっていた

緋月 > 「竹刀は――打ち合いには、いいんですが!」

ぶん、と最後の一振りを終えて、一息。
小さく汗が額に浮いている。

「どうしても、軽さが気になってしまいますから。
かといって、木刀での打ち合いは下手をすると大怪我ですし。」

其処まで言うと、再び木刀を持ち変えに。
持ち出して来たのは、赤樫の木刀。

「だから、木刀は、どうしても、筋力の、維持や――
刃筋の、乱れが、ないかに、使う事が、多いんです――!」

更に持ち変え。
次は真っ黒な鉄刀木(タガヤサン)の木刀。

「ちょっと、病み上がりな、ものでして…!
慣らし、ながらで、ないと、腕の筋を、壊しますから!」

額に浮く汗が、更に目立ってくる。
振る音は、どんどん重くなっていく。

「――よし、次で素振りは終わりにしましょうか。」

最後に持ち出して来たのは――また赤樫の木刀。
だが、形が違う。先程までの物とは違い、船の櫂を思わせるような形。
一言で言って、凄く重そうだ。

黒羽 瑠音 >   
「材質によって違うんですね」

言われてみれば確かにそうだよね、建物だって材質で雰囲気から変わったりするわけだし

「うん……そうですね、木刀でも人を怪我させるには十分すぎますから」

何時かに握った木刀の『刃』の部分を思い出し、手をぐーぱー、と広げて閉じる

「それにしても、沢山持ってるんですね!?」

にしたって数が多い、あ、また変えた、木刀の博覧会みたい

「病み上がり……」
「私も最近友達が退院したんですよね、紅き屍骸……ってゾンビの一種みたいなのと戦って怪我したみたいで」
「思ったより私の近くで戦いが起きてるんだな、って実感しちゃいました、幸い巻き込まれたことはないんですけど」

自分の事情も交えながらも病み上がりで之かぁ、なんてまた思わず声を漏らす、うーん、鍛え方が違う!

汗が落ちるのも気にせずに素振りを続ける緋月さんの姿はストイックというのが一番しっくりくるだろうか

「えっ、それも木刀なんですか……?」
「というか重そう、私持つのは何とかできそうだけど、振るのはきつそう、緋彩さんならできるのかな」

うん、持つくらいなら多分出来ると思う、でもあれを振れって言われたら……大分きつそうな気がするのである
でも、きっと緋月さんや緋彩さんみたいな人ならあれを持って振ったり跳んだりできるんだろうなぁ

緋月 > 「いえ、殆どこちらに置いてあるものを借りてます。」

沢山持ってるという問いには真正直な答え。

「此処が使えなかった頃に、桐の木刀だけは自作しましたけど、ここは色々な種類が揃ってますからね。
お陰で病み上がりの訓練には不自由しなくて助かってます。」

つまり殆どがここの備品である。便利といえば便利。
最後が大物なので、ちょっと休憩を挟む。

「紅き屍骸――噂だけは、何度か。
私は、その…以前に大きな事件になった、鉄腕の怪人の件の方しか、あまり見ていなくて。」

そちらの方も有名ではあろうが、既に収束してきている事件と言っていい筈だ。
何しろ、既に当の犯人が捕まっている。
――その犯人の捕縛に関わっていた事は、おくびにも出さない。

「ご友人が……そう、ですか。それは、余計に他人事ではありませんよね。
巻き込まれないなら、それに越した事はないです。
もしも瑠音さんが巻き込まれたら、そのご友人も心配なさるでしょう。
しかし――屍骸というからには、死人が黄泉返って来たという事か…面妖な。」

先日の、博物館での出来事もある。
「死」に関わる事象が自身の周囲に目立ち始めた事は……ただの偶然だと、思いたい。

そして、持ち出して来た木刀への問いには普通に頷く。

「はい。とある剣豪が決闘の際に船の櫂を削って木刀を作ったといいますが、それに由来する造りかと。
負担は強いですが、筋力をつけるには一番です。」

当然、腕の筋を痛めない為に準備運動は必要ですが、と、休憩を終えて立ち上がり、櫂型の木刀を構え持つ。
流石に一気に振る事は無理なのか、ゆっくりと上段に持ち上げ、

次の瞬間、今までで一番重い風切り音がする。
振り下ろされた木刀は、重量に負ける事なく、きっちりと両腕で止められていた。
小さく息を入れると、また振り上げ、振り下ろす。
最早鈍器を振っているかのような音が、その場に響く。

黒羽 瑠音 >   
「あ、そうなんですね、ってことは此処の品揃えが凄いのか」

品揃えという表現はあってるかちょっと微妙だけれども

「木刀を……自作?練習用にって事ですよね?」
「緋月さん、熱心なんですね……って言い方はちょっと軽いかもですけど」

「鉄腕っていうと多分テンタクロウですよね?」
「『とこトレ』とかの話題を上塗りするくらいに噂も立ってて……やっと捕まったみたいでほっとしてます」

胸に手を当ててはふぅ、と息を吐く、捕まえた人の名前までは知らないけれど、是非お礼を言いたいくらいだ

「でも、一人が捕まっても危ない話題が尽きるわけでも無いんですよね」
「そういう意味では風紀委員とか対応してる人たちには感謝しかないです」

「何でも戦ったのはゾンビ蟻人って言ってましたね、何にせよ緋月さんも気を付けてくださいね」
「まぁ私が言っても釈迦に説法ってやつかもしれないけれど……」

「船の……あ、もしかして宮本武蔵ですか!?」
「こう、巌流島の決闘で船の櫂で戦ったって漫画で見た事あるんですけど」

なお他に櫂と関係がありそうな剣豪は私の知識では思いつかないとも言います

「――― わ、ぁ」

ちゃんとそれなりに距離を置いているはずなのに、それでもなお顔を撫でるような風を感じる
重み、というか、まるで鉛の塊でも振っているかのような重厚な響き、っていえばいいのかな
そして汗をかきながらも、顔色一つ変えずにそれを振るう緋月さん
トレーニング……なんだろうか、なんだろうなぁ、私も鍛えればあんなに

「いやいや無理無理、でも、ちょっと憧れるかも……」

緋月 > 暫しの間、鈍い風切り音が幾度も響く。
乱れる事無く、一定のタイミングで。
木刀を振る少女はすっかり汗だくだが、それでもペースを乱す事はない。

そして最後の一振りを終えると構えを解き、大きく深呼吸。
どうやら、これで素振りはおしまいにするようだ。

「――終わり、と。
どうですか? 見てても退屈なだけではありませんでしたか?」

ちょっと気を遣うように、そう話しかける。

「確かに、櫂の木刀を使った剣豪はそんな名前だった憶えがありますね。
個人的には、このようなものを作る発想が凄いと思います。」

くるんと櫂型の木刀を小脇に抱え、休憩の時間。

「ゾンビ…ああ、屍人の事ですね。
しかし蟻人とは――何と言うか、節操のない怪異ですね、紅き屍骸という奴は。
誰彼構わず巻き込んで…そういう手合いが手強いし、性質が悪いというのは分かりますが。」

紅き屍骸の話題には、少し渋い顔。
出来れば合わずに済ませたい相手という認識を改めて持つ。

「――そういえば、もしかして素振り、興味あります?」

素振り中の、茶髪の女生徒の独り言は聞こえていたらしい。
畳んだ外套の近くに置いていた、白い木刀を取り上げると、そちらにひょいと差し出す。

「此処にも桐の木刀はありますし…私が削って作ったので、造りは荒いものですが、良ければ使いますか?
初心者や力のない方が始めるには、桐の木刀は丁度良いですから。」

黒羽 瑠音 >   
じっ、とそれを見つめていた、何だろう、一つの映像作品を見ているような感じ
一つの物事に打ち込む人の美しさ、っていえばいいのかなぁ
何となく、目が離せなかった

「ぜんぜん!」

だから、退屈ではなかったか、という声には満面の笑みでそう答えられたのです

「人の発想って凄いですもんねえ、突拍子のなさも含めて、何でそれをやろうと思った!?みたいなのもありますし」

「ゾンビっていうならやっぱり感染して増えるのが目的なんでしょうか?」
「聖書の『産めよ増やせよ地に満ちよ』のホラー版みたいな感じ、っていったら聖職者の人に怒られそう」
「節操のないのもそれだけ生きるのに貪欲って感じありますよね、うん、会いたくないなぁ」

渋い顔をする緋月さんに深く頷いて同意する、それにゾンビものって普通に怖くて苦手だし

「あ、えっと…… えへへ」
「実は少し前に、剣術道場に見学に来ないかってお誘いされてたりしまして」
「緋彩さんって風紀委員の人の道場なんですけど」
「そういう訳でちょっとだけ興味あったり?」

何て話していると差し出される木刀、そのまま受け取ってみる
おぉ、桐で出来ているだけあって、私でもちゃんと『軽い』って感じる重さだ
とりあえずさっきの緋月さんの真似をして中段?に構えてみる

「こ、こうですかね?」

勿論学校の体育で軽く触れたくらいなのでポーズはガタガタだ

緋月 > 「そうですか、それなら良かったです。
退屈されてしまったのではと、実は少し心配でして。」

特に変哲もない、ごく普通の素振り稽古でしたし、と小さく苦笑。

「……死人は眠らねばならぬのです。
それを怪異へ変えて黄泉返らせる者は、死という尊厳を凌辱し、冒涜しているのです。
手出しをする気はないですが――到底、赦される存在ではありません。」

少し憂いのある表情で、そうぽつりとこぼす。
積極的に関わる気はなさそうだが、少女にとって紅き屍骸というのは死者の尊厳を踏み躙る忌わしきもの、のようだ。

「おや、緋彩さんをご存じなのですか?
実は私、事情があって緋彩さんのお部屋に居候させて貰っていまして。」

奇遇ですね、と言いつつ、茶髪の女生徒が構える様子を眺める。
構えは確かにガタガタだが、それを笑う事はしない。
剣を習った事が無い人は、誰しも始めはこんなものなのだ。

「ちょっと失礼しますね――
えと、握り方は、こう――力を入れるのは、小指と薬指を意識した方がいいです。
角度も、直角ではなく、もう少し緩い角度で――」

軽く手を添えたりするなどして、持ち方や構え方をレクチャーする。
構えに変な癖がつかないようにするのも大事な事なのである。

黒羽 瑠音 >   
「いやいや、私から見ると凄い時間でしたよ、こう、特等席で見れたからラッキーみたいな?」
「あ、良ければ之どうぞ

くすくすと笑いながら、持ってきたスポドリを一杯プラコップに入れて差し出してみる
ちなみにこれは未だ普通のスポドリである、『目的』のための許可貰ってないし

「……思えば、異世界の人にはもう何人も会ったけど死後の世界の人にはまだ会った事無いや」
「死人は眠らないといけない、ですか、まだちょっと私には難しいかもしれません」

何となくこれは、肯定も否定も、軽はずみに出来ない話題な気がした、ただ

「でも、緋月さんが優しい人なんだな、って事は何となく感じます」
「もういない人に対しても尊厳とか考えられるのは、きっとそれだけ強い想いがあるからだと思うから」

何となく自分が思った事だけを伝える、ちょっと無責任かもしれないけれどね

「あ、そうなんですか?ほんと奇遇ですね!」

予期せぬ関係に目をぱちくりしながらも、手を添えてくる緋月さんにちょっとだけドギマギ

「小指と薬指を意識、緩い角度……」

それでもしっかり教えてくれる事を口に出して反芻して、少しずつ形を直していく
ゆっくり息を吐いて、ほんの少しだけ様になった自分の構え

「よ、よし……!」

意を決して、一振り ぶぅんっ、と、微妙に桐の木刀がブれながらも風を切り、上から下にしっかりと振り落とされた

緋月 > (優しい、か。)
果たしてそう言われる程の人間なのだろうか、自分は。
そんな事を考えつつ、スポーツドリンクを一口。

「――おいしい。」

普通の水より、汗をかいた体に染み渡るような喉越し。
お店で売ってたら、今度は同じ物を買おうとひそかに決意。

「おや、中々筋がいいですね。」

木刀が振り下ろされる様子を確かめ、一言。
少し軽さに振り回されている所はあるが、それでも極端に明後日の方向に振り下ろされてはいない。

「真っ直ぐ振り下ろすのは難しかったですか?
桐の木刀は普通の木刀より軽いので、余計な力が入るとブレたり思った以上に深く振ってしまうものなんです。」

軽くアドバイス。
桐の木刀を最初に勧めたのは、これが理由である。
重さのある木刀はその重さに頼って振り下ろせてしまう。
それが悪い癖にならないように、正しい振り方と力の入れ方を覚える近道が桐の木刀の素振りなのだ。

「もうちょっと力を抜いて、腕の力だけで降るのではなく、肩から肘、手首をひとつにして振るようにしてみて下さい。
えっと――こんな感じですね。」

再び手を取り、振り下ろし方の軽いレクチャー。
腕の力は大事だが、それだけでは如何ともし難い。

「もう一回、どうぞ。今言った所を意識して、多少ゆっくりでもいいですから。」

黒羽 瑠音 >   
「スポドリも最近色々ありますよね、でも個人的にはやっぱり定番の奴が好みかな」
「後、スポドリとは別に脱水してる時用の奴とかもあって……この時期だとスーパーでも大体的に売られてますよね」

うんうん、と美味しそうに飲む緋月さんをみて何もしてないのに誇らしい気分になる

「ぉ、本当ですか?ちょっと嬉しいかも」
「成程……力を入れ過ぎてもダメ、って事ですね」

脇を締めて、肩と肘、手首を一つに…

「一つにして……」

何度か緋月さんに手本をしてもらった後、自分でも確かめる
すっ、すっ、と手をゆっくりと動かして、肩から手首までを一体にするイメージでゆっくりと動かし

「…… すーっ」

ぶぅ、んっ、と先ほどよりゆっくりめに木刀を振るう

「あ、なんかさっきよりこう、自然に振れた気がします!」
「…… よしっ!」

ぶ、んっ…  びゅんっ… びゅんっ…
少しずつ速度を上げてみる、勿論緋月さんに比べると月とスッポンみたいな差ではあるけれど
最初の一振りよりは目に見えて様になっている、気がしてなんだかうれしい

「どうですか?」

凡そ10回くらい、自分のペースで木刀を振ってみてから緋月さんを軽く見上げる
額にちょっとだけ汗が湧き出てきたが気にならなかった

緋月 > 無言で茶髪の女生徒の素振りを見守る少女。
どうやら、理解力がなかなかのものらしい。
見る間に振り方が良くなっている。

「――うん、中々覚えが良い方だと思いますよ!」

10回を一区切りに、声を掛けて来た少女に、軽く拍手しながら笑顔でそう答える。
お世辞抜きで、中々の物覚えだと思う。

「大事なのは、これを体に覚えさせる事です。
毎日――とまでは言いませんが、なるべく定期的に続けるのが一番ですよ。」

そして、最後にもう一つ大事なことを。

「後は、回数を決める事が一番大切です。
持久力を高めたいなら数をこなすのが一番ですが、漫然と振っていてもしっかり身につく事はないです。

目安としては、30回以内。
正しい振り方を覚えたり、ブレを正したり、より重い木刀を持てる筋力が欲しいなら、この回数が目安です。
集中力の続く境目が、凡そ30回の素振りだと考えて下さい。

勿論、体力の問題もありますから、これより少ない回数を集中してこなすというのも有りです。
後、普段使わない筋肉を動かしたと思うので、腕の筋肉痛には気を付けて下さいね。」

特に筋肉痛は慣れていないと必ず襲ってくる。
注意するんですよ、と、ぴっと指を立ててちょっと真剣な顔。

黒羽 瑠音 >   
「えへへ、そうですか?」

褒められてちょっとにへら、と笑顔になってしまう私、ちょろいなと自分でも思う、うん

「継続は力なり、って奴ですよね、何でもそうですし、分かります」
「ふむふむ……30回、今のを3セット」
「それなら出来るかな?多分出来ると思います、うん」
「あー、筋肉痛……うぅ、それはちょっと怖いですけど、幸い毎日沢山動く理由はないですし」
「しいて言えば昨日はスパに行きましたけど、あれは温泉巡りだったし……」
「とにかく、気を付けます」

何て思い出しつつ、ぴっ、と額に手を当ててこくこく頷いてみせる
私だって筋肉痛の辛さくらいは知っているのである、空手もしてたし

「ともあれ、です、ありがとうございます緋月さん、何だかちょっとやる気が出たかもしれません」
「私、今のところ部活も委員会も入ってないんですけど、之を機に本当に道場の部活…?にお邪魔してみるのもありかも」
「取りあえず最初は見学からですけどねっ」

そういって自分の分もごくごく、とスポドリを飲み――思い出した

「あっ、そ、そうだ、緋月さん、ちょっとお願いがあるんですけど」
「実は私、此処に一人じゃできない『異能』の研究のために来たんですよね」
「それで、訓練の休憩中の人に、お礼を渡す代わりに協力してもらってたんですけど…」

そういってスポドリのペットボトルと、はちみつレモンの入った大きめのタッパーを取り出して見せる