2024/08/06 のログ
灰塚トーコ >  
素気無く言い捨てられてぽかんと口が開く。

徐に立ち上がる龍宮の姿を何も言わずに視線のみで追う。
向かう先のターゲットに気が付いたなら、そこで漸く半開きの口を閉じて数歩後ろへ下がった。場所を譲るように。

ままならない現状。現実。先程浮かんだそれらが、教師の口から語られるのに、眉を下げて肩を落とす――が、

「キャァ!?」

轟音。
思わずと両手で耳を抑えて目を瞑る。
再度開いた視界には、今度こそ再利用は不可能な程に壊れたターゲットと、笑顔が映る。
先程と同じように、ぽかんとしてその光景を見つめ、沈黙が数秒。

「……龍宮先生って、カッコイイってよく言われません?」

ふ、と、表情を綻ばせる。
毛先の炎は黄色く染まっていた。

「まあ、汗と泥はともかく、血は御免蒙りたいですが。」

しれっと付け足し、へし折れたターゲットを見つめる。
そうして発現した炎は、先程よりもずっと穏やかなくせに、あっという間にターゲットを包み燃やし尽くすと静かに消えた。
白い煙と灰が換気の為の風に棚引く。

龍宮 鋼 >  
「ッハ!
 そりゃセンセーだからな」

先生はカッコイイものだ、と。
先ほどの炎よりは幾分か穏やかな炎に焼かれるターゲット。

「――コレ一応学園の備品でないんか」

焼いてしまって大丈夫なのだろうか。

「とりあえずアレだな、少なくとも自分のチカラにビビっとんじゃ話にならん。
 オマエはまず全力でチカラ使う訓練すると良いかもしれん」

とりあえず最大出力がどこまでなのかを把握するのは大事だろう。
使えば使うほど弱くなるのか、限界が来たところで急に使えなくなるのか、限界を超えても使えてしまうのか。
特に最後だとすると、限界を知らないと言うのはマズい。

「もしそれでヘバって出力落ちるんなら、弱いチカラ使う感覚もわかんだろ。
 ――あー、一応言っとくが一人でやんなよ。
 世話してくれるヤツとやれ」

最悪事故が起きかねない。

灰塚トーコ >  
「そこは先生の先生ヂカラでこう、うまいことお願いします。」

既にターゲットは灰と化している。南無三。
トーコに出来ることは手を合わせて成仏を祈ることと、カッコイイ先生を頼ることのみ。

「全力……ですか。わかりました、やってみ ま、……、」

す、とは続かない。
いまこの教師は、一人でやるなと仰った。
長期休暇に至って尚、ぼっちのトーコに、一人でやるなと、仰った。

水に浸けようが、消火剤をぶっかけようが鎮火しないポニーテールの炎がスン…と消える。
常燃え盛るそこは、橙と赤の炎色に染まってしまっている。

そっと顔を両手で覆う。

「チカラのことだけじゃなくて……友人の作り方も教えてください……。」

粘土?粘土とかで作ればいい?それとも樹脂??

龍宮 鋼 >  
「まーダイジョブだろ。
 俺も学生ん時はさんざやらかしてたし」

備品壊したり備品壊したり備品壊したり。
校内で暴れまわってたわけじゃあない。
とは言えターゲットも壊されるためにあるようなものだし、問題は無いだろう。

「――あ?
 なんだオマエ友達いねェのか」

バッサリ。
デリケートなことも構わずバッサリと斬って捨てる。

「しゃーねーな。
 じゃあ都合いい時連絡してこい。
 空いてたら付き合ったるから」

ポケットからスマホを取り出し、ポチポチと操作。
自身の連絡先を表示し、画面を彼女に向ける。
登録しろ、と言うことらしい。

灰塚トーコ >  
「ああー……。」

やってそうとは口に出さずとも、間延びしたAの音は胸の内を語るようだ。
迂遠なトーコとは違い、龍宮は何処までも明け透けである。
言葉のナイフがざっくりと刺さる音を聞いた気がした。

「うぐっ!
 だ、だって、わたしの故郷、ド田舎だったから……同世代なんて片手で足りたんですもん。」

気色ばんで抗議めく言葉に重なるボボボと細かな火花が散る音。
ハッとして消火器を撫で深呼吸。精神統一。be cool.

「先生……!ありがとうございます。……友人の作り方は?」

感動を声に載せながら、通常スペックの、ベーシックな学生手帳端末を取り出した。
もたもたした手付きで連絡先を登録し、自身のそれも同じく画面を見せる。
そんな最中に足した言葉は冗談半分。藁にも縋るおもいも半分はあるが。

龍宮 鋼 >  
学生時代は札付きのワルだった龍宮センセーであった。

「まーしゃーねーべ。
 このガッコ、クラス分けがあるわけでもねーし、途中入学してくるやつだって珍しくねーしな。
 ダチおらんやつもそれなりにおるだろ」

こちらは手慣れた様子でぺぺぺ、と端末を操作して彼女の連絡先を追加する。
と言うかさっきからちょいちょい髪の先がいろんな色で燃えている。
異能に感情が乗るタイプか、制御出来るまでは大変そうだが、一度コツを掴めば手足の様に扱えるタイプだろうな、とか考えながら。

「ダチの作り方、つってもなァ。
 ダチんなりたい奴に声掛けて、気になること聞いて、したらあっちからなんかリアクションあんべ?
 それにレスして、その繰り返しで大体相手のことわかってくるだろ。
 そったらもうダチんなるだろォが」

陽キャの極みである。
そもそもここに来た時のことを思い出してもらえればわかるだろう。
人と距離を詰めることに何ら抵抗感の無い、コミュ強インファイターなのだ。

灰塚トーコ >  
「そうでしょうか……そうですよね!?
 決してわたしがコミュ障ぼっちなわけではなく、そう、マンモスが故の仲良くなりづらさというか、多種多様なひとがいるからこそ……!」

ウンヌンカンヌン。
コミュ障特有の、水を得た魚が如き早口だった。

一頻り言い訳した後でコホンと咳払いをすると、スと瞳を細めて見た目ばかりは冷めた少女といった風を醸し出す。

「ふんふん、声掛けて?……声を、かける……?」

宇宙を背負った。
第一段階から躓きそうなトーコは陰キャの極みなのかもしれない。
せめて制御できぬまま特攻&自爆の発火系少女()にならないように祈るとして。

声をかける、声をかける……と呪文が如く繰り返し。

「わかりました、頑張ります。今日はご指導、ありがとうございました!」

ぺこりと頭を下げる。頑張るのはどちらかな?無論、両方だ。

――その後は訓練室の片付けやらなんやらをこなし、寮へと帰ってゆくのであった。

龍宮 鋼 >  
「いやそんでもダチ作っとるやつはおるだろ」

トドメ。
落とし穴に落ちた者の上から岩をゴロゴロと流し込むような暴挙。

「――あーうん。
 がんばれ」

それでも彼女の後ろに見えた気がした宇宙には何も言えなかった。
声を掛けるぐらい簡単だろ、なんて言えない。
幾らなんでも岩を流し込んだところにセメントで固めるようなことは、流石に。

「ま、まぁ、なんだ。
 別にチカラ使う練習じゃなくても、いつでも声かけてこい。
 そう、勉強とかな、飯も、そう、ウマいラーメン屋とか教えてやっから。
 な?」

何故かこっちが焦ることになった。
片付けも彼女だけに任せてはおけず、その後も一応彼女を寮まで送って行って。

「――センセーやんのも大変だわ……」

帰り道、そうぼやきながら疲れた様子で歩いていたそうな。

ご案内:「訓練施設」から灰塚トーコさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から龍宮 鋼さんが去りました。