2024/08/14 のログ
ご案内:「訓練施設」に緋月さんが現れました。
ご案内:「訓練施設」に蒼き春雪の治癒姫さんが現れました。
緋月 > 「――――――。」

訓練場の一角。
無心で木刀を振るい、素振りを行う少女がひとり。
木刀で風を切る音を立てているのは、書生服姿の少女。

「――っ、ふ――っ!」

ひゅん、と、一度振り下ろす度に、小気味の良い音が響く。
いつもの暗い赤色の外套は少し離れた所に畳んで置かれており、刀袋は腰に差してある。

「――ふぅ。」

一段落ついた所で、構えを解いて軽く汗を拭い、木刀を握る手を下ろす。
この間、結構なカロリーを摂取したので、それを燃焼させる為に普段より強めの鍛錬中だった。

蒼き春雪の治癒姫 > 「ひ づ き さ ま ~~~ ッ!」

蒼い、雪。
見ているだけで冷えてきそうな雪柄の着物の女が、
今日も元気に呼びかけて近寄って来た。

「奇遇ですね緋月様ッ」

「これは運命か何かでしょうか」

「ふむ」

思案。

「ソチラの刀は使わないのでしょうか…?」

ここの訓練施設って、ちょっとハードな訓練も出来るから、
ああいうの振り回しても良いと思ってたけど。

緋月 > 「ふぉっ!?」

好悪は別として、無警戒状態から突然名前を呼ばれたら人間は驚くものである。
無論、書生服姿の少女もその例には漏れなかった。

「あ、蒼雪さんですか…!
びっくりしました…。」

はー、と安心したように息一つ。
運命かどうか――はさて置き、彼女も学生ならば学内施設を歩いていても不思議はない。
駆け寄って来る相手に、木刀を握っていない方の手を軽く振って挨拶。

「今は基礎の鍛錬中ですから。
一応許可は貰ってますけど、いきなり振り回すのも危ないですし。」

主に誰かが刃の圏内に入ってしまった時。
治療施設があっても、危ないものは危ないのである。

蒼き春雪の治癒姫 > (あれ程の緋月様であっても人間には変わりないのですね…。)

何か感動的。

「はい、蒼雪です。こんにちは。」

今運命という言葉を切り捨てられたこと、私は見落としませんでした。
まぁでも、手を振ってくれるなら…それでいいのかもしれない。

「然様でしたか。」
「ここでお会い出来ましたのも、何かのご縁」

「如何でしょう」

「その刀剣でッ」
「緋月様の美しき斬閃でッ」
(わたくし)を一思いにばっさりと()って頂けませんか?!」
「回復能力には自信がありますので。」

前のめりである。

緋月 > 「間違っても言っていい事と悪い事がありますよ!?」

回復能力があるかないかとか、本人の同意とか、それ以前に倫理的にやばいご提案。
そもそも当たり所が悪ければ回復能力云々で済むレベルではない。
刀で斬れば人は死ぬのだ。

「せめて標的程度で我慢してくださいよ…。
入学手続きとかで色々ありましたし、そうでなくても風紀委員の間で噂になってるみたいですから、私…。」

何事か起こして風紀委員会案件になったら、同居している御方や先日一緒にご飯を食べにいった御方に
全く以て申し訳が立たない。
そもそも、訳もなく知人を斬りたくはない。

「……滅多なことは口にしないで下され、ホントに…。」

心労と、そんな事を口走る彼女への心配が入り混じる言葉。

蒼き春雪の治癒姫 > 「そ、そう……ですか……そう…ですね。」

残念そうだが、言われてみればそれはそうだ。
普通、斬られたら大量出血して死ぬ。
…私は少し、違うけれど。
それでも暴力を振るいたくないというのは
一般的に考えてそうなんだろう。

(……本気、なんだけどなぁ……)

「……申し訳、ございませんでした。」

でも。
……貴女様に気苦労をかけることは望んではいないから。

「そう、でしたか、御入学されていたんですね。」
「それに風紀委員の間でも……」

「分かりますよ」

「良い噂だけではないでしょうね……。」

一息。

「でも……貴女様の斬閃を、
目の前でまた見てみたいのは本当です……。
ファン、ですから。」

緋月 > 「分かって下さればいいのです…はぁ、ホントにびっくりした…。」

心臓に悪かった。本当に。
とりあえず思い留まって貰えたので、安心。

「あ、そういえばお話していませんでしたか…。

ええ――ちょっと手続きに不手際があって、私が入院する前には、もう学生登録諸々が完了していたみたいです。
それが分かったのは…「あの事件」の後、私が入院してた時でしたけど。」

――という事にしておく。
下手に話せる事ではない。何しろそれを報せにやって来た先生の方が、ほぼ内密的に知らせてくれたのだ。
下手に漏れて、彼女に妙な累が及ぶのはなしにしたい。

ので、以前に聞いたお話をなぞって、説明して置く事にした。
少し後ろめたさはあるが、悪意あっての嘘ではない。

「表沙汰になれば面子とか、風紀委員の力量とかが問われてしまうでしょうからね…。
私は詳しく調べてませんけど、多分、あの件に関して私の存在は隠されてしまっていると思います。

まあ、私は別にそれでも構いません。
誰かからの称賛を受けたくて行ったわけではないですし、ましてや名誉やら何やらなど、考えてもなかったですし。」

それについては事実だった。
己にとって、放ったらかしておいては、どこかにつっかえたままに残って、違和感や嫌な気持ちを残しそうだったから。
だから、自分の立場の危険も考えた上で、敢えて踏み込んでいったのだ。

「同居して下さってる方には、苦労をかけたと思いますがね。」

そう言いながら、軽く苦笑い。
そして、また「斬る」話になれば、ちょっと考えて。

「――分かりました。
では、訓練用の標的で我慢してください。
用意してきますので。」

と、用意の為にてくてくと歩き出す。

蒼き春雪の治癒姫 > 「そうだったんですか………道理で。」

良く知らなかった。
でも、その言葉は嘘であっても、全く疑った様子はなかった。
知らない間に入学されていた、のだから。
退院の後に入学していたって事は、きっとそうなんだろう。

「そういうところ」

「素敵ですよ。」

「賞賛も名誉も望まぬとおっしゃいますが」

「どうか私からは心いっぱいの賞賛を、させてください。」
「あの時の光景は、今でも忘れられずにおりますから。」

にぱっ。

「ふふ、御同居人様とも……仲良くしていらっしゃるようで。」

正直…ちょっとうらやましい。


「えぇ。お願いいたします。」

「その。」

歩き出す背に、もじもじしたように声をかけ。

「その刀…大切なものとお見受けしますが。」
「もしお許し下さるのなら…少しだけ、見せて、触れさせては……いえ。」

いつものブリザード染みた元気そうな声は、
これ、大丈夫かなぁ……と、少し不安に照れくさそうにしていた。

「代わりと言っては何ですが…私の異能についても…少し、またおみせさせていただきます、から…?」

緋月 > 「む…これ、ですか?」

ちょっと足を止めて、かけられた言葉に少し思案顔。
ちら、と腰に差した刀袋に視線を向ける。

「うーん…まあ、蒼雪さんですし、よもや盗んだりなどと滅多なことは考えないでしょうけど。
あまり長い事手元から離すと、私も落ち着かないのですよね…。
すみませんが、用意が終わるまで待ってて貰えますか?
終わったら、少しで良ければ触ってもよいので。」

流石に長い間手元から離すのは落ち着かない…を通り越して不安になって来る。
という訳で、用意が終わって自分の目の届く範囲で、と折衷案を出す事にした。


「…あの事件の事は、本当に、誇れる事でも何でもないのですよね…。
あそこに向かったのは…突き詰めれば、私のエゴ(利己感情)ですから。
その結果、誰かが少しでも救われたなら…そうであるなら、よかったな、と言う位で。」

そんな事をぽつぽつと語りながら、用意を続ける。
からからと運搬台車を使って、標的を運搬。
よく時代劇などで見る、畳表を竹に巻き付けた巻藁だ。

蒼き春雪の治癒姫 > 「えぇ、まさか。」
「仮に盗もう、汚そうなどと考えたなら、」
「緋月様の意思に反することがあれば、」
「今すぐ斬り捨てて殺していただいて構いませんッ」

無理を言って我儘聞いてもらおうっていうのは百も承知。
大切なものだというのも知っている。
そしてそれを穢される苦しみを、私は知っている。
それは、そう。
時に本当に命を奪うほどの逆鱗に触れる事になるという事も。
冗談のようだけれど、その言葉は本気。

「……そうですか。少なくとも。」

目を、閉じ。

「あれを見ていた……私は少し、救われましたよ。」
「……そのエゴの形が、貴女様なんです。」
「それを通し切った事、自己を通し切った事―――それを見て私は……」

んん、と照れくさそうにどもった。

「お疲れ様です。」
「では…先に斬閃をお見せいただく…という事で、よろしいでしょうか」
「触れさせていただくのは、それからでも。」
「こんな標的、あったんですね。」

巻藁―――斬りごたえありそうだ。

緋月 > 「また滅多なことを…。」

またしても物騒なことを口走っておられる。
盗もうとされたら流石に何としてでも取り返しには向かうが、それこそ余程の悪意が無い限り、斬り殺しはしない。
というか、そんな事になったらそれこそ風紀委員の皆様の出番になってしまう。

まあ、彼女が此処まで言うのなら、一周回って安心出来るのはあるが。

「そう、ですか。
……それなら、少しはよかったと、思って、いいのですかね。

――と、いけません。何か辛気臭くなってしまいました。」

気持ちを切り替えるように、ちょっと勢いよく巻藁を運んでいく。
念の為そこそこ数を揃えたが、はて、これで足りると良いが。

「では先に試しの方を行いましょうか。
準備しますね。」

言いながら、巻藁のひとつを立てて固定する。
動いたりしないか、しっかり確かめてから準備完了。

一度刀袋を腰から取り、しゅるりと紐を解いて中身を取り出す。
現れたのは柄巻も白、鞘の色も白、金色の鍔が眩しい一振りの刀。
その長さ、刀身二尺四寸五分。
凡そ、一般的な打刀の長さのそれだ。

すぅ、と息を吐き、柄に手を掛け、引き抜けば、露になるのは濤乱刃文も美しい刀身。
その刀を、す、と八相の構えで構え持つ。

蒼き春雪の治癒姫 > 「はい……良かったんですッ!」

でも。
……きっと貴女様は、そういわれたって、そうは思えないんだろう。
そういうものなんだろう。分かった気になるなんて、なれないから。
私にとってはってだけは、伝えて。

「このように固定するのですか」
「ズレたり倒れたりしたら大変ですからね」
「刀の訓練といえば、色々とあると思いますが…」

物珍しいものを見たと、興味津々に作業の光景を見ている。
訓練なんて一口に言うけれど、具体的にどうやるのかって、見せてくれると参考になるものだ。

「ぁ……はい。」

刀袋から抜き出された一振りのソレ。
二尺四寸五分―――即ち、人の大きさの半分より、少し小さい程度、だろうか。
煌めく白の刀身へ、じぃっと視線を投げ―――そして。

その持ち主の姿へと辿るように目を向けていく。

「やはり」
「貴女様はお美しい……」

刀を構えた姿を、見つめ…

緋月 > すぅ、と、息を整える。
摺足で音を立てる事もなく、静かに間合いを取る。
――思い切り刀を振ったとして、切っ先が凡そ拳一つ分。
拳一つ分、巻藁に届かぬ距離。

(……恐らく、見たいというのは「ただ」巻藁を斬る事ではないですよね。
まずは、先にこちらを見せて……「醒」の方は巻き込むと危ないですから、後にしましょう。)

最後にそれだけを考え、後は余計な思考をカットし、目の前に集中。
何事か語られたような気がしたが、その声も遠くなる程に。

一呼吸の間。
直後。

(――斬月!)

ひゅ、と横一文字の一閃。木刀の風切り音とは全く異なる鋭さを伴う音。

それが奔ると同時に、すぱん、と音を立て、巻藁が宙を舞う。
刀の長さと腕の長さから明らかに届かない筈の位置にある巻藁が切断されて宙を舞っている

「――――ふぅ。」

す、と刀を下ろす。
今放った「斬月」は、「飛ばし」の技。
少しだけ、斬撃を飛ばして巻藁を斬った。
維持距離を絞ったので、巻藁を斬り飛ばしてから少し進んだだけで斬撃は消滅する。

――最も、その斬撃は「己以外には不可視」である。
普通に見ただけでは、間合いの外の巻藁が斬れて宙を舞った、としか見えないだろう。

蒼き春雪の治癒姫 > 「……?」

「今、何……?が?」

良く分からない。
良く分からないが……ソレは斬れていた。
そして、巻藁が飛んだ。
切り口が見える。
されど何をしたかは見えない。

見えないが音は聞こえた。
鋭い音
斬れた音
藁が地に落ちる音

それは
まるで

「……遠隔斬撃、でしょうか…」

手の届かないところへの斬撃。
まるで念力か魔法か。そのいずれでもなかったようだけれど…

緋月 > すちゃ、とごく小さな音で一度納刀。
ひゅぅぅ、と風のような音で気を抜く為の呼吸。

「……以前にお話した、「斬月」の、一番基本の形です。
斬撃を「少しだけ」、飛ばしました。

流石にあまり長い距離を飛ばすと事故が怖いですから。
巻藁を斬って、少し進んだ所で消えましたよ。」

まるで野菜の皮でも剥いたような調子で、そう語る。
斬れてしまった巻藁と、その近くに転がった巻藁の先部分を片付け、新しい巻藁を固定する。

「…斬った的を上に重ねる、とは簡単には行きませんか。」

上手く行けば宙を舞った巻藁が、切れた所に乗り直していたかも知れない。
が、生憎、斬り飛ばした部位は少し外れた場所に落ちてしまった。
まだまだ未熟。

蒼き春雪の治癒姫 > 「斬るという意思によってつくった斬撃、でしたよね。」

この間、詳しく教えてもらった事。
教えてもらうだけでは、分からない事も多い。
具体的に見てみるだけで。こんなに理解が深まるものなのか。
それに…

「……そのお力。」
「危険なものだと理解はしているけれど」
「体の一部も同然の様だと、お見受けしました。」
「…力強く切るだけでなく、精度や制御も求めてらしたのですね。」

随分、使い方には慎重になっている様だ。
だけれど、使い慣れてはいる。
つまり――昔はもっと使っていたことを、意味する…?

緋月 > 「ええ…下手に放てば、人など簡単に斬れてしまいます。
故郷に居た頃に、これの制御は日課同然でした。
意のままにならない刃物ほど、危ないものはありませんから。」

新しい巻藁を配置し終えると、軽く首を解すように回す。
くき、と小さく音がした。

「厳しかったですが、お陰で色々と出来る事も増えましたし、分かりました。
例えば、放った斬撃をその場に停滞させる。
例えば、斬撃を揺らがせ、間合いを狂わせる。

まあ、いずれにしろ取り扱い注意の能力…この島でいう所の異能ですよ。
とことん何かを斬るしか出来ない能力ですから。」

ちょっとだけ、腰の刀に視線を下ろす。

「以前にも話したかも知れませんが、指先や竹刀でも、やろうと思えばできます。
でも、やはり「斬る」能力ですからね…刀のような刃物でないと、十全な威力は発揮できないんです。
その分、規模が小さくなって細かい使い方はしやすいですが。」

蒼き春雪の治癒姫 > 「日課……道理で。」

この間の話と合わせて聞くに、
生来危険物を体の一部として持って生まれた存在、
そんな風に扱われてたんだろう。
その制御が慣れているのも、また理解出来よう話し。

「異能は、何でもありですもんね。
貴女様にとってそれが、斬ることに特化したものだったんだな、って。
故に斬るという念が、大切だから。切れ味の良い、刀を持たねばならない。
……その刀も、異能も、いわば体の一部、なんでしょうか。」

とってつけたようなもんじゃなくて、ずっとあるって、それはもう。
その人の一部のようなもの。
貴女様もまた、それ故に生まれを縛られたのだろうと、想うと。

「……親近して、初めてわかりました。」
「憧れは理解から最も遠い―――、何て聞いたことがありますけれど…」

「さて、」
「…少しだけ、良いでしょうか?」
「…もう少し貴女様を、理解できればな、なんて、烏滸がましいでしょうけれど。お許しくださるなら。」

同じく刀に目をやり。

緋月 > 「概ね、その通りです。
まあ、刀を持っているのは私の故郷の風習でもありますが。
里長の本家と、そこに近い分家に赤子が生まれれば、里の鍛冶師が生まれた赤子の為に刀を鍛つのです。
その赤子が育ち、物心ついた時に、決して離すなと言い含めてその刀を渡す。

大体の子供はそれが何かを最初は理解出来ず、下手に抜いて手などを切ってしまいます。
当然、手を斬った子供は大泣きですが、同時に「刀」というものがどういうものか、身体で理解します。
これは何かを斬る、危ないものである、と。

実は私もやらかしました。それはもう、痛くて泣きましたよ。」

とんでもないエピソードだ。
下手に扱えば己の身を斬る危険なものだと、文字通り体で覚えさせるのは正気とは思えない。

「と、まあ、そんな訳でこの刀も私が物心ついた時からずっと一緒であった半身です。
なので、大事に扱って下されば嬉しいです。」

す、と腰から白い刀を抜き取り、そっと蒼い少女へと差し出す。

「――持つときは、気を付けて下さいね。」

その言葉は、刀を手にした時に即座に理解できるだろう。
時代劇などを見ている者は勘違いしやすいが、刀とはあれ程簡単に振り回せるものではない。
何しろ鉄で出来ているのだ、重くて当然である。

――それを念頭に置いて尚、その刀は「重い」。
手にすれば、普通の刀よりも明らかに重いと分かる程の重量がずしり、と圧し掛かって来るだろう。