2024/08/17 のログ
■伊都波 凛霞 >
知らないだけでとても覚えは良い。
すぐに飲み込み使えるようになった様子にうんうんと頷いて。
「ん、ばっちり!」
ぐっ、とサムズアップ。
「この島は色んな人がいるから、結構色々ヘンなことも多いからねー…。
なんでも相談してくれてオッケーだからね!」
ぱちっとウィンク☆
さて、そろそろいい時間になっちゃったかな…と時計を見上げたタイミング。
ふとシアの零した言葉に「ん?」と、一瞬わからなかったような表情。
でもすぐに、ああ…と、気づいて。
「これかな?」
ごそごそと取り出したる香水。
あまり強めではないけど、普段から使っているお気に入り。
せっかくだし、と自身の手の甲に少量、擦り合わせるように。
「香水。カラダにつけるいい香りのする香料だね。
夏場なんかは結構、汗なんかもかいちゃうから少し多めにつけてたんだ」
せっかくだし、と。
嫌がらないようなら少量、擦り合わせた手でシアの首元を擦ってみよう。
ほんの少量、それだけで…ふわりと柑橘系のさわやかな香りに包まれる。
■シア > 「ヘンなこと………………」
しばし考える時間があった。
その間、小さく首を傾げていた。
「……なるほど」
しばらくして、心当たりがあったのか頷いた。
「香水……そう。
水なんだ、匂いをつける。別だね、消臭とは……なるほど……
草の匂いをつけるのに似てる、動物用の……」
なるほど、と頷いて……
首元に付けられた匂いを嗅いで、また首を傾げた。
微妙に解釈がおかしかったかもしれない。
「と。引き止めたかな、もしかして。」
それから、視線の動きを思い出したように質問した。
■伊都波 凛霞 >
そう、変なこと。
何しろ変な島で色々な人もいる。
何が起こるかなんて、何に巻き込まれるかなんてわからないのだ。
なるほど、と頷く彼女に合わせて、凛霞もまた、うん…と頷いた。
まぁ、この島にいれば何かしら心当たりはあるよね。
「(動物用…?)」
思ってたのとちょっと違う反応に思わずこっちも小さく首を傾げていた。
「ん♪気にしないで。
お夕飯までには切り上げようかなって思ってたから」
そろそろ日が傾き始める時間。慌てるといったほどでもない。
■シア > 「ええ、と……ありがとう」
ぺこり、と頭を下げる。
どうあれ、色々と教わったのだからお礼をいっておくものだろう。
「勉強になった、色々と」
思った以上に得るものがあった。
まさか、訓練施設で学習できるとは思わなかった。
「……えと。
いるかな、お返し……」
はたと気づいたように聞いた。
■伊都波 凛霞 >
「ふふ、どういたしまして。あ、頭まで下げられるほどのことはしてないよぉ」
頭を下げるシアに、ひらひらと手を振ってみせる。
でもちゃんとお礼を言える…偉い子だ…!
「役に立てたなら何より♪
ん、お返し…?」
おっと、思わぬ一言…。
んー……と顎先に指を当てて思案……。
「…気持ちだけで十分♪
あ、よかったらお友達ってことでぇ、たまに私と遊んでくれると嬉しいかな?」
そんな問いかけには、にこにことしながらそう答える。
なんだか、とにかくよく笑う女子、そう思われるかもしれない。
■シア > 「……そう?」
頭を下げるほどでもない、という言葉に首を傾げる。
お礼、というのは加減が難しい。
「ん……?」
お返し、という言葉に思案をする凛霞。
そこまで難しいことを言ったつもりはない。
もしや、重大な仕事が……?
「ともだち……? たまにあそぶ……?
ん……承知した。」
こくり、と頷く。
重大かどうかはわからないが、それが求められたものなら覚えておこう。
仕事でも目的でもないが、仰せつかったものだ。
「……ん。大丈夫、時間?」
ふと、時計を見る。
それほど話し込んだわけでもないが、電子手帳の伝授にはそれなりに時間を使った。
■伊都波 凛霞 >
「やった♪ それじゃあ、こっちから連絡なんかもさせてもらおうっかな~♪」
承知。その言葉を頂けば、ぱんと手を合わせて喜んでいる。
「ふふ、今日は此処に来て良かったな~。
お知り合いが一人増えちゃった。…あ、そっか時間…っ」
はっと時計を改めてみる。
まだ時間的に余裕はあるけど…この格好で帰るわけにもいかないし!
「あ、じゃあ私はこれで…!
じゃあ、またね!シアちゃん!」
また、と手を振って。
少し足早に、「暗くなってきちゃう」なんて言葉を零しながら、背を向けていそいそと
スクールバッグを抱えれば、もう一度振り返って。大きく手を振って、更衣室のほうへと去っていくのでした。
■シア > 「……ん」
また、と手を振ってにこやかな笑顔で去っていく凛霞。
それを見送って、小さく手を振る。
「……ヘン、といえば。」
視界から消え、おそらくは更衣室まで行くのに遠く離れただろう時まで見送り。
ぽつり、と口にする
「ヘンだ、凛霞も。
親切にする、わざわざ。楽しそうに」
小さく首を傾げ。
それから、少女は反対側。施設の外へと向かった。
ご案内:「訓練施設」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」からシアさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に伊都波 悠薇さんが現れました。
■伊都波 悠薇 >
はっは、と、息を短く吐く。
夏。
暑い日に、ひたすらに、基礎トレーニングをする少女が一人。
今は、ランニング。
ただ、ただ、走る。
それだけ。
気を引き締めるために、この空間にやってきて、自主トレーニングをしに、やってきた。
ーーのも。
考えるだけなのは、もう、やめたくて。
身体を動かしたかったから、だ。
「は、は」
途中。自分でつくった給水エリア。
地面に置いたペットボトルをとって、口に含み、置いて、また、走り出す。
ーーランニングして、15分がたつころだった。
■伊都波 悠薇 >
最近考えることが多かった。
自分が、傷つくこと。
親身になった人が、傷つくこと。
自分の力なさを痛感すること。
そのくせ。
偉そうな口をきく、自分がいること。
(さい、あく)
自己嫌悪。
そうなりかけた。頭のなかを、すっきりさせたくて。
ひたすら、身体を動かしていた。
■伊都波 悠薇 >
(かっこ、よかったな)
思い返す。
自身の強みを理解して、
自分のやれることを理解して。
それでも放棄しなかった、傷ついた少女。
目が見えないといい、ながら、それを補う、ものが確かに彼女にはあり。
そして、彼にもあった。
その姿が眩しくて。
ーーでも。
(憧れるのは、やめた)
のに。どうしても。
叫びたくなって、叫んだあの日。
今日も、叫びたくなって、でも迷惑だろうから。
こうして、走ることを選択したけれど。
(走り終わったら、考えちゃいそう)
苦笑した。
■伊都波 悠薇 >
ふっふっと、ある程度走ると疲れを感じた。
ゆっくりと、クールダウンするように歩いて。
水を先程飲んだ場所に歩き、座り込んだ。
「ふー…………」
置いておいた水をごく、ごく、と飲み込んで、ゆっくり息を吐いた。
■伊都波 悠薇 >
「なにが出きるかなぁ」
出きることは少ない。
少ないなら少ないなりに、そこを磨きあげるのだけれど、突出している項目はなく。
いや、ひとつだけ。
「天秤、か」
姉という錘に反応する天秤。
姉の、才能のおかげで、もはや、効力を失ったそれ。
苦笑してしまうくらい、限定的な能力だ。
「なんか、できないのかな」
天秤のこと、もっと、調べないといけないのかも、そう思いながら、水を飲もうとして。
「あ」
空っぽであることに今、気づいた。
ご案内:「訓練施設」に焔城鳴火さんが現れました。
■焔城鳴火 >
「――おつかれさん」
空っぽになったペットボトルを傾ける横から、よく冷えたスポーツドリンクを差し出す。
見れば少女より一回り小柄な女が一人。
「せいが出るわね、伊都波――じゃないか、悠薇でいい?」
そう声を掛けつつ、自分も軽くアップをしてきたところなのだろう。
ほんのりと汗ばんだ様子で、人相悪く声を掛けた。
■伊都波 悠薇 >
「あ」
ぽっと、視界に映ったペットボトル。
そこから伝うと、女性がいた。
「こ、こんにちは。先生。い、いただいていいんですか?」
名前に関してはコクりと頷き、受け取るか悩むようにペットボトルと、顔をしせんがいったりきたり。
■焔城鳴火 >
「――あれ、私の事知ってんの?」
目つきの悪い顔が、意外そうに歪む。
本人は嬉しそうにしたつもりだが、見た目は少々怖い顔だ。
「遠慮しないでいいわよ。
あんたたちの健康管理も、私の仕事――ああ、違うわね、もう」
そう途中まで言ってから、非常に渋い顔をしながら。
「あー、ほら、一応、フィジトレしてる仲間だし、徒手武術を使う同士だし?
いやごめん――前からあんたの事、ちょっと気になってたのよ」
そういうと、ばつの悪そうな顔――本人的には気恥ずかしい顔で頭を掻いた。
■伊都波 悠薇 >
「名前だけ……先生なので。姉さんの真似事、です」
ぽつぽつと口にして。
「気に? な、なにか、ありました、でしょうか?」
もしかして、なにかやらかしてしまっただろうかと、おどおどし始める。
■焔城鳴火 >
「へえ。
うん、いいんじゃないそういうの。
知られてて、悪い気はしないしね」
教員としては、学生に知られているのは嬉しい話だ。
もちろん、それが悪評としてでないのなら、だが。
「はは、そんなおどおどしなくて良いわよ。
そうね、単純な興味と――勝手な親近感?」
そう言いながら、軽く肩をすくめて。
「だからとりあえず、挨拶がわりに受け取ってくれると嬉しいわ。
頑張ってる生徒へ、先生からの応援って事で」
そして改めて、ペットボトルを向けた。
■伊都波 悠薇 >
「親近感、ですか?」
よく、分からないままにペットボトルを受け取り。
「あ、ありがとうございます。いただきます」
そう返して、さっそくあけて口をつける。
喉が乾いていたのかごくごくと、半分ほど飲み終えて。
ほぅと、息を吐いた。
■焔城鳴火 >
「そ、親近感」
勢いよく飲む少女の様子を、口元だけ緩めて眺めながら。
自分は壁際に置いておいたスポーツバッグからタオルを引っ張りだして、軽く汗を拭う。
「最初は名簿で姉妹揃って目についてね。
伊都波の古流武術に興味があったんだけど」
ふう、と顔を拭うと息をついて。
「――無能力で、頼れるのはフィジカルだけ、って所にね。
どうもあんたの姉の方が目立つみたいだけど。
私からすると、あんたの方――悠薇の方が気になってたのよ。
ああ――私の事、名前くらいしか知らない?」
なんて少女に興味を持った理由を話しつつ、自分の事はどの程度知られているのだろうと訊ねた。
■伊都波 悠薇 >
「え、あ……えぇと。その」
となると。つまりは、できの悪い妹というところをご存じということ。
「あはは、その……気にしていただいても、良いものは見せられないかも、ですけど。
えと、はい。すみません。名前と顔が一致しているだけ、です」
■焔城鳴火 >
「ああ、いいのいいの。
顔と名前が一致してるだけ大したもんよ。
この学園、教員だけで何人いることか」
そんな中で、見分け判別できるだけで大したものなのだ。
少女の自己評価の低さには、想像していたよりも大物で苦笑してしまったが。
「簡単に言えば、私は徹底的な無能力者で、魔術の才能もからっきし。
魔術に関してはもうね、才能どころか、使おうとするだけで事故の危険があるくらい。
取り柄があるとすれば、まあ、幸い医学に関しては幼い頃から親しんでただけあって、こうして保健体育の教員なんてやってるんだけどね」
そう自分の事を軽く話し。
「あんたに関しては、ここんところ、怪我したりだとかなんだとか書面で見たもんだからね。
何処かで少し話でもしてみたいと思ってたのよ。
まあ――思ってたよりもいい顔しててよかったわ」
■伊都波 悠薇 >
「いい顔、ですか」
そうだろうかと、自分の頬を両手で揉みもみ。
進捗はよしとは、言えないけれど。
「そう、見えますか。良い顔に」
■焔城鳴火 >
「見える。
まさに思春期、って感じの、いい顔よ」
そう言いながら、くっくっ、と笑う。
「ごめんごめん、揶揄うつもりとかじゃないの。
ただ、正しく思い悩んでるようでいいわね、って。
今のあんたみたいなの、私の古い友人がみたら、『子羊さん』とでも言うんでしょうね」
迷える子羊、悩める思春期。
実に健康的だと思う。
「まったく――周りに天才ばっかりいると、疲れるわよね。
凡才がお前らについていくのに、どれだけ苦労するとおもってるんだか、って」
そう言いながらも、呆れたような苦笑に嫉妬や嫌悪はあまり見られないだろうか。
■伊都波 悠薇 >
「そうでしょうか」
子羊、と言われて想像しつつ。
そこまで、ぷっくりはしてないかも、と内心思った。
「えぇ、と。その。ついていく気はないん、ですけど」
目の前の先生はそういう時期があったのだろうか。それを越えての今であったのだろうか。
「今、なにができるかと、考えてました」
■焔城鳴火 >
「へえ」
ついていく気はない、とはっきり言った少女に感心する。
それが諦観からなのか、自己肯定から来たものかまではわからないが。
そう言えるのは大したものだ。
「ふつうは、置いて行かれるのが怖くなる物だけど。
それこそ、あんたたちくらいの年代じゃね」
少なくとも自分はそうだった。
まあそれも、すぐに諦めるしかなくなったのだが。
「何ができるか――って随分と漠然としてるわね。
まあ、言ってる意味は分かるけど。
そうねえ――あんた自身は、なにがしたい、とかってないの?」
■伊都波 悠薇 >
「約束してますので」
姉は、置いていかないと言ってくれて。
その証として天秤の釣り合いを引き受けてくれている。
そして、姉離れも、この間決意したばかり。
だから、そう言いきれた。
「とりあえず、風紀委員にいていい、くらいにはなりたい、ですかね」
■焔城鳴火 >
「ふぅん――いいわね、そういうの」
『約束してる』と言った少女の表情は、とても晴れやかなものに見えた。
思い悩む中でも、一つ、言い切れるだけの芯がある良い表情。
ただ。
「とりあえず、って」
その言葉に笑ってしまう。
少女が控えめすぎるのは、沁みついた性分なのだろう。
鳴火が虚勢を張るのが染みついてしまったように。
「風紀委員なんて、めちゃくちゃ仕事の種類が多いじゃない。
常に人手不足でもあるし、その気になれば、どこにだって居場所はあるでしょ」
なんて、わざと言ってから。
「まあ、そう言うからには、風紀の中でも居たい場所とかあるんでしょう?
それか、一緒に居たい人とか?」
なんて、世間話程度の軽さで訊ねる。
■伊都波 悠薇 >
「いや、それはもうなくなりまして」
姉がいるから、はもう理由にならず。
「意地、みたいなものです」
姉離れしたから、なにもできなくなった、と言われたくないし。
そして、風紀委員にいるのに、とも、言われたくない。
ただ、ここに居たいだけ。
理由はない。でも、居たい。
ただ、自分のわがままを通したいだけだ。
ーーといいつつも実は姉離れできていなくて、側に居たい気持ちがあるのは否定しない。
「自分ではない人が目の前で傷ついてしまって。それを見ているだけだったのは……『ちがう』、と思いましたから」
まずはそこから、と口にする。
■焔城鳴火 >
「――意地、か」
気分のいい事を云う少女だと思う。
取り繕う事もなく、怯えはあっても真っすぐで気持ちがいい。
「と、言うと。
裏方や後方とかじゃなくて、最前線に立っていたいって所?
ああこれは、私だったらそうするかな、ってだけね」
そう言いながら、スポーツバッグからミットを取り出す。
続いて、オープンフィンガーグローブを取り出して、少女の方へ投げた。
「ちょっと打ち込んでみない?
なかなか、付き合ってくれるやつがいないのよ。
ほんとに素人にやらせるわけにもいかないし」
そう言いながら、自分は両手にミットを持つ。
■伊都波 悠薇 >
「そう、ですね。怪我したりして、心配させないていどに。身を守れる、程度に。いざというとき、なんとかできる、程度に」
程度の種類をいくつかあげていき。
ミットをとったのを見ると目をぱちくり。
前髪で視線は見えないのだけれど。
「えっと。私が打つ、方ですか?」
■焔城鳴火 >
「それ、なかなか難しいわよ?
私はそういうの諦めちゃったし」
以前は鳴火も、それを考えたりはしたのだ。
けれど、悩んだ末に最も現実的な選択をした。
それに後悔はないが、未練はある。
「そ、武術家でしょ?
こんなところで、突っ立って立ち話もね。
軽く打ちながらでも、話しくらいできるし」
なんて言いながら、両手のミットを合わせてバンバン、と音を鳴らす。
■伊都波 悠薇 >
「はい」
難しいのは理解している。
だから、こうして困っているのだし。
「わ、わかりました」
グローブを付けて、構える。
普通の空手。右半身前の構え。
「いきますね」
準備が整ったのを見ると、真っ直ぐ右手から。正拳突き。
いたって、普通だ。速度も、強さも。
強いて言えば型はキレイ。
■焔城鳴火 >
「いいわね、そういうの。
あんた、昔の私よりずっと根性あるんじゃない?」
難しいとわかっていても、その方法を探そうとしている。
簡単に折れてしまった自分よりも、ずっと逞しい、そう思った。
「オッケー。
いつでもどうぞ――」
ミットを構えれば、バシン、と響く気持ちのいい音。
「いいじゃない、基本に忠実で、ヘンな力みもない。
随分と練習してきたのが分かる」
そう言いながら、少しだけミットの位置を変えて次に構える。
「でも、これじゃあ足りないって痛感したって感じ?」
■伊都波 悠薇 >
「そうでしょうか」
根性、あるのだろうか。
あまり、気にしたことがない。
意地っ張りは、根性とイコールなのだろうかと思いつつ。
「はい。目の前で、傷ついてしまってますし。私も、傷ついた、ので」
次は左でミットに。
正確に忠実に。凡の域をでない、スパーリング。
■焔城鳴火 >
「あるわよ、私が早々に諦めた事をやろうってんだから。
そういう意地、私は好きよ」
自分は意地を通せなかった。
だから少しばかり――少女の意地っ張りが眩しい。
「わかる、とは言えないけど――まあ、力不足って感じるわよね。
私も――目の前で親友が殺されたときは、無力感で死にたくなったわ」
なんて言いながら、とてもいい形での拳を受ける。
やはり音は心地よい響きで、少女の研鑽が本人が思うほど『凡』でない事がわかる。
「となると、まずは自分を守れるのが最初の課題?
悠薇は魔術なんかを学んだことは?」
訊ねつつ、左右の位置を変えてワンツーを受ける構えに。
■伊都波 悠薇 >
小気味良い二連打。
音が響いてぴたりと、止まる。
「親友が?」
そんな、ことがあったのなら。
泣くだけではすまないはずで。
「そのとき、どうしたんですか」
ぴたり、動きをとめて、尋ねた。
なにかしながらは、失礼な、気がした。
■焔城鳴火 >
「ん?」
いいリズムの拳を受けてから。
「そうねえ」
ぼんやりと、当時の事を思い出す。
「その時は泣いたりしたような気もするけど。
結局私は、なにもしなかった、かな」
そんな、大したことでもないかのような声音で答える。
「――いずれ、コイツと結婚でもして平凡に家庭でも作るんだろう、なんて思ってたけどね。
居なくなってみればまあ、実感がわかないのなんの」
おかしそうに笑いながら、突き出されたままの拳を、優しくミットで押し返して。
「復讐する相手も居ないし、私が何かをしたところで取り返せるモノがあるわけじゃない。
だから、なにもしないで――ただ、自分の事に打ち込んだ」
今思えばそれは、現実逃避とも言えたのかもしれないが。
良くも悪くも、気づけば思い出の一つに変わってしまった。
「ま、今でも夢には見るけどね」
言って、招くように手を揺らしてから、またミットを構える。
それこそ本当に、世間話のような調子で。
■伊都波 悠薇 >
「それは」
言葉にすると、簡単だ。
なんとも、さらりと流すような、そんな軽さ。
当人にはそうでも、自分にはそう、思えなくて。
でも。
「そう、ですか」
夢に見る。
そう、口にした、教師を見て。
「まだ、乗り越えてはいないんですか?」
先程と同じように、リズム良く、何度が打つ。
■焔城鳴火 >
「はははっ、大人しいわりに、難しい事聞くわねえ」
ミット越しに伝わる心地よい衝撃。
素人相手でも、技量が低い相手でも成立しない、流れるようなスパーリング。
「何をもって乗り越えたとするか。
そこって、なかなか難しいわよね」
目を細めながら言いつつ、少女の拳を受け止める。
「――自分では乗り越えたつもり。
でもまあ、引きずってないとも言えないか」
なにせ夢に見るうえ、未だに他の男に興味を覚えないのだ。
「私はそんな感じねえ。
だからじゃないけど、『見ているだけ』が死にたくなるほどしんどいのは、知っているつもり」
そこで鳴火は『折れた』。
だからこそ、意地を通したいと悩む少女が眩しく見えるのだろう。
■伊都波 悠薇 >
「そう、ですか」
ぴたり、動きをとめて。
お辞儀。
今も、闘っているようにも見えたから敬意を込めて。
それに。スパーリングを、続ける気分にもならなかった。
目の前の女性の闘い方を、今、垣間見たから。
過去と、闘うーー
「ありがとう、ございました」
一礼してから。
「知っている、から。なにを教えてくれようとしたんですか?」
■焔城鳴火 >
「ん」
少女が頭を下げたのを見て、目を丸くした。
「やめてよ、くすぐったい。
礼を言われるような事してないでしょうに」
参ったとばかりに、ばつが悪そうな顔をした。
「んー――正直私が教えられる事なんてないでしょうね。
ただ、なにか言えるとしたら」
ミットを外しながら、少し考え。
「生きている以上、ずっと傷つくし、失い続ける。
生きるってのはそう言う事なんじゃない?
だからせいぜい、心構えくらいかしら、ねえ」
軽く腕を組んで、小さく唸る。
「そういう時に迷ってもいいし、立ち止まってもいいけど。
ちゃんと一歩ずつでも進んでいく事。
別れや悲しみもあるけど、止まらなければ、また新しい出会いも喜びもあるはず。
私はそう、色んなお節介焼き共に教えられたわ」
そんなふうに苦笑を浮かべて肩を竦めた。
■伊都波 悠薇 >
「覚えておきます」
いくつかの、ヒントと。
先人の言葉を受け止めて、再度頭を下げたあと。
時計を見た。
そろそろ、時間だ。
「わざわざ、お時間、ありがとうございました。その、拙い、拳ですみません。さよなら、先生」
ぺこぺこしながら、手を振り、その場を後にした。
ご案内:「訓練施設」から伊都波 悠薇さんが去りました。
■焔城鳴火 >
「忘れなさいよ、恥ずかしいわねえ」
失い続けてきた過去が役に立ったのならとは思うものの。
改めて頭を下げられると、恥ずかしくなってくるもので。
「こちらこそ。
しっかりと意地が乗った良い拳だったわ」
そう言って笑い。
「あんたなら、自分や誰かを傷つけない、傷つけさせない道を見つけられるわよ、悠薇。
だから、私みたいに中途半端で諦めるんじゃないわよ」
そう最後に伝えて、去っていく背中を見送った。
「――まったく、大した娘じゃない」
本心を言えば、子供がこんな命題を抱えるような時代に怒りを覚えるが。
その中でも逞しく育つ芽は、本当に眩しいと感じたのだった。
ご案内:「訓練施設」から焔城鳴火さんが去りました。