2024/08/30 のログ
■緋月 >
(当たった!? ――いや、この感触は、仕込み武器!)
腕で横薙ぎを受け止めた感触が、人体にしてはあまりに異質。
すぐに頭に浮かぶのは、同じく木刀を使っての打ち合い。
打ち込んだ一撃が、木刀で止められた時にとてもよく似ている…!
反動で自身も幾らか後退し、間合いが互いに離れる。
そして、出て来るのはつい今しがたの一撃を止めたからくり。
「……凛霞さんの腕は、堅木で出来ているのかと思って、一瞬焦りましたよ。」
迫る姿を見ながら、思わず軽口。
――武芸の本で見た事がある。
確か、南方の島が発祥の古武術で使用される武具だった筈。
軽く返すだけで守りにも攻めにも即座に転じられる、攻防一体の棍の変形型。
打ち込まれる。迎撃は――間に合いそうもない。
となると――――
(――ちょっと狡いですが!)
コォ、と、小さく呼吸音。
同時に、旋棍の鋭い一撃を何とか木刀で受け止め――――
「……先にズルしたのは私なので、仕合だったら反則負けですね。」
その声と共に、まるで綿毛を叩いたかのような軽さで、書生服姿の少女は吹き飛ぶ――
否、「受け止めた反動」で、大きく空に向かって飛ぶ!
(軽功からの――神足!)
更に、まるで「空中の足場を蹴る」ように、ジグザグの軌道を描きながら八相の構えで間合いを詰め、
「シィ――!」
鋭い気合と共に、一息に踏み込みながらの逆袈裟の一撃!
■伊都波 凛霞 >
旋棍。
警棒の一種としても採用される。或る意味風紀委員らしいといえばらしい武装。
その特徴は攻防一体。秘匿性の高さ。そして軽く──強い。
乾いた堅木同士の衝突音。
このタイミングでもしっかり防御る。流石。
先ほどの反射神経を見れば、出来て当然でも在る。
なのでそれに驚き、こそしないが───。
「うわ…っ!?」
まるで紙細工でも殴り抜けたかの様。
受けたはずの少女の姿が、遙か上へと飛ぶ。
さしもの高次予測も未知に対しては意味を為さない。
──ただ。
空中を蹴る様に移動するポイントムーブ。
それについては類似品を識っていた。
「甘いっ!!」
両腕を構えてのブロック。
かなりの勢いを想定、衝撃は背後へと受け流し、後転する。
巫術を併用した埒外の剣術を識っているからこその対応。
初見で見たら、さすがに驚きが勝るところ──衝撃を殺し切り、いざ反撃。
「──じゃ、こっちも!」
たん。
地を蹴る音。
たん、たんたん、たんたんたん──。不規則な動作。足音はより小刻みになり──最後には消える。
彼女の赤い瞳へと、全神経を集中する。
フェイントムーブを右へ振り──追う視線を予測し、逆へと動く。
単純ながら、その繰り返し。繰り返し。
それはつまり、死角から死角へと音もなく移動し続けること。
彼女が"眼"に頼るなら──この一撃は対応できない!
「───、ふッッ!!!」
放たれるのはトンファーの一撃、ではなく背面回し蹴り。
緋月の背後、その背を目掛け放たれる蹴り一閃!! …当たるかな?
■緋月 >
「これも、止めますか――!」
思わず、感嘆の声。
軽功に対しては完全に予想外だったようだが、神足法を用いての間合い騙しには完全に対応された。
流石は秩序の守り人たる風紀委員、似たような攻撃を受けたか、知っていたと思える…!
(これなら素直に神足縮地で一直線に仕掛けた方がまだ良かったですね…!)
己の状況判断の甘さに内心で自嘲。
直ぐに切り替え、反撃に備える。
「――――――!?」
奇妙な動き、そして、どんどん小さくなる足音の間隔――完全に、消えた。
「………。」
これは――先程のズルへの意趣返しか。
中々に意地の悪い攻撃。目で追っていては、捉えられない…!
(…いや、綺麗事ですね。誰もが丁寧な戦いに付き合ってくれるわけじゃない。
こういう「絡め手」も、武術の立派な範疇…!)
目で追う事が無理なら……目に頼る事を止めるしかない。
目で追っているように見せかけつつ――
(天耳法――合わせて、他心法――!)
聴力の強化と、脳内シミュレート力の強化。
目に頼れないならそれ以外の五感と、相手の動きの予測に力を注ぐのみ。
(早い――けど、追い切れない訳じゃない!)
他心法は負担が強い。頭痛が来る。が、其処まで長時間は相手も稼いでこない筈。
仕掛ける瞬間を、耳で追い、頭で予測し続け――
(……後ろ!?)
その予測がほぼ確定した瞬間。
素早く他心法をカットしながら、反射的に後ろ回し蹴りを放つ!
タイミングが完璧ならば――打ち合いによる相打ちか。
■伊都波 凛霞 >
古流武術・伊都波は流派の名すら持たない武術。常在戦場、治居乱忘、戦見矢矧。
近所の子どもたちに教えているのは飽くまでも健全な精神と肉体の育成を目的とした"武道"
古流武術としての在り方、その本質は──卑怯、籠絡、騙討、なんでも御座れの合戦戦術。
もっとも、これは稽古。
使う技に限りアリ、盤外戦術は完全封印。
こういった技術や歩法、身につけた技術を滞りなく実践できることの確認も兼ねる。
その点、久しぶりにやったにしては"よく出来た"
「(───だって、言うのに)」
高次予測──防がれる。
五感を研ぎ澄ましたか、あるいは──自身と似た予測によるものか。
繰り出した蹴りは、全く同時に放たれた彼女の脚と交差する様に打ち合いとなる。
「っ……凄い」
思わず漏れる言葉。
その実力は確かだろうな…と、以前公園で出会った時点で思っていたけど。
頬を少し冷たい汗が伝う。
後方へと後転、片手を床について跳躍し、大きく間合いを取る。
「ごめん!ちょっと…!」
そう言って、言葉をかけていた。
「これ以上やると、まずいかも」
──どこまで本気でやれるのか、なんていう…良くない意識が湧いてきた。
それは、多分…というか絶対にこの場ではやっちゃいけないこと。……まだまだ自分が未熟な証拠だ。
■緋月 >
「っ…!」
打ち合いになった蹴り。刀が使えない、あるいは使えなくなった場合の為の組み打ち、無手の技も
修めてはいるが――やはり、そちらが本業の流派にはどうしても負ける。
そういう意味では、割と強い痛みが脚に残った自身の負け、といっていいだろう。
(……やはり、凛霞さんは、強い。
――――斬りたく、なる。)
ぞわり、と、一瞬剣気が立ち上りかけ、
「――、そう、ですね。
これ以上は――お互いの健康のためにやめにしましょうか。」
ふー、と、大きく息を吐く。
危ない所だった。向こうからの終了の呼びかけは、正直こちらも相当に助かった。
(これ以上やったら、「斬り」にかかっちゃう所だった…!)
より強いひと。その力の底を、更なる深さを、「識りたい」。
それは、危ない事だ。「斬って」理解しようとしてしまう己にとっては、殺意無き斬撃を呼ぶ呼び水。
(本当、ままならないものですね…。)
と、そんな後ろ向きな思考は顔にも出さず、木刀を収めると、まずは一礼。
「――ありがとうございました。色々と、知見の深まるひと時でした。」
これについては偽りなき事実である。
刀に対し、格闘で戦われるというのは、中々ない経験。
その上で、彼女の「強さ」の一端に触れる事が出来た。
これは得難い経験であると言えるだろう。
■伊都波 凛霞 >
ふー…と大きく息を吐く。
心を鎮め、落ち着ける。
──なんとなし、予感はしてたけど。
武に身を置く人間は強さに敏感だ。
場合によっては何に差し置いても…どこまで力を振るってよいのか、試したくなる。
普段冷静なつもりでいる自分でも、こんな相手とやり合うと───、未熟を恥じよう。
多くの技は、友だと思っている人間に向けて良いものじゃない。
ちゃんと、弁えなきゃ。
「──…緋月さんも、そう思ったよね」
苦笑しながら。
立ち上りかけた、一瞬の剣気。
あれを試そうこれを試そう。
あれはダメだったこれは通じそうだ。
じゃあ次は───。
そんなの、どんどん加熱する一方。
その気配を感じ取った凛霞は、とりあえずの場の落ち着きに胸を撫で下ろす。
「こちらこそ。強いだろうなあって思ってたけど、思った以上。
まさか最後のまでその場で対応出来るなんて、少しびっくりしちゃった」
相手も思った、かもしれない。
互いが放ったものは、完全な初見殺し。
自分はたまたま似たものを識っていたから対応できただけに過ぎない。
「でも、少し心配かも」
「この島は"力"に敏感だから…。
気をつけてね、ヘンなことに巻き込まれたりもするかもしれないから──」
その力を十分知った上で、忠告…というよりは…友人としての心配事を語るように、そう言葉を手向けた。
■緋月 >
「あはは…アレは、というか、あの斬り上げるような一撃を受ける直前から、ズルしてました。」
恐らくは察知されたであろう、自身の剣気についても誤魔化す為に、苦笑しながらそんな事を宣う。
「……念法術、といいます。この島では、恐らく魔術に分類される術法なのでしょう。
私の修めた流派は、状況対応の為にこの術も一緒に習得します。
最後のアレは――耳の力の強化と、予測能力を増幅させる術の併せ技で対応しました。
予測能力の強化は、頭に結構負担が来るので…もうちょっと長引かせられたら、危ない所でした。」
と、種明かし。要は、一種の身体強化系の術との併せ技。
「巻き込まれたり…は、実はもうしました…。
暫く前に、考え事をしていてうっかり落第街に踏み込んでしまった時に…紅い蟻人と、
そいつに殺されて、屍人にされた人達に…。
逃げられそうになかったので、その場で対処しましたけど…迷い込んだ先については、私の過失でした。」
ごめんなさい、と、素直に謝る。
ちょっとだけ、元気がない。
■伊都波 凛霞 >
「私の幼馴染の使う剣術が、巫術を併用した剣術でさ。
子供の頃から立ち会いの相手なんかしてたおかげで対応できたようなもんだよ」
苦笑のままに言葉を返す。
本当にたまたまだった。驚愕、からの若干距離が離れたことによって落ち着いて見れた…というのもあったか。
「剣術よりも、私はその対応力のほうに驚いたかな…。
多分、最後のアレを初見で破ったの緋月さんが初めて…」
──だからこそ、ダメな感情が沸き立ってしまったとも言えるけれど。
「…そ、それは大分うっかりさんね…。
落第街は本当に用なきゃ…ううん用があってもダメかな…近づかないほうがいいと思う。
色々、風紀委員でも謙虚できてないような違反学生もいっぱいいるからね…」
既に巻き込まれた、という彼女。
とりあえず無事であることにはため息。
──赤き蟻人、そして屍人という言葉には、ぴくり。以前少し調べに入った、あの件についてのことだろう。
「私でも正面からはとてもじゃないけど絶対勝てない…って思うような相手もいるからね…」
データでしか参照はしていないけど、落第街の狂獣…なんかにはきっと分が悪い。
と、そこまで言ってあっと口を噤む。
…逆に興味を惹かれなければいいけど。
「ご、まぁ私もちょっと冷静じゃなくなりそうだったし!今日はおあいこってことで…!」
ごめんなさいなんて謝られるものだから慌てて、手を振ってそう伝える。
訓練自体は、とても実りのある良いものだったのだから。
■緋月 >
「なんと。そんな剣術が…!
世界が違っても、似たような発想が現れるというのはあるものなのですね…。」
ストレートにびっくり。
術法と併せの剣術など、そうそうないだろうと思っていたので、世界を隔てているとはいえ、驚いた。
「実を言うと、最後のあの一撃は結構ギリギリでした…。
反射的に蹴りを放ったのですが、やはり体術を主眼に置いている方が相手では、
どうしても重さで劣ってしまいます。」
まだちょっと足が痺れてます、と、実は結構な綱渡りだった事を自白。
見切る事が出来ても、その実は蹴りという迎撃手段を選んだ時点で、体術に優れている彼女相手では
実質的に負けに等しい選択だった。
「な、何と……凛霞さんにそこまで言わせるような相手が…!?」
流石に驚愕。それでは自分が挑んでも、果たしてどれだけ有効打になるものか。
「き、興味はありますが…流石に下手に虎の尾を踏みに行く気はおきません…。」
ちょっと口バッテン顔になっている。
流石に興味本位で危ない相手に会いに行く程、無謀ではなかったようだ。
「では、今回はお互い引き分け、という事にしておきましょうか。
――改めて、ありがとうございました!」
折り目正しく、改めての一礼。
憂鬱になる話題より、今回の貴重な体験を思い起こせるようにするべきだろう、と。
■伊都波 凛霞 >
「"補う"という意味でも"より高みを"という意味でも、
他の技術との併合はそれこそ色々行われてるからね。
もしかしたらもっと突飛なものも在るかもしれないよ?」
人の発想力は無限だ。
これについては足し算がすべてプラスになるとは限らないのが、難しいところだが。
「あはは…重さ……」
彼女の脚と自分の脚を比較してみよう。
何とは言わないが、そりゃあ重さも違うというものな気がするね。
やや声のトーンが落ちる、誰にもわからない程度の誤差で。
そして落第街の強者の話にはやっぱり食いついた?と思えば、思いの外冷静。とても助かる。
「ま、まぁ大丈夫…。
今のところ風紀委員しか襲われてない…みたいだし」
それはそれで、大丈夫ではないんだけど…。
「こちらこそ。今日は一回目だったしね、驚くこともあったりしてついつい…。
でもこれで緋月さんのことも色々と理解ったし、次はもうちょっとちゃんとやれると思うよ!」
飽くまでも前向きに行こう、といったような快活な返し。
これからもよろしく、と差し出す手は立ち会い後に健闘を讃え握手を求めるのにも似たもの。
■緋月 > 「た、確かに…! 世界は広いですからね…。
私たちのような若造の及ばぬ発想による武術や剣術が存在していても、おかしくはないです…。」
もしそんな己の発想の及ばぬ技をいきなり繰り出す相手に遭遇したら…可能性、恐ろしくはあるが、
同時に興味深くもある。未知なる剣技、いかなるものか。
「???」
と、こちらはあまり分かっていない様子の少女。
袴に隠れていますが、実は意外に逞しかったり。
流石に、肉付きの良さでは到底及ばないが。
「風紀委員が、ですか…。それは、凛霞さんにとっては心痛の種でしょう。」
とはいえ、部外者の自分がどう出来る訳でもなし。
出来て、問題の相手に遭遇したら逃げる事を徹底する位ではないか。…それを許してくれたら、であるが。
「それは――何と言いますか、恐縮です。
次の機会も楽しみですが…もう少し、軽い鍛錬でも私は良いですよ!」
差し出された手を握りつつ、そう一言。
例えば、互いに基礎の体術のおさらいとか。
流石にあの一撃で、体術も鍛えるべきかという意識が芽生えた書生服姿の少女であった。
「さて、と。私は木刀の後片付けをしておきますね。
……よかった、傷とかはないみたいです。さすがは鉄刀木。」
仮にも備品。それに鉄刀木は結構高級品だ。
傷の無い頑健さに安堵しつつ、お片付けの用意である。
■伊都波 凛霞 >
未知なる剣技に思いを馳せる。
頭に疑問符を浮かべども伝わらぬ想い。
両者の語らいの間に時間はちくたくと過ぎ。
「風紀委員狩り、なんて呼ばれるくらいだから、ね…。
うん、ともあれあそこには近づかないほうが一番」
わかってくれたようで、そこは安心。
互いに握手を交わし、次はそうしよっか。
と平和な共同鍛錬の考えなどを語らえば、よい時間。
「あ。じゃあ私もお手伝いするね───」
にこやか、そう言葉をかけて。
ともにその場のお片付け。
諸々と片付く頃には陽も傾き、帰りにご飯でもどう?なんて誘ったりもしつつ、残暑厳しい一日は過ぎてゆくのだった。
ご案内:「訓練施設」から緋月さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から伊都波 凛霞さんが去りました。