2024/09/08 のログ
緋月 >  
――まさか。
斬月・醒が、真っ向斬って、受け止められるとは。
驚愕と同時に、笑みが止まらない。

(ああ――本当に、此処は、儘ならぬ事が、とても多い!)

だが、今この瞬間だけは、それがもどかしく感じられない。
己の剣で斬って斬れぬ者。
それが存在する事が、驚くべき事であり、歓喜すら覚える。

そして――彼女が繰り出したのは、完全に埒外の技。

(刀…剣気だけで、刀を作り出した!?)

驚くべき所業、なれど、笑いが止まらない。
本当に、本当に――――――

(今この時は、楽しくて、仕方がない――――!!)

叫びからの勢いで弾き飛ばされた少女が見たのは、四振りの刀。
一振りの実体持つ刀と、三振りの剣気で編まれた刀。

それが同時に放つ、圧倒的な剣閃の嵐――!
 

緋月 >  
「は、はははは、ははは――!!」

最早、思考を反射が上回る。
染み付いた行動原理が、思考する前に行動を行う。

4つの刀から同時に放たれた剣閃の嵐。どう凌ぐ?
自分に4つも刀は作れない。

ならば、全く同時に4つの攻撃を放たねばならない。


「――時ヲ、割ク(刻断)――!」

瞬間、現れる怪異。同時に見える程に速い斬撃ではない、全く同時に放たれる4の剣閃。
其処から、多数の不可視の斬撃を伴う斬閃を4つ、打ち放つ!

四本の刀から放たれた剣閃の嵐と、同時に放たれた四撃の斬閃。

そのふたつが真正面からぶつかり合い、激しい鍔迫りのような音を甲高く打ち鳴らし続け――――
 

緋月 >  

             「………参りました、私の負けです。」

 

緋月 >  
先に刀を下ろしたのは、書生服姿の少女。

――その首には、まるで鋭い刃物で切られた傷痕を思わせる、真っ赤な線が真一文字に走っている。
 

桜 緋彩 >  
無限に響く、と思われた剣戟の音。
それが止めば、彼女が負けを認める言葉。

「――いやぁ、そうでもないですよ」

そう笑いかけた後、刀を取り落とす。
ガシャン、と地面に落ちる刀の音。
それに続いて、自分の身体が地面に落ちる音も。

「正直、もう指一本も動かせませんので――」

と自分ではそう言ったつもりだったのだが、恐らく彼女の耳にはそう聞こえていないだろう。
なんせ口すらうまく動かせないのだ。
とにかく文字通り指一本動かせない。
フルマラソンを走った後に乱取りするぐらい自信があった体力だが、新たな技は今までの日じゃないほどに疲れる。
と言うかなんだか鼻の奥が鉄臭い。
どうやら鼻血が出ているようで、体力だけじゃなく、脳の負荷も相応にあるらしい。

緋月 >  
「ひ、緋彩さんー!?」

突然、まるで力を絞り切り、燃え尽きたように倒れ伏す相手の少女。
大急ぎで駆け寄り――たかったが、こちらも最後の四撃に剣気を絞り切ってしまった為、
走り出しで軽くつんのめり、その後も歩くよりは幾らか速い、という程度の速度でよろよろと駆けつけるばかり。

「だ、大丈夫ですか――って、うわ、鼻血、鼻血が!」

似たような症状に覚えがある。他心法の使い過ぎで、酷い頭痛を起こした時、
ちょうど今の彼女のような有り様だった筈だ。

「し、しっかりして下さいね!
今、救急室まで運びますから!」

幸いに、というべきか、消耗は自分の方がまだ軽い。
急いで自身の刀を鞘に収め、取り落とされた刀を持ち主の鞘に戻すと、
よっこいしょ、と肩を貸して歩き始める。

「大丈夫ですか、私の声が聞こえますか!?
歩きますよ…!」

――結果だけ見れば相打ち。
だが、あの剣閃の嵐を捌き切れず、致命傷に該当する傷を負ったのは、自分が先だ。

(……修練が足りないですね。
と、今はそんな事を考えてる暇はなかった…!)

何とか、肩を貸した少女を救急室まで運ぼうと脚を進める。
その有様から、つい先ほどまでの剥き出しの刀のような剣気は、綺麗さっぱり消え去っていた。
 

桜 緋彩 >  
「ぁー……」

大丈夫ですよ、と言ったつもりだったが、言葉にならない。
辛うじて右手が僅かに持ち上がり、ひら、と僅かに振られる。
ぼたぼた鼻血を垂らしながら、顔は困った様な笑顔のそれ。
彼女に心配を掛けまい、と言うのもあるが、どちらかと言えば壁を乗り越えた喜びの方が大きいか。
これからは体力の鍛錬と同時に気力の鍛錬も増やしていかねばならないな、と。
そんなことを考えながら、半ば引きずられる様に救護室へ向かうのだった。

当然と言うかなんと言うか、救護室にいた保険委員には「訓練でそこまでやる人たちがいますか!」としこたま怒られたとか怒られなかったとか。

ご案内:「特殊訓練区域」から緋月さんが去りました。
ご案内:「特殊訓練区域」から桜 緋彩さんが去りました。