2024/09/10 のログ
桜緋彩 >  
「時には折れそうになることもあるでしょう。
 そういう時は、頑張ってもいいのですが――」

す、と顔を寄せ、口の横に手を当てて、内緒話をするようなポーズ。

「――いっそ諦めてしまう、と言うのも一つの手段ではあります。
 なにせ目標を変えたところで死ぬわけではありません」

無謀すぎる目標は、時に呪いにもなりうる。
その呪いに飲み込まれてしまうぐらいならば、諦めてもいいのだ。

「私も言うほど強くはありませんが、そうですね。
 フィスティアどのが目標にして下さると言うのならば、それに恥じぬよう私も努力してまいります」

人の目標になる、と言うのは中々気が抜けない。
自分は一流派を預かる身であるから、尚更気を付けねばなるまい。
改めてそれを教えてくれた彼女に、こちらも深々と身体を曲げて最敬礼。

フィスティア > 「…そうですね…」

桜さんのささやき声は悪魔の囁きのようで…申し訳ないのですが、悪寒がしました。
諦めるという選択肢に…暗い部屋での記憶を思い出してしまったのです。
あの未来を生きる事すら諦めていたような日々を…

そんな事は桜さんは知るわけがありませんし、桜さんのおっしゃる通りです。
諦めたとしても、死ぬことはありませんでしたから。

ですが…あの日々には戻りたくありません。

「…もしかしたら、諦める事もあるかもしれません。
ですが、まだ目標が曖昧で、定まってすらいない段階です。こんなところで諦めてしまうのは流石に出来ません」

いつか諦めるとしても、それは決して今ではありません。
私は目標を違える事はないでしょう。それを貫く為にも、諦めたくはありません。
今から弱気ではいれません。ここは、強気な事を言って自分を鼓舞しましょう。

「追いつけるよう、頑張らせていただきます。
背中も見えていないかもしれませんけれど」

私にここまで道を示して下さったのに、私より遥か先を行っているでしょうに。
それでもこうして自分を未熟だと思う…この方に私は追いつけるのでしょうか。
分りませんが、追いつこうとすることは悪い事では無い筈です。

「今日は一度帰ろうと思います。
何をすればいいか分からないうちから、案山子と向き合っていても仕方なさそうですから」

苦笑いが零れます。
改めて口にすると滑稽な話かもしれません。
どう振るえばいいかもわからない剣を振りに来ただなんて。
ですから、一度引きましょう。
…私に剣を教えてくれた彼らも言っていました、時には引くことも大事だと。

桜緋彩 >  
「確かに、始める前から諦めることを考えるのは良くはないですね。
 ですが、諦めると言うのは決して逃げではない、と言うことは、よく覚えておいてくださいね」

あくまで手段の一つである、と言うこと。
願いが呪いになってしまう前に。

「はい、お互いに頑張ってまいりましょう」

振るう剣は違えど、同じ剣の道を進むものだ。
見えずとも、「居る」と言うことは大変励みになる。

「まだ暑さは続いていますから、帰り道お気をつけて。
 細剣(レイピア)は専門ではありませんが、基本的なことは同じでしょう。
 私にお手伝い出来ることがあれば、いつでも道場へお越しください。
 大抵の放課後は訓練施設(ここ)におりますので」

フィスティア > 「分かりました。ありがとうございます」

覚えておきましょう。
これほど強く言うのです。きっと理由があるのでしょう。

「はい。桜さんも怪我などないように。
道場にはお邪魔するかもしれません。その時はまたよろしくお願い致します」

とても心強い申し出です。
何から何まで、本当にお世話になりっぱなしの時間でした。

「それでは、大変お世話になりました。この御礼はいつか必ずさせていただきます。
それでは、失礼いたします。」

深々とお辞儀します。
この国のお辞儀は角度でその重みが変わると聞きます。ですので90度です。

数秒開けて身体を起こして、微笑みながら軽くお辞儀して訓練室を出ます。
何から始めましょう。まずは、何をするべきか考えたり、調べるべきでしょうか。

とても健やかな気分です。くどいようですが、ありがとうございました、桜さん。

桜緋彩 >  
彼女が訓練室を後にするのを見送って。

「――ううむ、強いとは何か、と問われるとは」

何せ「強くなる」ことにはあまり興味がなかったのだ。
強くなるために剣を振っているのではなく、それが自分だから振っていた。
先日剣に一歩深く沈んだことで、更にその先へ、と言う欲も出てきたが、強さへのそれとは少し違ったし。

「しかし、呪いにならなければ良いのですが」

不殺と言う道。
きっと自分が進むそれより遥かに険しいだろう。
彼女はどこかでそれと他の物を天秤にかける時が来るかもしれない。
その時に、折れてしまわなければいいのだが。
そう言う人を沢山見て来たから。

「――まぁ、なる様にしかなりませんか……」

しかし、それを決めたのは彼女だ。
歩く手伝いは出来ても、道を作ることは出来ない。
今は彼女に追いつかれないように、自分も先に進まねば。
剣を抜き、それを構えて鍛錬に入る――

ご案内:「訓練施設」からフィスティアさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から桜緋彩さんが去りました。