2024/09/17 のログ
ご案内:「訓練施設」に橘壱さんが現れました。
橘壱 >  
常世学園 訓練施設内部。
様々な訓練機器が備わっており、
身体強化目的は勿論、異能制御の為に
様々な最新鋭のトレーニングマシンが備わっている。
その一つのランニングマシンの上を少年は走っている。

「ハッ…!ハッ…!」

息を切らし、汗が飛び散る。
今日のマシン速度は"24km"。
常人よりも早く、その速度に問題なくついていけている。
だが、どうだ。壱少年はこれでもまるで"足りない"と感じた。
感じている。多くの戦場を経験し、
ハッキリ言えば戦果は著しくない。
逸る気持ちに合わせるより、更にマシンの速度を上げた。

橘壱 >  
まだ足りない。全然足りない。
こんな速度で、体力で、戦えるはずもない。
機体(マシン)の問題じゃない。操縦士(パイロット)の問題だ。
マリア(あのとき)弟切夏輝(あのとき)も、操縦士(パイロット)さえ強ければ問題なかった。
どれだけ反応速度や反射神経が早くても、
体がついてこなければ、何の意味もない

「ハッ…!ハッ…!…、…!?」

何処までも音を立ててマシンが早くなる。
限界速度。邪念が取り巻く瞬間、足がもつれた。
だがなんのその。即座に手すりを掴み、
乗り越える形で床に着地。新体操顔負けの柔らかさ。
だが、壱からしたらこの程度出来て、何だと言うのだ
膝に手をつき、息を整えながら一息ついた。

「…………。」

わかってはいた。
この異能社会において、非異能者の立場など。
機体(マシン)でその(ギャップ)を埋め続けても
当の操縦士(パイロット)がこのザマではなんの意味もない。
超人、異能者、魔術師。まるで足元にも及ばない。
昔からわかっている、それでも重ねるしか無い。
自分で言うのもなんだが、間違いなく前進している。
かつて、耐えきれなかったGに徐々に耐性がついてきた。
それでも──────……。

「……まるで届かないな。」

弟切夏輝や伊都波凛霞のような超人。
追影切人のような化け物たちにまるで追いつけない。
あの若さで、どうしてそんな高みに入れるんだ。
見下ろす手のひらをぐ、と拳を握り込んだ。

橘壱 >  
ふ、と思わず口元が緩んだ。
諦めではない。無力感に苛まれた訳じゃない。
前からそうだ。王者(ゲームチャンプ)だった時も、
初めから無敵だった訳じゃない。
ゲームの知識、緻密な戦略性。
そして、鍛え上げた腕前でただ一度も玉座を譲らなかった。
その舞台が、現実に移っただけだ。
挑戦者は、何時の時代も後ろ指を指されている。
笑われようが、なんだろうが、一度決めたらやるしかない。

「……手応えはある……。」

確実、一歩ずつ進んでいる。
歩幅が他より狭いだけ。間違いなく差ではある。
だからといって、腐っていたら何も起きない。
起こすことだって出来やしない。
心に秘めた妬み嫉みだけじゃない。
純然たる執念がそこにはあった。
橘壱が、非異能者が持ち得るその支え。
幾ら打ちのめされても、息の根が止まるその瞬間まで
決して止まる気はない執念があった

「せめて、Fluegel(おまえ)に恥じない操縦士(パイロット)にならないとな。」

傍らに佇むトランクを一瞥し、軽くウィンク。
チェストプレスに座り込めば、レバーを握り込んだ。

橘壱 >  
重量ギリギリ限界。
ギチギチの筋肉が悲鳴を上げる。
それでも構わずレバーを引き込み、
何度も重量を持ち上げる。
何時の世も、積み重ねる事は、傍から見れば地味なものだ。
それに、操縦士(パイロット)一つとっても、
自分より上は幾らでもいる。AFはパワードスーツだ。
着る人間を選ぶことはない。異能者でも着れる。
同じ条件で、異能一つ、魔術一つあれば上位互換だ。
それらを踏まえた上で、超えなきゃいけない。

「経験……っ……力……っ……全く……!」

皆欲張りだ
自分の当たり前一つ取ったって感謝しない。
文句の一つだって言いたくもなる。
でも、気持ちだけは分かる。
一つ取れば、が欲しくなる。
異能者だろうと非異能者だろうと、
そういった欲望のはけ口は変わりはしない。

「まぁ、僕も人のこと……!言えないよな……!」

橘壱 >  
ガシャン。重量が下る音が鳴り響いた。
息を切らし、肩に掛けたタオルで汗を拭きつつ
タブレット端末を展開する。風紀や自身の関係性のある情報が表示された。
現在の発生中の事件等、風紀委員の情報。
そして、自身の愛機の情報。
ちゃんと横目で見れないような措置はしてある。

機体(マシン)の方は……改修はもうすぐか……よし。」

それに見合うだけの強さは手に入れよう。
あの早撃ちも、見えてはいた。
何か掴んだ感触はある。
あの異界に迷い込んだ時もそうだ。
それに、羨望を抱くような彼女等もまた、
相応の鍛錬、努力は重ねている。
だったら尚の事、負けられない。
ふぅ、と一息付いてペットボトルの水を口に含んだ。

「……にしても問題は……。」

まぁ、それだけじゃない。
人間関係も色々だ。
とうの凛霞先輩の精神状態も気になるし、
自分が監視を任せられている怪異の少女のこともそう。
そして、直近なのは……。

「どうしようかなぁ……あれ、絶対怒ってるよな。イヴ……。」

度重なる戦闘で病院の世話となり、
ルームメイトの約束を何度も不意にした。
あの表情、目つき、怒ってる。間違いなく。
どうやって謝ろう。機嫌直してもらおうか。

「……物……は、俗っぽいな。
 レジャー施設とか……いやでも……。」

男二人で温泉プール。ちょっと絵面が……。
はぁ~~~、深い溜め息とともに頭を抱えた。

橘壱 >  
これは、社会的に未だ残る溝の一つだ。
それでも、前よりは大分フラットに受け止めている。
今まで通りだ。無いならないで受け入れ、
出来る手札を鍛え続けるしか無い。
企業の広告塔。人々に夢を与える象徴。
非異能者である自分がそうなれたら、
世間もプラスなイメージで変わっていくはず。

「デカすぎる夢かも知れないけど……。」

目指す先としては充分すぎる程だ。
見返してやるの意味合いも、前とは違う意味にもなった。
そのためには、こうして続けていくしか無い。
タブレット端末を閉じると、ふぅ、と一息。

「よし……。」

とりあえず、ご機嫌取りは次考えよう。
今はひたすらに前に進む。
再びトレーニングマシンと付き合い、限界まで続けるのであった。

ご案内:「訓練施設」から橘壱さんが去りました。