2024/12/20 のログ
ご案内:「訓練施設」に成海 鳴さんが現れました。
成海 鳴 > 「ばちん!!」

口での合図とともに、空き缶の目標に電撃が走る。
落雷というほどでもない威力の電撃が命中した部分は……空き缶の斜め上あたり。
目標には少々ズレた地点に着弾した電撃を見て、はぁ~っとため息一つ。

「やっぱり誘導がないと精度が全然だぁ……もっかい!」

放電という性質上、放たれる一撃は環境に大きく作用される。
普段はそれを補うために導線となる特殊テーザー銃を使うが、それがいつでも使えるとは限らない。
テーザー銃でも銃は銃、風紀委員で支給される武器は持ち出しに申請が必要になる。

何度か電撃を放ってみるも、空き缶には何度やっても当たらず…

「くっそ~~~……!
 これじゃ実戦で使えないよなぁ……なら…!」

今度は、対人術用のデコイ人形を使っての格闘訓練。
打撃が当たるときに「ばんっ!!」と声を発し、掌底から電撃を放出する。
こちらは目論見通り、人形に着弾して表面に焦げ付きを発生させるだろう。

「やっぱりこっちのが当たる…!
 けど、体の方が全然だよなぁ。もっと体術覚えないと使いにくいし…」

想定するのは、ルーフラットという犯罪者。
腕力の強化やサイコキネシスのような異能を持った、生身で相手すると危険な相手。
肉体的には何の変哲もない女子である成海では、正面からぶつかるのはあまりにもリスクが大きい。

「電気を纏うみたいに出す……とアタシも感電するんだよなぁ。
 それにすぐにバテちゃうし…ん~!」

まだ新米で異能も発現したての成海には、圧倒的に経験値が足りなかった。
便利な異能と言われる放電能力も、正直に言えば宝の持ち腐れ。
今は口で合図をしなければ放電できないし、それの命中精度や威力も特筆するほどのものはなかった。

成海 鳴 > 「はぁ、はぁ、はぁ……あー、うまくいかない!」

何より、異能を使いながら他の事をするというのは、想像以上につかれる。
右手で絵をかきながら左手でタイピングをするようなもの。どうしても頭がこんがらがるし、やり方をミスると自分が感電するというリスクもある。

「他の風紀委員の人はこんなことを平然としてるのか……
 やっぱりバケモノみたいな先輩方しかいないよなぁ」

異能が使い勝手のいい、戦いに有利なものといっても、それを素人がいきなり使いこなすなんてことはできないのだ。
少なくとも成海の異能は出力から発生先、持続時間等を考えながら使わなければならない分、戦いながら頭をフル回転させなければならない。
これがもっと他の異能であれば別なのかもしれないが……異能は変更の効かないガチャのようなもの。ないものをねだっても仕方がないし。

何より。

「常世神に願ったら本末転倒だしな~…」

求める異能を発現させれるという、常世神の事を思い出す。
それの危険性を聞いている以上、頼るということはできない。

何より……それに頼っている相手と戦うのだ。
風紀委員として、同じ行為に手を染める訳にはいかない。

「でも、テーザー銃以外にも武器は持っていいかも。
 通電性の武器だったらリーチが伸びるし…」

成海 鳴 > 「電気にばっかり頼っちゃダメだってこともわかったしなぁ」

前回のルーフラット捕獲作戦、想定外だったのはガスを使って電撃を封じられた事だった。
電撃は火花を発生させる危険性がある。故にガスの充満した空間では、自分の異能は大きな制限を受ける。
これは完全な盲点だった。し、建物のある場所だったら同じようにガス管を使って異能を封じられる可能性は低くない。
ガスでなくても、ガソリンでもなんでも、可燃性の高いものの近くでは自分は無防備になってしまうのだ。

「やっぱり格闘を鍛えるしかないな……でも格闘技なんてやったことないんだよなぁ~!
 …いやいや、泣き言言ってらんない!特訓あるのみ!」

腕にテーピングをして、今度はサンドバッグを準備し打撃の練習。
一応格闘技の訓練は風紀委員の必修だから、基礎は学んでいる。
それを思い出しながら、異能を使わずに打撃を何度も繰り返してみる。

「痛っ…!」

打撃の一つが変な方向に入って、手首が少し痛む。
あきらめず何度も、ジャブ、ジャブ、ストレートとコンビネーションを繰り出して…サンドバッグを揺らしていく。

「はぁ、はぁ…っ!」

1分、2分…呼吸を整えて再度。
打撃を続ける度に腕が苦しくなる。足が重くなる。
でもこれを続けれるようにならなくちゃこの先やっていけないのだから、休まずにさらに、打撃を打ち込んでゆく……

成海 鳴 > 「基本はワン・ツー…!」

左を素早く入れて、力を込めた右を叩き込む。
これが基本。考える必要もないくらいにこれを打てるように、何度も打撃を続ける。

ワン・ツー、ワン・ツー

人より不器用な自覚のある成海は、こうして何度も反復練習をしなければならない。
覚えてることを、腕ががくがくになるまで繰り返す。

ワン・ツー、ワン・ツー

拳が痛くなっても、何度も繰り返す。

ワン・ツー、ワン・ツー

肘が落ちてきたと思ったら、すぐに構えを戻して、繰り返す。

ダン、ダーン!という愚直な連打の音が、何度も響き渡る。


成海 鳴 > 「前みたいに…っならないように…!」

繰り返す、何度も。
足も振るって、ローキック。
打てる部分はいくらでも、打っていく。

次は、負けないように。
しっかりとルーフラットを捕獲できるように。
ルーフラットでない犯罪者でも、負けないように。

その為に出来る事はなんでもやらなくては。
今巷で暴れている犯罪者の魔の手から、一人でも多くを守らなくては。
そして、犯罪者も、更生させなければならないのだから。

「ふっ……は!
 は…もう無理!じゃない……もう1セット!」

ついに腕がふらふらになりながら、ばたりと倒れる。
少し休憩したらもう一度サンドバッグに向かい、また同じ時間打撃を繰り返す。
そしてまた息も絶え絶えになりながら倒れて、1分ほどの休憩。
これを何度も続ける。

今日だけじゃなく、何度もこれを繰り返さなくちゃダメだ。
何度もやらないと何も覚わらない。訓練は一朝一夕で身につくものじゃない。
天才なら一瞬で感覚を掴んで強くなるなんてこともあるのだろうけど……
あいにく、成海は天才ではなかった。


「はぁ、はぁ、はぁ……」

予定されたセットを終えたときには、もはや体はガクガクで。
吐きそうになりながらなんとか胃の中のものを戻さないようにしつつ、ペットボトルの水を浴びるように飲んで倒れ伏した。

「強くなりたいなぁ…」

成海 鳴 > 息を整えて、天井を眺めていれば。
一抹の不安のようなものも考える。

実際のところ、凡人のアタシがこうやって鍛えて何の意味があるだろう、とか。
異能を新たに覚えるような相手に、こんな基礎的な事が通用するのだろうか、とか。

でも、考える度に頭を振って不安を振るい落とす。
そんなことは何度も考えてる。考えた末にこれしかないってわかったことだろ。
特訓は一瞬で強くはしてくれないけど、ズルをして強くなってもそれは付け焼刃。
真っ当に強くなるには、真っ当に努力してくしかない。

異能を使うのが下手でも、持ってる異能はすごく強いんだ。
便利な異能なんだ、使いこなせるようになれば絶対に、強くなれる。

「……も、っかい!」

自分よりもはやくから戦い方を学んでた人だっている。
自分よりも強い異能を持ってる人もいる。
その人らに追いつくには、追いつけるだけ努力するしかない。
才能を埋めれるのは、結局努力しかないのだから。

「ワン・ツー…!」

だから、愚直にいこう。
何度でも教科書を読んで、何度でも叩いて、何度でも鍛えてやろう。
時間は待ってくれない。怠ったら、その先に取り返しのつかない後悔があるかもしれないから。
そんな後悔をしないための訓練を、ひたすら続けてゆく。

ご案内:「訓練施設」から成海 鳴さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に桜 緋彩さんが現れました。
桜 緋彩 >  
訓練施設の真ん中に、無造作に刀をぶら下げて立つ。
ふう、と一呼吸してその刀に視線を落とし、無造作にブン、と振った。
その直後、刀は妙に存在感を増す。
よく見れば、刀の周囲数ミリの範囲の空間がほんのわずかに歪んでいることがわかる、かもしれない。

「――慣れてきた、と言うのも少し違いますか……」

かつてここで斬り合いをした時に至った「神槍参式」。
あの時はそれを彼の大技にぶつけた直後、ぶっ倒れてしまった。
だが、今はこうして無造作に繰り出せる。
勿論今はある程度の規模ではあるが、明らかに負担が減っている感覚はある。

ご案内:「訓練施設」に追影切人さんが現れました。
桜 緋彩 >  
今口に出したように慣れてきた、と言うのも少し違うだろう。
慣れと言うのは負担を無くすようなものではない。
負担に慣れた結果、ある程度楽だと思うものだ。
だがこれは明らかに負担そのものが減っている。

「そう言えば、魔力の質が変わっている、と言われましたね」

定期診断で魔力測定もしたのだが、前回の診断から質が変わっている、らしい。
魔力とはつまり気とか剣気とか呼ばれるもの。
つまりこの感覚は慣れではなく最適化、と言うことだろう。
その代償として、魔法関係の授業は履修そのものを諦めざるを得なくなってしまったのだが。

「まぁ大丈夫でしょう!
 必修科目ではありませんでしたし!」

必修科目(数学や物理なんか)は最近猛勉強の甲斐あって成績も上がってきているし。
友人との約束を果たす時も近いだろう。
たぶん。
きっと。
おそらく。

追影切人 > 「――なぁにが大丈夫なんだよ…つか、必修じゃなくても単位落としたら問題じゃねぇのかよ…。」

何時の間にか、というより普通に出入り口から堂々と来ただけなのだが、彼女から少し離れた所で足を止めて。
相変わらずの強面と鋭い隻眼、そして肩に担いだのは刀身を布で巻いただけの奇怪な刀剣が一振り。

別に盗み聞きしたつもりは毛頭なく、先客が居てしかもこの前斬り合った相手だったので声を掛ける――筈が。
先の彼女の独り言が耳に届いてしまったのもあり、初手の声掛けが何かツッコミじみてしまった。

ちなみに、男も必修科目”含めて”成績はヤバいので彼女より実は切羽詰まっている。
多分、そろそろ留年の危機意識を持った方がいいのだが男は気にしていない…終わってる。

桜 緋彩 >  
「おや追影どの。
 しばらくぶりでございます」

聞こえた声に振り替えり、見知った姿を捉える。
そのままぴしりと綺麗に一礼してみせた。

「単位に関しては必要数以外にもいくつか取っておりますので。
 魔術魔法系の授業で単位が取れなくても大丈夫なようにしてあります」

在学中に自身のような理由で単位が取れなくなると言うことはそれなりに例があるらしい。
なので例えそれが取れないと単位が足りない、と言う様な時には、補習などで対応して貰えるとも聞いた。
とりあえず単位に関しては大丈夫、と言うことだ。

「今日は追影どのは鍛錬ですか?」

追影切人 > 「…おぅ…この前は面白い斬り合いだったわ。あんがとよ。」

あそこまで盛り上がったのは久々だった。結果的に引き分け?にはなったが満足出来たし。
彼女の綺麗な一礼とは対照的に、男はといえば気怠そうな動作で片手をゆらり、と挙げる挨拶。

「――あぁ、補習とか含めた救済措置みたいな感じの奴か。
…そういや今まで散々やらされたな…。」

お陰で毎度ギリギリの所で滑り込みセーフ、というのが常態化してきている始末。
男は、一応一つきりだが魔術は使えるのでそれ系統の授業も選択しているが…出席率も成績も言うまでも無く悪い。

「……鍛錬…っつぅか”調整”みてぇなもんだな…まぁ、鍛錬と言えばそうなるんだろうが。」

肩を小さく竦めて。そもそも、男にとっての鍛錬=斬り合いなので、一般的な意味での”鍛錬”は殆どした覚えが無い。
何事も実戦で学び、培い、そして何も無い時はだらだらする。
決して褒められた態度ではなかろうが、男にとってはそれが最適解らしい。

桜 緋彩 >  
「いえ、こちらこそ更に深い世界に足を踏み入れることが出来ましたので」

ぶん、と無造作に刀を振る。
それだけで以前とは比べ物にならない密度の刃が複数振るわれる。
彼と立ち合う前だったなら、技の精度はこれほどまでにはならなかっただろう。

「あぁー……。
 追影どの、勉強嫌いそうですもんね……」

失礼ながら。
見た目どこからどう見ても不良だし、そもそもが元二級学生だし。
それでもここで生活できているのだから、最低限のことはしてきているのだろうけれど。

「調整、でございますか?
 どういったことをするのか、宜しければ見せて頂いても?」

追影切人 > 「――あの時の技か…それにしちゃあ、随分と精度が上がってんな…。」

彼女が無造作に刀を振れば、以前とは明らかに別の領域とも居える”密度”の刃。
それを一瞥すれば、成長したのはお互い様…という所なのだろう。

「…俺の監視役とかどっかの腐れ縁に突っつかれるから、留年だけはしねぇようにはしてるけどな…。」

誰とは言わない、誰とは。まぁ、地頭が悪い訳ではないのでちゃんと頑張れば平均くらいは行ける…多分!
まぁ、彼女の感想はとても正しい。実際大多数からはそう思われているし事実でもあり。

「――あぁ?別に構わねぇが、そんな面白いモンでもねーぞ?剣術とかのアレじゃねーし。」

どちらかといえば、刀や技術より異能の調整の意味合いが強いので見ても面白みは無いと思われるが…。
まぁ、別に見られても特に困るものではないので、桜の好きにしていいと軽く手をひらひらと振って了承の意。

そのまま、少し彼女から離れてから刀身に巻かれていた布を無造作に解く。
露になったのは、刀の形をしてはいるが…鍔など一部が歪な形状をしており、橙色の色彩が異様な一振りの刀剣。

桜 緋彩 >  
「一度経験した、と言うのもあるでしょうね。
 ですが一番大きいのは、私の魔力が刃とか剣とか、そう言うものに特化した性質に変わってきていると言うのがあるようです」

そもそもが自身の魔力を編んで刃や刀身にする技だ。
言ってしまえば土から刀を作るのと、鉄から刀を作るのがどちらが大変かと言うこと。
あの時の鼻血や嘔吐は、急に魔力が変質した反動と言うこともあったらしい。

「実は私もあまり勉強は得意ではないのですがね。
 ですが、成績上位を取れたら立ち合ってくれる、と言う約束をしておりますので」

前回の試験ではギリギリ平均点にも届かなかったと言う体たらくだったが、あれから半年ぐらい経っている。
手ごたえ的には割と良いところまで言っているのではないか、と思う。
そして見ていいと言われれば、刀を鞘に納めて部屋の隅っこへ。
腰の刀を二振り床に置き、その隣に正座。

追影切人 > 「――特化型の魔力性質か…方向性は違うが俺の魔術と似たようなモンか。」

呟くように。男の場合は、【覚醒】にだけ特化した術式なのでかなり使いどころが難しいし燃費が悪い。かなり悪い。
1,2回使ったらそれが限界で、インターバルも最低1週間は必要なくらいだ。

(…俺もどっちかといやぁ桜のような魔術適性の方が性には合ってんだけどな…。)

無い物強請りしてもしょうがないし、手持ちがそれしか無いので後は”幅を広げる”しかない。
彼女の言葉に顔をそちらに向けて。「なんだ誰かと斬り合いの約束してんのか?」と、世間話の延長のように訪ね。
もっとも、プライベートな事であるし根掘り葉掘り聞く気は無いのだが。

彼女が見学の姿勢に入ったのを尻目に、一度隻眼を閉じて息を吐く。
――男の異能は、そもそも一部が奪われており、更に監視対象として異能抑制措置で弱体化も著しい。
…ならば、弱体化した異能で現状はどうにかするしかない。そこで”調整”だ。

「――12時。」

ぽつり、と呟くのは時刻のようだが…今は昼時ではない。…どうやら方角を指した呟きのようで。
無造作に、右手の刀を前に突き付けるように翳す。示す切っ先は前方。男を基点とすれば時計の12時の位置。

「――時計回り――切断誤差(ラグ)は3秒と数センチ以内。」

そのまま、刀を振り抜いて身を翻す。意外と流麗な動きでその場で回転し、ぴたり、と全く同じ位置で静止。

――きっかり1秒後。刀の振るった軌道上の全方位の空間が裂けた。真空状態になったそこに、周囲の空気が流れ込みう渦を巻く。
――2秒後、おもむろに裂けた空間が元に戻る。それを確認してから。

「――ギリギリ及第点。…やっぱ鈍ってんな…。」

僅かに顔を顰めて独り言。桜が見学している事をふと思い出せば、「こういうの見て面白くもねーだろ?」と、言いたげに鼻を鳴らす。

桜 緋彩 >  
彼が「調整」に入ったので、一度会話を中断。
聞こえた言葉と、見えた現象。
なるほど、調整。

「――いえ、面白いですよ。
 見たところ、感覚で技の出力や方向、時間などを把握する、と言ったところでしょうか?」

ラグ、と言う言葉や、目を閉じて行った行動を見るに、そう言うことだろうか。
人は目で見て判断する生き物だ。
目を閉じると結構人の感覚はあっさり狂うらしい。
けれど敢えてその状態で動くことで、見えないところを見えるようにする、と言う思考は自分にもわかる。

「誰と斬り合うか、と言う話でしたが。
 追影どのの監視役、とですよ」

自身の友人であり、彼の監視役であり、誰もが認める完璧超人であり、また別の友人の姉であり。
ついでに先日写真部の広報用無料配布の冊子の表紙を水着グラビアで飾った、伊都波凛霞その人である。

「ふむ、しかし――」

そしてしばらく顎に手を当てて考え込み、

「――追影どの、剣を学ぶつもりはありませんか?」

そんな提案。