2025/04/17 のログ
ご案内:「訓練施設」に緋月さんが現れました。
ご案内:「訓練施設」に霜月 霈さんが現れました。
■緋月 >
演習場・訓練施設のひとつ。
何かの道場を思わせる雰囲気のその訓練所にて。
本日、こちらを使わせて貰っているのは、書生服姿の少女であった。
白に近いライトグレーの髪が特徴的なその少女は、訓練所の真ん中で、一人静かに佇んでいる。
否、静かに…というと、少し語弊があるかも知れない。
その右手には、常に刀袋に入れて持ち歩いている愛刀。
鞘から抜かれ、剥き身の刃を見せるその刀を握る手をだらりと下げ、静かに目を閉じ、深い呼吸を繰り返す。
その一呼吸ごとに、少女の周囲の空気が僅かに、しかし見る者であれば分かるレベルでゆらぎを見せる。
「………。」
何の用事で此処を使わせて貰っているのかというと、簡単に言えば精神修行の為だった。
ここ暫く色々とあって訓練の頻度が少し減っている。
鈍った勘を取り戻すのと、以前に某所で起こった戦いを振り返っての、自身の技と異能の磨き直し。
それが今回の用事であった。
(自分の出した「結果」に満足して立ち止まったら…あの「斬月」は、きっとすぐ鈍らになりますからね…。)
窮みに届かぬが故に、ひとつの形に定まらぬ「斬」の異能。
それを鈍らせる訳にはいかぬと、精神を静かに研ぎ続ける。
普通に一見しただけでは、ただぽつねんと立っているようにしか見えないような姿勢ではあるが、
その内側では静かに「精神」の刃を研ぎ続けている少女だった。
■霜月 霈 >
春、神技武練塾での模擬戦も近い。
普段殆ど鍛錬らしい鍛錬をしないと決めている少女は何の気なく、この演習場を訪れていた。
何か参考になるものがあるか…なんて殊勝な心がけはなく。
どちらかといえばただの暇つぶし。
そんな制服姿に大太刀を帯刀した少女はふと足を止める。
「(……へえ)」
自分よりも一つ頭くらいは小柄か。
抜き身の刀を構える少女の姿を見つけ、その視線を奪われる。
見るからに集中している様子だ。
じ…、と数秒。その姿を見つめて──。
■霜月 霈 > 「わーッッ!!」
■霜月 霈 >
唐突。
少女に向けてあたりの空気が震えるくらいの大声を出していた。
■緋月 >
「………。」
ゆらり、とまた少し。書生服姿の少女の周囲の空気が揺れる。
己の内ばかりに気を割いている訳ではない。
常世学園という場所には、それこそまだ己の知らぬ強者が居る、という事は分かっていた。
同時に、その中に挑戦心というか――他者と力を比べたいと強く思う者もまた少なくないだろう、とも。
(――――見られている。)
視線に気づけば、対応も出来る。身体なり、精神なり、いずれであっても。
そして、放たれたのは――――大声。
(…悪戯が好き、という方面、でしょうか。)
準備が出来ていれば、大きく驚くほどではない。
耳が少しばかり痛くはなったが…結構な肺活量だ、とは思う。
軽く息を吐き、ゆらりと声をかけられた方を向きながら目を開けば、自分より聊か長身の女子。
「……悪戯するなとは言いませんが、出来ればもう少し鼓膜に優しい声量でお願いしたいです。」
少しだけ、困ったように眉を寄せながらそう返事。
血のように紅い瞳が、大太刀を持つ少女の姿を映し出す。
■霜月 霈 >
ビリビリと震える空気。
何事かと遠目に此方を伺う生徒もいるが、少女はさして気にする様子もなげに突っ立っていた。
「──何だ。気づいてたか」
視線を向けた時点で勘付いてたかな、と。
罰が悪い様子もなさげにそう口にすれば、無遠慮に書生服の少女へと近づいてゆく。
「いや、集中してたみたいだったから動じないかどうかが見たかっただけ。
悪戯するとなったらもう少し物理的なものを仕掛ける」
事も無げにそう言い放つ様はどこか無頼であるとか、そういった気質を感じさせる。
視線を交差させる少女は表情を変えることもなく淡々と。
「お前、結構出来るクチじゃないか? ひさめの勘がそう言ってる」
口にしたひさめ、というのはおそらく少女の名だろう。
無遠慮な少女はまじまじと、その体躯、刀、立ち姿を眺め回すように見て。そう口にする。
■緋月 >
ふぅ、と小さく息を吐く。
何と言うべきか…敢えて言えば「気が強い」という印象が書生服姿の少女の精神に記録される。
もう少し遠慮なく言えば、「俺様」といった感触。
「不意の騒音で動きや反応が鈍っては大変ですから。」
物理的、というとどれ程か、と考えながら返事を返し。
中々に遠慮がない視線だと思いながらも、お互い様とばかりに書生服姿の少女も相手に視線を向ける。
(背が高い。体格も…割と良いと見える。何より体幹と姿勢が素晴らしい。)
それが、一見からの推察。
「出来る、かどうかは……この島基準では、さてどれほどか。
何しろ、武闘派な方は随分と居るようですので。」
そんな言葉で惚けつつ、軽く肩を竦めてみせる。
書生服で隠れていて身体の線が少々見辛い少女だが、決して華奢であったり
貧弱な体躯ではないと予想は出来るかもしれない。
何しろ、今も白い柄巻の刀を握っている手は白魚のような手、とは到底言い難い跡がある。
刀を長らく握って来た者の、特有の手だ。
無論、空き手の左手にも跡がしっかり見える。
■霜月 霈 >
「ふぅん…精神鍛錬がしっかり出来てるのか、生まれつきか…。
どっちにしても、そこいらに転がってる連中よりはやれそうだな…」
ほぉ、と感嘆の表情。
少女の言う通り、武闘派の連中は多くいる。
ただ──。
「言っても、大半が異能だとか異質な力に頼った連中だからな。
アンタは刀一本でもそこそこやれるクチなんじゃないの?」
深い色の瞳が薄く細められる。
だったらどうだと言うのか、というのは──ひさめと自分を呼んだ少女が僅かに口元を緩ませていること。
そして撫でる様に、帯刀した大太刀の柄にその手を滑らせていることで推察もつくか。
所謂"殺気"は、まるで感じられないというのが逆に違和感を感じさせる。
■緋月 >
「此処暫く少し忙しくて稽古の時間を取れなかったので、今日は研ぎ直しをしてましたけどね。」
感嘆の表情と声とには、はぐらかすような言葉で答える。
続いての問いには、軽く首を傾げ。
「それについては何とも。
あまり大っぴらに言える事ではないですが――何分、私の修めた剣の技は、
文字通り刀一本で戦う流派の方から見れば、「邪道」も良い所だろうと思いますし。」
するり、と血の色の瞳が細められる深い色の瞳へ。
無論、大太刀の柄へと滑る手に気付いていない訳もない。
故に先んじて「邪道」である事を明かす。
暗に「異質な力も込みで成り立つ、邪剣の謗りもあり得る剣技」であると、予め手札を軽く明かした上で。
「……ご満足頂けるかは、分かりませんけど。」
殺気がない事が…違和感以上に、「得体の知れなさ」を感じさせる。
殺気を見せぬ相手の攻め手は、中々に読み辛いものだ。
のらりくらりと返しているように見えて、書生服姿の少女の背に、ほんの一筋。
相対する少女の「読み切れなさ」に、冷や汗が小さく伝う。
■霜月 霈 >
「研ぎ直しか。真面目だな」
はぐらかすような言葉には小さく肩を竦めて見せて。
相対する少女の雰囲気からして、言葉巧みに相手を絡めるタイプではなさそうだとまずは高を括る。
であれば、続く言葉も一先ず言葉通り受け取って良いものだろう。
「へえ…でも技ってのは基礎の上に乗っかるもんだからな。
先ずは刀って道具を如何に完璧に扱うかが問われる。
包丁だって適当に押し付けただけで綺麗に切れやしないんだ───」
「──ああ」
「満足はしないだろうな。剣士として満足感は常に得ないようにするのが理想だ」
饒舌に向ければ、そこで少女は言葉を切る。
細められたままに向けられたその視線は、鋭い切っ先のようにも思え──。
一息。
ある種不意打ちにも思える。
その一息で、長物である筈の大太刀が抜き放たれる。
そんな大業物を瞬時に腰を切り抜刀を完成させる様は、一切ブレることのない天恵の体幹の為せる業。
──しかしその一瞬の閃光には、やはり殺気は感じられない。
閃光の向けられた少女が反応をする・しないに関わらず──大太刀の刃は緋月の眼前にて、完全に静止する。
■緋月 >
「それは――――奇遇です、ねっ!」
その言葉と同時に――大太刀の少女が、常識からすれば明らかに抜刀術には向かない筈の
大太刀からの抜き打ちを放つのに、奇跡的に合わせるように。
あるいはほんのコンマ数秒。その程度の僅かに遅い程度の誤差。
書生服姿の少女もまた、手にした白い柄巻の刀を返しながらの切り上げを放っていた。
その切り上げも、まるで意趣返しか何かのように、自身に迫る大太刀の抜き打ちが静止すると同時に停止する。
「――刀の道に路はなく、また其処に果ては無し。」
極めたと思う事が既に傲慢と、技の向上の停止を呼んでいるのだ、と言わんばかりの言葉。
同時に、発した少女自身にも向けられる、一種の戒めめいた響きを持つような言葉。
高みへ至る道は誰かが舗装してくれるようなものではなく、その道に決して「極み」という果てはないのだ、と。
「……やはり見てから反応すると、どうしても遅れをとりますね。」
自戒するような一言。
事実、書生服姿の少女が止めた切り上げの切っ先は、大太刀の少女の顎から見て
凡そ小指1本分の長さ程、下に留まっていた。
■霜月 霈 >
顎先に留まる白刃。
しかし少女の表情に動揺は見られず、寸に止められた大太刀の刃もまた、ピタリと静止させたまま。
西部劇のガンマンの早撃ちめいた一瞬の抜き打ち。
放った大太刀の刃に刃引きは一切見られない、鋭く冷たい輝きを見せている。
「………」
「寸止めバレバレだった?」
互いに刃を止めている。表情も憮然としたものから変化はない。
止めていなければ、彼女の言葉通り遅れを取った分で結果が出ていただろう。
にも関わらず、切り上げを放ち──静止して見せたのは。
そういうことだろうか、と。
その一瞬に時間が追いつくかの様に、巻き起こった風が互いの髪を大きく揺らした。
■緋月 >
「半分は勘でしたけど。」
互いの髪を揺らす風の中、問いに返るは、そんな言葉。
勘。そんなあやふやなものに頼った見切りと寸止めであったと見るか。
それとも、その勘が予知と言える程の経験に裏打ちされたものだったと見るか。
いずれも、受け取る者次第。
「……見事な抜刀術。
恵まれた体幹と筋力、身体の均衡、それに才覚。
一つでも欠けていては、これ程速い抜刀は成し得ないでしょう。
私が今まで見た中でも、一、二を争う程の速さと強さと見受けました。」
一切の世辞の入らぬ響き。
ご機嫌取りでも何でもなく、事実だけを述べる口調だった。
心から、今まで己が見た中でも相応に速く、強い抜き打ちだったと相手に告げるもの。
その言葉には、僅かな、しかし確かな、刃のような鋭さが混じっている。
-大太刀で以て此処までの速さの抜刀を成し遂げる相手、その実力、如何程のものか-
書生服姿の少女が抱える、宿痾であった。
即ち、相対する剣士の力量を、「斬って確かめたい」と感じてしまう、衝動である。
■霜月 霈 >
「勘か。まぁ技よりも術よりも確かなモノになりがちではある」
その言葉に妙に納得がいったように、静止していた大太刀が引かれ、鞘鳴りの音すらなく、納刀される。
鯉口を打つほんの僅かな音を残して大太刀を納刀すれば、胸の下で腕を組み、わずか、首を傾げる。
「? アンタも同じくらいのこと出来るんじゃないの?」
世辞でないことこそ伝わるが、そんな評価を口にされると片眉を顰め、そんな返し。
「──まぁ、贔屓目に見ても二番目。知ってるだけでも上はいる。
更に上がいるかは知らないし、そこにアンタが食い込んでくる可能性もある」
風に流れたポニーテールを背中へと流し、改めて向き合えば。
「此処は練習場だからガチの斬り合いはできないぞ」
目の前の少女の内にふつりと湧いた衝動を見透かしたか、あるいは同じものをこの少女も宿しているのか。
そんな言葉を向け、口角を僅かに歪めて。
「神技武練場って知ってる?あそこならそれなりにガチにやれるぞ。
そんな連中が集まってる。部活に参加してようがしてまいが、大怪我しようが、強けりゃお構いなしだ。
───あぁ、でも」
言葉を区切り、再び、その瞳を細め──先に邪道を口にする少女を見て。
「やるなら純粋な剣の斬り合いがいいな。
不純物が混じるとヒサメの経験値にならない。
今のやり取りで十分それが出来るのも理解ってる」
などと、あまりにも独善的な言葉を吐くのだった。