2025/09/09 のログ
ご案内:「訓練施設」に蒼空 奏さんが現れました。
■蒼空 奏 >
少女は訓練をする生徒達を眺めている。
別に暇、というわけではなく。
保健委員の活動の一環で、訓練で負傷などをした生徒のために待機しているのである。
「うわっ……危ない…」
「ひゃっ…よくあんな風に動けるよね……」
訓練の様子を眺めながいちいちそんなリアクションを返していた。
異能や魔術、身体強化なども行っての訓練も珍しくないので、まだまだ一般人の意識から離れられない少女にとっては、安全だとわかっていてもスリリングすぎる光景である。
■蒼空 奏 >
と、夏季休暇も終わったタイミング。
それなりに利用者も多いせいか、ちらほらと怪我人が訪れる。
もちろん最低限保護がなされている環境なのでそんなに大きな負傷を負うことはないのだろうけれど。
足を挫いた男子生徒の患部をゆっくりと撫でる。
助けたい、治したい──そう想うことで、少女の手は淡い翠色の光に包まれる。
温かな光は苦痛を和らげ、傷ついた体組織を修復し…癒していく。
「えっと…まだ痛みますか?」
問いかければ男子生徒は何度か脚の様子を確かめ、痛みのないことを確認すれば立ち上がる。
実に礼儀正しく頭を下げる生徒に「治って良かったね」と笑顔を向け、手をひらりを振って見送って。
「(このくらいなら、反動も何もないんだけどなあ……)」
男子生徒の怪我を治した自らの手へと視線を落とす。
この島、この学園にやってきて、自分が特別じゃない…ということは少しずつ飲み込めたけれど。
まだまだ、自分の身体に宿っているこの力との付き合い方は…悩ましい。
とりあえず誰かの役に立っている。ということでなんとなく居場所として納得しているけれど。
■蒼空 奏 >
それでも不思議がられたり、不気味に思われたりはしない。
自分と同じように、異能の力を持ってしまったことで普通の生活ができなくなった人は、この島では周りに沢山いた。
そして多くの人が前向きだった。
だから自分も…悲観も苦悩も十分したのだから今は笑顔でいることを選ぼうと。
『あの』
背後から声がかかる。
なんだろうと振り向くと、さっきの男子生徒だった。
『まだまだ暑い時期だから、保健委員のお仕事頑張って』
彼はそう言って、清涼飲料水のペットボトルを差し入れてくれた。
さっきまで足の痛みに表情を歪めていた少年が、今はこうして笑顔を向けてくれる。
「あ、ありがとう…」
受け取った、ひんやりとしたペットボトル。
「うん、頑張るね」
笑顔でいよう、なんて思わなくても…自然を笑みが溢れた。
この島で、この学園で頑張ってみよう。
夏季休暇も終わった新しい学期、そんな風に思える一幕だった。
ご案内:「訓練施設」から蒼空 奏さんが去りました。