2026/02/18 のログ
青霧在 > 先日、かの怪人カタストロアと特別攻撃課の委員が交戦した。
そして取り逃がした。

俺のせいだ、そんな有り得ない考えが思考の片隅を占有している。
俺のせいではない。理由の説明など不要な程に、当然のことだ。
事実、誰も俺を責めない。

だがしかし、考えてしまうのだ。
あの日あの場で捕えていれば―――

デバイスから呼び出すのは、かの怪人と類似した過去の違反組織の構成員。
異邦の竜人。かの怪人程ではなくとも、高い身体能力と再生能力を持っていた。

補正を付与して再現されたホログラムは、漆黒の巨躯。
ホログラムの構築が終われば、黒鱗の躍動が襲い来る。

青霧在 > 風紀委員会は無能ではない。
この島の治安と平和を守り、維持してきた組織だ。

かの怪人は未だ捕縛ならず。
しかし、それも長くは続かない。

必ずやかの脅威を捕え、裁きの鉄槌を下す。

―――黒い暴威に対して微動だにせず、コートを展開する。
コートの内ポケットから数多の刃が飛び出し、再現体へと飛翔する。
同時に、端末(決戦兵装)も動きを見せる。
端末は二人をドーム状に囲むとその場で固定され、移動を止めた。

飛翔する刃は再現体の背後へと回り込み、死角から急襲する。
再現体はそれを尻尾や爪で薙ぎ払い、身体に当てさせない。

刃と再現体が目まぐるしく動き回る中、青霧だけは微動だにせず。
ただ、空間全体を注視し続ける。

青霧在 > この事態は俺のせいだ。
あの時あの場所で、かの怪人カタストロアを取り逃がした俺の失態が招いた事態だ。

それが真実かなんて、至極どうでもいい。
現状俺がそう感じていて、許容出来ないのが全てだ。

であればどうするか。
簡単だ。

かの怪人と、再び相まみえよう。
次こそは負けない、逃がさない。
そうすることで、あの日の失態の責任を取る。

―――再現体は健在だ。
全身傷だらけだが、重傷の類はない。
強靭な鱗、人を越えた身体能力。
そんなものに矢じり程度のサイズの刃で、まともにダメージが通るものか。

しかし同時に、二十を超える刃も全てが無傷だ。
正確には、被弾判定を喰らっていない。

有効打がない一方で、再現体も一切の反撃が出来ていない。
再現体に焦りが募る。
注意が、意識が、
刃ばかりに向いていく。

青霧在 > 相まみえると言っても、当然風紀委員としてだ。
私情での行動は慎む。当たり前だ。

風紀委員会は無能ではない。
今も、かの怪人を捕えるべく動いている。

捕縛の為の編成に、自ら志願した。


―――再現体の傷は増える一方。
焦りは次第に強まり、怒りへと移ろう。
冷静さを欠いた再現体大きく息を吸い込み、魔力の余波が散る。
咆哮で全て叩き落そうというのだろう。

多少の被弾は構わないというように、反撃の姿勢を見せたその瞬間。

再現体の胸部から、長剣が生えた。

背後には長剣を握る青霧。
驚愕のあまり集中が途切れる再現体。

靡かないロングコートの内にあるのは、何も小さな刃片ばかりではない。

ご案内:「特殊訓練区域」に火倉 刹那さんが現れました。
火倉 刹那 >  
「…さて、此処に来ていると聞きましたが」

包帯まみれの制服姿で地下へと降りてきた少女。
手元には何やら書類を抱え、訓練区域の中へと歩みを進める。

そして利用者である"彼"を見つければ。

「…当たり前ですが、訓練中のようですね」

では待たせてもらおうと。施設内の壁へとその背を預け、彼の訓練の様子へと視線を向けた。

青霧在 > 長剣を放棄し、同時にその背中に異能の補助付きの蹴りを叩きこむ。
大きく姿勢を崩した再現体はその場に倒れ伏し、急いで立ち上がろうとする。

しかし、そこに刃の連撃が襲い来る。

床についた手の甲
膝裏の関節
足の裏
心臓部

同時にではなく、順番に。
異能の出力を集中させて確実に貫く。

刃の質量からは想像出来ないエネルギーと貫通力で再現体が地面に縫い付けられていく。

しばらくすると、デバイスから戦闘終了を告げるブザーが鳴った。

再現体を背後から見ていた青霧は、ブザーが鳴ると同時に大きく息を吐き出した。
その姿は緊張の糸が切れたなんてものではない。
まるでマラソン終了後、酸素を求めて深い呼吸を繰り返す。

冬場だというのに夏の様に汗をかいた顔を、此方を見る人物の方へと向けた。

「火倉か……」
「どうか……したか?」

その人物は特別攻撃課の同僚、火倉刹那。
そして、先日常世渋谷でかの怪人と交戦した委員その本人でもある。

息を切らしつつも、ゆっくりと呼吸を整えて歩み寄る。
長剣や展開していた端末(決戦兵装)と刃はコートの中へとしまい込み、異能は完全に休めている。

火倉 刹那 >  
「…お体のほうはもう良い感じですか。先輩」

戦闘終了を告げるブザー。
途中からとはいえ、その訓練を最後まで見ていた少女はやや眉を潜める。

「先日の交戦レポートを届けに。
 特別攻撃課の職員に聞いたら此方だと教えていただいたので。
 …後ほどにご覧頂いてもらっても良かったのですが、訓練中であるなら役立つ情報もあるかと思いましたので」

どう見ても重体一歩手前のような風貌の少女はつらつらと、淡々とした言葉と共に手にした封筒入りの書類を見せる。
…息が派手に切れている分、彼のほうがむしろしんどそうに見える不思議な絵面である。


青霧在 > 「万全では無いが……この程度は問題ない」
「それに…人のことを言える状態ではないだろう」

訓練と言っても、ほぼ完全武装での実戦形式。
身体より脳を動かす方に重点を置いたにもかかわらず、
疲労は想定をはるかに上回ってしまった。
治療のための前借が未だ尾を引いているのを実感する一戦となった。

呼吸を整えながら、封筒を受け取りに近寄る。

「わざわざすまない。本当に助かる」
「少し休んだら……読ませてもらおう」

二十もの刃を全力で操ったのだ。
今は脳を休ませたい。

「……火倉は大丈夫なのか?」
「見るからに重傷だが……」

自分が入院した時と比べればマシではあるだろうが、
マシというだけだ。
重体と言っても差し支えない状態に、眉を顰めつつ尋ねる。

火倉 刹那 >  
「万全まで回復させたほうが良いかとも思いますが、寝てばかりいられないという気持ちもわかります」

さらさらと流れるような言葉と共に、封筒を彼へと託そう。
中には最新のレポートも含まれている。
本来は細やかな内容検証して選別されるべき情報も含まれているが、
特別攻撃課の暦もある彼ならば情報の取捨選択くらいは容易だろう。

「…そうですね。ですが、現場でも失血で倒れただけですし」

取り逃がした直接の原因はそれである。
しかし噛みつかれた部位は動脈損傷、筋肉の断裂、骨も砕けているだろう。
爪による攻撃も爆発反応装甲越しとはいえその胴と肋を抉り損傷させている。

「この程度なら問題なく動けますので、ご心配なく。」

さらりとそう告げる。
包帯には紅い点が浮かび、傷が塞がっていないことは明らかなのだが。

青霧在 > 「……そうか」

無理をするなよ、とは言えない。
寝てばかりはいられないし、いられないのだろう。
火倉が分かっていると言うように、こちらもある程度は察せる。

喉元を通れなかった言葉を飲み込み、大きく一呼吸。
呼吸の乱れは収まりつつあるが、頭のじんわり麻痺したような感覚は消えない。
酸欠気味なのだろう。意識的に呼吸しつつ、火倉の隣の壁に凭れ掛かる。

「何か、無いか」

思ったままの疑問、具体性の無い疑問が零れる。

「あの怪人……カタストロアを捕える、策は」
「戦ってみて、何か気づきとか……なかったか?」

今手元にある封筒を見れば、聞きたいことは書いてあるのだろうが。
休憩の最中、巡らない思考の隙間から零れた言葉だった。

火倉 刹那 >  
不要な心配は向けない。
共に特別攻撃課に身を置くもの。
常に万全な状態で在ることなど望むべくもない。
負傷していても、目の前に危険が迫っていればそれを排除するのが仕事だ。

「何か、ですか」

「不確かな情報も含めてであれば、いくつか」

そう前置きした上で、視線を横へと向けながら、口を改めて開く。

「あの容貌で人通りの多い場所への神出鬼没が過ぎること。
 下水を根城にしマンホールから出現する前提にしても、です。
 常在的にあの姿、というわけでもないのでしょう」

このあたりの考察は、既に刑事課などのほうでもされていることだろう、そして。

「レポートに記載はしましたが…。
 市街地故に少々火力を制限したとは言えど、
 私の異能による空爆、指向性爆破、榴弾の砲撃で仕留めきれず反撃の余地がありました。
 単純な物理的な火力で制圧するには、最低でもそれ以上は必要かと思われます」

そう、あるいは…それ以外のアプローチ。
単純な耐衝撃性や対物防御、そして恐らくは再生・回復能力も凄まじい。
横にいる彼との戦闘のその翌日には既に別の場所で出現していたという事実からもそれが伺える。

青霧在 > 「変身系の異能者の可能性があるか」

多少気になってはいた。
あの体躯だ。出現すれば即座に発見されてもおかしくない。
しかし実際のところ、人ごみの中から沸いたように現れると聞く。
逃亡時こそマンホールから下水道へ消えるが、出没の際はその限りではないのだろう。

「……お前で駄目なら、そうか」
「それなら、別のアプローチを考える必要があるな」
「ひとまず……今の所一番効果があったのは切断か」

また別の交戦記録。
公安の委員が用いた斬撃が通用したという記録がある。

しかしながら、剣士の斬撃というのは素人が容易に真似できるものではない。
同じ武器を持ったとしても、同じような効果は見込めないだろう。

圧倒的な火力を持つ火倉の異能が有効打にならないのであれば、別の策を講じる必要がある。
簡単に思いつくのは、魔術的、呪術的なアプローチ。
他には……

「……トカゲ……爬虫類は変温動物だったな」
「冷却を試した記録は……あるか?」

俺が知らないのであれば、データは恐らくないだろう。
ただ、可能性があるなら確認したい。
あの怪人を爬虫類の枠に納めていいのかは不明だが、もし有効なら……

火倉 刹那 >  
「はい。──それを裏付けるように」

「私の異能を見た彼の口からは『鉄火の支配者』の名が出ました。
 …彼がその名を強く振り撒いていた時期を考えれば…それなりに島にいる人間でしょう」

その名に憧憬を覚えて特別攻撃課に入った人間でもある少女。
最近その名が奮われないことをやや不満げにも思っていた。
だからこそ、その伝説的な名を口にしたあの怪物は…少なくとも新参などではなく、その頃を知る人物なのだろうと。

「最新のレポートに冷却による効果の記述があります」

「ただ、島が寒冷化している時期に活動していますので。
 …恐らく有効に働くのは極低温によるもの…ではないでしょうか」

「冷却というよりも凍結、冷凍に近い効果が必要かと」

青霧在 > 「『鉄火の支配者』か……確かに最近は聞かないな」

印象深い名前だ。
特別攻撃課より、余程苛烈な名として印象に残っている。

「計画的な犯行の可能性もあるか」
「潜伏期間を経て、何らかの目的を持っているか…」

もしくは、突如覚醒した異能や魔術を持て余しているか。
……可能性は低いか。

このあたりの予想は管轄外だ。
ただ、島に長くいる人物という情報から予測できることは多い。

「……なんだと?」

無いと思っていたデータがある?
驚きのあまり少し抜けた声が漏れる。

「極低温…それなら、やりようはあるな」

冷凍、凍結しか効果が無いとしても。
あの驚異的な身体能力に対して別方面から
有効打を得られるというのはあまりにも有益な情報だ。

行動を一瞬でも封じられれば、凍結からの逃亡阻止、
そして捕縛まで繋げられる可能性がある。

「最高の情報だ。ありがとう、火倉」

そう口を開いて、口角が上がっていた事に気付く。
それとなく口元を結び直したが……いつの間に。
違反者の捕縛にこれほど感情的になっているとは
自分でも驚きだ。

火倉 刹那 >  
「いえ」

情報に表情を変える彼。
煮え湯を飲まされたこともあるのだろう、しかし。
やはり、やられたままではいられない矜持があるのだろう。

「先輩はカタストロアを追うのですね」

「では、私の分もよろしくお願いします。
 私はたまたま渋谷分署に用事があって現場にいただけで、本来市街地での…しかも一対一というのは不向きですので」

そう言って、小さく頭を下げた。
やり返す、汚名払拭などという感情はないらしい。
凶悪犯は、誰かが討伐すればそれで良いこと。
重要なのは…危険に脅かされる生徒が減ることだ。

「レポートに目を通せば更に角度は上げることが出来るかと。…健闘を祈ります、先輩」

そう言ってもう一度頭を下げ、踵を返す。
コミュニケーションには乏しい時間だったが、そもそもそういうことが得意ではない。
ただ同じ正義の名の下にいる彼に託すものは託して、今日のところの用向きは終わり。

背を向け、呼び止められることがなければそのまま、施設のエレベーターへと向かうのだろう。

青霧在 > 「……」

逡巡。
極僅かな時間だが、言葉に詰まる、
これを言っていいのか、自分の立場で言うべきではないのではないか。

「ああ、任せておけ」

それでも、言いたいと思った。
火倉の怪我も俺の失態の責任だと感じるのであれば。
その火倉から託されたというのであれば。
任せろと、言ってしまっても良いだろう。

少なくとも、それを咎める者は居ないのだ。
例え間違っていたとしても、言いたいのだから言えばよい。

俺らしくないとも思ったが、
それはまあ、酸欠のせいということにしてしまおう。

「わざわざすまない。しっかり目を通させてもらおう。本当に感謝している」
「お大事にな」

感謝の言葉を伝え、その背中を見送る。
火倉のおかげで、有意義な時間となった。
資料に目を通して、改めて訓練を続行しよう。

火倉の背中が見えなくなるのを確認してから、封筒を開く。
それなりの量、精査される前のものなのだろう。
これを処理するのにまた頭を使いそうだ。
……

「まさかチョコレートを食べたくなるとはな……」

チョコレートの入った箱は昨日全て自宅へもって帰ってしまった。
一箱ぐらいは残しておけばよかったと、少し後悔した。

ご案内:「特殊訓練区域」から火倉 刹那さんが去りました。
ご案内:「特殊訓練区域」から青霧在さんが去りました。