かつて闘技場であった場所。
現在は「常世大ホール」という名称に変わっており、闘技場としての機能は「演習場」へと引き継がれた。
学園都市として、公式に「闘技場」という施設を運用することに対して疑問が提示され、生徒会の協議の結果、「闘技場」はなくなり、この「常世大ホール」が誕生した。
コロッセオ状だった闘技場に、天板が重ねられてドームのような形態になっている。
この天板は晴れている日には仕舞うことも可能である。
普段イベントが何もない日などは学生や島民に解放されており、運動場などとして使われている。
様々な部活の練習などにも使うことが可能である。
競技場としての機能も備えており、スポーツも行うことができる。
多目的ホールのため、イベントの度にその姿を大きく変える。
競技場になり、コンサートホールになり、劇場にもなり、競技場にもなる。
それが、この常世大ホールなのである。
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Time:05:41:13 更新
ご案内:「狂熱の坩堝」からネームレスさんが去りました。
■ネームレス >
「今日はありがとう。気をつけて帰ってね!」
■ネームレス >
どれだけこれが最高な夜だったとしても、
今日のこの時が終われば、みなは日常に戻り、
そして自分もまた、あの地獄でもがく日々に逆戻りだ。
それでも自分が生きていることを、
自分の存在を確かめたならば、まだ往ける。戦える。
――いつか、自分が生まれるよりもっと前に。
誰もが知っているようなあの男が、
ひとつのカルチャーの終焉を、"死"になぞらえて
産業主義への迎合を儚んで憂いた言葉はあまりにも有名だ。
自分がそうかなんてわからないケド。
蘇るには良い夜ではあっただろ?
そんなことを、後日に放言してまた物議を醸す悪童は、
そのMC嫌いに珍しく、マイクに歌声以外を乗せた。
■ネームレス >
常の振る舞いしか知らぬのであれば、
舞台の上のこの存在が別人であると錯誤してもおかしくないほどに、
あまりに鮮烈で、激しい生命力を放つ。
公演をするたびに思う。
自分と同じだけ生きている者が、どれほどいるのだろう。
もっと、会ってみたい。
どこまでも貪欲に。
求めすぎた結果が、たとえ失墜の絶望だとしても。
――自分がより強く、美しく、聡く、完璧になるために。
証明と実現。そのために。
未熟な旅はまだ終われない。
■ネームレス >
(それにしても……)
メジャー初公演の大成功、なんて。
嬉しくないわけがない。
選りすぐりのバンドメンバーにスタッフもいて。
きっと自分は幸運にも恵まれている。
生まれてから一度も不幸だなんて思ったことはないけれども。
そうして交わった観客にだって、
自分という存在の証明を成り立たせてくれている者たちにだって、
思うことはたくさんある。
(……めちゃくちゃ、気持ちよかった……)
それでも、その感覚に、いまは浸っていた。
いつも感じている、何事にも本気でも、どこか手を抜いてしまっているような感覚。
武技の競い合いとか魔術の比べ合いに、どうしても燃えあがらない魂は。
言い訳もなく本気で歌っているときにだけ、
生きていることを実感できる。
死んでいないだけの存在が、舞台の上でだけ蘇生する。
■ネームレス >
いざ終わってみたその感動に対して降りかかるのは、
己の存在を自覚した、さらなる試練への前触れ。
これだけ大きなホールを埋めて見せられた実感をよそに
これほどシャワーのように注がれているというのに――
まるで干上がった大海のようにか、
あるいは単に底の抜けた、ドーナツとは違うものになったコーヒーカップなのか、
自分がまるで満たされていないことに安堵し、そして戦慄した。
ここで終わりじゃない。
ゴールはここじゃない。
この翼が蝋でないことは、墜ちぬことでしか証明できない。
ゆえに、理想を目指すことはやめられない。
希望と同じだけ、あるいはそれ以上の絶望が両天秤になっているのだとしても、
あらゆる不安と恐怖が、逃げ出す理由にはならないというだけ。
自分はまだ、こんなにも餓えていられているのだから。
■ネームレス >
不器用な生き方の負債を払いながら、この日のために藻掻いていた。
世界をつなぎながらバラバラに引き裂いてしまったインターネットを使って、
歴史に刻まれたワンダフル・ラジオ・ロンドンの悪ガキぶりを真似て、
うらぶれた落第街から走り続けて、いや、生まれた時からずっと走り続けて、
やっと辿り着いたこの場所で。
小さい廃墟を満員にして、
大きな廃墟を満員にして、
"灰の劇場"を満員にして、
そしてここも満員にして――
次は―――――?
■ネームレス >
炙られるように熱い、スポットライトの只中で、
どこか呆然としたように、巫女であった存在は観客席を――宙空を見つめた。
遅れて破裂した、割れんばかりの喝采と歓声のなかで――……
目を閉じて、感じ入った。
恍惚感。虚脱感。
(ああ……)
自分にとってうたうということは、公演は、 なのだと。
だからあんなに気持ちよさそうだったのかと。
そう言われて、妙に腑に落ちたのを覚えている。
だったら、一年以上もずっと溜め込んできたのを、
壊死寸前のいま、一気にブッ放した危うい感覚は……思わず膝が崩れそうで。
お気に入りの機種にかけていた指に力が籠もったのは、
観客のまえで醜態を晒すまいとした意識だ。
■ネームレス >
夜に吼えたける孤独な魂の叫びを。
あまりに鋭い刃のような危うさとともに。
見果てぬ空への憧憬と苦しみを。
欲情に炙られる底なしの落下を。
醜い妬みを美しき炎の翼と変えて。
あまりに優しすぎる死へと誘って。
――二時間以上。
入神の領域、極限集中状態にあり続けたそれは、
ひとつの世界をそこに現しながら、
ほんの僅かな間の非日常を、極彩色に歌い上げた。
天国と地獄が結婚したかのような夢幻の時間の終局まで、
戻らぬ時を儚む間もなく過ぎ去らせて、
最後の一曲が終わって、
狂熱を孕んだまま、しん――と、冬のような沈黙が降りた。
■ネームレス >
熱狂の坩堝だ。
律動に合わせ、音律を綴り、韻律でもって彩られた空気の振動。
諸人を狂わせ、弾ませ、揺らし、そして束ねてひとつにする。
言語が生まれる前から寄り添ってきたとされる、古の儀式。
――音楽。
舞台に立つのは、闇の中でも輝くような美であった。
小さなガラスケースに飾られた薔薇。
流れる血のような髪は、瞳の炎のように踊る。
雪のごとき白い肌には玉の汗が浮かぶ。
それは狂乱によって上がった温度を受けてだけのものではない。
それは神を降ろした巫女のごとき聖哲さと、
衆生を鼓舞しかり立てる英雄の力強さと、
欲望を煽り難題を投げかける悪魔の蠱惑が、
どれを本性と定かとさせることもなく、
磨き上げられた数多の仮面でもって祭事を取り仕切っていた。
■ネームレス >
常世大ホールは万華鏡のように姿を変える。
ふだんは生徒たちに解放された共用施設ではあるが、
かつては技を競い鎬を削り、それを催しとした闘技場であった。
そして今や様々な祭りが、この巨大な箱の中身だ。
演者によってガルニエにも、マディソン・スクエア・ガーデンにだって姿を変える。
式典委員会内外、公認の有無にかかわらずして、
この箱を満員にしてみせる演者というのも、
この島には少なからず存在している。
今宵の常世大ホールは―――
■ネームレス >
だが、とあるカルチャーにとっては、
この日は近年、事件が起きる日となってもいる。
昨年は少し遅れて、サンタクロースとともにやってきた、
珍しく時間にルーズだった罪人が、何かを起こす日。
高らかに嗤うジャック・オ・ランタンが、
その目と口を不気味に輝かせながら、
舞台の上部に戴かれていた。
■ネームレス >
10月31日。
万聖節前夜。
菓祖祭の隣、甘い祭り。
この時代、この島においては、
様々な宗教や信仰、人種、世界の垣根すらも超えて、
調和を願い親交を深める催しが、島をあげて開かれる。
混沌からそれは誕まれる。
否、すべてが。
■ネームレス >
常世大ホールは揺れていた。
大地をどよもす衝撃に。大気を震わす絶叫に。
ご案内:「狂熱の坩堝」にネームレスさんが現れました。