2025/11/02 のログ
ご案内:「常世大ホール ”特別大音楽祭”」に都姫うずめさんが現れました。
都姫うずめ > 常世大ホールの中心…備え付けられたリングを囲むようにずらりと連なる座席はいっぱいだった。
それぞれがタオルやペナント、応援グッズを振りかざし、自分たちの”推し”を応援している。
よくよく見れば落第街の連中や風紀の面々も客席にいる。 よっぽど好きなのだろう。

リングを見れば、ちょうど演奏が終わり、得点のジャッジが行われていた。

『ジャッジ1,30:27!!! ジャッジ2,30:29!! ジャッジ3:29:29!』
納得の籠ったどよめきが会場全体を支配する。
勝っていると思われるバンドは観客に手を振り、負けたほうはがっくりとうなだれていた。
そんなときである。

『両者コーナーへ!!!!』
アナウンサーの声に応じて、そそくさと両方のバンドはコーナーに下がり、楽器を置く。
そしてあるものはグローブを、あるものはプロテクターを、あるものはドラムスティックの先端に
破壊力を増加させる重しをそれぞれ準備する。

『ラウンド―――――、ツ――!! ファイッ!!!!!!!!』
鋭いゴングが鳴ると同時に、お互いのバンドはリングの中心で壮絶などつき合いを初めた。
怒号、歓声、罵倒、打撃音、応援、異能、鬨の声、関節がきしむ音などなどが混然一体となり、オーディエンスは爆上げである。

「――――常世って変な出し物がいっぱいあるんだなあ。」
選手控室でのんびりと眺めながら、うずめはひとりごちた。

都姫うずめ > ”特別大音楽祭のしおり”と書かれた参加要項を開く。
『音楽はパワー、すなわちパワーもまた音楽なり。
 照明完了! 演奏と格闘が一体になった全く新しいパフォーマンス対決の開始だ!!
 ルールは簡単、対バンのスコアでジャッジ3人がKO発言をしなかった場合、格闘で勝負を決める!!!』

「なるほどね。」
平然としたものである。
つい先日、落第街の知り合いに頼まれて参加するといったものの、まさかこんな行事だとは。

「……」
手に持った真っ赤なギター…”Mayhem”と刻まれたそれを軽く弾いてみる。
今日も音の切れはいいと思う。 けれど、うずめには一つ心配があるのだ。

うずめの演奏は、”お客さんにうける”ことを考えないまま今に至る。
すなわち、”お客さんに受ける”技術が身についていないのだった。

「…。 まあでも、やってみるしかないか。」
もう一度ギターを弾く。 自分の独り言にこたえるように、Mayhemはギャオンと震えた。
ギターのネックをひっつかんで部屋を出る。 向かう通路の先は……もちろん、ステージだ。

都姫うずめ > 演奏相手は5人組のバンドだった。
だいぶ雰囲気に力を入れているらしく、パフォーマンスの時点で抜群だったが…。


「########」あまりにノイジーすぎる演奏は、盛り上がっている観客にも届かなかったみたいだ。
もちろん自分の演奏もである。

「このルール、わかりやすくていいね。でも……。」
結局格闘になり、5人の相手をあっという間になぎ倒してからうずめはひとりうなずく。
うずめはMayhemをそっと撫で、溜息をついた。
「音楽で勝てた方が、気分的にはよかったかな。」
勝利者インタビューのマイクに向かってそうつぶやくと、会場が沸く。
音楽はまああれだったが、格闘面で盛り上がったらしい。
お祭りならそれもいいだろう。 うずめはそう思うことにしたのだった。

ご案内:「常世大ホール ”特別大音楽祭”」から都姫うずめさんが去りました。