2024/06/14 のログ
ご案内:「転移荒野」にジャスパーさんが現れました。
ご案内:「転移荒野」に田中 浩平さんが現れました。
■田中 浩平 >
「OK、じゃあもう一度だけ説明するぜ」
夕方。見渡す限りの荒れた大地。
転移荒野の地平線を眺めながら行動食である羊羹を口にする。
「流通系部活、七曜の君からの極秘情報だ……本棚ゴーレムの巡回コースが判明した」
「彼らはあるエロ本マスターが珠玉のエロ本を守るために作り出したゴーレム……」
「胴体や手足が本棚でできており、中にドスケベ本が満載になっている」
ゴミを捨てないようにポケットにくしゃくしゃにして羊羹の包みを入れて。
「しかし造物主が最初に『中の本を守れ』と命じたところ全機が暴走」
「転移荒野にそれぞれ散ってしまい、造物主すら本を取り出せない状況になった」
「……最初にマスターの言うことは聞けってプログラミングすりゃよかったのにな?」
地平線の向こう、砂煙の先を見るように目を細めて。
「初号機のカイオト・ハ・カドッシュや弐号機のオファニムや参号機のアラリムなどが現存し」
「今も男の夢を乗せて転移荒野を爆走し続けている」
■ジャスパー > 「ああ、頼む」
安いネットショップで買った防塵マントをたなびかせて相棒の言葉にニヒルに笑う
持ってきたバナナは食いつくしてしまった
今は説明を大人しく聞こう。重要なブリーフィングだ
「全く、七曜の君には毎度驚かされるよな
どんな情報も持ってるんだからよ
ま、プログラミングについてはよくわかんねーが、誰でもポカをやらかすことはあるだろうさ」
次はシガレットチョコを口に咥え、今度はハードボイルド風味
同じく購入した双眼鏡をマントのポケットから取り出して爆走するゴーレムを見る。グラサンが邪魔だ
「過去の過ちを俺らがどうこう言っても仕方ねえ
今は…あの死蔵されたお宝を俺らで救うこと。それが使命…だろ?ブラザー」
珠玉のエロ本を荒野で朽ちさせるのは人類の損失だ
相応に危険も伴うが、やる意味は十分ある
「問題はゴーレムからどうお宝を救い出すか…
日に何度かは駆動系の損傷を確認するために止まるらしいが、その時に急襲をかけるしかないか…」
作戦を練る
これは重要な作戦だ…ブラザーと知恵を絞ることが成功の秘訣になるだろう
■田中 浩平 >
「そうだな……誰にでも失敗はある」
「そして目的を見失ってはならない──もちろんだ、ブラザー」
「狙うは伝説の純愛エロ同人、ラブラブレールキャノン」
「サークル主が原作のコミカライズに引っ張られてってシリーズ終了した曰く付きだ」
腕時計を見る。
残念ながらこっちまで予算が回らなかったので安物だ。
「本棚ゴーレムの移動速度は時速40km、先回りしながら停止を待つのは消耗戦になる可能性が高い」
「原始的だがポイントBにワイヤートラップを貼った」
ジャスに地図を見せて、赤くマークしてあるポイントを指す。
「岩場だ、相手の動きは大きく制限され……俺達にはワンチャンがある」
「あとは接近戦になる、本棚ゴーレムは何故か人間を必要以上に攻撃しないが」
「捻挫くらいは普通にするかもな…」
隣のジャスに笑って。
「お前怖い? 俺は怖い!」
と言って震える手を見せた。
弱さもエロさも。分かち合える戦友に。
■ジャスパー > 「俺も表紙しか見たことがない伝説の同人誌…
話題になりすぎて通販すらも速攻無くなったと噂のあれだな…
伝説の名に恥じない純愛エロの珠玉の一品か…」
やっていることはただのエロ本談義である
腕組みをして風を受ける
「ふっ、仕込みはお手の物ってか(ラーメン屋だけに)
相変わらず仕事が早いぜ…
――――――――……………」
愛すべき親友は、既にプランを完成させていた
ならば、後は挑むだけ……なのだが
「…怖いに決まってるだろ!全長何mあんだよあれェ!?
なんでエロ本守るのにアナログな暴力に頼るの!?全然天使じゃなくない!?」
せっかくなら神秘的な異能パワーとかで守っていて欲しかった
「だがな兄弟
きっとラブレー(※ラブラブレールキャノン)の作者、愛乃巣家辺さんも自分の本が死蔵されるのは悲しむだろうさ
それを、俺らが救うんだ…!
そして、安心しろ。ケガをしても俺たちには…ちょっとツンツンな保健室の女医さんに診てもらえる権利が生まれる!」
巻き込まれる女医さんである
「あの守護者がワイヤーに引っかかったら、俺が音によって生まれる振動と俺自身で陽動する
隙を見て、ブラザーがお宝を掠め取れ。……失敗したら俺も突撃するから、さ☆」
足がくがくだが、震える手を重ね合わせる
この暖かさが、勇気になるんだ。明日のエロへの勇気に
■田中 浩平 >
「恐らく、一番危険な胸部本棚だ」
「俺が造物主ならそうする」
荒野の風が肌を撫でる。
せいぜい砂塵を巻き上げ、俺達の風切羽を揺らすがいい。
「無策で兄弟を死地に送り込むほど腐った覚えはない」
ジャスの反応に頭を抱える。
「ですよねー」
エロ本を守る質量&物理は恐怖通り越して笑えるんよ。
造物主は作ってる途中で我に返らなかったの? 一度も?
「ああ……ラブレーを俺達の手に!!」
「女医さんかぁ………」
鼻の下が伸びた。いかんいかん。
「任せろ、アタッカーは俺だ」
手を合わせれば、荒野に絆が生まれる。
俺達の勇気が明日さえ変える。
その時。
地平線の向こうから土煙を上げて走ってくる人型の何か。
「来たぞ、初号機ッ!! カイオト・ハ・カドッシュだ!!」
岩場まで斜面を滑っていく。
「オペレーション、神々の黄昏──スタートだッ!!」
ガジェットを確認する。
ゴーレムたちは色のない視界で世界を視認している。
つまり、この程度の結界でも十分に効果はある。
「登山用ロープだッ!!」
岩場に保護色になるように染色した一本2500kgを支えるそれは、
ゴーレムを必要以上に傷つけることなく絡め取るはずだ。
ネメアーの獅子のようになってしまえ!!
■本棚ゴーレム >
4本。岩場に貼られていた4本の登山用ロープが全身に絡まる。
そのまま力任せに暴れるも、千切れる道理なしッ!!
中の本がガサガサと音を立てる!!
■ジャスパー > 『本棚』ゴーレムというだけあって、目的のブツがどこにあるかさえわからない
だが、エロの嗅覚をごまかすことはできない。
より強い『匂い』は胸部から確かに漂ってくる……!
「ああ、俺だってそうする」
後は軽く打ち合わせと…エロに立ちふさがる脅威に頭を抱えてから
決意と勇気を力に変えて、立ち向かおう
今ならどっかに電子販売とかされてるんじゃないかって?馬鹿野郎、男は黙って紙の本だ
何はともあれ、ポイントBにてオペレーション決行…!
まずはブラザーの狙い通り、頑丈な縄がゴーレムを絡め取る
「いい見立てだ。力自慢もああなっちゃあおしまいだな
ゴーレムの認知機能を引き寄せるぜ!」
足の震えは止まっていた。これが友情か
俺はゴーレムの後ろに回り込み、ゴーレムから見て後方斜め側の地面に異能を埋め込む
そして自分は背面にて声をあげ、突進すると同時に異能を再生!
「くらえ!俺の奇声コレクションno.2及び3!」
『キィエアオアオアオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
『ヒィィイイイイイイイハアアアアアアアアアアアアアア!!!』
直後、恥も外聞もなく録音した俺の巨大な奇声が辺りを震わせる
しかもリピートで三回だ。
その上、俺自身が背後から迫ることでゴーレムの認識機能を惑わせる
だが、わずかに動いたゴーレムの踵が俺に襲い掛かる…!!
「……ぐ、くぅううう!!まだまだぁ!」
僅かに動いただけなのに激しい砂ぼこりと風圧に泣きそうになる
直撃したら手首は捻挫していただろう
兎に角ウザく、時にゴーレムの足の本棚に手を伸ばすフェイントを入れて気を引こう
アタッカーが、少しでもゴーレムの認知から外れるように…!
■田中 浩平 >
「いいぞジャス、良い奇声(?)だ!!」
ガジェットグローブからロープを射出する。
練習通りに本棚ゴーレムの頭に絡まった!!
だが巻き上げ機能のスイッチを入れた途端に地面を引きずられた。
「ぐえー高度不足ッ!!」
ずるずると荒野引き回しの刑を受けながら本棚ゴーレムが近づいてゆく。
「南無三!!」
その瞬間、俺はエロ本を想った。
男はエロ本を読む瞬間、IQが3(サボテン並)になり。
読み終えたエロ本を隠す際にIQが150(探偵並)になる。
今の俺は歴史に名を残せるレベルの超天才だぜ!!
そう妄想しながらジャスに気を取られる本棚ゴーレムの体を這い上がった。
それは黒い閃光の如くッ!!
「強奪った!! ラブレー!!」
本棚を開いた瞬間、カイオト・ハ・カドッシュは。
■本棚ゴーレム >
田中を振り払い、ロープを根元のザイル部分を力任せに外すことで結界から脱出。
再び一定のルートに戻らんと爆走を始める……!!
が、左足が大きく地面に沈み込む!!
■田中 浩平 >
「フ……フハハハハ………ハァーッハッハッハ!!」
「中東では幻想生物の代わりにジャッカルを狩る」
「即ち、スナークハントならぬロイヤルハリヒア───」
「こんなこともあろうかと落とし穴を掘っておいたのさ!!」
昨日徹夜して。
■ジャスパー > 「へへ、お陰で今日は喉ががらがらだぜ」
馬鹿である。妙に声が掠れていたのは砂塵のせいではなかった
「いいぞ!いけ!!俺たちの希望と夢を……お前に託しグアアアアアアアアアアアアアア!!」
再びのゴーレム悪あがきに巻き上げられた砂塵にかっこいいセリフを遮られた。最悪だ
けれど、お宝は奪取したようだ。流石だぜブラザー
「ははは、完璧だぜ……ん?」
(※ここから刹那の思考
ああ、確かにお宝はこーへーが獲った。もう俺たちの目的は終わりだ。
だがしかし、奴は今こーへーの最高の罠によって走り出せない…!
ならばまだまだお宝が取れるんじゃあないか!?一冊と言わず、まだ見ぬ宝を…!しかも俺は背面に居る…!チャンスでしかない…!
※刹那の思考終わり)
「―――――――――!!」
欲に駆られた狩人は、走り出した。
夢を追うために
友人たちに、もっといい夢を見てもらうために
この大掛かりな仕掛けを作ってくれた友に、もっとお宝を届けるために
全身に力を籠め、走り出す
体感、少年の速度は光速を超えていた
夢と希望をがっぽり手に入れるため手を伸ばし―――
そして、普通に腕で薙ぎ払われた
「ぐあああああああああああああああああ……!!……う、ぐ……うぅ……」
ゴーレムの安全機能によって、軽く転ぶ程度だが…地面に転がる自分の愚かさに涙を流している
そりゃあそうだよ。腕のロープは取れてるんだから
■田中 浩平 >
フハハハハ!!
ついに手に入れたぞ!!
ラブラブレールキャノンだ!!
しかし、次の瞬間。
「ジャスゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
我が友が振り払われた!!
頭に血が上る!! こいつ、ブラザーに何を!!
「貴様、許されないことをしたな……!!」
「俺のような凡夫でも眼の前で友を傷つけられては……」
覚悟を嘲笑うような向かい風が吹き荒ぶ。
「例え相手がA級ヴィランでも黙ってられウボァー!!」
飛びかかろうとした瞬間に次の策に掘っておいた落とし穴に落ちた。
ああん、俺のバカ♡
「し、しまった!!」
何とか落ちる砂からラブレーを守りながら叫ぶ。
■本棚ゴーレム >
本を奪い返すためには少年たちを傷つける必要がある。
それを諦めて、カイオト・ハ・カドッシュは。
己の道へと戻り、再び荒野を走り出していった。
■ジャスパー > 「なんて愚かなんだ…俺は………」
俺にもっと力があれば…と嘆くも遅い
ゴーレムは荒野に再び走り出した
ほんのり軽く擦りむいたが、別にどうってことはない。安全機能最高
「…だ、大丈夫か、こーへー…!
俺がヘマやっちまったが、お前の策が全部ハマったな…
さあ、帰ろうぜ。俺たちのエデンへ……」
エデンとは
女子に見つからないよう、転移荒野にこっそり作ったエロ本集積場所である
落とし穴にハマってしまった友人に手を差し伸べ、引き上げて…にっ、といい笑顔で笑いかける
ちょっと欲張っちまったが、作戦は大成功だ
■田中 浩平 >
「最後に策に溺れちまったけどな……」
「ああ、サンキュージャス!!」
引っ張り上げてもらって。
ああ、この瞬間のために俺達は戦ってきたのかも知れない。
「オペレーション・ラグナロク、完遂だ!!」
相手の拳と自分の拳がぶつかった。
笑顔、そして俺達の歓喜の声。
俺達はその足でエデンに向かった。
いかに希望が、夢が、エロ本が素晴らしいかを語り合いながら。
そこで待っていたのは、炎に包まれるエデンの姿だった。
女子にバレたのだ。
俺達は燃え上がる宝に涙を流した。
喪失のCHRONICLE───全ては、絶望から始まる。
■ジャスパー > 夢と希望をたっぷりと持って
俺たちはエデンへ向かった
「どおじで、どお"じでこんな…むごすぎる……!!」
そこにあったのは、絶望の炎
なんとか救い出した数冊も焦げており、まるで泣いているかのようだった
なんてむごいことを
けれど、女子に恨みはない
到底理解されないものだとわかっていて、俺たちは歩んでいるのだから―――
次章
――希望のPrelude――
ご案内:「転移荒野」からジャスパーさんが去りました。
ご案内:「転移荒野」から田中 浩平さんが去りました。