2024/06/16 のログ
ご案内:「転移荒野」に田中 浩平さんが現れました。
ご案内:「転移荒野」にマトさんが現れました。
田中 浩平 >  
「OK、じゃあもう一度だけ説明するぜ」

夕方。見渡す限りの荒れた大地。
転移荒野の地平線を眺めながら行動食である羊羹を口にする。

「今日、17:42分にエロ本を満載した本棚で出来たゴーレム」
「弐号機のオファニムがここを通る」

嘲笑うような向かい風。
どこまでも吹くがいい。
この俺の風切羽を空になびかせるだけだ。

「それをトラップで足止めし、本を可能な限り回収する」
「いいか、マト」

「魂を燃やせ」

相手の眼をまっすぐに見ながら言った。

彼はマト。転移荒野にこの格好で向かっていた(職質はされた)俺と電車で出会った同志だ。
髪がサラッサラでいい匂いがするけど。

今回の一件に興味を持ってて、男だって言ってたからにはブラザーだ。

それにしてもサラサラだな。
夏の湖畔のような瞳、肌の色も白くてちょっとドキッとする。

「制裁ッ!!」

自分の顔を殴りつけた。
男の色気を誤認するなアホー。

マト >   
「うん、作戦会議だね」

どうも、マトの地の文です
マトは新人図書委員である、だが、本というものには多少の思い入れがある

「オファニム、それが今回の僕たちの敵、人造生命体(ゴーレム)か」

田中くんとは電車内で会った中、やけに厳重な装備が気になり声をかけ、帰ってきた反応にぴくりと心がざわめいた

「勿論、僕も多少心得はあるからね、そうだ一応確認したいんだけれど」
「そのゴーレムは、エロ本を守る事を最優先にするんだよね?」

転移荒野にて暴走する、エロ本ゴーレムから、本を回収する任務
つまり『読まれないままの本を』助け出す任務だ

「その瞳……僕が此処に来てから最も強い意思を感じるよ、君は本当に、この依頼に命をかけているんだね」

図書委員として見過ごせない内容だったのは勿論、彼の鬼気迫るともいった気迫
それは『人を助けたい』という渇望を持つマトを動かすには十分だった
そのまま協力を申し出、此処に至るという事だ

「それなら、多少僕が気を惹く事もできるかもしれない、本を考えると出来るだけ避けたい方法だけど」
「当然、最善はつく…… 浩平?」

なお、この小首を傾げて自身に制裁を強いている田中くんを不思議そうに見ているマトには、一つ見落としがあった
―――  マトは、エロ本が何なのか全く知らなかったのである……

以上、状況説明終わり!!!

田中 浩平 >  
「そういうことだ」
「オファニムは造物主に最初に本を守れと命令されてから」

「長い時間、転移荒野を暴走し続けている」

羊羹の包みをポケットにくしゃくしゃにして突っ込む。
脳に糖分が染み渡る。

「人を傷つける意思は薄いようだが、怪我は十分にあり得る」
「気をつけていこうぜ、相棒!」

質問に頬を掻いた。いやガジェットガントレット邪魔だな。
外してから頬を掻いた。

「エロ本を守ることを最優先にするけどな」
「決まったルートへの帰巣本能みたいなものがあって疾走(はし)ることを優先させることもある」

首を左右に振って、双眼鏡を覗き込む。

「よしてくれ、俺は喪失(うしな)ったものを取り返したいだけだ」

エロ本です。

「気にしないでくれ…それより、ヤツが来た」
「行こう、俺達の目的のために!!」

エロ本です。

「オペレーション、息が詰まりそうなこの世界(ワールドエンド)───スタートだ!!」

斜面の砂を利用して滑り降りながら、オファニムがトラップのあるE地点に差し掛かるのを見た。

本棚ゴーレム >  
「!!」

岩場を通り過ぎようとした瞬間、猪吊り用のスネアトラップが足首にまとわりついた。
ハズれない。
ただのロープではない。

田中 浩平 >  
「無駄だ、鉄の8倍ッ! アラミド繊維の1.4倍!!」
「超高分子ポリエチレン繊維を利用したロープだッ!!」

カイオト・ハ・カドッシュに使った登山用ロープは高かったので……
さすがに吊り上げるのは無理だったか!! だが!!

「今だ、相棒ッ!!」

マト >   
「命令を守る事、それが彼の使命(オーダー)とはいえ」
「延々と此処を走り続けさせられるのは……少しだけ退屈そうだね」

一瞬だけ、物憂げに目を伏せる、人造生命体(ゴーレム)として、同類(多分)に対しての気持ちを整えているのだろう
そして、それは姿を現す…!

「多少の怪我は何のその、さ、こっちにも譲れない者はある、そういう事だろう?
「僕は僕の目的を全うさせる、その上でバッティングするなら、戦う事は厭わないよ」

失ったものを取り戻す――― その言葉も、記憶の無いマトにとっては重い言葉だと判断された事だろう

「なら、取り戻しに、いや、それ以上のものを得に行こう、大丈夫、僕がついてる」

姿勢をかがめ、全力でかけだす準備を整えるポシェットから取り出すのは一冊の本
『白色の本』と呼ぶ、彼の魔術の補助具であった

「勝負は一瞬―― そ」

本棚に手足が生えたそれを見たマトの声だけが止まる
ぱちくりと瞬く瞳と、一瞬の脳裏の空白、だが――

田中くんから得た使命(オーダー)は止まらない!!

「―― っ、氷柱!!」

マトは紡ぐ、自身の覚えた初級の氷の魔術、氷の柱を生み出すという簡単なものだ

それを自身の足から生み出し、一気に突き出させる
発射台、打ちだすは自分自身!20㎏の異常なほどに軽い体重も功を奏し
とびかかる様にオファニムへと突っ込んでいく

「っ、よ、しっ!!」

反射的に繰り出されるであろうオファニムの拳をすんでの所でかわしながら
何とかその巨大な本棚(ボディ)に肉薄する事が出来るだろうか

田中 浩平 >  
「マトッ!! 無茶はするなよ!! 俺も続く!!」

ガジェットガントレットからロープを射出しようとしながら走る。

「出せオファニム……お前の中の全ウボァー」

予備のスネアトラップで宙吊りにされた。
え、仕掛けすぎかこれ。
でもしょうがねーだろ、本棚ゴーレムがどこ歩くかなんてわからないんだし!!

「オファニムの本を取るんだ!!」

宙吊りになったまま。
ガジェットガントレットの仕込みナイフで必死にロープを切ろうとしている。

本棚ゴーレム >  
その時。
本棚ゴーレムは理解した。

眼の前のマトが。
自分と同じゴーレムであることを。

飛びかかってきたマトを両手で受け止め、
ゆっくりと足元に下ろすと。

紳士が祝宴でそうするように傅いたのだ。

マト >   
「大丈夫だ浩平、君を傷つけさせはしないよ」
「僕なら多少の怪我は問題ない」

彼はきっと目的のために自身の怪我をも厭わないだろう
ならば自身が盾となるべきだ、そう考えるのはマトの中では当然の事だった

「っ、 く、早い、か、なら…… ?」

思っただろう、まだ速度が足りなかったかと、ならばと事前の策を講じようとするが
その次の動きは、流石に読めない展開だったらしく

「……君は」

ごくり、と息をのんで、傅く彼の目を見る  いや目何処だよ、高さ的に上から3段目くらいか?

「そうか…… そうだね、僕たちにとって使命(オーダー)は絶対」
「だけど、それでも命を与えられた、仲間だ」

そっと手に触れて、さらりと薄桃色の髪を揺らす、子供と大人、いや、人と巨人といってもいい体躯の差
だが、その交わる視線(どこだよ)には確かに通じるものがあったのだろう

「―― 一度だけ聞くよ」
「君が守る本、それを、僕たちにも守らせてはくれないかな?」
「どれだけの間、君が此処にいたのかも分からない、君を作った人の心も、僕には分からない」
「だけど、浩平なら、きっと悪いようにはしないと思うんだ」
「あの瞳は、人としての強さに溢れていたから」

仲間に、同類に、敬意と親愛を持って紡ぐ、姿は別モノでも、想いは通じると願って

「―― だけど、君が目的(オーダー)を果たす事も止めない、それは僕たちにとって一番大事な事だから」
「その時は、僕は敬意を持って―― 全力でその本に手を伸ばそう、君の矜持(思い)のために」
「答えてくれ、オファニム!!」

両手を広げ、声を荒げるマト、彼にとって此処まで感情を揺さぶられることになったのは
目の前の彼の行動と、そして浩平の並々ならぬ意思を見せつけられたから
そして、之まで出会った同類や、友人との会話から生まれた彼自身の意思

それがエロ本ゴーレムへ説得という行為を行う勇気へとつながったのだ――!!

本棚ゴーレム >  
静止した。
まるで唾棄すべき世界から全ての時間が奪われたかのようだ。

あるいは、世界は終わりのない劇中劇のようなもので。
真実なんてどこにも存在しないのかも知れない。

それでも。

足にかかったロープの罠、動ける範囲で動くと。

荒野に咲く花を腕部分の本棚のカドで掬い取り。
マトに捧げた。

 
花の名前はヤマボウシ。
花言葉は────友情。

それ以上、マトに抵抗することはない。
神聖な時間が訪れた。

田中 浩平 >  
この荒野に残った一匙の優しさを見た。
自然と涙が溢れた。

「奇跡だ……平和を司る神性(エイレーネー)………!!」

本棚ゴーレムは孤独だったんだ。
いつまでも止まることのない旅路。
閉じた円環の中の命。

それを救ったのか……マト!!

「相棒……お前を仲間に入れて良かった」
「いや、違うな……」

「お前が生まれてくれて良かった」

マトの肩を叩いて本棚ゴーレムに近づく。

「なぁ、オファニム……お前の宝は守り抜くよ、だから」

本棚ゴーレム >  
田中を殴打した。怪我しない程度に。

田中 浩平 >  
「あんほーりぃ・うぉーくらいッ!?」

きりもみ回転しながら上空に弾き飛ばされ。

「ふぁびお・りおーね……」

ドグシャアと頭から地面に突き刺さった。

いや今まで散々追い回したけどさぁ!? ひどくない!?

マト >   
「……」

すっ、とヤマボウシを受け取り、花を胸元に大事そうに抱える

「君をどうして攻略するか、そう考えていたけれど、違ったんだね」
「対話というものの大事さを君から教えられた気がする」
「いきなりぶつかってきて御免、そして、ありがとう」

屈託のない笑みを浮かべる、二人の間にもう、言葉はいらなかった、片方はそもそも口が無かった

「任せて、君はもう一人じゃない、僕たち(ゴーレム)だって、孤独じゃなくていいんだ」
「誰かと、一緒にいていいんだよ、きっと」

つなぐ手と手、機械と人の模倣、暖かさはきっと本来のそれとは違うけれど、心は通じたのだろう

「浩平――  僕がそんな事を言われるなんてね」
「……  って、ふふっ、ダメだよオファニム、之からお世話になるんだから」
「そうでしょう、浩平?」

吹き飛ばされる田中くんをみて一瞬目を丸くするが、くすくすと笑いだす
―― そして当たり前のように無茶ぶりをした

「この本を僕たちが守っていく以上、オファニムにも新しい場所と使命(オーダー)が必要な訳だしね?」

田中 浩平 >  
「……そうだな」

立ち上がって鼻の頭を擦った。
おい鼻血出てるだろてめー。

「お前も孤独だったんだよな……」
「それなのに、外部の存在はお前を襲うばかり」

「すまなかった、オファニム」

頭を下げた。
雨が降ったら水たまりができるのは当然のことだ。

でも、雨が降った後に虹がかかってもいい。
いいんだ……

 
「オファニムに新しい居場所を作ってやるのか?」

彼の体から本棚を開いて本を取り出す。

「ほら、相棒! 取り出すのを手伝ってくれ」

萌芽的加速『触手に至る病』
ジーエクスト『戊寅(ボイン)戦争』
うま味電気『ハァ? 私が腰ぶつけっこなんて遊び、知らないわけないでしょう!?』

をマトに手渡した。

マト >   
「うん、だけど之からは違う、だろう?」

そっとハンカチを田中くんに差し出す、何処からかさわやかな風が3人(諸説あり)の間を駆け抜けていった

「うん、其処まで責任を取ってこそだと思うんだ、オファニムの出した答えに、僕たちは応えるべきだと思う」
「あ、そうだったね、元々それは目的だったし、くすぐったかったらごめんね」

そういってエロ本回収(当初の目的)を果たし出す

「―― ふむ、之がエロ本……」
「何か珍しい題名だね…………」

マトはもとより好奇心はある方である、そう、つまりは思わず(パンドラ)を開く

「―――」

マトの性別設定は両性である、之が意味する事は未だ分かってはいない

「――――――」

マトの性自認は不明であった元より自身の記憶が無いため、仕方のない事だろう
必要が無かった、という言い方もできる、だがそれ以上に

「―――――――――」

それを自覚しうる経験(エッチな経験)が皆無だったのが、最大の理由だった事は想像に難くない

「――― な」

そんなマトが―― 明らかにジャンルの異なる三種の本を一気に渡され、脳内にそれを焼きつける

結果―――

マト >   
「…… なに、これ……」

言い知れぬざわめきと共に、本を見るごとに頬が紅潮していくマト
マトという心に、彼女という部分が生まれた瞬間だった

マト >   
「~~~ っ、は、ど、どんどん回収しないとね!」

ぱたんっ、と急いで本を閉じ、田中くんの回収作業に加わるが
明らかに動揺する姿はきっと、隠せていないのだろう

田中 浩平 >  
「何って……エロくてエロくて仕方ねぇエロ本だけど?」

マトに肩を組んでエロ本を指す。

「やったな相棒ッ! そりゃお宝だ、うま味電気だな!」
「性的に無知なお嬢様に腰ぶつけっこって遊びと称してエロくてエロくて仕方ねぇエロ行為をエロエロエロー」

IQ溶けゆ。

「お前のおかげだ相棒、好きなだけ持って帰ってくれよな!」

サムズアップして白い歯を光らせた。

マト >   
「エロ、本っ、これが、エロ本……」

視界の先

え~る・こが『ひよこババア戦記』
コレクトされる『エロ玉乱太郎』
etc……

「せいてき、むち  ぶつけっこ、……」
「こ、浩平、顔が凄い事になっているよ?」

ぶつけられる性の言葉の濁流、目に入る肌色の群れ
田中くんは気づいていないだろう、今君がある意味エロ本そのものの行為をしている事を
それに気づかないのが、お互いの最大の幸運、ともいえるのかもしれない
ちら、ちらっ

「―――― う、うん、はは、そうだね、参考にさせてもらうよ」
「之も勉強、だろうから、ね!」

そして、一度認識したものから目を逸らす事は彼女にはできなかった
だって、それらはオファニムとの友情の証でもあったのだから……!
題名も良く読まずに、数冊の本を自身のポシェットに詰め込んでいく
一つ、成長してしまった人造生命体(ゴーレム)がそこにはいた

「オファニム……君は凄いね」

その言葉がどんな意味を込めていたのか、マト自身も含めて此処に分かるものはいなかっただろう

田中 浩平 >  
「そうだ、エロ本。わかるか……エロ本っ」

最低のサリバン先生だな。

「おおー、ひよこババア戦記か……なかなか良いセンスだ」
「こっちのエロ玉乱太郎はなかなか……良いセンスだな!!」

説明しよう。エロ本を読んでいる最中の男のIQは3(サボテン並)まで下がるのだ。
よってさっきまでの語彙は存在しない。

「見ろよ、マト」

エロ本を大量に抱えながら空を見上げた。

「星が輝いてるぜ」

夕陽に赫焉と燃ゆる空は。
夜の帳に桔梗色に染まっていく。

混ざり合う二つのCOLOR、ちょうど中間の空に瞬く夜の星。
 

世界は美しい。

本棚ゴーレム >  
オーバーなアクションで肩を竦めた。

マト >   
「……その、浩平は」
「本当に、エロ本が好きなんだね」

改めて一つ、何とか息を整えて、二つ、声を吐く

「なら、僕も好きに、うん、もっと理解できるように努力してみるよ」
「いいセンスか……あり、がとう?」

流石に素直にお礼を言う事は出来ないが、それでも彼の嬉しさは伝わってくる
だからマトは、何処か苦笑交じりの笑みを浮かべるのだ
持っているエロ本から意識を逸らすのは決して自己防衛的感情ではないと信じよう

「うん、そうだね、まるで落ちてきそうだ」

命は三つ、思いは三様、だけど星の光は平等に降り注ぐ
この出会いが、一体何を生み出すのか、それはきっと……

「……あ」

祝福の流れ星(スターダスト)だけが知っている

ご案内:「転移荒野」からマトさんが去りました。
ご案内:「転移荒野」から田中 浩平さんが去りました。