2024/08/10 のログ
ご案内:「転移荒野」にリタ・ラルケさんが現れました。
■怪鳥 >
それは、身の丈を超えるほどの双翼を持つ一匹の怪鳥。
翼を広げれば、その下に暗雲が立ち込めたかのような影を作り出すほどの巨体。
そんな体躯が、空に留まり。一つ羽ばたけば、それだけで周囲によろめくほどの風が生まれる。
「――――、 、。――――――」
それだけで、気の弱い人間であれば恐怖に打ち震えるであろう、殺気の眼差しを。
怪鳥は、足元――はるか下の地上に佇む一人の人影に。この世界では到底発音できない「声」と共に放った。
知らぬ世界に突然飛ばされ、がらりと変わった周囲の環境と空気に、「それ」は今現在、大変ご立腹だった。そんな中で、たった今己が縄張りにしようとしていた場所に立っていた、とぼけた白髪の小娘一人――八つ当たりの相手にはちょうどいい。
怒りの気分のまま怪鳥は、強く羽を震わせる、
「――――――!!!!」
瞬間、烈風。荒野を抉る風の塊を、"彼女"のいる地面周辺に向けて叩き落す。
草を、木を、砂地をなぎ倒し巻き上げるダウンバーストが、砂煙を起こす。
『――精霊纏繞』
その、立ち昇る砂煙の中。
感情の薄い女の声が、ひとつ、上がった。
■リタ・ラルケ >
砂煙を切り裂いて、一つ、影が飛び出す。
「…………んー」
くるくるくるくる、と。足を曲げて抱え込むような体制で、空中に飛び出したその影は。
ばっ、と四肢を広げて。怪鳥の前に躍りだした。
「…………でっかい、ねぇ」
――とぼけた翠髪の少女、一人。
ふわふわと緊張感なく浮いて、特に何の感情もない相貌が、怪鳥を捉えて。
「……ふわぁぁぁ……ぁふぅ」
欠伸、一つ。
『――――――!』
その姿に何かを感じたか。
怒りを爆発させた怪鳥が、大きな翼を羽ばたかせてこちらに向かってくる。
「あー…………なるほどぉ」
迫力こそあれど、単調な動きに、大して素早くもない動き。
おとぼけた声と共に容易に躱して。
「すもーるついすたー」
空中を慣性で滑るようにしながら、振り返ると同時。
怪鳥の体を巻き込んで体の平衡を失わせる、小さな竜巻が、文字通り、空中に巻き起こっていた。
■リタ・ラルケ >
ここ最近、転移荒野において怪異の出現が活発化している。
調査、可能ならば怪異の討伐あるいは捕獲を行え――そんな仕事だった。
ここ最近のリタは、怪異の討伐だとか、そんな仕事を積極的に受けていた。
長く学園にいながら、現在、リタは、その異能の制御が安定しなくなっている。
原因は不明。さしあたり今は異能の訓練と、それから下世話な話、先立つものを稼ぐ、といった意味合いを込めて、怪異の討伐に力を入れていた。
「……」
そも、たった今、リタは異能が暴発したのだ。
強烈なダウンバーストを食らって、風の力が活発化したが故に、リタはこうして空を飛べる姿になった。
つまるところ、今の状況は、まあまあ不本意というもので。
『――――!!!』
耳をつんざく鳥の鳴き声と共に、再び巨体が迫る。
「えーい、やっ」
その顔面に風の塊をぶつけて。
「纏繞、かいじょぉー」
空中で力を解く。
その瞬間、リタの行使していた飛行能力は失われ、即座に自由落下の体勢に。
「嘘でしょ精霊纏繞っ!!」
自分で自分のやったことにツッコミを入れた。
髪の色が緑から白に戻り――間もなく、再び別の色にと変化していく――。
■リタ・ラルケ >
「よくもまあ、こんなふざけた戦い方をするものね」
全く同一の人物の行動である。傍から見ればブーメランというやつだろうか。
――先ほどと全く同じ声音に、全く異なる口調。
悪態をつきながら、少女は怪鳥の首に、電撃を帯びた鞭を巻き付ける。
『――――――!?!?』
そのまま、手の力だけで自らの体を引き寄せ、鳥の背中に飛び移る。
瞬間、もがき苦しむように巨鳥が暴れだす。
リタの体に流れる電気が、巨鳥にも影響を及ぼしていた。
「理性を持たない獣だとして。ここまでされたのなら」
そのまま、リタは。
巨鳥の翼の上で。
「――恐怖を感じる前に、召されなさい」
自分ごと、天から巨鳥の体を貫く雷を落とした。
ご案内:「転移荒野」に武知 一実さんが現れました。
■武知 一実 >
転移荒野。
異世界から様々な物が文字通り転移して流れ着く事からその名が付いたとされる荒れ地。
異世界の道具、建造物のみならず、怪異や怪物といったものまで流れ着く事から、危険区域として立ち入りが制限される事もままあるらしい。
そんな場所にどうしてオレが来たかというと、単純に夏休み中に特別授業を受けた際に担当の教師から代理で行く事を頼まれたからだ。
指定された場所に行って、その場所の状況を確認、出来れば風景を撮影してその後撤退、というそれだけのお使いだったのだが……
「――なんかゴロゴロ言ってると思ったら、何だァこのバカでっけえ鳥」
その指定された場所ドンピシャで戦闘行為が発生していた。
クソ、ちょっと来るの遅かったか、と正直思わんかったわけでもない。
戦ってたのはクソデカい鳥と……女子?
■リタ・ラルケ >
落ちる怪鳥を下敷きにして、着地。
携えた雷の鞭を亡骸に叩きつけてから、空気中に散らすように消す。
「――あら」
と、そこで。人影に気づく。
先ほどまではいなかったように思えた少年の姿を捉えると、足蹴にしていた躯から下りて軽く一礼。
「ごきげんよう。こんな場所に何か用事かしら。
見ての通り、不躾な獣以外には何もない場所だけれど」
その「不躾な獣」も、たった今力づくで黙らせたところで。
先ほどとは打って変わって静かな空気が、辺り一帯を流れていた。
■武知 一実 >
「おう……ああ、いや。学校で先生に頼まれて様子見に」
立ち入り禁止区域の範囲を定めるのに状況を知りたいとか何とか。
ぶっちゃけ理由はどうでも良かったので、やる事だけしかちゃんと確認して来なかった事を少し反省する。
だって人と出くわすとは思わなかったし。
「今の雷、アンタがやったのか?」
地に伏して動かない鳥を一瞥してから、紫色の髪の女子へと訊ねる。
まあ状況的にこの鳥がやったわけじゃなさそうだから、分り切ってる事だけど、一応。
電気を扱うという点で少しだけ親近感と言うか興味が沸いたというか、そんな感じだ。
■リタ・ラルケ >
「そう。ならちょうどよかったわね。ちょっと遅かったら面倒ごとに巻き込まれていたところよ」
まあ、リタの場合はその面倒ごとに自ら巻き込まれに行ったわけなのだが。
ひとまず巨鳥を仕留めた、ということで。依頼人にはよい報告が出来そうだった。
何はともあれ、今の転移荒野に異常はなし。
「ええ、まあ。大したことじゃないわ」
指先で髪を弄ると、その間にぱちんと小さく電気が走った。
「生意気なイヌを黙らせるのにはちょうどいい技――と言いたいのだけれど。
口惜しいことに疲れるのよね。だからあまりやりたくないの。
今回は図体だけの軟弱だったから大したことにはならなかったけれど」
ここぞとばかりにボロクソ言いおる。
そしてその間にも、リタの体表面からは小さく電気が放出されている。
澄ました態度ではいるものの、戦闘を終えたばかりで、まだ心に激情が残っているのだった。
■武知 一実 >
「みてえだな……まあ、最近実戦不足だったから巻き込まれんのも悪かねえかと思ったけどよ」
訓練施設でサンドバッグを殴り続けるのも飽きてきたところだったから、ちょっと惜しい気もしたが。
というかそもそも転移荒野って生徒の来訪は推奨されてねえんじゃねえのか……? まあ、良いか。
「ふぅん……疲れる、で済むのか普通は。
図体だけだったとは言え、あのデカさに対応した雷だったろ、大したもんじゃねえか」
女子の体に残る雷の残滓を肌で感じながら、鳥の遺骸へと目を向ける。
雷で焦げた所為か、少しだけ旨そうな匂いがするが、食えんのかなあコイツ。
食料調達と実戦経験、どっちも満たせるのは便利だな転移荒野。