2024/08/11 のログ
■リタ・ラルケ >
「あら、そうなの。
私も運動ついでに仕事をしただけだから、似たようなものかしら」
どちらかというとメインは異能の訓練である。
ちなみに訓練施設は機械が多くてリタは大変に苦手意識があるのだった。
「あら、ありがとう。
この程度の相手なら、大したことはないけれど……そうね」
ふう、と一つ溜め息。疲労はない、のだが。
「そろそろ魔力切れかしら。相変わらず燃費が悪いのは困りものね――纏繞解除」
前髪を払って、異能を解いた。
■リタ・ラルケ >
「――う、ん……ふぅ。色々疲れた……」
三つ数える間に、紫の髪が、金色の瞳が、白さを取り戻していく。
体表面を走る電流も、それをきっかけに消え去る。
「ふ、っと――……んんーっ」
思いっきり背伸びをして、体をほぐす。
肩を回しながら、少年に向き直って。
「……そういうことで、魔力の消費が結構激しくて。あんまり長くは使えないんだよね、この姿……」
体に纏う雰囲気が、がらりと変わる。一瞬で思考が切り替わる感覚。
相変わらず、自分でも不思議なものだと思う。
■武知 一実 >
魔力切れ。という事はさっきの雷は魔術の類だったのだろうか。
けれどこの女子の体表に残る残滓は明らかに身体が帯電してるものだし……
魔力を電力に変換して帯電してる、という事だろうか。
……などと、オレが色々と考察している間に。
「…――髪の色が」
目の前で女子の雰囲気と髪の色が変わった。
こちらに話しかける口調も変わった気がする。見た目は同一人物みてえだが……
「なるほど、つまりそれがアンタの異能、ってやつなのか」
チャンネルを切り替える様に、雰囲気と髪色と、多分他にも何かあるんだろうけど、モードを切り替えられるのだろう。
今目の前にいる女子からは雷の残滓も感じられないから、扱う能力も違うんだろうか。
「……ホント、色んなモンがあるんだな、異能って」
感心して呟きながら、改めて目の前の女子と向かい合う。
「……オレは武知一実、1年。アンタは?」
■リタ・ラルケ >
「ん。まあ。そうだね。ある意味便利で、ある意味悩みの種というか」
特に戦闘においてはだいたい何でもできるのだが――日常生活になると、性格の変化は無視できない枷となる。
まあ、気長に付き合っていくしかないんだけど。
「私はリタ。リタ・ラルケ。学園は4年目だけど……最近ちょっと異能の制御が利かなくなってるから。
多分、まだしばらくいることになるかな」
小さく自嘲的に笑う。
同情してほしいわけじゃないが、これまで順調だった異能の制御が突然上手くいかなくなっているものだから。
残念に思うくらいは許してほしい。
「そういえば。一実の異能のこと、聞いてなかったな。
多分、電気関係だと思うんだけど。違う?
あまりこういう場所に丸腰で来るとも思えないから、少なくとも何かはあると思うんだけど」
これは自分だけに見えることだが。
先ほどまで自分が纏っており、今はその場に解き放たれている雷の《属性精霊》が、ほんのちょっとだけ活発化しているように見えた。だからなんとなく、そう思った。
あくまで「気がする」程度ではあるが。
■武知 一実 > 「リタ……リタ・ラルケ。
それはええと……リタが名前で、ラルケが苗字か? 普通に考えりゃそうかもしれんが、念の為な」
発音の感じからして、和名じゃない気がした。
一応確認しておかねえと後々面倒な事にもなりかねない。
つーか4年目って。だいぶ先輩だったんだな……
「異能の制御が利かないっていうと、突然髪色が変わったりとかか?
校則違反って訳じゃないし、そんな気にする様な事じゃねえとは思うが……まあ当人には色々あんだろうな」
正直なところ制御が利かないとどうなるのか、まではオレには想像出来なかった。
傍目に見りゃ雰囲気と髪の色が変わるくらいで、そんなに困る事も無さそうに思えるが。
多分、それだけじゃない変更点があるんだろう。
「あ? オレの異能?
アンタが予想した通り、電気を起こして操る力だ。
……まあ、あんまり使い過ぎると色々あるからそう頻繁には使わねえんだが。」
だから燃費が悪いとか、そういう悩みにはある程度共感できる。
いや、オレの雷も腹が減るとか魔力が減るとか、そういう程度で済めば良かったんだがな。
にしても初対面で言い当てられるとは思わなかった。同系統の力を扱えるから、だろうか。
■リタ・ラルケ >
「ん。そうだね。リタでいいよ」
名前については一般的な法則に則っていると思う。面倒がなくてよい。
「ただ髪の色が変わるだけ、だったらよかったんだけどねえ……。
さっきみたいに、体が帯電するとか、そんな感じのことも起こったりするから」
なまじっか体質ごと変わるものだから、変なタイミングで暴発すると大変よろしくない。
無害な体質の属性ならともかく、普通に危険な体質になる可能性だってあるのだ。
本当に困る。
「お、合ってた。やっぱり電気系だった。
やっぱり使いすぎると面倒なことになるんだねぇ」
正直五分五分だったけれど、やっぱりだった。
言い方からして燃費が悪い、とはまた別の方面で悩ましい質があるみたいだが。
なんにせよ、ままならない。
妙なところで気が合ってしまった。
「――さて、と」
あれこれ話はしたが。
「忘れないうちに、狩った証拠を確保しておかないと。羽根……いや、脚がいいか」
怪鳥の骸から、魔法の刃で片足を獲る。
一応、怪異の討伐という仕事で来ている以上、最低限のそれはしておかなければならない。
■武知 一実 >
「そうか、リタ。 じゃあ、オレの事はかずみんって呼んでくれ」
少しでも不良っぽい印象を払拭しようと親しみやすさを籠めたあだ名を申告してるんだが、
何故だかダチからは止めた方が良いって言われるんだよな……。
「さっき見た感じだと、髪の色が変わる前に符丁か何か言ってたと思うんだが……
それが無くても突然切り替わったりするもんなのか?」
だとしたら確かに少し不便かもしれねえ。
体質も変わるとなると、生活に支障が出る事もあるだろう。
オレも不意に漏電するから、不便さは分からなくも無い。
「まあな、オレの場合生体電気を増幅して何とかかんとか、ってコトらしいから。
あんまり電気出し過ぎると身体が縮んだり、後は驚いた時とかに意図せず漏電したり……まあ碌なもんじゃねえや」
そういう意味ではオレも異能の制御が出来ていない部類なんだろう。
つーかそもそも後付けの異能だ、そんなもんを制御しろという方が無茶な話なんだ。
「――来たら居合わせたんじゃなく、元々こいつを狙って転移荒野に?」
鳥の脚を切り落とすリタを見ながらふと疑問を口にする。
もしかすると別件で来たついでに、という可能性もあるがどこか手慣れているように見えた。
既に何度か同じ様な事をしているのかもしれない。
■リタ・ラルケ >
「なるほど。了解かずみん」
――真顔である。
なんだかんだ自分も色々な人と出会ってきているものだ。たまにはこんな人もいる。
ただ、まあ。あんまり似合うものでもない。心の中にとどめておくけど。
「ん。あれはまあ、異能のコントロールに集中するためのおまじないみたいなものだから。
本当は言わなくてもいいんだけど、癖になってるんだよね。
――逆に言えば、纏じょ……異能を使うのに文言は必須じゃないから、勝手に発動しちゃうことはある。
今までは、それも『理論上』だったはずなんだけどねぇ……法則は何となくわかってるから、できるだけ避けてるけど」
極端に暑い環境とか、深い水の中とか。気の持ちようでなんとかなるときもあるっちゃあるけど、限度もある。
「半分あたり。こいつを狙ってた、ってわけじゃないけど。
最近ここで怪異の出現が活発化してるっぽいから、調査のために捕まえるか狩るかしろって言われて。
異能の訓練にもなるし一石二鳥ってやつ。最近はよくこういうことしてるよ」
訓練になってお金が貰えて雇い主は助かる。実にウィンウィン。
捕まえる方は少し不得手なので、遠慮なく狩らせてもらったが。
■武知 一実 >
何故か微妙な反応が返って来た。
やっぱり自分から自分のあだ名呼びを申告するのはおかしいのか?
自己申告ってのがおかしいんだろうか、うーん、まだまだ考える必要がありそうだ。
「ああ、なるほどな。 自分で意図的に異能を使う時のためのおまじないって事か。
そういうメンタルセットは大事らしいな、最近夏休みの特別補習でそんな話を聞いたわ。
その上で勝手に発動するってなると……なるほど、そりゃ確かに厄介だ」
オレで言うところの平時でも漏電しちまうって事だから厄介極まりない。
リタの場合は電気に限らず体質が変わるって事らしいから、輪をかけて厄介だろう。
同情する……って程じゃないが、ある程度の共感は出来た。
「へえ、怪異の調査に協力してるのか。
それは学校の授業の一環で?……それともそういう裏バイト的な?
一応は生徒の立ち入りは非推奨なんだろ、転移荒野って」
非推奨ってだけで禁止されてる範囲ではない筈だが。
それでも風紀とかに見つかれば面倒だろう。
正式な手続きとか許可があればまた違うんだろうが……
まあ、それはそれとして大手を振って戦闘出来るってのは非常に魅力的に思える。
喧嘩するよりも怒られが少なそうだし、相手に合わせて多少の加減をする必要も無えだろうし。怪異相手なら。
■リタ・ラルケ >
「バイト。割と実入りはいい方だと思うよ」
それなりの危険があるわけだし、よくなければ困るが。
「まあ、立ち入り非推奨ってのはそうなんだけどね。
それでも依頼は依頼だし、それなりに自衛はできる自負はあるし。
異能も魔術も校則上制限されてないから、窮屈でもないし」
後は、怪我を負うリスクさえ受け入れることができるなら。
個人的にはなかなかよい場所ではないかと思っている。
「さて。そろそろ報告しに帰らないと。
えっと、確か……様子見だっけ? まだ何かするんだったら、気を付けてとは言っておくけど」
ひとまずよほど脅威となるような怪異の気配はないようだけど。
それでも何があるかわからないのが転移荒野である。
■武知 一実 >
「そっか、バイトか。
そろそろ校内に貼り出されてる求人も一通りやってみたところだし、手を出してみるのも良いかもしれねえな……」
趣味と実益、一挙両得。うん、夏休み中にやるには悪くないかもしれない。
何より、今なら翌日の授業に響くって事が無いのが一番デカい。
「オレもそのバイトやってみっかなあ。
腕っ節はそれなりに自信あるし、周りを気にせず体動かせるバイト、探してたとこだ」
体質上、不慮の漏電事故を避けるためにあまり一所のバイトに集中することが出来ない。
それに今の時期どうしても水場のバイトばかりになるし……
周囲に被害を出す心配が無く働けるってのはオレにとってだいぶストレスフリーに思えた。
しかもやる事は喧嘩みてえなもんだし。
「ああ、バイト中に声掛けちまって悪かったな。
オレも転移荒野のこの辺りの状況を見て来いって言われただけだし、デカい鳥が死んでたって報告しに帰るよ」
リタの事は……まあ問題は無いと思うが一応報告には載せないでおこう。
怪鳥の遺骸が漂着していた、報告事項はそれだけだ。
まあ……ちょっと居残って新たに怪異が出たら一発戦ってみるってのも悪くは無いと思うが、戻るのが遅くなったらこっちの依頼人に怪しまれかねないし。
■リタ・ラルケ >
「まあ、言うまでもないかもしれないけど。
身の安全は保障しないから。危なくなったら逃げる、これは徹底ね」
命あっての物種。そんな大げさな話じゃないかもしれないが、なんにせよ治療費で稼ぎが台無しになる、なんてことになれば本末転倒である。
金なんて要らねぇ、とにかく戦いたい――なんて人間は、そもそも仕事として来るわけないだろうし。
「別にいいよ。どうせもうとっくにやることはやったわけだし。
なんで死んでたのか、とか聞かれたら、私の名前出してもいいから」
別に後ろ暗いところがあるわけじゃなし。
「――それじゃあ、ばいばい。またどこかであったらよろしくね、かずみん」
軽く手を振って、踵を返す。
人との出会い、異能の制御、身の振り方。
随分と考えることも多くなっちゃったな、なんてまた自嘲気味に笑いながら。
まあひとまずはこれを終わらせてしまおうか、と。回収した怪鳥の脚の存在を確認するように触れてから、帰途に就いたことだろう。
ご案内:「転移荒野」からリタ・ラルケさんが去りました。
■武知 一実 >
「ああ。 じゃあな、リタ。」
その場から立ち去るリタの背を見送ってから、怪鳥の遺骸へと目を向ける。
この大きさの鳥を相手取るなら、どういう立ち回りになるか。
人間相手の喧嘩なら通じる手も、怪異相手となれば通用しないかもしれない。
(……いや、人じゃないモノとの戦闘なんて、それこそ毎日の様にしてたじゃねえか)
測定器という名の機械人形。
ヒト型、獣型、何だかよく分からない型と様々なものと戦わされて、異能の性能を試験された日々を思い出す。
「……ま、あの頃よりは自分の為に動いてるだけかなりマシか」
さて、そんな事よりも学校に戻ってオレも報告を済ませちまおう。
次にここに来るときは、バイトの一環である事をちょっと期待しつつ、オレも踵を返したのだった。
ご案内:「転移荒野」から武知 一実さんが去りました。