2024/09/11 のログ
武知一実 >  
「まあ、いっぺんに言われても頭が追い付かねえよな。
 聞きたい事があれば答えられる範囲で答えっけど、ひとまず落ち着ける場所で一息吐く方が良さそうだ」

一度落ち着いて、身の上に起きた事を飲み込めるくらいになってからでも遅くは無いと思う。
とりあえず風紀委員の庁舎に送って、あとはあっちに任せんのが良さそうだ。
見た感じ動揺とかはそれほどでも無く見えるが、内心なんて見えねえもんをとやかく判断できるほどオレも経験が豊富なわけじゃない。

「やらなければならないこと……?」

異世界に来た上でやらなきゃならない事と言えば帰り方の模索とかだろうか。
それなら尚更現状の把握は第一だと思うが、もっと他に別の何かがあるんだろうか。
夜風に吹かれながらも遺跡から離れ、転移荒野の端へと向かいながら考える。 うん、ダメだ。想像もつかねえ。

「イクトミス……アルカス。 なるほど、この辺で聞く名前じゃねえな。
 トミィか、じゃあそう呼ばせて貰うわ。これも何かの縁だろ、よろしくなトミィ」

名前を聞けばだいぶ異国語っぽい名前が返って来た。
うん、日本に馴染みのある様な名前には、一度聞いたくらいじゃ思えねえな。

「ああ、生まれも育ちもこの世界だ。
 とはいえ、育ちはちょっと特殊だから、あんまり世界について詳しくは知らねえんだけどよ」

イクトミス > どうなってしまうんだろう。
この世界でどう生きていけばいいんだろう。

このままあっちに向かって歩いて行けば、人が暮らす街や村があるのだろうか。


「けっこう・・・混乱しかけてます、ねぇ―…。
 聞きたい事…うー・・・聞きたい事…は…。」




だめだー。思いつかない。
本当は知りたい事も知った方が良い事も色々あるんだろうけど
いったい何を尋ねるべきなのかが纏まらない。

「やっぱりそうですかー…。」

彼がこの辺りで聞く名前じゃないと思ったように。
ワタシも彼のような名前を聞いたのは…。
 …知っている気がするのに、知らないかもしれない世界。

もう頭の中はめちゃくちゃだ。
それほど体は疲れてないのに
頭がもう取り留めもなくてどうしようもない。

「だめだぁ、…自分で想ってるより混乱しちゃってるみたいで。
 すみません、ちょっと考える時間、欲しいかもしれないです。」


どうにも調子が出ない。
頭がギューってなって頭痛が痛くなりそう。
どうにもこの辺りはやっぱり蒸し暑いが、悩んで考えてこの顔もほっぺたも熱い。歩きながら両手を頬に当てながらムイムイと顔を持ち上げる様に揉む。


「これからどうしよう…」


星も見えないこの空がなんとも寂しい気持ちにさせる。
頬から両手を降ろしてもなんだか手持無沙汰でなんだか気持ちが良くない。

武知一実 >  
「まあ、混乱すんのが普通だろ。
 とはいえこっち側からすりゃ異世界から人が来る、なんて今日び珍しいもんでもないらしいからな。
 今から案内するとこで異世界から来た旨伝えりゃ、済むところの手配くらいは受けられるはずだぜ」

そこから先は、落ち着いたら考えるで良いんじゃねえのか。
混乱した頭で考えたところで妙案なんて出る訳がねえ、だったら一旦は流れに乗っちまってその後どうるか考える方が徒労は少ない。
……つーか最近異邦人を案内すること多くね、オレ……?

「まあオレよか分かりやすく説明してくれる奴らが居るとこに案内するから、聞きたい事があったらそっちに聞く方が確実だ。
 繰り返しになるけど、住むとこと食うものはある程度融通されると思うから、2~3日は落ち着いて考えられる時間取れると思うぜ。
 アンタが思ってるよりも、事態はそう深刻に悪いってわけじゃねえからそこは安心しときな、トミィ」

さてそろそろ転移荒野も抜けられる頃か。
暗いとどうにも分かりづらいが、もう少し進めば委員会街へと向かう道も見えてくることだろう。

「楽観視しろとは言わねえが、あんまり難しく考えすぎてもドツボだからな。
 そう簡単にゃ整理はつかねえと思うが、それが普通だあんまり案じ過ぎんなよ?」

イクトミス > 「何から何まですみません…」


という事は、この世界にだけなのかは分からないが。
多くの異なる世界から現れる人というのは珍しくないという事か。


「住む場所も、食事まで用意してくれるなんて…
カズミンさんはホントになんていい人なんでしょう」

「というか住む場所まで?!カズミンさんそれ大丈夫ですか!?良い人、どころの騒ぎじゃないですよ!一体何者ですか!?この世界で一番お金持ちな…まさか王様?って事はないか・・・王様みたいにヒゲ生えてないしあんまりきらびやかじゃないですし…。」


かといって王子様っぽいかと言われれば王子様っぽくもない。
いったいこのカズミンさんはどんな何者なんでしょうか。


「しかし!しかしなんですよ!!
全~部ッ!カズミンさんに助けてもらうばかりじゃこのイクトミス=アルカスの名が廃るというももです。
噛んじゃいました。とにかく申し訳が立たないので何かお礼をさせて下さい。
これでもですね、言わずと知れた名のある貴族のお屋敷にて仕えて給仕係をしていたんですよ。フフフ。
なので、何かあればお食事だろうとゴハンでしょうと!えぇ!なァんでも作ります!」

「エンリョなくこのイクトミス=アルカスに言いつけて下さいね。
貸しを作ったままじゃ、あれ?借りを借りたままじゃ…?どっちだっけ…
とにかく何かしらしなければ心が痛いんです!ゴハンを作るか、お屋敷の掃除か!どちらか二つに一つ、或いは両方を言いつけてくれなければワタシの、心が破けて離れます!いいですね!?」



どうやらこちらを気にかけてくれているのか、考えすぎるなとの暖かいお言葉を頂きましたが。どこまで気のいい人なのだろうか。貴族には見えないがその気遣い、貴族レベル…家や食事の事まで加味すればそれ以上まである。こんな素晴らしき人に対して自分は恩返しなど出来るのか?

・・・そうだ、考えてみれば命まで救ってもらっているのだ。
命を助け衣食住を助けて心まで気遣ってくれるとは、いったいこの人の精神構造はどうなっているのだろう?善人、とかそういうレベルじゃない気がするのだ。しかしそんな人物に対して裏があると考えるのは卑しさの頂点。不義理も良い所である。




「カズミンさんはなんで助けてくれるんですか?」

「家まで用意してくれるとか普通ありえないですよ。それとも家がもうすごい沢山あるとか、お金持ちとか、作り過ぎて家が余ってるとか…?あぁ、でもそれなら身体能力がすごそうなのもうなずけます。でもそんなに腕とか筋肉とかパンパンに詰まってそうじゃないですよね?」


じろじろと武知の腕や胸板を覗き込みながら。


「もしかして、魔法が使えるんですか?」

武知一実 >  
「別にオレが用意するわけじゃねえんだ。
 何て言えば良いんだか……異世界からの来訪者を支援するシステムがあるってだけさ。
 オレがするのはその手続きが受けられる場所に案内するまでで、そっからは別の奴に任せるから、感謝されるような事じゃねえよ」

何だか凄い勢いで持ち上げられてるが、特別なことをしてるつもりは毛頭無い。
本来ならその場で電話一本掛ければ良いんだろうが、異能を使った直後というのもあって極力スマホの使用は避けたいってだけなんだが……要らん誤解を招いちまったっぽいな。

「……ともかく、オレがするのは案内まででそこから先はアンタ次第だ。
 生活してくにしたって稼ぎ口は自分で探さねえとならねえし、住む場所だって改めて探さないとならねえ。
 一から十まで面倒見る訳じゃないって事だけは先に言っとくぜ?」

誤解がどんどん飛躍してく気配がするので早めに引き戻しておこう。
まあ、今後の不安とかと向き合うよりは精神衛生上マシな気がしないでもないが、この調子で行かれるとオレの方が保たねえ。
迷子ならぬ迷い人をインフォメーションセンターに連れてく様な感覚で居たのが、何だか特別な事のように思えて来ちまう。

「ま、それだけ色々と出来りゃ稼ぐのに困る事は無さそうだな。
 ……あン? 魔法なんざ使えねえよ。まあ、体質で電気が起こせるってだけだ」

異邦人から見れば魔法も異能も大差ないのだろうか。まあ、何の前説も無しに見せられたら同じにも思えるか。

「さっき助けたのだっておまけみてえなもんだ、たまたま居合わせただけで。
 だから気にすることは無いんだが……まあ、気が済まねえってんならそのうち飯でも奢ってくれりゃ良い。
 ひとまずアンタが落ち着いて状況整理出来て、今後どうするか考えられるようになってから、な」

そんな風に油断すればどこまでも飛躍していきそうな話をぐいぐいと引き留めながら、オレはトミィを委員会庁舎まで連れて行ったのだった。
その後については委員会とトミィ本人の問題であって、オレが関与する様な事じゃない……と、思う。

ご案内:「転移荒野」から武知一実さんが去りました。
イクトミス > 「なるほど~・・・、びっくりしましたけど少しほっとしました。
 でも命をお助けして貰ったのには変わりありませんよっ!
 なので、深く強~~ぉぅく…! 感謝いたします…!」

はぁ~~~感謝~~~、と。
謝意を掌から送り付ける様に武知に両手を向けながらなにやら変なモーションをしているがそんなオーラがほとばしる事はない。


「1~10よりも命を救ってもらいましたからね。
 命あってのナントヤラですし

それでも感謝するのは多分間違ってませんよ。えぇ!」



「――――えっ?」



ちょっと待って欲しい。
料理は出来るが、それが旨いとは言ってない!


いけない、これは本格的に料理を勉強しなくてはいけないだろうか。
しかし命の恩人相手にあんなリアクションを貰ってしまう料理をお出しするワケにもいかない。


「へぁー・・・」

「じゃあ、カズミンさんはとことん凄い人なんですね…
 おまけで命を助けるなんてすごいと思います…。」


はい、と元気よく返事を返しながら。
しかし果たして、この世界の文化や暮らしを目にした時、イクトミスは騒々しくならずに居られるだろうか?まだまだ「一波乱」とやらが続く事になる事をこの時の二人はまだ、知らないのであった…。

ご案内:「転移荒野」からイクトミスさんが去りました。