2025/01/10 のログ
ご案内:「転移荒野」にルメルさんが現れました。
ルメル >
 ばしゃーん!
 未開拓地域の端っこの海岸。盛大な水しぶきをあげながら何かが揚がる。

「えいやってしたら、なんか陸に上がれたわ!」

 青い髪に白い肌に赤い瞳。それだけ見れば人形のようないでたちだが──下半身が魚だ。

「で……ここが人間の島ね!」

 ぴちぴち跳ねさせて、喜ぶ人魚が一尾。
 

ルメル >  
「……思ってたより寂れているわね。
 私の記憶だともうちょっと賑やかだったのだけれど……」

 見渡す限りの荒野。
 思っていたものと違う──少々のがっかり感に肩を落とす。

 人類は滅びたのだろうか? まさかそんな……。
 ……いやいや、住処を変えただけかもしれない。
 気を取り直しながら、進もうと思った所──一つの問題にぶちあたる。

「どうやって動けばいいのかしら……。」

 勢いで陸に上がった。
 水のない所での動き方がわからない。
 

ルメル >  
 ぴちぴち、ぴちぴち。
 ふわぁ……。

「あ、なんか浮けたわ!」

 その場で跳ね続けること30分。
 跳ねたまま落下せず、地面から1cm程浮いた所で身体が止まる。
 水面を泳ぐように、ふわふわと浮いている。
 

ルメル >   
「乾きそう……。」

 とは言え、ここは未開の荒野。
 浮きながら移動する手段は会得したものの、日照りで身体が乾く。
 寒さは平気だが、大気もそこそこに乾燥していて少しつらい。

「人間はこんな過酷なところで生きているのね……。
 ……このままじゃ乾きすぎてかつおぶしになっちゃうわ……。」
 
 人の気配か、水のある場所を見つけなければ。そう考えて尾を進める。
 歌って人を誘う手段も考えたが、喉も乾いて歌う気分にもなれない。
 

ルメル >   
「……いやいや、ヒトデみたいに干乾びるなんてまっぴらよ!
 人の気があるところを探って進むわ! 太陽になんて負けないんだから!」

 自分の頬を叩いて喝を入れる。
 乾いた肌がヒリヒリと痛い。少し強く叩いてしまった。

「水が恋しいわ……。」

 気を取り直した人魚は、再び転移荒野を彷徨い始めた。
 

ご案内:「転移荒野」からルメルさんが去りました。