2026/03/03 のログ
ご案内:「転移荒野」に銀の狼さんが現れました。
銀の狼 >  
夜。空に、真円を描く月が浮かぶ夜。

転移荒野を、銀色の風が駆ける。
その巨体からは想像すら出来ぬ速度で。
荒野の只中を、疾駆する。

失われた何かを追い求めるように。
自然の只中に帰ろうとするかのように。


銀の巨躯は、疾駆する。
並みの者の目には、銀色の風にしか思えぬ、圧倒的な速度で。


赤い満月の浮かぶ、夜空の下を、ただ、疾駆する。

銀の狼 >  
ひとしきり荒野の中を駆け続け。
銀の風が、一時その足を止めたのは、小さな岩山の上だった。

ゆらりと、銀の狼が岩山の上から荒野を見下ろす。
その体躯は並みの狼のそれではない。全長、凡そ3m。
一般的に最も大きな狼とされる種ですら、2mが最大。
その体調を優に超えている。

それ程の体躯からは信じられぬ程の速度で、荒野を駆け抜けた巨狼は。
今は赤い満月の下、静かに荒野を眺めている。

過ぎ去って戻らぬものを探すかのように。
あるいは、かつての記憶を手繰るかのように。

赤い満月の下で、銀の狼は広がる荒野を、静かに見渡している。

銀の狼 >  
徐に、銀の狼は顔を上げる。
見上げた空には、ただ無言で大地を見下ろす赤い満月。

ただ一吠え。
ひどく長く、尾を引くような遠吠えが、転移荒野を駆け巡る。

月に向かって放たれたかのような遠吠えは、
荒野に生きていた生物や動物を、そのひと時だけ怯えさせ、暗がりや茂みの中へと逃げさせた。

されども、所詮は一頭の獣の上げる声。
遥か彼方の、夜を知らないような街や、人間たちの眠る街には、その咆え声が届こうはずもなく。

距離という壁に隔てられ、転移荒野を出る事無く。
その遠吠えは、小さくなっていくのだった。

銀の狼 >  
――やがて。
銀の狼は、再び転移荒野を駆け抜け始める。

限られた、満月の夜の中。
ただ一時であっても、野性の中に還るように。

銀色の風は、影を踏む事さえ許さぬ程の速度で。
限られた自然の理の中を、駆け巡るのだった。

ご案内:「転移荒野」から銀の狼さんが去りました。