2024/07/20 のログ
橘壱 >  
『……は?』

不意に頭上を影が覆う。サブカメラが捉えたそれは……。

橘壱 > 『デッッッッッカ!?!?!?』
橘壱 >  
デカァァァァァァァイッ!!説明不要ッ!!
まるでそれは特撮のヒーロのような巨大さだ。
成る程、これが彼女の自信の源の力のようだ。
しっかりワイヤーを掴んでいる姿はその見た目通りのパワーを発揮している。

『……とは言え、見惚れてる場合じゃないな!』

彼女が頑張ってくれているなら、自分も頑張らなければ意味がない。
鋼の足が土を跳ね除け、オオカブトへと一直線に駆け抜けていく。
確かに此の機械は兵器だ。だが、弊社の強みは医療器具に通ずる。
AF(コイツ)にもしっかり、その機能は備わっている。

『やるぞ、Fluegele(フリューゲル)!』

Main system engaging surgery mode.(メインシステム、医療モードに移行します。)

無機質なCOMの音声とともに、バックパックから伸びるサブアーム。
その場で医療技術を行うためのモードだ。
少年はまだ学生で医学は専攻していても卵だ。その技術は未熟。
だが、それは機械(マシン)の力がカバーしてくれる。
伸びたサブアームがオオカブトの頭部を掴むと、放たれるのは特殊な音波。

麻酔薬を使わない、特殊な音波によるリラックス効果を誘う音波麻酔だ。
薬を使わない分効力は短時間だが、その分生態的相性を懸念しなくて済む。
事実、昆虫にだって効果はある。ギリギリと張り詰めるワイヤーが次第に緩んでいき
最後には大人しく、撓むだろう。網の中でスン、とするオオカブト。

『……捕獲成功、だな。』

振り返り彼女を見上げ、そう告げた。

ゼア >  
「作戦せいこーっ。どやー」

網の中で大人しくなったカブトムシを見て、無邪気に喜ぶ。ぴーす。

「ゼア一人だったらふっとばされておわりだったかもー。それはそれで楽しかったけど。
 ふふ、ありがとねー、ロボットのお兄さん」

しゃがんで機械の体に笑顔を飛ばす。

「んー。これでいっぱい自慢できるなー♪
 相撲大会に出す分のカブトムシ探さなきゃだけど」

大変満足そうに、巨大カブトムシの角の先をちょいちょいと弄った。

橘壱 >  
『…………ふむ。』

実際見上げてみると悪くない。
いや、見られても良いタイプの下着っぽいけど、"逆にそれがいい"。
オタク、しっかり男の子。モニターの向こうでガン見していた。

『そんなに大きいなら一人でも余裕そうだけどな。
 ……まぁ、役に立てたのならよかったよ。』

大きさ=パワーである。
とは言え、オオカブトも大分いい勝負してたからわからないな。
役目を終えれば全身がまた液体のように溶けていく、あっという間にトランクに形を変えた。
少年はふぅ、と一息吐けばトランクを持ち上げて眼鏡をかちゃり。

「まだ動き回る元気はあるのか……此の暑さで凄いな。
 まぁ、乗りかかった何とやらだ。このまま事故にあっても困るし、よければ付き合うよ。」

「普通のカブトムシなら、捕まえる方法も知ってる。
 僕は橘壱(たちばないち)。ご覧の通り風紀委員だ。お前は?」

オオカブトはちょっとくすぐったそうだ。

ゼア >  
「…………そっか。おっきくなればよかったのか。
 でも、うん。こんなふうに捕まえるのはできなかったかも。
 だから、ありがとー」

元々「大きくなれば何とかなる」という発想はなかったが。
仮にゼアがそれに思い至ったとして、ここまでうまく事を運ぶことはできなかっただろう。

「"なつやすみ"だからねー。やりたいことがたくさんあるの。
 暑さにやられてる場合じゃないのです」

今年の夏の目標。「人間の夏休みを満喫する」。
そんなわけで、ゼアはやる気に満ち溢れていた。
夏用の帽子も手に入れて、とてもご機嫌な現在なのである。

カブトムシの角を弄るのに満足したら、姿を元に戻して自己紹介。

「ゼアはゼアだよ。妖精なのです。
 普段はー……いろいろやってるよー。商店街でお手伝いとか」

橘壱 >  
「……頭の使い方次第だとは思うけどね。
 礼を言われるようなことはしてないよ。僕はちょっと力添えしただけさ。」

思ったよりも中身も外見もほわほわしているらしい。
良くも悪くも子どもっぽい無邪気な感じが危なっかしさを感じる。
…良く一人で山なんかにこさせたな、とは思わなくもない。
懐から取り出す冷却用魔法道具(マジックアイテム)を使えば周囲もひんやりだ。
オタクが…というか最早、今の環境でアウトドアするためには必需品だ。

「妖精か、成る程な。通りでデタラメな事も出来るわけだ。」

あんなに大きくなれるのも納得だ。
幻想生物なら何が出来ても不思議じゃない。
にしても、本当に人間と姿形が変わらない。まるで、神様の悪戯だ。

「まぁ、やりたいことが多いのはいいことだよな。
 何もなく怠惰に過ごすよりはとてもマシだ。帽子(ソイツ)も良く似合ってるよ。」

かちゃりと眼鏡を上げてから、網の中のオオカブトを一瞥した。

「……でっかい虫かごも持ってくるべきだったか?
 まぁいいか。暫くは大人しいはずだし。問題は……運搬か……。」

ゼア >  
「え、それならゼア運ぶよ?」

力仕事――特に運搬には慣れている。流石に生物を直接運んだことはないけれど、まあなんとかなるだろう――そんな希望的観測。

「どっか適当なとこに置いておいてー、後でゼアが運べばいいんじゃないかなー」

それまで麻酔の効果が保つだろうか、という発想はゼアにはない。

ともかく。

「それじゃあ次は大会に出るカブトムシを探そー。
 ふふ、まだ一杯時間はあるからたくさん探せるねー。目指せ横綱」

何せ、オオカブトでは大会に出れそうにないので。ノーマルサイズの虫かごと網が似合うカブトムシを探しに出るのだ。
逸る気持ちを抑えようともせず、疲れを感じさせないバイタリティーを全身から溢れ出させていた。

橘壱 >  
「えっ?あ、ああ……まぁ、あの大きさならいけるか……。」

一瞬マジか、みたいな顔をしたが思えばあの大きさだ。
或いは巨大化しなくてもパワーだけなら随伴するのだろうか。

「……まぁ、多分麻酔の効果は持つと思うけどな。
 あんまり長居するとまた暴れ出すかも知れないぞ?」

今は強烈にリラックスしてるだけであり、網が絡まっている不快感はあるだろう。
此の効果が切れればまた暴れ出すに違いない。が、なんとなく心配はなさそうだ。

「横綱ってな……階級まであるのか?
 ……わかったわかった。とりあえず昼間でも薄暗い場所とかをだな……。」

本当に凄いバイタリティだ。インドア派のオタクはちょっと圧倒されてしまう。
とは言え、一度言ったことはしっかりと守ろう。やれやれ、と肩を竦めながら彼女に付いていくだろう。
実際、しっかりと知識はあるようで、何事も無ければカブトムシは問題なく捕まえられる。
その後商店街とオオカブトの扱いに関しては…まぁ、彼の関与するところではない。
暑い夏の1ページに、一人の少年との行いがしっかりと刻まれることでしょう。

ご案内:「青垣山」から橘壱さんが去りました。
ご案内:「青垣山」からゼアさんが去りました。