2024/11/22 のログ
■鶴博 波都 >
『パーソナルカラーなんですね。
壱さんは、自由に翔べていますか?』
どこか誇らしげな蒼白の機体と、彼声。
そこに秘められた想いの深さは推し量れそうで量れないので、聞いてみることにした。
『そんな感じです。列車にまつわる怪異は稀に良くあることですが……
……こういうケースはちょっと初めてです。』
ちょっとした異変や怪異ぐらいはあれど、
先日のことのようなものは初めてであった。
少しの沈黙の後に、モニターと共に橘壱の顔が表示された。
同様に自分の声と表情も映る様に操作をしてからモニターに向かい、告げられた言葉をしっかりきく。
『前線に立ってから、意識しすぎちゃったのかもしれませんね。
ちょっと卑下しすぎた言葉を選んでみたいです。ありがとうございます。』
肩の荷が降りた、と、気の抜けた具合で柔らかい笑みを見せた。
『そうですね。守られる事は悪いことじゃないです。それはそうでした!』
考えてみれば、根底の部分では別段迷う事でもなかった。
あくまで前線に出る事はあれど、守られたままでも良いのだ。
そこは違えなくて大丈夫と考えて、安心する。
『餅は餅屋で、私はマニュアル通りに頼ればいいだけです。
……身を守って、本来の仕事が出来ることが一番ですから!』
『それはそれとして、AFの操縦は上手くなりたいですし、自衛出来るぐらいにはなりたいですけど……
……なんだかんだで、この子を動かすのは楽しいです!』
■橘壱 >
『……色々遠回しはしてきたけど、そのつもりさ』
ハッキリと答えた。その声音に淀みは無い。
『守られる側から守る側に変わること自体も珍しいワケじゃない。
わざわざ日常を自分から飛び出していくのは、余程の物好きですよ』
『──────僕みたいなね』
言い方を変えれば例外とも言って良い。
でざるを得ない人間を除けば、普通の人間は日常を出ない。
自分の生き甲斐は、戦いにしか存在し得ない。
鉄火場で戦うことの悦び。日常と相反する思考。
だからこそ望んで守る側にも立てることもある。
『波都先輩がやりたいことをやればいいんですよ。
誰かを守るために前線に出たいなら、僕も出来る限り手伝うし、
やっぱり日常にいたいなら何時だって止める事も出来る。止める権利は誰もない』
『そんな年長者じゃないですけど、自分の人生なんです。
だったら、"選択の自由"を行使出来る間は、好きにしましょうよ』
きっとそれが、生きるという事だ。
軽く身を翻せば、青く広がる空を見上げる。
『勿論、どっちを取るのもありなんだ。
どっちかってことはない。……って、最近気づいたんだけどね』
『ちょっと話し込んじゃったかな。そろそろ戻りましょう。
帰りは巡航して、空の旅と行きましょうか。翔べますか?』
なんて、ちょっとからかうように。
■鶴博 波都 >
『壱さんみたいに────?』
鶴博 波都は、橘壱の内面にある闘争心を知らない。
鶴博 波都は、橘壱が鉄火場での戦いを生甲斐にしていると知らない。
鶴博 波都は、橘壱を頼れる努力家の風紀委員として見ている。
日常に相反する思考を持つものであることを知らない。
偶々、使命と生き甲斐が重なっているかもしれないことに気付かない。
『ううん。正直なところ、やりたいことは分かりません。
だけれど……取れる選択肢は多い方がいいなって思います。
だから前線に出るお仕事は止めないつもりです。よく考えてみると……』
(日常に居たい訳でもない?)
したいこと、という側面で見ると何も浮かばない。
ただ自分の才能が活かせて、人の為になっているから鉄道委員の仕事を続けている。
そこに自分の欲求と言うものは……あんまりない。
『……したいこと、あんまりないかもしれません。大きな道を自分で選ぶって結構大変なんですね……。
あ、でも、この子を動かすのは楽しいです。鉄道委員のお仕事はやり甲斐があります。』
したいこと。人生の進路。
敷かれた道を歩いてきたが、いざ自分で選ぶとなると難しい。
『……わっ、こんな時間。そうですね。話し込んじゃいました。
たぶん飛ぶのは問題ないと思います。ひとまず、みんなに助けて貰いながら進路を決めることにします。』
自身の駆る深緑のAFを浮かせ、飛行形態にシフトさせる。
鶴博波都の肌感覚だと、"地面を歩くより楽"なものに思えた。
自分で自分を操縦するような感覚は、操縦物のそれ等に近く思う。
『今日もありがとうございます。壱さん。』
『やっぱり、壱さんの方が先輩みたいですね。とても頼れます。』
からかわれている気がしていないらしく、何時もの彼女らしく素直に応えた。
ふわふわと宙を浮いているが、AFの挙動に不安定さはあまりない。
■橘壱 >
背部のメインバーニアが徐々に熱を持つ。
青白い炎が周辺を湾曲させる程の熱量だ。
森の中で使えばあっという間に山火事一直線。
『……僕は、戦うことが好きなんですよ。
人が忌避するような戦いに生き甲斐を感じている。
けど、別に破滅とかを望んでいるワケじゃない。ただ、戦うのが好きなだけ』
『正確には、AFを動かすのが好きなんですよ』
兵器の在り方は戦いであり、それが存在価値。
それを示すのはやはり戦いしか無いということだ。
躊躇いもなく喋るということは、それだけ迷いがないということ。
というよりも、ある意味彼女を信用してだろう。
隠していてもいいが、何時か前線でかち合った時、
きっとその自由な姿を目撃するのもそう遅くないと思ったからだ。
『今言ったことを信じるかどうかは、先輩に任せます。』
そういう壱の表情は、いつもと変わらないものだった。
『じゃあ、これからしたいことを探しましょう。
探すだけが目的にならないように、ゴールを見つけてね』
何時しか目的こそが生き甲斐担ってしまっては意味がない。
ちょっと茶目っ気を出すように軽くウインクをすればゆっくりと浮かび上がる。
『それじゃあ、ランデブーポイントまで一緒に』
二つの軌道が、青空を通り過ぎていく──────。
ご案内:「青垣山」から鶴博 波都さんが去りました。
ご案内:「青垣山」から橘壱さんが去りました。