2024/12/04 のログ
ご案内:「青垣山」にフランシスさんが現れました。
ご案内:「青垣山」に千里 ヒカゲさんが現れました。
フランシス > フランシスが常世学園の生徒になってから幾許かの時間が過ぎた。
御伽噺で言うところの、浦島太郎にも近い状態であったことを思えば、
部活動に参加し始めたことや、最新鋭のVRゲームに興じるようになったことは、
なるほど、魔術師らしい探求心の賜物であったと言えるかもしれない。

「ふむ……噂を聞いて訪れてみたが、少しばかり難儀しそうだな」

彼女が今回訪れたのは、常世島は未開拓地区に在る青垣山だ。
そして、聞きつけた噂というのは、この山で不可思議な茸を目撃した。
というものだった。

「とは言え、私ほどともなれば山道程度は造作もない」
「常世開発部の一員として、面白そうなものを見つけてみせようではないか」

山道ともいえない山道の入り口にて、
およそ山歩きには不釣り合いな、瀟洒なドレス姿が尊大にごちる。
それでいて、背には不釣り合いな背負い籠を背負っているのだから、
どことなくユーモラスな印象を見るものに与えるかもしれない。

「なあ?、アドバイザー担当」

ユーモラスな姿が傍らの少女に言葉を放る。
自称、古代生物なのだから、茸にも詳しいだろう。とでも言わんばかりの顔だ。

千里 ヒカゲ > 「分かっておらぬな、小娘。」

頭脳マウントと年齢マウントを同時に取りに行く小娘。ちっちっち、と指を横に振ることも忘れない。
緑の髪に緑の服装。緑一色と言ってもいい装いのお団子頭は、ふふん、と鼻で笑いつつ。

「キノコは動物でも植物でも無く菌類じゃ。ワシ植物で今動物の姿借りておる。
 つまりワシ専門外な。

 まあとはいえ、知識は零れ落ちるくらいはあるから任せておくがよい。」

親指でビッ、と自分を指して。


彼女の名は千里ヒカゲ。
千里に渡って影を作ったという巨大シダ植物の生まれ変わりを自称する謎の古代生物である。
ちなみに古代生物というのも自称だ。人ではないことだけは分かっている。

嘘なのかホラなのか真実なのかわからない古代のことをさも見てきたかのように話す女であるが、不快なことに謎生物らしい能力はいくつか備えており、すべてが嘘ではないらしい。


「後はワシ身体動かすのは得意分野だからのう。
 山道、と言われて初めて傾斜に気が付いたわ。ほっほっほ。」

軽く笑う。怪しげな格闘技を扱う彼女は巨大な籠も苦も無く背負って体力マウントも取っていく。


「ところで、珍しい、面白そうなもの、ということじゃけど、どんなのがあったらいいなとかあるのかの。 新種が見たいのか、それともなんかの原料になりそうなものが見たいとか。」

フランシス > 「誰が小娘だ誰が。茸が菌類なことくらい知ってるわ!」
「私が言いたいのはだな、その辺を起源と自称するなら多少は知っているだろうと……」
「……いや零れたら駄目じゃないか?」

得意気に指を振ったり自らを指さすヒカゲに対し、
フランシスは大丈夫かコイツ。とでも言わんばかりの渋い顔を向ける。

「大丈夫かコイツ……」

視線より数拍遅れて言葉も追従し、やや大仰に肩を竦めてみせた。

「ま、よい。なんとでもなろうさ」
「体力に自信があるのは結構なことだ」

体力問題に関しては少しばかり視線を逸らし、
次には振り子のように眼差しが戻る。

「新種も見たいが、主目的としては何かに使えそうなもの。の方だな」
「開発部は役立ちそうなものの提出。により単位などが得られるものだ」
「……もっとも、手放したくないほどの物が見つかれば話は別だが」

そうして芝居がかった所作で悪役のように笑い

「で、其方はどのようなものがお目当てなのだ」
「ただアドバイザーを乞われたからついてくるような暇人でもあるまい」

ヒカゲに話題を投げ返した。

千里 ヒカゲ >
「まあまあまあ、ワシくらいになれば様々なキノコは知っておるわ。
 なんでも食うと身体が二倍に膨れ上がり、死すら一度は乗り越えるキノコとかの。
 穴に落ちると効果が失せるらしいが。」

きっと黄色と赤のキノコなのだろう。スムーズに怪しげなキノコの話をする。

「任せておくがよかろう。
 あと、化け物とか出てもワシ対処できるしの。」

えっへん、薄い胸を張る。多少罵倒しようとも揺らぎのないこの確固たる自信。
この辺りのやりとりはもう何十回もしていると思われる。

軽快な足取りで山道を登りながら言葉を紡ぐ。


「ふむ、ワシの目当てか。
 ワシは単純に見えて複雑。低俗に見えて高尚。
 単位なんぞ取ろうと思えばいくらでも取れようぞ。」

腕を組む。テストの点数は隣にいる人より大分悪い。


す、っと足を止めて後ろを歩く友人に振り向いて。

「美味いもんじゃ。」

食欲だった。

フランシス > 「落ち着いて聞いて欲しいが、身体が二倍に膨れあがったら大体は死ぬんじゃないか?」

山道を上がりながら極めて一般的な疑問を放る。
けれどもきっと、そうした疑問は山道を転がり落ちてどこかの穴に落ちるのだろう。

「ああ、そういえばこの山は怪物が出るとか出ないとかも聞いたな」
「頼もしい話だ。もし怪物が出たら頼もしい友に任せて私は避難させて頂こう」

フランシスの言葉に澱みは無く、日々似たようなやりとりを繰り返していることが察せられた。
軽口の合間に視線を左右に揺らすと、申し訳程度の山道が有難く思えるほどに、人跡を感じられるものではなかった。

「やればできる。と言いつつ筆記は私の方が上ではないか」
「ついでに言えばトランプも私に勝ったことが一度でもあったか?」

どことなく人を拒む山のように感じているところに軽佻浮薄な声が飛ぶ。
なればこそフランシスも同じような言葉を返し、次のヒカゲの言葉には危うく転びそうになった。

「食欲10割か貴様!?……まあ、それなら好都合だ。見つけた茸は是非毒見をしてみてくれ」
「香典にはイロをつけておいてやる」

千里 ヒカゲ > 「そうじゃった、お主か弱き生物じゃったわ。
 まあまあ、怪物だろうと歩くキノコじゃろうとワシに任せておけい。
 アドバイスを乞われた相手と山に登ってワシだけ降りたら、ワシ怪物判定受けかねんし。」

自分だけは必ず生き残れるという熱い確信。
ひゅ、ひゅ、ひゅ、と山道を登りながらシャドーボクシングもできる。ステップも踏める。


「筆記か。アレは問題が悪いのう。
 ワシ知識が多すぎて取り出すのに時間がかかるんじゃよなぁ。やー、もうちょっと頭が軽ければなんとかなったんじゃが。かーっ。」

「トランプものう、スピードならなんとかなるんじゃが。スピードはあれからやってくれんし。」

全力で出し合った結果、相手の手首をマッハパンチするという事故があってから対戦は了承してくれない。あれはいい勝負じゃった。


「数多の毒物がワシの息の根を止めんとしたが、ついぞワシの息の根を止めるようなものは現れんかった。
 いやまあ、それでもこの山に生えとるキノコは危ないかもしれんな。」

山のどこからか、キャオォォォ、なんて吠え声が聞こえてくる。
聞いたことのない声じゃのう、なんて、頬をぽりぽり。

フランシス > 「少なくとも其方よりは精神はか弱かろうな」
※意訳:お前の図太さには負ける。

「で、確かに伴って山を登って其方だけ降りたなら、学園側の調査が入りそうなものだ」
「風紀委員とか言ったか、この島全体の治安を司るというが……学徒のするものかね」

軽快な動作を刻むヒカゲの横で、フランシスの言葉尻は半ば独り言めいたものだった。

「スピードは私の命が加速するから禁止だ」
「ババ抜きもいかんぞ。お前は取られたくないカードを離さないパワープレイするからな」

結果タイムアップで引き分けとなったのは記憶に新しい。
忌々し気にヒカゲを見やり、山の何処から不気味な声がすると、視線は周囲を見るようにもなった。

「何の声だろうな……鳥ではなさそうだな、猿か?」

能天気に頬を掻く傍らに対しフランシスは慎重だ。
それは身体能力が劣るからこそでもあるのだろう。

「……む」

会話を続けながら歩いていたフランシスが足を止める。
山道が分岐していたからだ。

「ふむ、これは何方に行ったものかな……」
Yの字状に分かれた道の中央には、木製の古びた標識が設えてあるのだが、
古びているだけに何が記されているのか判然としない。

「片方がアタリで片方がハズレということもあるまいが……」
「アドバイザ―殿の意見は如何かな?」

標識の下に生えていた、黒地にピンク色の斑点がついた茸を拾い、マイク代わりに差し出しながら訪ねる。

千里 ヒカゲ > 「そうであろうそうであろう。ワシ身体だけではなくメンタルもダイヤモンドじゃからな。
 そうそう、単独で戦闘能力があると結構調べられるんじゃよ。
 その上で人を食うとか食わんとかいろいろ確認されて今に至っとるわけじゃ。
 わざわざ山まで来てお主食ってもなあ。ワシ人食わんし。

 まあ、よいんじゃないかの。この島にいる人間はこの島にいる人間にしか御せんじゃろ。
 お主も、少なくとも自分より強いか賢いかでもなければ従うタイプでもあるまい。」

かっかっか、と笑いながら足を進める緑の少女。

「あれは引っ張っとるのに気が付かんかったからのうー。ワシの勝ちじゃと思うんじゃけどなぁーー。か弱すぎるんじゃよなぁーーー。」

自分勝手である。基本的に普通のカードでは負ける。ポーカーフェイスと正反対であるし、頭脳勝負は1手先を読むのがせいぜいだ。
身体を動かしているときは先読みも流れるように美しいのだけれども。


「まあワシに任せておけい。
 ………看板の文字が古すぎるが、ワシの目にかかれば………。
 右は………『激ヤバ超スゴ鬼エグい マジ最高』って書いてあるの。
 左は行き止まりと書いてあるか。

 この書き方だと右がよさそうじゃな、右いこう、右!」

右の道は、どんよりと暗く湿り気を帯びて、探索者たちを待ち受けている。

右の道を歩きますか?

 → はい
   いいえ

フランシス > 島に現れたもの。に対する対処の一端を聞き肩を竦める。
封印が解けた当初、フランシスも危険物のような取り扱いを受けたからだ。

「私が従うのは私だけさ。今のところはだがね」

豪快に笑う少女と、静かに笑う少女。
カードゲームの行方に対しても、動と静のような有様なことは明らかだった。

「…………で、その内容で右行くか!?」
「いやまあ、確かに行き止まりに行った所で意味はないが……」

それから
油の切れたブリキ細工のように軋んだ動きで右側の道を見る。

「……いや、いいだろう。行ってやろうではないか」
「高性能な私が鬼程度恐れるとでも思ったか!」

大方ヒカゲの悪戯だろうと思い、勇んで右側の道を行く。

「取り立てて不穏な気配は感じない……が」

右の道を進み、暫くすると少しばかり開けた空間に出た。
背の高い木々が頭上を覆っているため、外観からは把握できないような、そんな場所だ。
視線を巡らせると、朽ちた鳥居の残骸と思しき、色褪せた朱塗りの物体が散らばっている。

「折角だ、少し周囲を探索してみるかね?」

千里 ヒカゲ > 「ワシに従うがよかろう。ワシはええぞー、能力はバチクソに高いからの。
 頭脳も今はまだ寝起きじゃからな。本気になればトンデモ頭脳じゃぞ。」

親指でビッ、と自分を指しながら。

「ふむ、よかろう。見たことのない植物も多い。
 ここでなら特別なものも見つかるじゃろうて。
 あまり離れなければそれぞれで探索もできるじゃろうし………どうじゃ。
 どっちが面白いものを見つけられるか勝負といこう。」

「負けたものは名誉を失い、帰り道に二つ籠を前後につける重荷を背負う。
 どうじゃ。怖いじゃろ。」

クックック、と肩を揺らして笑うアドバイザー(元)。

フランシス > 「古代植物の感覚で寝起きを換算すると、目覚める頃には人類が滅亡しているんじゃないか?」

得意気なヒカゲに冷ややかな言葉が返る中、フランシスの足は既に鳥居の残骸に向いている。
鳥居は、人為的に破壊されたようには見えず、自然に朽ちたもののように見えた。

「勝負は乗った。いいだろう、其方こそ忘れるなよ?」

山中で不敵に笑い合う少女が二人。
知らないものが見たら、それだけで十分奇怪かもしれない光景もそこそこに、
フランシスは踵を返して周囲の探索に乗り出す。

「…………」

なお、彼女は楽観主義者ではない。
一目で判るような不可思議なものなど、早々に見つかる筈がないことを知っている。
だから捜索を始めて早々の内に、全長20cm程の足の生えた茸。なんてものを見つけたら言葉を失うのも当然なのだ。

「…………」

茸を拾い上げてみる。
茸が脚をジタバタとさせている。
茸を眺めてみる。
どうやら手や顔のようなものはないようだ。
色や形はエリンギに似ているようだった。

フランシスは無言で足の生えた茸を背負い籠に放り、直ぐにまた同じような茸を見つけては籠に放り込んだ。

千里 ヒカゲ > (1:普通のまいたけ 2:パッケージされたまいたけ 3:からみついてくるしめじ 4:かみついてくるえりんぎ 5:頭に生えるタイプのキノコ 6:青白く輝くキノコ)
千里 ヒカゲ > [1d6→4=4]
千里 ヒカゲ > 「ぐわああああああっ!!!」

エリンギにがぶりと頭に噛みつかれて悶絶する緑一色。
絶叫が響き渡る。

「クソがっ、菌類ごときがワシに歯向かうなどいい度胸じゃ!
 ワシは由緒正しきシダ植物! 消え失せろ菌類!」

右腕で引っぺがして空中に放り投げれば、左手を引いて構える。
その左拳が、キィィィ、っと高音を発しながら輝いていく。

彼女の能力の一つ。太陽の力。
植物らしくない、光と熱を操る彼女の左腕は眩い輝きを放って周囲を照らし出し。

「波ァァアアアアアッ!!!」

青垣山の中腹から、空に向かって光のラインが走っていく。
エネルギーの奔流は空へと放たれれば、そこにあったはずのエリンギは燃えカスすら残らない。


噛みつきえりんぎを倒した!

7の経験値を獲得!

フランシス > 歩き茸が一つ
歩き茸が二つ。
追加で更に数匹?数本?の茸を背負い籠に放り込む。
さて、確かに噂通りの不可思議な茸には相違無いが、数が多いとなると希少性は薄いのではないか?
などと、フランシスは考えていた。

「だがまあ、少なくとも何も釣れずのボウズは避けられたから良しとするか……」

ヒカゲが何も見つけられなければ勝ちは確定なのだから、それはそれで良いかと独りほくそ笑む。

「む……?」

ややあって先程も聞こえた何かの遠吠え……ではなくて、ヒカゲの悲鳴が聞こえた。
振り返ると彼女がホラー映画の如くエリンギにかぶりつかれ、あわや絶対絶命の危機のように見え、

「いかん……!」

慌てて駆け寄ろうとするのだが、次には鳩が豆鉄砲を食ったような顔をすることになった。
頭上を覆う木々を切り裂くような閃光。真昼の花火のような鮮烈な輝きを見たならば、無理もないことだ。

「いやいやいや、それは不味いんじゃないか!?」

駆け寄るフランシスの様子は珍しく慌てている。
無理もない、地対空レーザーさながらの光線をぶっ放したとなれば、それを管理側が確認しない筈はないからだ。

「もうちょっと物理でなんとかしたまえよ物理で!?」

口角泡を飛ばして説教じみたツッコミを張り上げ、それらに同調するように何処からか謎の生物の遠吠えがした。
だが、それは数度繰り返された後に悲鳴のようなものに変わり、そして途絶えた。

「…………何故だか嫌な予感がするな……」

遠吠えのした方から何かが近づいて来る。
それは藪をかき分け、雄大な所作で二人の前に姿を現した。

全長2mはあろうかという巨体だった。頂く"かさ"は紫地に黄色い斑点が陽光を受けてぎらぎらと輝き、
不自然なほど逞しい手足を持ち、人の頭など容易く嚙み砕くであろう、鋭い歯牙を備えた――茸だった。

千里 ヒカゲ > 「いやそこはワシの心配じゃろ!?」

珍しくツッコミをしながら、いちち、と頭を撫でる。血は出ていなかった。

「物理でなんとかのう。そりゃまあ、ワシならそれくらいはできるが。
 突然上から振ってきて噛みつかれてはビームも出るじゃろ。それは。」

唇を尖らせながら不満げに相手をジト目で見やる。
くそっ、こいつはやられておらんのか。


「…………む、こいつはなかなか。立派な。」

ずしぃぃん、っと地面を揺らす巨体を前に、小柄な少女二人が身を寄せ合う図。
絵柄的には大ピンチである。

「まあ良い、ワシが物理でなんとかしてくれるわ。
 ……とぅっ!!」

まずは緑一色がとびかかる。
コンクリートを砕くキックが不意打ち気味に突き刺さり、貫手が相手の身体を引き裂く!

小柄ながらも弾丸のように相手の身体を抉っていき……


「ふぎゅぇっ!?」

上から飛来してきた茸怪人の拳が少女を叩き潰した。
とんでもない声をあげて緑が地面にめり込む。ナチュラル。


ぎろり、と、茸怪人がもう一人の方を見る。
見ているのかは分からないけれど、とりあえず前面は向けて、のしり、と近づいてくる。

フランシス > 「いやあ、お前なら大丈夫かと思って」

フランシスは心からそう思っていた。
だから、巨大な歩き茸が現れても同じように思っていた。

ヒカゲが飛び掛かった茸が、噂に語られた不可思議な茸かどうかは別として、
少なくとも目の前の茸は不可思議に相違無く、
そして青垣山に現れるとされた怪異に相応しい姿を備えていた。

「茸狩りを襲うとなれば、さながら茸狩り狩りとでも呼称するべきか……」

その大地を踏みしめるかのような緩慢な足取りに、ヒカゲの体術が浴びせられる中で、
フランシスは悠長な事を考えていたのだが、彼女を攻撃を意に介さない茸が、一撃でヒカゲを叩きのめすと顔色が変わる。

「…………どうやら見た目に相応しいパワー重視の闘士(ファイター)か……」

背負い籠を地面に置く。同時に茸が腕を上げ構えを取った。
両者の距離は徐々に近づいて行き、そして──

「くらえい!」

フランシスが叫び、手を向けるのを契機として、茸の頭上に巨大な金盥が現れた。
これなるはフランシス・アーミティッジが獲得した物質具現化の力。砂上の楼閣(ラフメイカー)である。

──だが

「なんと!?」

金盥が直撃する瞬間。茸は鋭いアッパーを放ち、これを見事に粉砕せしめることには感嘆の声とてあがるのだ。

「おいヒカゲ!こやつ中々知性があるぞ!」

構えを戻した茸が鋭いステップインから放つ右ストレートを、異能を力で具現化したシールドで防ぎながら声が飛ぶ。

千里 ヒカゲ > 「じゃからワシの心配せえって!?」

めり込んだ地面から立ち上がる緑一色。渾身のツッコミ。
くそっ、身体が小さい分出力が足りんかったか、などとぼやきながら立ち上がれば、目の前で攻撃をガードする小さな姿が目に入る。

「ワシを舐めおって……! 許さん!
 おいフラン、上手いこと避けるんじゃ!

 このワシに本気を出させよったな!!」


\テテン!/ いちにぃさーん!

\テテン!/ にぃにぃさーん!

響き渡る千里ヒカゲのテーマソング。
許諾は得ていない。許せ。

太陽のかがやきを胸に秘め、ワシの身体が燃えている。
許さん、許さんぞ!!


「天つ日の輝きを拝借してぇぇっ!!」

輝く拳、それは先ほどのレーザーよりも強いエネルギーとなる。
ただホースから放たれる水ではない、圧縮したエネルギーの塊。

「必殺! サン・フラァーーーッシュ!!!」

それはもはや小さな太陽。それが仲間と至近距離にいるであろうキノコにぶん投げられる。
すまないフラン。本当にすまない。

フランシス > 繰り出されるパンチをシールドで防ぎ、
意外と俊敏な動作から繰り出されるキックを翻して躱す。
茸の攻撃が空を切る度に鳴る音は、一撃でフランシスを破壊するだろう危険なものだ。
事実、彼女の異能で具現化された物体は、数秒で消えてしまうにも関わらず、それよりも早く茸に破壊されている。

「いや、これは、ちょっと、参ったな!」

凌げていると言えば聞こえは良いが、実態は自転車操業も良い所だ。
防ぐことはできるが攻勢に転じることもできない。
合間に飛ぶヒカゲの渾身のツッコミに応じる余裕が無いことは明白だった。

「何、何か言ったか!?」

異能の連続使用は集中力を要する。
具現化された大型のタワーシールドを茸の拳が貫いたところで身を翻し、
視線を声に向けると──

そこにあったのは光り輝くヒカゲの姿だった。

「このバカタレー!!!!!!」

フランシスの絶叫と共に放たれる高熱源体。
茸は避けられないと察知したのか両腕を広げて輝きを受け止め、圧し潰さんとする。
だがそれは叶わない。怪異にして奇怪、悍ましきこと甚だしき断末魔を上げ、
怪奇なる巨大茸は燃え焦げて地に倒れ伏した。

「…………」

そして、少し遠くの藪にて、前後逆さまの状態で両足を突き出してもがくフランシスの姿があった。
咄嗟にバネを具現化して自分を跳ばしたのだ。

千里 ヒカゲ > 「すまん、大丈夫かフラン!
 あの一瞬で回避するとは流石じゃのう!
 一緒に焼いてしもうたかと思ったわ!」

慌てた様子で駆け寄ってくる友人の声。
ぱたぱたぱた、っと足音が近くで止まる。

千里 ヒカゲ > \パシャリ/
千里 ヒカゲ > 「今すぐ助けるからじっとしておるんじゃぞ。
 足を掴んで引っこ抜くからの!」

せっせとかいがいしく助けるために働いて、その足首を掴んで引っ張ってくる少女。

「いやあ、これはワシの負けかのう。荷物二つを持って降りねばならんかぁー。」

わっはっは、とごまかすように笑う少女。

フランシス > 服が微妙に引っ掛かって抜け出せない所を救助され、
フランシスはやれやれと着衣の乱れを直して溜息を吐く。

「まったく、私でなければ丸焦げになるところだったぞ」
「ともあれ助かったがな。あれほどの大火力を魔術でなしに行使できるといのも恐ろしい話だが」
「とりあえず、こちらの成果は小さな歩き茸が数匹で……さて、あの巨大な茸の燃えがらをどう採点するかだな?」

それから、巨大茸の燃えがらを指さし、次にはヒカゲを指さす。

「ところで、救助の前に何か余計な音が聞こえた気がするのだがね……?」

そして瞳を細めて猫のように笑った。

千里 ヒカゲ > 「流石にあの燃えがらを持ち帰るわけにもいかんし、流石に白旗じゃよ。
 ………………。」

相手の指先が自分の方に向けば、つつつつ………と、同じくらいの速度で視線がそれていく。

「いやなに、あの燃えがらについて資料を集めておこうかなと思っただけであっての。
 あまりにも面白くてついつい、とか、そういうことではない。

 うむ。ぷふっ……」

犬神家フランを思い出して思わず吹き出す。SSRじゃろあんなん。

フランシス > 吹き出すヒカゲの上部に小さな金盥が具現化され、
それはそれは良い音を奏でるのは間もなくのことであった。

ご案内:「青垣山」からフランシスさんが去りました。
ご案内:「青垣山」から千里 ヒカゲさんが去りました。