2025/02/22 のログ
■神樹椎苗 >
「「あ~――いや、お前はわるくねーですから、気を落とさねーでいいです。
これはもう、しぃの予測が不足してましたね。
そりゃあ、バックアップがあれば、新しく作るでしょうね――はあ」」
二人の複製は、額を押さえて全く同じリアクションをする。
そう、椎苗は『複製』される事による、疑似的な不死性である。
大本である神木が残っていれば、理論上、無限に複製をつくる事が出来るのだ。
「「――で、この場合消えるのは。
不具合が起きた方、と相場は決まってますね」」
そして、縁を切った方の複製は、枯れるように塵に還ってしまう。
むぅ、と残った複製は、眉根を寄せるしかない。
「幸い、記憶の途切れもなければ、感じられる気配も感覚的なモノにも、不具合はありませんね。
――一応、確認ですが」
難しい顔をしたまま、へたり込んだ後輩に手を差し出した。
「お前の剣技で、『縁』を遡って『神』を斬る事は出来ますか?」
そんな、とんでもない無茶を言い出した。
要するに、どこにあるかもわからない『神木』を、『縁』を頼りに遠隔で斬れるか、と訊ねているのだ。
■緋月 >
「ああ……。」
縁を切った方――片方の花の少女が塵になって消えていく様を、着物の少女は申し訳なさそうに眺める。
そうして、今度は。
「……神殺し、ですか。」
差し出された手を前に、へたり込みながらそう口にする。
少しの思考の後、着物の少女は改めて言葉を紡ぐ。
「――先程、縁を切った時。
「神」と云われる木から繋がる「縁」を相手にしたので、「神を斬る」技を練り込んで斬りに掛かりました。
縁を切る事に成功はしたので……恐らくですが、本体にも通ると思います。
斬った結果、神木が枯死するのか、それとも「神性」を奪われてただの木になるのか…そこまでは分かりません。」
誤魔化しなしに、そう告げる。
「縁」を斬る事は叶った。ならば――本体を「斬る」事も、不可能ではない筈だろう。
「……縁を遡るとなれば、また違った斬り方で臨まないといけません。
今使える技で……理屈としては、「出来る」と思います。」
そう答えながら、そっと差し出された手に己の手を重ねる。
「――今度は、本当に何が起こるか、分かりません。
それでも――「斬れ」と言うなら、」
ぐ、と、今一度、不屈の眼を見せる。
「椎苗さんの望みの通り。斬ってみせます。」
■神樹椎苗 >
「――『出来る』」
その言葉が聞けると、満足そうに笑って、手を引いた。
「ほんとに、いい瞳になりましたね、後輩。
ただ、今はその『出来る』という言葉で十分ですよ」
理屈として『可能』であるのなら、今はそれでよかった。
これは危急の問題ではないのだ。
後輩の剣士が、物理現象でなく、概念を斬る為のトレーニングが目的なのである。
「さて――それだけの気合があれば、まだまだやれますね?
今日の本題は、お前の技のトレーニングです。
あのクソ樹木との縁なら斬りたい放題ですよ」
くすくす笑い、背伸びをして後輩の頭を撫でる。
「疲れても癒してやりますし、何度でも練習できます。
――こんな機会、しぃ相手以外じゃ、滅多にであえねーですよ?」
そう言って、視線で『どうする?』と訊ねた。
■緋月 >
「――――――。」
手を引かれ、ゆるりと着物の少女は立ち上がる。
そうして、続く「先輩」の言葉に二度、三度と目をしばたかせ。
「………得難い機会、ありがとうございます!」
一度。深々と一礼。
同時に、右の瞳も青白い炎を少しだけ上げ、まるで謝意を伝えるかのように軽く揺らめく。
「では、お言葉に甘えて……遠慮なく、行かせて頂きます――!」
呼吸を整えると共に、再び七色の光の蓮が鈴のような音と共に開花する。
そして…一刀、また一刀、更に一刀。
「縁」を斬る度に、掛かる時間は少しずつ、だが確実に短くなっていき――
次第に、「無窮」の斬月の力を借りる事も少なくなっていく。
それはつまり、「神」に等しいモノとの「縁」を斬る斬撃が、ひとつの「技」として形を得ていく事に他ならず。
「無窮」であるが故に形なき異能は、其処から「形ある技」さえも生み出す事が出来る。
最も、それはこんな常識外の環境だからこそ叶うものであるのだが。
「――――もう一太刀、お願いします!!」
そんな調子で、ひどく生き生きとした…縁を斬る度に一時花の少女が二人に増え、
斬られた方は塵となる光景を除けば、充実した稽古の時間は過ぎていく。
互いの気が済むまで刀を振るい終えれば、最後に少しだけ余計に買っておいた三色団子を
二人で軽く歓談しながら食べる事になるのだろうか――。
■神樹椎苗 >
「――いい返事です」
それから、日が暮れるまで貴重な時間は瞬く間に過ぎて行っただろう。
後輩の生き生きとした姿に、先輩は楽しそうな笑みを浮かべながら応える。
戯れというには激しすぎる時間だったが、後輩の助けとなり糧となる、有意義な時間にはなっただろう。
二人が境内を去ると、一面に咲いていた花々は、その背中を見送るように花弁を散らして。
後に残るのは、荒れた境内の姿だけだった。
ご案内:「青垣山 廃神社」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「青垣山 廃神社」から緋月さんが去りました。