2025/03/14 のログ
ご案内:「青垣山 廃神社」に銀の狼さんが現れました。
銀の狼 >  
夜の帳が落ちた青垣山。
春は近いが未だ少し肌寒く感じられる夜の事。

空に雲はなく、星が満ちる空がよく見える。
その中に、一際目立つ光を放つ月の姿も。
姿を隠した太陽に代わり、その形を見せる月は――真円と言って差支えの無い形を見せている。
空気が冷える為か、丸い月がよく見える夜。

既に祀られている神が居るのかいないのか、分からなくなって久しい、荒れた廃神社。
その境内を、ゆっくりと進む影がある。

人ではない。四つの足で静かに歩みを進めている。
人ではない。銀の毛並みが、空気に冴える。
人ではない。――人であるなら、山に住まう動物達が恐れて姿や気配を必要以上に隠しはしない。

足音もなく、しかし重い気配を見せながら境内を歩むのは、狼。
銀色の毛並みで覆われた、全長が3mはあろうかという巨大な狼。
もしも人が目にしたら、怪異か何かだと疑う所だろう。
3mもの巨大な狼など、考えられない。

そんな事など気にする様子もなく、銀の巨狼は静かに荒れた境内を一回りすると、
一休みと言わんばかりに開けた場所に陣取って身体を丸め、座り込んだ。

ご案内:「青垣山 廃神社」に都姫うずめさんが現れました。
都姫うずめ > 風紀委員会の活動に休みはない。 それは生活安全課も同じだった。
夜ご飯の炊き出しの片付けを終えたら、夜ちょっと遅めだった。
部屋に帰って今から料理というのも気が引けるというものだ。

そこで訪れたのは廃神社である。ここはお気に入りの場所のひとつだ。
のんびりできるし、ギターの練習もできる。 その場所のはずなのだが。

「うお……でっっ……でっか…。」
境内に、先客がいた。 でっかい犬が陣取って休んでいたのである。
見ただけでもだいぶデカい。 でかでかだ。
「…北極からいらした方とか?」
”寒い所にいる動物ほど、体温保存の関係でデカくなる”……
教科書で読んだベルグマンの法則を思い出して考える。
でも北極に犬的な動物はいないはずだし。 そも犬じゃない可能性が高い。

少し考える。 眠っているなら邪魔するのも風情がない話だし、
万が一寝起きの機嫌が悪かったりすると分が悪い。
そっと下がろうとした時に、手に持っていたビニール袋がその辺の枝に当たり、
ガサガサと目立つ音を立てた。

「あっ」
思わずでかでか動物の方を見る。

銀の狼 >  
全くの余談であるが、狼の聴力は強い。
既に絶滅しているとされるニホンオオカミについてはさて置き、ヨーロッパや北米に住まう
大陸狼の類の聴力は、森林内部であっても6マイル…凡そ9.6km先の音を捉える事が出来るという。
これが遮るものの少ない草原地帯となった場合は10マイル…凡そ16km先の音まで捉えられるとされる。

しかも、狼は犬とは明確に異なる。
その最たるものが「警戒心」である。
人間に飼われる…共存によって種の持続を選んだ犬は、耳がたれている種も珍しくない。
それは必然的に、音を捉える能力が低くなる事を意味する。
危機意識の低下、あるいは愛玩動物としての進化の結果と言える形だが、それが犬にとっての生存戦略。

狼は違う。
その耳は常に立っており、近づく音等を確実に捉えにかかる。
警戒心の強さ。それが狼の生存戦略である。

例えサイズが異なろうが――「狼」である以上、それが銀の巨獣に当てはまらぬ訳もなく。

ぴくり。
銀の狼の耳が小さく動く。
同時に、閉じていた瞼が上がり、ぎょろりと目が周囲を向く。

のそり、と体を小さく起こし、同時に喉を鳴らしながら、音のした方向に的確に視線を向ける。
――即座に飛び掛からないという点では、敵対心かそれに準ずるものはないと見て良いだろう。
それがある意味救いであったかもしれない。

だが、確実に警戒はしていると分かる。
このまま背を向け、逃げる事が許されるか…と問われれば、返答に詰まる位には。

都姫うずめ > 「うお……」
立ち上がるとさらにデカかった。
ゾウさんを動物園でみたことがあるが、それぐらいデカい。

「うーーーん……。」
相手の態度は敵対的ではないのだろう。
おそらく、自分と同じように『相手は何者か』を考えているのではないか。
だとすれば、攻撃の意図はないことを示すのが一番だ。

それなら…。 ビニール袋の中をガサガサとやる。
取り出したのは持ち運び用の器に収まっていた、半餃子丼と叉焼だった。
今日の炊き出しは水餃子と叉焼飯だったのだ。 そのあまりである。

「…。」
メニューと、眼の前のでかでか動物を交互に見る。
餃子はニラとか入ってるから、たぶんあんまり良くないはず。
ぱかっと開いたフタに叉焼を数切れ乗せて、自分からちょっと離れた…
でかでか動物に近い場所にそっと置いて下がった。

「あげるから怒らないでよ。 うるさくしないからさ。」
炊き出しと生活安全で学んだことである。
同じ釜の飯を食べたら、とりあえずいきなり喧嘩にはならない。
食べて、と手でジェスチャーをしてから、自分はその辺に腰掛ける。
今日のお夕飯は半餃子丼と叉焼飯(肉少なめ)だ。

銀の狼 >  
『………………。』

声を上げた人影と、出されたモノに、首を動かさぬまま視線だけを行き来させる銀の狼。
心なしか、ぴりりとした、警戒感といえばいいのであろう雰囲気が少しばかり小さくなる。

人影…制服姿の女子に視線を向ける。
大雑把に見て、身長は銀の狼の半分程。
高校生として見たら、女子の平均よりは少々低い、と言う所だろうか。

すん、と小さく鼻が鳴る。
特徴的な刺激のある香り。
大陸…中華料理系の香りだ。
先程の言葉からして、恐らくはこれで落ち着いてくれないか、と言う所、なのかも知れない。

『………。』

――少なくとも、目の前の女生徒…制服を着ているので女生徒だろう…は、積極的に敵対しようとしたり、
あるいは逃げようというつもりはないらしい。
恐らく、何かしらの用事があってこんな人気のない、しかも夜中の廃神社を訪れたのだろう。

人と獣は、相容れないものだ。それは、ニホンオオカミの絶滅の歴史が既に物語っている。
それでも、女生徒は恐れて逃げ出す事も攻撃を仕掛ける事もしなかった。
「本来」、野生生物に対して餌付けを行う事はあまりよろしくないが――――

『――――――』

はぐ、と、小さく音を立て、銀の巨狼は器用に叉焼を一切れ咥え上げ、軽く咀嚼して飲み込む。

少なくとも、この女生徒から「忌わしい臭い」はしなかった。
それならば目を瞑っておく位は構わないだろう。

――実際に銀の狼がどう考えたかは分からないが。
兎も角、叉焼を一切れ口にした銀の狼は、身体を伏せてまた丸くなった。
その姿から、刺すような警戒感はもう感じられない。

都姫うずめ > 「いいね。 それわたしが作ったやつなんだよ。」
叉焼を器用に1枚咥えて食べる様子を眺める。
食べっぷりに満足げな表情を浮かべてから、自分も夕ご飯に取り掛かる。
半餃子……餃子を半量にしたという意味ではなく、デミ餃子という意味だ。
すなわち餃子の余った具材で丼を作ったものである。
おはしを使って、丼をかきこむ。 部屋で食べてる時と同じ、飾らない仕草だった。

「デカケモ氏は、ここが気に入ってるんだ。 わたしもだよ。
 叉焼も好きだし、親近感が湧くね。」
相手が自分の言葉をわかってくれているかはわからないけれど、
なんとなく、同じ場所が好きで同じものを食べている…それだけで親近感がある。
半餃子丼を食べ終えた後は叉焼飯である。
叉焼はでか動物に分けたから少ないけど、タレがあるので十分食べられる。

「…」
一人と一匹の静かな食事の時間。
響くのはご飯を食べる音、獣の呼吸音、それから虫の声。
奇妙で静かな音が辺りに満ちる中、満足げな表情でお箸を止めた。

「ごちそうさま。」
愛護にペットボトルのお茶をのみ、しっかりと両手を合わせて一礼。
でかでか動物にも一礼。 彼女?彼?の代わりのご挨拶だ。
お粗末様でした兼ごちそうさま。

銀の狼 >  
デカケモ。
呼ばれ方には思う所があるのか、小さく耳が動くが…まあ詳しくない人には
狼と犬の違いは分かり辛い…というか分からないだろうから仕方のない事ではあろう。
狼を飼育している動物園というのも、意外と数が多くなかったりするから是非も無い事。

そんな合間に、銀の狼は残った叉焼をやはり器用に咥え、口に運んでは咀嚼し、飲み込んでいる。
あっという間、と言う程の速度ではないが、蓋の上に載っていた叉焼は綺麗に平らげられていた。

ごちそうさまの声がすれば、銀の狼も小さく喉を鳴らす。
またも丸まって地面に伏せ、ぱたりと尻尾を動かして地面を叩く。

狼は犬とは異なり、人間に向かって尾を振る事はない。
人に飼われ、共存する犬が人に尾を振るのは、その動作を人が好むから行っているのだという学説がある。

少なくとも、食事を終えた少女に向けて振ったものではないのだろう。
体格からして、叉焼数切れで空腹が満たされた…とも思い難い。
恐らくは、単純に「美味い物を食べて少し満足した」程度の感覚、なのだろうか。

それを知るのは銀の狼だけである。
女生徒が何を思ってどう解釈するか、それは彼女の自由であり、誰にもそれを否定は出来ない。

都姫うずめ > 「おお、普通に食べてくれてる…。 ありがとうね。」
デカケモ氏にお礼を述べながら、叉焼を乗せていた器を回収。
きちんとあとで捨てるから安心だ。
ここが氏の安寧スポットなら、綺麗にするのは尚更の道理がある。

ちょっと尻尾を動かしている様子を見ると、楽しげに目を細めた。
警戒や嫌なことがあるときに尻尾を振ったりはしないだろうし、
たぶん……叉焼が口にあったのだろう。 きちんと完食してくれたわけだし。

弁当ガラをきちんとビニール袋にしまってから、石畳の上に座り直す。
最初に見た時のように丸まって大人しくする氏を見て、穏やかな調子で声をかけた。

「ここが好きなんだね。 また今度遊びにくるから、そのときはまた一緒にご飯食べよう。」
自分もここが好きだ。 演奏にも使えるし、こうして一人でゆったりするのにも良い。
そして…何をするでもなく、同じ場に静かにいる仲間が増えたことも。

しばらくのんびりと過ごしていたところで、はっと我に返った。
「あ、そうだ。 名前、都姫うずめ。 デカケモ氏は……。
 名前があるのかなあ。 聞ければいいんだけど、わかんないもんね。
 まあデカケモ氏(仮称)ってことでひとつ、よろしくね。」
相手にきちんと名乗ってから、軽く手を振って見せる。
ご飯も一緒に食べたし、名前も伝えたし…お知り合いにはなれた。うん。

ご案内:「青垣山 廃神社」から銀の狼さんが去りました。
ご案内:「青垣山 廃神社」に銀の狼さんが現れました。