2026/02/22 のログ
ご案内:「青垣山」に御雷 天華さんが現れました。
■御雷 天華 >
未開拓地区の小高い連山、その山中。
獣道を歩み進め、やがて木々が疎らになる。
視界が開け、少しだけ平らな山林にて。
蒼く髪と瞳を染めた少女が一人。
「……気配は幾つかありますが、さて」
彼女は瞳を閉じ、何かを探る様にその場で静かに佇む。
ご案内:「青垣山」に御雷 穂乃さんが現れました。
■御雷 穂乃 > 「……97……98……99……100……ッ」
ふと少女に聞こえてきたのは幼気な少女の声一つ。
声がした方を覗き込んで見れば木刀を一心不乱に振る小柄な体躯が見えるだろう。
100度ほど振った木刀を一度下ろして、ふぅー……と吐息を漏らし。
頬を伝う汗を拭ってから、また木刀を構え直し。
「……あと、百回……? もっと……?」
うぅーん、と悩む声一つ。
鍛錬に悩み続ける少女が一人。
■御雷 天華 >
「……む」
そんな折、聞こえてきた声に眼を開く。
蒼の瞳を其方へ向けて、その声の主を視界へ収める。
「あれは……」
其処に居たのは木刀を揮う、覚えのある顔。
分家とはいえ同じ御雷、そして同じ身の上の少女の姿。
「貴女も此方へ来ていたのですね、穂乃。
人のことは言えませんが、このような場で修業ですか」
■御雷 穂乃 > 「ぴぃ……ッ!!」
突然の声、人気のないところを選んだつもりだったのに。
なんで、どうして、とそんな声が小鳥のような悲鳴になった。
「あ……あ……天華ねえ……あ、いえ……天華様、失礼しました……」
自分とは違い、正当な次代継承者の名を欲しいがままにしている姉のような人。
なので、呼び方を言い直した。
「……え、えへへ……ほのは、まだまだ未熟、ですから……」
修行ですか、と言われて、木刀を背中に隠すようにしてしまい。
知られぬようにしていた努力を見られるのは、少し恥ずかしいのである。
■御雷 天華 >
悲鳴を聞いて苦笑しながら、彼女の元へと歩みを進める。
「大人たちが居ない場です。
無理に敬称を付ける必要はありませんよ」
学生同士、四月からは立場上は同級生になるのである。
変に様付けされる方が、きっと周りからは変に見えてしまうだろうから、と。
「……ふむ」
彼女の背後、隠すようにしていた木刀をじっと見つめて。
謙遜し、照れたように振舞う少女の傍で立ち止まる。
「ならばこれも何かの縁でしょう。
共に鍛錬でも致しましょうか?」
■御雷 穂乃 > 「……う、うん……天華、ねえ様……」
そう言われれば自分の呼びやすいように呼んで。
そんな大人たちに散々言われているのはお前とは立場が違うと言う事を何度も何度も教え込まれている。
それこそ暴行混じり恫喝混じりのそれである。
そうした事情を眼の前の姉貴分は知っている。
「……天華ねえ様と鍛錬……?」
きょとん、と首を傾げて。
木刀は背中に隠したまま、うぅん、と首を傾げる。
「……でも、ほのはきっと、天華ねえ様の、鍛錬にはならないと思います……」
いまだ修行中の身。
しかも彼女の能力は一度使えば魔性に落ちかねない危うさを孕んでもいる。
とてもじゃないが、姉の鍛錬についていけるかは不安そうな様子で。
要するにこの娘の自認は自分はくそ雑魚なのである。
■御雷 天華 >
彼女の立場を知らぬわけではない。
その身に宿す神格が如何なものであるのかも。
八雷神、伊邪那美命の身より産まれた黄泉の眷属。
那岐流にとって、不倶戴天の相手と言える神格の一柱。
故に彼女は那岐流の一員である以上に監視対象。
一部のモノからは封じるべき魔として観られている。
「(……道を違えば堕ちかねないのは、変わりありませんのにね)」
その事を、少女は実に歯痒くも思っている。
だが、それを口にして、彼女の立場が揺らぐのは好ましくない。
だから彼女はその事を口にしない。
ただ静かに、彼女の鍛錬に付き合う事にする。
「まさか、実力だけで言えば貴女は並み以上。
足りぬのは別の部分だと思っております故」
■御雷 穂乃 > 「……?」
何も言わぬ姉貴分に小首を傾げてから。
封じるべき魔性を秘めた小柄な少女は不思議そうにした。
その後、出てきた返答には、うぅん、と唸った。
「ほのは……まだまだ弱い、ですし……。
それにほのは……その、ほのかに引っ張られちゃうです、し……」
彼女がほのかと呼ぶもの。
それは火雷を顕現させた際に彼女が高圧的で、能動的な存在に変貌させる。
いわば二重人格とも言えるようなもので、少女はそれを仄火(ほのか)と呼ぶ。
仄かに灯る僅かな残り火……火雷神の残滓。
「あ、いえ……別に、天華ねえ様との鍛錬が嫌なわけじゃない、んですけど……。
……でも、何をするのです……? 流石に天華ねえ様との手合わせは……こっちが及ばない、です……」
■御雷 天華 >
「……えぇ、それこそが貴女の足りぬモノ。
御雷の業に於いて、ともすれば最も重要なもの」
即ち、自らの力の制御。
力を扱い、力に呑まれる。
そうならぬように力を扱う事こそが御雷の要。
神も魔性も、本質的な差異はない。
ただその向いたベクトルが違うだけの事。
身に宿す分霊の方向性が魔であっても、その舵を取るのは己なのだ。
「ですので、貴女にとって必要な鍛錬を行います。
……つまりは慣れと、精神鍛錬ですね」
■御雷 穂乃 > 「……足りないのは、わかってるです、けど……」
少女が足りないものはわかっている。
だからこうして一所懸命に素振りなどにも手を出しているし、道場などでも修練をしている。
言ってはなんだが、彼女は幼い身柄でありながらもう並みの道場が相手では務まらなくなっているのだ。
それに気づいていないのは、自分自身だけ。
どこまでも精神がくそ雑魚メンタルなのである。
「……せいしんたんれん……と……な、れ……?」
精神鍛錬。
どうやって鍛えるんだろう。心って言うものは。
慣れって、なんだろう。
不思議そうに首をまた傾げてみせた。
■御雷 天華 >
「普段、力をどれくらいの頻度で使っていますか?」
それは容易に修行できるものではない。
個人差も大きく、普通の鍛錬と違って成果は目に映らない。
だが、神格は違えども同じ身の上であるからこそ出来る指導は幾らかある。
自らが扱う力を如何に己のモノとするのかを、天華は身をもって学んでいる。
「つまるところ、呑まれてしまうのは手綱を握れていないという事。
その手綱を握る為には、暴れ馬を躾ける為にはどうすればいいと思いますか?」
故にまずは必要な前提を確認するために問う。
彼女はまず、どこまで己のそれを把握しているのだろうかと。
■御雷 穂乃 > 「……引っ張られるの……怖いですし……。
あと、力を使うと、いっぱい、怒られるです、から……」
最も忌み嫌われるであろう伊邪那美命から生まれし8つの雷。
魔性の中でも六獄に最も近しいもの。
それ故に、彼女の家の中の立場はかなり、宜しくない。
そして、そういう事情ゆえに彼女の力の解放は、非常に宜しくない視線で見られている。
力を使えば、それは時に暴力を伴って彼女に分からされるのだ。
故に彼女は力の解放を好まない。
だからその頻度で言えば……。
「……とっても、少ないです……」
結論はこうなってしまう。
逆説的に言えば彼女は力なく、御雷家の務めを果たせる程度には実力があると言う事の証左にはなるのだが。
「えっと……手綱を……握り続ける……?」
自身の中の暴れ馬を鎮めるには、手綱を握り続けなければならない。
それはつまり解放の頻度をあげ、そして、とても、とても、怖いものと何度も相見えなければならない。
それは……それは、とても、とても、怖いことだ。
■御雷 天華 >
「……やはり、ですか」
彼女の立場、そして周囲からの扱いを思えばそれは自ずと推測できる事。
その実態がどうであるかは定かでなかったが、実に納得する答えではあった。
「正しいですが、それでは足りません。
必要なのは暴れる馬と向き合い、宥めることです」
だが、彼女の為を思うのであれば"その"扱いは逆効果であろう。
御雷の術を担うのならば、その制御の為に必ず必要な工程なのだから。
「つまりは己の力と向き合い、そしてその扱いに慣れること。
貴女に必要なのは、まずは力を担う時間を増やす事、という事です」
■御雷 穂乃 > 「……向き合い……宥めること……」
そんな事は考えた事はなかった。
自分の中にあるのは真正の悪性であり、不変の魔性である。
そう教え込まれてきたからこそ、彼女は自分の中のものと向き合う事を恐れた。
「……でも、力を解き放つのは、とっても、怖いです……」
自分の中にある微かに残る残火の灯火は時に雷のように激しく、炎のように熱く。
人と言うものを憎み、恨み、壊し、殺そうと囁くのだ。
母神を貶めたものを決して許すな、と嘯くのだ。
「……だから、その……天華ねえ様……」
そういう修業をする時は。
「見守ってくれます、か……?」
手を貸せとは言わない。
これは自分自身の問題だから。
自分自身が向き合わなければならない問題だから。
そうして堕ちた時に首を預けるに値するのは、やはり、自分の姉だと思ったから。
■御雷 天華 >
「神格とはその側面で在り方を変えるもの。
荒神があるならば、その対となる和魂があるように」
火雷と彼女が同じであるなら、その在り様は変えられる。
転生して産まれた以上、まだ其れは定まりきったものではないのだから。
「そして、その答えは勿論、の一言ですよ。
もし荒ぶることがそれを鎮めるのもまた先達の役目」
そう頷き、少女は彼女に笑みを向けて。
周囲を囲うように水を舞わせて陣を組む。
万が一、彼女がその力を暴走させた時に被害を抑え込むためのものである。
■御雷 穂乃 > 「……うん……わかった、天華ねえ様」
そう言えば木刀をおいて。
すぅ、と吐息を正して。
胸元に手をやれば、そこから炎と雷が激しく迸る。
それは荒れ狂う暴威として。
「う……くっ……」
空気が焼ける独特の匂いが立ち上る。
爆ぜる稲光が胸元を中心に放射状に広がる。
「く、ぅぅぅ……っ」
湧き上がる憎悪、湧き上がる殺意、湧き上がる悪意。
そう言ったものをねじ伏せる。
――――否、違う。
それらはほのがむきあわないといけないもの。
ほのがほのであるかぎりずっといっしょにあるもの。
「ほの……は……ほのかは……」
空気が爆ぜ、雷が炎を走らせる。
ヂッ、ヂッ、と言う音を響かせながら、草木を燃やす。
そう言ったものの後始末はきっと姉がしてくれるから。
「ほのかとほのは、一つ……?」
疑問そうに毀れた言葉は。
■御雷 天華 >
「……心を落ち着かせて、まずは受け入れて」
幾ら否定しようとも、転生したるその魂は神のソレ。
故に初歩の初歩、自らの中に在るそれを認め、受け入れるもの。
少女は見守り、奔流する力が齎す暴威を抑え込む。
陣の外へと火花は漏れない。
雷光はその内で暴れ、燃え上がる草木も霧雨が鎮火させていく。
「宿す其れもまた、貴女の一部なのですから」
言葉を告げ、ただ見守る。
己と向き合う修練は、彼女自身にしか出来ぬのだから。
■御雷 穂乃 > 「……うぅ……っ……」
心を鎮めて、姉の声に耳を傾けて。
ヂリヂリと身を焦がす熱にうなされながら。
火雷神と言う存在は発生からして那岐流の天敵である。
それを宿して生まれ変わったと言うのはどういう意味なんだろうか。
己の中に問いかけ続けてきた言葉。
「うぅ……っ、げ、限界かも、です……ッ」
燃え盛る炎は激しく、轟く雷轟も激しく。
これ以上の行使は危険水域だ。
少女の幼い体に対してその御業はあまりにも大きく、そして強い。
そもそもあまり行使していないこともあって慣れの問題もある。
それこそが姉の言う「行使してこなかったことによる弊害」なのであろう。
胸元を抱え込むように抱きしめて、膝をつく。
息が荒くなる。
ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ、と肩で息をし始める。
多分、今はこれが限界だろう。
■御雷 天華 >
「……ん、ひとまずはそこまでにしましょうか」
肩で息をし始め、膝をついた頃合い。
そう声をかけ、一旦の修練をそこで打ち切る言葉を掛ける。
「しばし休憩、ですね。
やり過ぎれば呑まれてしまうのもまた確か、ですし」
ともあれ、彼女の肩に手を置いて。
休むように促せば、周囲の守護陣も解除していく。
「これを可能ならば毎日繰り返し、慣れていけば溢れる力の手綱を握れるでしょう。
そうなれば、次はその力を制御……そういう段階を踏んで行けます」
■御雷 穂乃 > 「はぁ……っ、はぁ……っ……!!」
声がかけられると同時、顕現を納める。
潮がひいたように炎雷はおさまり、陣内で荒れ狂っていた神威が消え失せる。
その後、ぺたん、としりもちをついて、荒く息を吐いて。
毎回、こんなものとの対面をしなければならないことに。
恐怖を覚えながら、ふと、よぎった疑問。
「天華ねえ様も……毎回こんな怖いものと、向き合ってるのですか……?」
宿したものは違えど、姉はこんなものと毎回向き合っているのか。
それはほとんど漏らすような疑問だった。
肩に手をおかれ、ぺたん、と女の子座りすれば。
■御雷 天華 >
「……私は、幸運にも穏やかな性質の神格でした。
故に貴女の"それ"と全く同じとは決して言えはしませんが」
座り込んだ彼女の背を撫でながら。
彼女の問いへと、少女は思考を巡らせる。
自らの中に在る淤加美神は、水を司る神の一柱。
されど、闇淤加美神という龍神の側面を内包するこの神は、決して穏やかなだけではない。
時に荒ぶる洪水の如く、荒々しい一面を持っている事を、少女は良く知っている。
「怒り、激情……そうしたものと紐づき荒ぶる事は私にもありました」
故に、向き合っていたのだと、そう答える。
時に己を飲んでしまいそうなそれと、一体となる事を。
「けれど、向き合い続け認めた先にこそ、我らの業は在るのです。
いざという時に、自らが呑まれぬ為にこそ、きっと必要な修練です」