2024/05/26 のログ
ご案内:「路面バス/停留所」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >
わいわいがやがや。
学生街のバス停留所の一つにて、ちょっとした人だかり。
登校の時間…というのもあるけれど、原因はそれだけでなく……
「喧嘩は駄目!
肩が当たっただとかそんなこと、人が沢山歩いてれば起こることでしょ?」
一人の女生徒の、よく目立ち、通る声。
どうやら喧嘩の仲裁。少々素行のよろしくない生徒二人の間に立っているようだった。
伊都波 凛霞 >
喧嘩の原因は他愛のない。
どちらの肩が当たっただの、謝らずに行こうとした、だの。
パワーの有り余っている若い学生にはとてもありがちな理由。
口論の末に殴り合って怪我をして、教師に叱られる。
なんていう当たり前の光景。
けれどこの島では、この学園ではその普通は時に成り立たない。
互いをなだめようとする女生徒の声に耳を貸さず、キレてしまった片方の男子生徒。
制服も着崩し、強面にも見える彼は瞬間、その掌に巻き上がる炎を纏った。
「!」
──そう、ここは異能学園都市。
ちょっとした小競り合いが、冗談で済まない喧嘩に発展することも稀に起こり得る。
伊都波 凛霞 >
わっ、とギャラリーにも声があがる。
彼が"異能の力"を行使したから。
「ああ、もう…」
もう少し早く仲裁に入っていれば落ち着けられたかもしれない…なんてちょっと自責の念。
でも、こうなった以上はもう見逃せない。
元々、見過ごせるような性格していないけれど。
瞬時──炎を巻き起こした男子生徒の背後に周り…その逆巻く炎を顕現させた腕を捉える。
急に膝の力が抜け、ズシンと重い何かが背に乗ったような感覚を得た男子生徒はその場に跪く。
集中力が途切れ、顕現させていた炎も掻き消えればその場には、背後から生徒の片腕を綺麗に極めた女生徒の姿…。
伊都波 凛霞 >
「演習施設以外での対人に向けての異能の行使は厳禁!
どっちが先に手を出したとか、そういう問題じゃなくなっちゃうんだから!」
ただの喧嘩では済まなくなる。
──島の社会や秩序は学生を主体として構築されている。
異能に目覚めた少年少女達は様々な経験から大人以上に聡明な者達も多く、背景に大人の力も借りてそれは成り立っている。
けれど皆が皆、というわけではない。
年齢相応…学生達は、精神的に未熟な者がいて当たり前。
異能の力は、人を選んで与えられているモノではなく、こうやって生徒が生徒を取り締まる光景も時に見られるものだった。
伊都波 凛霞 >
ギリ…、と。少しだけ、ほんの少しだけ強めに肘と肩の関節に力が籠もる。
女生徒は古流武術を教える家の長女。
ぎりぎりの、ちょっと痛くて動けないだけ…そんな塩梅は熟知していた。
その絶妙な塩梅の痛みは、漸く男子生徒に冷静な心を取り戻させる。
『わかったわかった、もういい!もうやらねえよ!!』
男子生徒のそんな声が耳に届けば、漸くと小さな安堵の溜息をついて、その腕を解放することにする。
伊都波 凛霞 >
さて、女生徒は風紀委員である。
常世の島の風紀を守る権限と義務を示した腕章を身に着けている。
衆人環視の元、本来は町中での対人異能行使の未遂を見逃すわけにはいかない。
「──ごめんね皆、お騒がせしちゃって!。
彼らには私がよーく、言って聞かせますから、遅刻とかしないように、ね?」
ほら、と。
聳え立つ学園の時計塔を指さして見せる。
一段落、そんな雰囲気の現場からは登校中に足を止めていた生徒たちが一人、また一人と離脱してゆく。
そして…
伊都波 凛霞 >
「もう、やらないこと!」
残った男子生徒二人に一喝。
…一喝と言うには温い…というか、甘い。
注意と取るならまあ普通。
罰則なんかの読み上げなんかも当然ない。
それだけ?
迂闊に異能の力を使ってしまった男子生徒からすれば、拍子抜けだったことだろう。しかし。
「それだけ」
柔和な笑みを浮かべて見せた女生徒は。はい、と二人の男子生徒の背中を押す。
伊都波 凛霞 >
「男の子同士なんだから、喧嘩くらい元気が有り余ってれば仕方ないよね。
できればスポーツとかで発散して欲しいけど…こういう目立つ場所で騒ぎを起こすのは駄目。ね?」
二度目はもうちょっと厳しくするからね、なんて言葉を付け加えて。
どうにもバツが悪そうな表情を浮かべた生徒二人は顔を見合わせ、気不味そうにその場を後にする──。
「ふぅ~。もう、ひやひやするなぁ……。
急に異能の力使い始めるんだもん」
ホントならもっと厳しく、風紀委員の本部まで連れていかなきゃいけないところ。
学生同士の喧嘩の延長上。そう考えると…あんまり厳しくしすぎるのも……と、甘くなってしまうのは少々風紀委員としては適格でない。
「(わかってはいるんだけど、なぁ…)」
うーん、と内心唸りつつ、頬を掻く。
ふと時計塔を見上げれば、そこそこの時間になっていた。
伊都波 凛霞 >
バスが来て、乗り込んでいく人達を見送る。
さて騒動はこれにて一段落。
人の輪が出来ていた停留所もいつも通りの姿を取り戻した。
「ちょっと遅くなっちゃった、けど…まぁ遅刻はしないかな」
いざとなったら走ろう。
脚には絶対の自信がある少女である。
こうやってのんびり、各々の登校風景を眺めるのも好きなのだ。
おはよー、なんてかけられる声に笑顔と片手を小さく挙げて返したりしながら。
少女は学園ではそれなりに目立つ存在だった。
成績も、運動能力も、素行も、容姿も、性格も。
完璧超人、と揶揄されるくらいには。
ご案内:「路面バス/停留所」に桜 緋彩さんが現れました。
桜 緋彩 >
「凛霞どの、おはようございます!!!」
彼女の後ろから掛けられるデカい声。
寮から走って登校してきたサムライガールの挨拶の声である。
それなりの速度でたったかたったかと彼女の横に並び、そのまま速度を合わせる。
速度は合わせているが、もも上げの要領で足踏みを繰り返し、負荷は落としていない様子。
「何かトラブルがあったご様子ですが、もう解決いたしましたかな?」
走ってくる間ちらりと見えていた、男子生徒とのいざこざのような何か。
彼女ならば問題ないだろうと敢えて駆けつけることはしなかったが、今何も起きていない様子を見るに実際問題なかったのだろう。
ちらりと停留所を見て、汗の滲む顔を彼女へ向け直す。
伊都波 凛霞 >
「おはよ。今日も元気一杯だね」
大声での挨拶は当然衆目の目を引く。
それを気にした様子も見せず、ふんわりした朝の挨拶を返して並び歩く…走る?彼女に微笑む。
「うん。ちょっと喧嘩になりそうだったから仲裁しただけ」
疲れないのかなあ、なんて思いながら忙しない彼女に言葉を返し、自分もまた停留所へと視線を向ける。
実際誰かが怪我をする前に事は収まった。
余計なことは口にすることもなく、事は落ち着いたということだけを伝える。
男の子同士ならそんなこともあるよね、と。
桜 緋彩 >
「元気なのが取り柄ですので!」
ぐっとガッツポーズしてみせる。
元気があれば何でもできるのだ。
「あー、喧嘩」
納得した様な顔。
個々人の力が強い街なのだ、そう言うこともしょっちゅう起こる。
「元気が有り余っているんでしょうなぁ。私も先日喧嘩の仲裁をいたしましたが」
同じ風紀委員である彼女ならば、異能を振りかざして暴れまわる二級学生を、相手が疲れて動けなくなるまで叩きのめしたことは知っているだろう。
怪我はさせていないので、仲裁と言えば仲裁かもしれない。
伊都波 凛霞 >
急に力を手にしてしまった若者がやや暴力的に傾倒してしまうのは仕方のないこと。
とはいえ、それを見過ごせるわけもなく、風紀委員という組織が存在する。
自身もまた喧嘩を仲裁した、と離す彼女もまた同じ風紀委員。同僚の一人。
「元気が有り余ってること自体はとっても良いことなんだけどね…」
もうちょっとこう、発散の仕方というか…なんというか。
「スポーツとかに打ち込んだらいいのいなあ、なんて思ったりはするけど。
それも人それぞれだからね」
そういうことでしか発散できないような人だって、いる。
特に不法入島者や、二級学生と呼ばれる人達。
落第街、なんて不名誉な呼ばれ方をする荒れた街の住人。
危険だからと、一般学生は近づくのを禁止されている場所でもある…。
自分たちは、その義務から近づく機会も多いのだけど。
「報告書で見たよ。怪我とかしなかった?」
喧嘩の仲裁について離す彼女に、視線を向けながら。
桜 緋彩 >
「特に殿方や不良と呼ばれる方たちはナメられることを嫌います故、ちょっとしたことで争いになるんでしょうな」
面子を重んじると言うヤツ。
そう言うコミュニティは舐められたら終わりみたいな話を聞くので、舐められないことに必死なのだろう。
気持ちはわからなくはないが、巻き込まれる人からすれば溜まったものではないだろう。
「私などは打ち込む先として我が流派を勧めるなどしておるのですが、これがなかなか」
風紀委員の見回りの際、二級学生相手に勧誘をして回っていたりする。
ただ、肝心の相手からは「うるさい」「しつこい」「クソうぜぇ」など散々な評価をいただいていたりするのだけれど。
「はい! 鍛えておりますので、あのぐらいの小競り合いであれば問題ありません!!」
ただの喧嘩と言うにはやや規模の大きいものだったが、実際木刀一本で鎮圧している。
入学当初は虚偽報告と疑われることも多かったけれど。
伊都波 凛霞 >
若気の至りというかなんというか。
異能の力に目覚めた不良、なんていうのも当たり前にいるわけである。
取り締まる側の風紀委員や公安委員にも当然、それなりの異能者が集うわけではあるものの…。
凛霞としてはあまりそういった血腥いことは起きてほしくはない。
なのでスポーツや武道に打ち込んで健全な精神の育成。なんかはきっと理想的。
「そういえば緋彩さんの道場ってこの島にあるの?
私なんかは子供の頃に越してきたから、家も道場もずっと此処にあるけど…」
勧誘している、ってことはそういうことなのかもしれない。
尚、学年こそ同じであるが彼女は1つ年上。目上の人にさん付けは忘れない。
鍛えている、と自信ありげに語る彼女は力強い。
男性でも女性でも、見かけによらない…それはこの島では稀ごとではないのだ。
桜 緋彩 >
「いえ、道場はございませんが、訓練所をお借りして活動しておりますね。部活のようなものです」
門下生は少ないのですが、とバツが悪そうに笑う。
活動もただひたすら時間一杯ぶっ通しで打ち合い続けると言うものである。
「いずれは支部もと考えてはいるのですが、風紀委員の仕事や学業もあります故……」
何足もわらじを履けるほど器用ではない。
卒業までは本格的な活動はしないつもりでいる。
「良ければ凛霞どのもお暇なときいらしてください。凛霞どのは器用でありますから、基本の剣技はすぐに習得出来るでしょう」
伊都波 凛霞 >
委員会に部活、学業そのもの、そして異能や力との向き合い方。
社会を形成する学生都市にあって学生のすべきことはとにかく多い。
彼女もまたそれに苦心する一人なのだと理解する。
「そっか。まずは学業第一だもんね。
風紀委員が赤点とか、格好がつかないし…」
風紀を守ることは規範となることによく似る。
学生の身の上、完璧にとはいかないまでもよりそうなれるようにはしなければ。
「私も自宅の道場で近所の子達に教えたりしてるから、時間ができたら…かなあ。
色々知っておいて損はないと思っているし、そのうちに…かな?」
来月は特に何もなくとも、七月には前期末試験や夏季休業に向けての歓楽街健全化運動などが待っている。
風紀委員や公安委員は特に忙しくなる季節だ。海開きなども行われる予定。
みんなばたばたするんだろうなぁ、と思いつつも。学生の身である、行楽も楽しみたい。
桜 緋彩 >
「学業はなんと言うか、まぁ、その、身体を動かす方が得意と言いますか……」
赤点とまでは言わないものの、勉強はあまり得意ではない。
特にテスト前などはひいひい言っていたりする。
「凛霞どのとの仕合は楽しそうでありますから。お待ちしておりますね!!」
今から待ちきれないと言わんばかりに、のをより激しく動かして。
ずっともも上げを続けているが、息が上がった様子はない。
伊都波 凛霞 >
言葉を濁す彼女にくすりと笑みを向ける。
まぁ、人には得手と不得手があるものですゆえ。
「ふふ。困ったら言ってね。それなりに勉強教えるのも得意だから、私」
成績不振で委員会での活動が疎かになってもいけないし。
協力できるところは協力しましょう。喜んで。
「仕合…」
あれ、基礎剣術を習ってみようだけの話じゃ…みたいな。
血気盛ん、というほどではないにしろ、比武の類は大好きなのだろう。
目をキラキラさせてるし、断り辛い。
「そ、その時はお手柔らかに…ね‥?」
意気の上がる彼女に、今度向けるのは小さな苦笑。
桜 緋彩 >
「かたじけない……勉強はどうにも性に合いませんで……」
しおしお。
あからさまにしょぼくれた様子。
「お手柔らかになど!! 凛霞どのを相手に手など抜けませぬ!!」
鼻息が荒くなる。
「凛霞どのを相手に手を抜こうものなら、一瞬で叩き伏せられてしまいます! そもそも凛霞どののような武人を相手に手を抜くなど、失礼極まりない! やるからには本気の立ち合いでございます!」
ふんす、と力説。
完全に立ち会う前提のつもり。
伊都波 凛霞 >
しおしおになったのも一瞬。
すぐに鼻息粗く捲し立てはじめた彼女。
「え、えぇ…?
私の家の武術ってあんまり、他流試合とかしないんだけど…」
なんて勢い、さすがにたじろいでしまうけれど。
うーんさてどうしたものかと考えて。
「あ、じゃあ…」
「緋彩さんが前期末のテストで成績上位に入れたらにしよう!
ほら、そっちに集中して学業が疎かになっちゃいけないし、ね?」
まさかそんなにぐいぐい来るとは思っていなかったので、そんな条件付けをしてみる。
風紀委員という立場、成績でも規範となるべきという理念の元、無理矢理な条件ではない筈である。
学生は学業が本分。彼女もよくよくわかていることであるのだから。
桜 緋彩 >
「う」
動きが止まる。
今の今まで休むことなく動き続けていた脚が、ぴたりと。
「上位、でございますか。いやしかし、確かに凛霞どののような武人と仕合うには確かにそのぐらいは……しかし上位……」
今まで赤点ギリギリの低空飛行を続けていた成績。
それを上位まで持っていくには相当頑張らねばならない。
一瞬しおれるものの、しかしと思い直し、けれどやっぱりしおれる。
「ぐぬぬ――わ、わかりました。形だけとは言え、私とて桜華刻閃流の当主であります。見事成績上位に食い込み、凛霞どのとの立ち合いを勝ち取って見せましょう!!」
それでも腹を決めたのか、ぐ、と両の拳を握りしめ、きり、と引き締めた表情をして見せる。
「――多分、おそらく、きっと……」
でもちょっとだけしおれる。
伊都波 凛霞 >
勿論、彼女が成績上位に入ることなど出来ない…なんてタカを括ったわけではない。
行き詰まれば勉強の相談にも乗るつもりであったし、単純に条件として提示しやすかったというのもある。
そして何より、彼女がそれを直し遂げて見せたなら自分もそれに本気で応じなければならない──そういう在る種の覚悟を自分に決めさせるための約束に出来る。
「ん♪そうと決まれば、普段から遅刻はできない、ってわけで」
さてと見上げるは学園の時計塔。
のんびり歩いていると、少しぎりぎり、かもしれない。
「先にいっちゃうよー?緋彩さん」
早足になりつつも振り返り、動きを止めしおれている彼女へ声をかける。
向かう先は常世学園──この島に集う、我々異能者達の過ごす学園である。
桜 緋彩 >
「おっと、もうそんな時間でございますか!」
しゅた、と顔を上げる。
確かに、時計塔が示す時間はそろそろ急がないといけない時間になっている。
「お、では競争でもいたしますか、凛霞どの!」
彼女に続いて地面を蹴る。
ここまでずっと走っていたとは思えないほどの軽い足取りで彼女の後に続いて校舎へと駆けだそう――
ご案内:「路面バス/停留所」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「路面バス/停留所」から桜 緋彩さんが去りました。