2026/02/22 のログ
■御雷 天華 >
「お互い、こうして密に対面するのは初めてですもの」
覚えて無くとも仕方ないだろう、と苦笑しながらフォローを入れる。
なにせ此方も一個人としては殆ど彼女を知らないのだ。
「衣詞さん、ですね。
お噂の方はかねがね聞いておりますよ」
聞いたことがあるのは『天琴の鬼子』としての話だけ。
人らしさを削り、その代わりに彼女は神器を担う器として既に完成している…と。
そうした評判だけはよく耳に届くのだから、那岐流が如何な流派なのかが良くわかる。
恐らく己の噂もそうした類のものであるのだろうな、と。
言葉を交わす最中に、ふと思案を巡らせる。
■天琴 衣詞 >
「噂。噂、か。」
何かを確認するように、そう呟き、軽く首を傾げる。
ふぅ、と、小さく息を吐く声。
「天琴の次代は、人に非ず。人の皮を被った、絡繰人形。」
嫌味という訳ではなく、ただの確認のような言葉。
表情も、まるで変化がない。
「此方とて、耳が節穴ではない。否定は出来ぬ事。
聊か、人間らしさというものを、何処かに落として来たとは、此方とて分かってはいる。」
それを後悔するでも誇るでもない声。
事実は事実なのだから、好きに言わせておけばいいとでも言いたげな雰囲気である。
「御雷の次代の評判は、時折耳にしている。
いずれ御雷の名を背負うに相応しき、優れた当主に、と。」
じ、と。白縹色を思わせる薄い色の瞳が、青みを帯びた黒い瞳に向けられる。
まるで、目を通してその奥までも覗き込んできそうな、視線。
それもまた、巫女服を思わせる身なりの少女の、あまりよろしくない噂を後押ししているのかも知れない。
■御雷 天華 >
「それを言われたところで、という奴ですね。
私としては納得できる話と共に、想像よりは人らしいと今は感じておりますよ」
そう返す少女の評価は実に率直なもの。
確かに目の前の彼女は、どこか欠落したものがある。
されど、興味を向ける仕草や物言いにはどこか感情が感じられる。
決して振る舞いすべてが絡繰とは、天華には思えなかった。
「まぁ、きっとそれはお互いさまではあるのでしょうね。
私個人としては、優れた…というには足りぬものがまだ多い身です故」
苦笑を携え、此方を覗く視線にも動じずに。
ただ在るがまま、此方もまた自らを誇りはしない。
■天琴 衣詞 >
「随分と、遠慮なく、物を言う。
世辞や社交辞令の飾り立てのない、そんな言葉を聞いたのは……そう、覚えていない位には、稀だ。」
まるで虚実を聞き分けられるかのような言葉。
否、天琴家が代々受け継ぐ神器の性質も考えれば、それすらも可能なのかも、とさえ思わせる。
苦笑しながらの少女の言葉には、小さく瞑目。
「確かに。如何な素質持ちとて、経験という積み重ねの壁は簡単に届かぬもの。
お互い、若い身で次代の責務を約束されて、大変なものだ。」
冗談、というにはやはり情動が欠けているので笑いどころが難しい言葉。
まあ、若いというのは事実である。
将来性豊か、という事には間違いはない、だろう。
■御雷 天華 >
「世辞を口にしても、貴女にはそう意味の無いものかと思いまして」
それは彼女の、天琴という家の性質故に……という訳ではない。
自らが客観的にどう評価されているかを知りながらも、それを在るがままに受け取る振る舞い。
即ち、他者評価が如何なものであっても、ただそうなのだと受け入れる性質。
それを持つ相手に対して、世辞と実評の差は無いようなものだろう、と思案したが故の事。
「期待に思う事はありますが、されども任されるのならば応えねば成らぬ事。
より一層、励んでいくしかありませんね、お互いに」
ともあれ、と。
軽く、一呼吸を置いてから、改めて天華は少女へと向き直る。
「……今日は、これから何方に?」
■天琴 衣詞 >
「帰る。」
何処へ、との問いには、ひどくこざっぱりした返事。
「電車、というものの乗り方は、凡そ理解出来た。学園とやらへの道順も、覚えた。
当世は、目が疲れる。色々と、物や音が、多すぎる。」
その言葉が、既に彼女の育った環境の現代離れぶり…あるいは異常さを物語っている。
電車の乗り方を覚えるという時点で、どういう生活だったのかと思わずにはおれないだろう。
何処の田舎から出て来ればそんな言葉が出るのやら。
「――そうだな。
何某か、あった時に、連絡が取れた方が、不便ではないだろう。
この島での、此方の住居は、此処になる。渡せば分かると、言われたが。」
少し歩み寄って距離を詰め、懐から取り出したのは小さな紙。
名刺程度の大きさに、住所が書かれている。
――学生・教職員居住区の中にある、割とよいタワーマンションの住所と部屋番号だった。
恐らく天琴の家の者が手配したのだろうが、どういう基準で選んだのやら。
■御雷 天華 >
少し思案すれば、当然と言えば当然の話。
自らがこれから何処かへ行く為に駅へときたのだ。
その駅から出てきたのなら、その逆だろうと。
「成程、帰宅途中でしたか」
続く言葉には、その浮世離れっぷりに苦笑を浮かべる。
けれども、不思議とまでは思いはしない。
那岐流に於いて、俗世から掛け離れた生活を送る者は決して珍しい者ではない。
程度の差こそあれども、修行に身を置けば文明から離れる事は数多い。
とはいえ、それでもここまで現代離れしているのは珍しいが。
天華でさえ必要最低限の学生生活は『社会学習』の名目で送っていたのだから。
「まぁここで過ごすのならば文明の利器は、活用せねばなりませんしね。
……と、なるほど此方に宿を取られたのですね、ありがとうございます」
■天琴 衣詞 >
「文明の利器は、確かに慣れた方が、良いのかも知れない。
学生手帳…と、いったか。あれは、使う為に覚える事が、多い。詰め込み過ぎるのは、どうかと思うが。」
学生手帳…とはいうものの、所謂スマートフォンに近い代物である。
文明から離れた人間には、まず使い方を覚える事が苦難の道だろう。
詰め込み過ぎ、という愚痴のような言葉も、極端な多機能化への苦言のようにも思える。
まあ、人間である以上、慣れというものはある…のかも知れないが。
兎も角、この巫女服を思わせる成りの少女、那岐流の中でも一際浮世離れしているタイプと言えるだろう。
何しろこんな街中で巫女服めいた服を着て、しかも楽器ケースは形から見て中身は琵琶。
少女の姿の方が、この街中では異物感が強めに思える。
「ではな、天華殿。次に会うとしたら――学園で、であろうか。」
さらば、と言い残し、色素の薄い小柄な少女は別のホームの方向へと歩みを進めていく。
路線は、住所の方向。学生・教職員居住区へ通じるものだ。
幸いにも、乗り換えという概念も学習出来ているらしい。
■御雷 天華 >
「使いこなせれば、アレほど便利なものもそうはありませんよ。
……まぁ、実際に使う用途はそう多くはありませんから」
ただ普段使いする程度なら、不慣れでも大丈夫であろうと。
スマートフォンに悪戦苦闘している様子の少女に笑みを浮かべて。
天華はフォローを入れるようにそう告げる。
ただ使うだけならメールや電話だけでも十二分。
それ以上は、必要となれば一つずつ扱いを覚えれば及第点だろうと。
「えぇ、少々引き留めてしまいましたが、またいずれ。
学園か……或いはまた、お屋敷の方ででも」
ともあれ今は、一旦は別れを告げる。
その背を見送り、軽く手を振って。
それから少女は改めてMAPに視線を戻し。
程なくして行先を決めたのか、改札を潜るのだ。
ご案内:「学園地区駅 ホーム前」から天琴 衣詞さんが去りました。
ご案内:「学園地区駅 ホーム前」から御雷 天華さんが去りました。