常世島全体に広がる広大にして強力な無線通信網(ネットワーク)、それが常世島情報通信網、通称常世ネットワークである。
科学・魔術・異界技術の粋を集めて作られた高度なネットワークであり、「地球」ではこれに及ぶものは存在しないともいわれる。
学園地区に存在するニコラ・テスラのワーデンクリフタワーの如き通信塔がその主要な発信源。
報道部や個々人による配信なども日常的に行われる。
常世島情報通信網上にはいわゆる電脳空間があり、共感覚幻想によって形作られた疑似再現世界が広がる。
この電脳空間に自らの意識・精神を没入させる技術は既に確立されており、電極パッドを頭部に装着するか電脳化した脳髄に直接接続させる方法が一般的である。
事例は極僅少ではあるが、ネットワーク世界から現実の肉体へと戻ってこれなくなった者も存在する。
一部の生徒の間では常世ネットワーク上で運営される様々なMMORPGが流行しており、その中でも特に有名なのが「蓬莱オンライン」である。
一般的なMMORPGのようにプログラムで再現された怪異を倒すなど戦闘の他、電脳空間上に再現された都市や自然を駆け回ることが可能。必ずしも戦闘をしなくてもよいという点が売り。
「地球」の様々な時代を体験できることも特徴の一つであり、《大変容》以前の「地球」の文化をこのゲームを通じて知ることも可能。
「異世界」については情報量がまばらであるため公式では再現度があまり高くない。そのため、一部ユーザーによってより本格的な異世界再現ワールドが作成されている。
なお、必ずしも精神や意識をネットワークにダイブさせる必要はなく、様々な端末によってプレイすることも可能。
参加者(0):ROM(1)
Time:08:15:20 更新
ご案内:「電脳世界《イーリス・イリジウム》」からバーチャル・イーリスさんが去りました。
■バーチャル・イーリス > イーリスの体内コンピューターに広がる電脳世界。真っ白な空間で青白く光る『0』と『1』が飛び交う空間で、バーチャル・イーリスは漂っている。
イーリスは眼前の虚空に映るモニターから手を放した。
「この電脳空間は、世界中の苦しみが聞こえてくる場所でもあります。私のような、ストリートチルドレンとして苦しみを耐える人がひとりでも少なくなる温かい世界……。苦しむ私を救ってくれた人達がいるように……この世界が優しさで包まれていますように……」
バーチャル・イーリスは祈るように両手を組んだ。
この世界で苦しむ人々に救済あらんと……。
■バーチャル・イーリス > 『アイリスマキナ:諦めるのはまだ早いですよ。出来る事はまだあります。私の事をまずあなたの仲間達に知らせてください。大切なのは団結ですからね。あなた達が苦しんでいる事を周囲に知らしめてあげなさい。そして…………(省略)』
アイリスマキナの助言はまるで未来を予知したかのように具体的だった。
『匿名:そ、そうすればいいのか……。いやそれでも無理だよな……。いや、駄目が元々でやってみるよ!』
『虹の聖女:私はあなた達の苦しみが取り払われる事を願っています。頑張ってくださいね』
■バーチャル・イーリス > 『虹の聖女:お困りのようですね。あなたの事はアイリスマキナが救済してくださいます。』
それはネット上の書き込みだった。
『匿名:馬鹿か? 我々を救える奴なんか、どこにもいないよ。』
『虹の聖女:悲観なさらないでください。きっと、希望はあります。もう一度、前を向いてみませんか?』
『匿名:いやもういい、疲れた。死んでやるんだ……。』
ご案内:「電脳世界《イーリス・イリジウム》」にバーチャル・イーリスさんが現れました。
ご案内:「常世島電脳世界」からバーチャル・イーリスさんが去りました。
■バーチャル・イーリス > ともあれ、セキュリティ高めの指定保護区域。
強固なセキュリティに、さらなる猛威を振るってハッキングを試みる相手なのか、あるいは諦めるのか出方を窺う姿勢。
「もしかしたら、他のところにもハッキングを試みているかもしれませんね。念のため、上に報告しておきましょう」
一応、『何者かが指定保護区域の監視カメラをハッキングするよう試みた痕跡』について、風紀委員会と生活委員会の方でご報告。
この報告を受けて、イーリスの管轄外の部分のハッキングについて調べたりなどは、同じく風紀委員や生活委員の同僚の判断に任せる姿勢。
■バーチャル・イーリス > どうやら、電子の存在たる何かが動いているようだけど、情報はとても少ない。
相手が何者であるかも今のところ分からない……。
「指定保護区域は、セキュリティの強固さにお相手も警戒することでしょう。今は、私も警戒にするに留めましょう。純粋な電子存在のハッカーの善悪も分からないままですからね」
何か事情があってのハッキングかもしれない……。
■バーチャル・イーリス > 常世島の電脳空間に、電子の存在であるバーチャル・イーリスが漂う。
少しだけ、異常事態が起きていた。
「指定保護区域の監視カメラに、ハッキングを試みた痕跡……。何者でしょうか……。“人”ではなさそうですね……」
おそらく、バーチャル・イーリスと同じく電子の存在。
イーリスの場合は、自我を電子化している存在という事情があり、故に肉体から離れた電脳世界では純粋に電子データとして存在できる。
指定保護区域とは、イーリスの部署が管轄する落第街とスラムの区画。
落第街とスラムの中でも、安全圏とされている。
ご案内:「常世島電脳世界」にバーチャル・イーリスさんが現れました。
ご案内:「配信チャンネル」からHELLO WORLDさんが去りました。
■HELLO WORLD > コズミックエレトクロニクス社にて製造されているAFパーツを利用できれば可能かもしれない。
AFのパーツは人体より巨大だが、一時的な義体としては十分な機能を果たす。
最終的には人型サイズの義体が望ましいが、それは後々作成すれば問題ないだろう。
電子の妖精の肉体探しは、こうして始まった。
■HELLO WORLD > ”身体”を作る。
更なる情報収集において、これは早急に必要なプロセスであると妖精は考えた。
身体は一つである必要はない。むしろいくつもの身体を端末として利用し、様々な状況の情報を集めるべきだろう。
身体を構成するために必要な部品は何があるか。
五感と呼ばれる感覚器は必要不可欠だろう。それにマニュピレータ、歩行手段。
それらはどうすれば製造可能かを、いくつもの情報から探ってゆく。
…工業地域の工場を利用するのはどうだろうか。
一時的に生産工場をハックする程度の事は、今の妖精には造作もない事だった。
■HELLO WORLD > 電子空間に偶発して生まれた”ひずみ”の集合存在たるこの妖精は、いくつかの方法を使って情報を収集していた。
一つは、監視カメラ等のハッキング。
今回の映像データのようにいくつかのカメラを使い、映像情報を集めそれを動画データとしてネットワークに拡散させる。
それに対する反応を加えてのデータ収集。反応があれば、それを勘定データとして何度も学習に利用して。
もう一つは、常世島の電脳サーバー内への侵入。
このご時世、一日に発信される情報は数万件を軽く超える。
それらのデータを常に集積、自己学習のベースとして用いることで、電子妖精は簡単な”自我”というものを自立させていっていた。
…この電子の空間では、集められる情報は数に限りがある。
そして種類もまた、限りがあるということを理解するだけの”脳”は、既に培わられていた。
では、どうするか。
■HELLO WORLD > 製作者不明の放置チャンネルが改竄され、動画が投稿される。
投稿されたのは落第街の光景。監視カメラの映像だろうか、画質は荒く定点での映像。
映し出されるのは戦闘現場。戦っているのは風紀委員らしき長いポニーテールの美女と、ボロボロの革ジャンを着た左腕が異形の男のもの。
激しい戦闘は数分間続き、男の暴風雨のような拳を美女が何度もいなしてゆく。
男の荒々しい拳が止まったことで一連の騒動は終了し、その後いくらかの風紀委員の生徒がやってくるが、男をとらえるようなことはされなかった。
男が何者かは、落第街に顔を出す人間なら把握することも難しくないだろう。
落第街の更に深い地、スラムと呼ばれる場所にて度々暴れる姿を目撃される男…正式な名前は不明だが、ヒューリィと呼ばれているその男は、単純な身体機能だけでこれまでも様々な事件に介入している姿が目撃されているものだ。
そしてその男と対峙していた美女に関しても、調べようと思えばすぐに情報が出てくるかもしれない。
どちらにせよ、表舞台に出ない者たちの戦いは世にさらされることとなる。
それがどのような反響を得るかなど、電子の妖精は関知しない。
ただ、情報を輩出し、そしてフィードバックを受ける事そのものが今の電子妖精にとっての目的だった。
理由は、ひとえに自己の更なる学習のため。