2024/06/26 のログ
ご案内:「配信チャンネル」にスマイルさんが現れました。
スマイル >  
 とある配信チャンネル。そこに映るのは奇妙な光景。
 貼り付けたような笑顔をを浮かべた男。異常なまでに細くそして2mはあろうかというほどに長身。
 どこかの劇場を思わせるような光景。
 それはゆっくりと手を広げる。

「今、君はどうしているかな? 大人しく勉強し、働き、誰かの為に汗を流す。明日を生きる為に、明後日を生きる為に」

 優し気な口調で言葉を紡ぐ。
 だが声は笑っているような、陽気に歌っているようなニュアンスを受ける。

「すばらしい、君は実にすばらしい……きっと君は正しい人なんだろう」

 そこに映るのはとある犯罪者。すぐに配信が強制停止される事だろう。
 だが、違うアカウントから次々tと同じ配信が同時に始まっている。消しても消してもキリが無い。次次とそれは増える。ウィルスのように増える。そして新規配信開始の欄は埋まる。同じ男で埋まる。

スマイル >  
「だが、私は思う。君は正しい。だとして……では、君は誰に救われる? 誰かが君を救っている?同じように働く誰かが」

 優し気な口調は少しずつ寂しそうな声に。
 貼り付けた笑顔もまた悲しそうな顔へ。

「考えてみてほしい、君は今何をしたい?本当に今している事はしたい事なのか」

 コツコツと歩く。景色が映ろう。
 劇場のような景色は街の中へ。勿論架空の街だ。だけど本物を思わせるほどに精巧な街だ。

「そして君を救う人は本当に君を救っているのか……そんなわけがない、彼らもまた明日を生きる為に働いているだけに過ぎない。そこに誰かの為などない……君を救えるのは君だけだ。違うかな」

 優しく招くように手を伸ばす。

スマイル >  街からは無数の人々が歩いてくる。

「君がしたい事を考えてみてほしい。どうしたい?遊びたい?殺したい?好みの女を、男をめちゃくちゃにしたい?街を、人をめちゃくちゃにしたい?……街を守るヒーローになりたい?誰からも尊敬するヒーローになりたい?誰も彼も守れるヒーローに」

 言葉を紡ぐたびに歩いてくる人々の姿が変わる。語る通り滅茶苦茶な目に合う者、それを救うヒーロー。
 尊敬される者、悪の道を行く者。本当に様々な人に。

「だが、自由が無い、力がない……私は君を救えない。君を救えるのは君だけだ。だが、私は君を救う手伝いなら出来る」

 手を振るうと人々の姿が変わる。顔が消え、口元だけが笑う姿に。

スマイル > 「望めばいい、私はそこにいる。望めばいい。私が君を見つける。隣にいるその人私だ」

 全員の顔が同じ男になる。それはすぐにまた変化。女になり男になり、子供になり老人になる。

「私は君の夢を後押しする力を、自由を貸し出す。道具かもしれない、武器かもしれない、薬かもしれない……だが君は自由だ。何をしても良いのだから」

 配信の強制停止が追いつき始める。新規配信者の画面から男は消えていく。

「さぁ、君は何がしたい?」

 ハハハ、ハハハハ。そんな笑い声を最後に配信は強制停止される。
 その後発表される。配信者でもあったスマイルを名乗る男が逮捕されたと。それは情報を知っている者なら何度も目にした名前。もう何度逮捕され、殺害報告がされたかわからない犯罪者の名前。
 だからこそ今回も何も変わらない。
 自由の名の下に。彼らは力を振るう。そして自由を縛られた者を、法という者に縛られた者の鎖を破壊する。
 一瞬とはいえ始まった配信。たったそれだけで軽度な物を含めると犯罪数が急激に上昇したという。同時に、目に余る一般人による私刑も増えた。軽度の犯罪者を殺して結果重度に犯罪者になった者も増えた。
 立った一瞬、それだけで悪は燃え上がった。

ご案内:「配信チャンネル」からスマイルさんが去りました。